『春の庭』は文芸春秋9月号で読みました。
夏の自由時間はこの文芸春秋で過ごした感じです。
昨年の夏はドストエフスキーで夏を過ごし、今年のタフな
夏は過酷な暑さとこの本とであっと過ぎてしまったかの
ようです。
いま、またどこかの温泉宿に今月の文芸春秋を持って
旅行に行きたいという欲求があります。
海の見える露天風呂と夕陽が海に落ちるのを見られる宿が
希望です。
この本で芥川賞作を読むのを長年の習慣にしていますが、
最近は時代におもねるような受賞作品の力不足を感じ、
もはや作家も小説も時代に合わないものなのではと思い
あまり読む意味も見いだせない感じでした。
そんなつまらない作品ばかりな中、今回の『春の庭』は
おっと思わせる雰囲気を持っていました。
離婚して一人暮らしの元美容師があても目的もない日常を
送っているその根底の精神がめんどくさいというなんとも
現代と自分に通じるようなこの雰囲気と心情がページを
めくらせました。
と、しかし、突如何の意図なのか語り手の視線が姉に
変わり、そのまま姉なのか太郎なのか解らない語りに
なって尻つぼみのように終わってしまったのです。
つまりなんなんだという読者置いてけ堀のような
不完全な感じが演出なのか狙いなのかこれまた解らない
作品なのです。
結構最初の書き出しが良かっただけに残念です。