King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

戦場へようこそ。『ジャーヘッド』

2006年03月01日 23時25分01秒 | 日々のこと
映画の日です。
見たい映画がいくつかあり、迷いました。
クラッシュも良いですし、この『ジャーヘッド』は現代人は必ず
見ておくべきですし、ミュンヘンも見ておきたいです。
まあ必ずしも劇場で見なくてもいよい映画というのも
ありますし、駄作もかなりあります。
話題性の強いものは、時代を感じるという側面もあるので
芸術性や美しいと感じるものとは違い知るというために
または経験したというために映画館に足を運んでみると
いう作業をしなくてはならない場合もあります。

お正月映画だったのでしょうか。ニコラスケイジの『ロード・オブ・ウォー』
も事実を映画化したお話です。それは今を知る上で見ておくべきだと
感じました。では平和の日本では戦争映画はなぜ見ておくべきなの
でしょうか。『ジャーヘッド』は戦争映画でも特殊な構造になっていて
普通に見れば、アメリカの大国のエゴと一兵士の主観のコントラスト
ということに尽きると思います。ただ映画ファンとすれば、これは青春
映画なのです。そして、青春映画好きからすれば、ビックウエンズデー
であり、戦争から帰ったら青春は終わっていたというメッセージと
ジャン=マイケル・ヴィンセントのサーファー姿。つまり、戦争映画に
青春と若者は切っても切れない構図なのです。

この映画の場合、今を批判している、ジョージブッシュを批判している
というより、全ての戦争映画のオマージュであり、全ての青春のレクイエム
なのです。コッポラの『地獄の黙示録』が戦地への招待状なら、これ
も歩兵は地を歩き、実際にはピンポイント爆撃や空爆によりあっという
間に戦争終結という現代の戦争の戦地案内だったのです。我々は
コッポラによりベトナム戦を体験して、今回アメリカンビューティのサム・
メンデスにより湾岸戦争を体験するのです。

この映画で見過ごしてしまいがちなのは、主人公のアンソニー・スフォード
が何の必然もなく、運命も限られた選択の末でもなく普通に選んで
自ら志願して戦場に赴くようになったこと。そして、彼は優秀な成績で
選ばれてスナイパーとなったことです。つまり彼は有主な兵士で、
精神が病んでいたわけでも、ミリタリーファンでもなく、身近な選択肢
として兵士になり、様々な不条理を受け入れるようになったという
ことです。その様をあらわしているのが、彼の読む本がカミュの異邦人
であり、彼自身人生が不条理に満ちている事を理解していることが
されげなく織り込まれています。この映画の場合、そういった織り込まれた
物語をいくつ掘り起こすかという作業がまた楽しく、センスの良い
サウンドトラックとともに重要な道具立てとなっています。

題となっているジャーですが、彼ら兵士の頭が文字通り空っぽだよ
という単純なメッセイジとともに最後の方で、戦地から帰りそのヘア
スタイルが変わった時にそれぞれの物語がつづられ題に込められた
意味を汲む事になります。つまり、彼らの頭はビン頭、でも空っぽ
だからまた詰め込むこともできるのです。

残念ながら映画はもう何日かで終了です。たったひと月の上映
でした。あの『フライトプラン』がまだ上映中なのにこのように見るべき
映画は、さっさと終了です。派手な戦闘シーンなどありませんが、
ショッキングな映像と不条理を知る映像をもっと多くの人が見る
べきです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 例年の苗場ツアー | トップ | 定年延長 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日々のこと」カテゴリの最新記事