今現在の当店の珈琲の在庫はどれも素晴らしいものばかりで
よくもまあこう連続でよい豆に当たると思えるほどの豆ばかりです。
熊木の頃はそれぞれを試飲していただき、その国の事情から最近豆の
流行りようや味の傾向など詳しく説明していたのですが、コロナですっかり
試飲タイムが減り、接客時間も短くせよとの行政のコロナ対策のおかげで
なんともそっけないものとなってしまっています。
それなのに、このブログで読んだとその意味を問う方や、あらためて説明を
聞きたいという方もいて最近はお客様の向上心というか豆に通じた方が増えた
ように感じます。
ニカラグアの傾向などもそれに即してよりスペシャルティとしての質を上げたと
いえますし、その味の変化とそれでもなくならない特徴をとらえているとまた
楽しいものです。ただ、それが一般に説明てもなかなか理解されていないのも
感じるのでやはりそういったところは試飲で説明したいところです。
さて、そんな珈琲時間ですが、そもそも私の珈琲に対する味とその向上の源泉は
日々の感動にあると思っていました。ですから、音楽会や展覧会などで上質な芸術作品にふれ
いつも感動を新たにすることは必須なこととし常に心掛けていたところです。
ところがこの一年コロナ禍で世の中一変し、各催しものはすべて中止になり、展覧会
さえも中止になっていました。
バスケットの試合や練習もできなくなってそんな中、日々ある珈琲を飲んでホッとする
豊かな時間だけはつづき、より一層その豊かさとありがたみを感じたりしました。
そして思ったのはいつもあった当たり前のことがなくなってもそれを求める心や探求する
こころがあればどこかでつながり、どこでもまた感動する心と通じるということです。
この間のBS放送復活の事件は私にコロナ禍も同じでコロナ収束で元に戻っても結局それは
待ち焦がれそうなればより強い喜びと新たな視点などが現れると考えていましたが、この
事件でそれは一年前に当たり前のことが当たり前に戻っただけで何の感慨ももたらさなかった
とおり、コロナ収束後の世界もなんとなく予想がついてしまいました。
そればかりか、人類はもっと違うことを考えて世の中を変えていかなくてはならないのも
強く感じました。
さて、そんな中私の今の自由時間で触れたものを書いておくとアマゾンで見るビデオで
『ミスターロボット』が強く印象に残り楽しめました。
これは2015年の米が舞台でもう何年も前から私のお気に入りリストに入っていた作品ですが、
よいよ見るものがなくなり見始めたのです。
題名からアンドロイドがAIの暴走で人類と対峙するような物語りだとずっと思ってみる気
もしなかったのですが、いざみてみると実にスリリングで現代を切り取っているという物語
で気に入りました。
話は正義のハッカーの物語で昼は普通に働き、夜はそのハッキングの技術で悪人を摘発しては
匿名で通報しているという正義の味方の話ということなのですが、実のところその悪と戦う
対象が最初は字幕では悪魔コープといわれている企業なのですが、それがはなしがすすむと
Eコープに変わり、そもそもその悪魔コープの重役が環境破壊があるのを承知で放置したため
死んだ親の敵を討つという話から始まり、いつのまにかそのサーバーが中国にありそこのデータを
消すために国際的ハッカー集団の手を借りてそれがいつのまにか世界の実権を握ろうとする
中国の政治家とその手先のハッカー軍団という構図にすり替わり、それを止められるのが
主人公しかいないという戦いになるのですが、そもそも誰と戦い誰が味方でというのが
ころころと変わり、主人公は刑務所に入ったり警察に追われテロを主導したりということで
何が正義で何が悪なのかというのも物語についていくのと同様重要なテーマとなります。
主人公の父親役がクリスチャンスレーターでどこかで見た顔だと思ったら年取ったなあと
思っているうちその存在感を増していくのはさすがたと思いました。プロデュースにも
名が挙がっていました。
印象深いのはドミニカのギャングにつかまり自分をニューヨークを牛耳るボスにしろと
言われ協力を迫られるのですが、企業は銀行の言いなりでみんな誰かの借金のかたに
抑えられており、何一つ自由な人などいないというところが資本主義の本質を突く言葉として
響きます。このドラマの本質というかスタイルは昔のチャップリンやキートンの映画と同じで
追っかけっこなのです。
そして痛快に感じるのは、主人公が強大な敵に対峙しいつもギリギリな戦いと逃走を強いられ
ているのに警察にも敵にも捕まらないで逃げ切るのです。
その警察と逃亡シーンは今までの映画史にもないようなアクションでただ走ってにげるだけ
なのに実によくできたシーンなのです。普通現実世界では警察に追いかけられた逃走犯は
空からも見張られ無線で先回りされその数の多さからも逃れられないのが普通です。
それが走って車にひかれそうになりながら人にぶつかり崖を転がり逃げ切るのです。
これが人々が見たがっているものなのだという気がしてきます。何物にも捉えられず
逃げ切る行動力と圧倒的な力特別な能力が危うい世界と現代をあぶりだすのです。
先日訪れた久しぶりなお客様がブルーマウンテンはありますかという質問でした。
これは未だに古いコーヒーファンの方から寄せられる現代を知らない人の問いです。
根強いブルーマウンテン信仰も現在の状況を知らないで発せられているのか、世が
スペシャルティブームで世界がパナマのゲイシャに熱狂して次のゲイシャを探す
中で発せられるのとはまた問題が違うのですが、秩父で聞かれるこの問いの場合、
前者のものが多く、ただ単に高いコーヒーが欲しいだけという単純な帰結におどろく
ほどのつまらないはなしですが、まあそれを詰まらないとできないところがコーヒーの
話です。
単純に飲めば解る話とずっと思ってやってきましたが、ことはそんなことに収まらないのです。
なんでも権威とか名前とか虚無のものに支配されていることもあるのです。それが簡単に
はらせると思って試飲という方法でやってきましたが、またよい豆を安く提供することや
味に基づいた値段設定もずっと心掛けてきたことであり、今の200g5000円のブルーマウンテン
など売る気になれません。ところが当店のイルガチェフのたった1700円でこの味はどう言い表したら
いいのでしょう。コンテストやカップオブエクセレンスでいくらでも高い豆はありますが、
うまくなければ意味がないのです。ということでずっとやってきました。当店にもカップオブエクセレンスや
コンテスト豆は実は秘蔵されています。ブルーマウンテンも1K程度はいつも持ってはいたのです。
私のように自分の舌でその違いを確かめたいという人のためにとっておいたのです。まあそれも
そろそろ使命を終えたと感じて現在の状態になったのですが、それでもなくならないブルーマウンテンの
注文というのは不思議なものです。どうしてもということならいつでも入れられるのでいくらでも
高くてもいいからという方は注文してみてください。