外国語学習の意味、そして母国語について考えましょう

社内公用語の英語化、小学校での英語の義務化など最近「英語」に振り回され気味ですが、何故、どの程度英語を学ぶか考えます。

続の(1/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

2018年09月08日 | 英語学習、教授法 新...

続の(1/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

このシリーズは一つ一つの記事が比較的長いです。2回目は、長いので3回に分けます。1は2,300字ぐらい。関係詞についての対話的なエッセイは次回に。

英文法二回目です。このシリーズでは、関係詞という文法の一項目をどう学習するか、教えるかという課題を扱いながら、英文法の学習理論(狭い意味での言語学ではなく)はまだないのではないか、という問題を提起するという目論んでいます。

■一回目のおさらい

一回目では、学校教育の場での、物理と地理を例に出して、英語と他の教科との違いに注目しました。「英語の知識」と言えるものが、他の教科と性質が違うという点が一番言いたかった点です。それを間違えると、個人の学習の水準でも、国家レベルのカリキュラムでも変な方向にずれてしまいます。文科省かどこかの機関が「あまり、品詞の区別などに時間を費やさないように」という指導だか、通達だかを出しているそうです。それに対しては、「もちろん、もっともだね」と言う人が多く、すんなりと受け入れられていると思います。しかし、なぜそうなのか、というところまでは言いません。「なぜそうなのか」、その理由は前回述べたこと、つまり、学習対象となる「知識」の取り違えだと思います。とても、とても小さなことですが、ここで理論化へ一歩踏み出したと思いませんか。とても小さいことですが、「なぜ」の連鎖が「理論」と呼べるものにつながるのです。

理論 実践■理論嫌い

でも、まだ、「理論」など必要なの、という意見も多いでしょう。現場での経験が第一でしょう、と...。しかし、言葉の習得の時間は限られています。私のフランス語学習がそうであったように、一人で無手勝流でやると時間を無駄にすることも多いです。一方、学校、国家のレベルではばらばらで意見がまとまらないと、よい試験問題を作ったり、今、2018年に争点になっているような改革を先に進めることができません。「理論」というとマルクス主義ののような絶対的な「理論」を思い浮かべてアレルギーを感じる人も多いと思いますが、...いや、なにも、単一の「理論」でなくてもいいのですヨ。「これよりあれの方がいいな、なぜならば~」ということを積み重ねる努力を続ける、これが忘れられていませんか、ということがここでの主張です。

■日本語から英語に移る

SVO SOV関係詞の話に移る前に、やっぱり理論が必要かな、と思っていただくためにもう一つ挙げたいと思います。それは、英語学習というものはゼロからの学習ではなく、<日本語から英語に移る>ということを意味する点です。この点においても、物理や地理と違うということに気が付いた方は聡明です。物理の学習の前提はある程度の数学ですが、英語学習の前提が日本語である、ということほど大きくはありません。一例ですが、こういうことがあります。英語を代表とする欧米語はよく言われるようにSVO型の言語。日本語はSOV型と言われます(日本語に主語があるか、という議論には踏み込みません)。故に、英語を話す場合、日本語の思考をひっくり返さなければなりません。そのために大脳にかける負荷は相当なものでしょう。CTスキャンなどで誰かが調べれば明らかになるのではないかと思います。とりわけ耳で聞き、話す場合、とても大変です。日本の場合は特殊事情があって、明治前からの漢文訓読、書き下し文の伝統があり、その後も訳出中心の受験英語に至るまで読むことが中心だったので、読んだり、訳す場合は自分の速さに合わせてゆっくり進めばよかったのです。だからこの問題に気がつきにくかったのかもしれません。しかし、話す場合はそうはいけません。理論化にあたってはこうした言語構造の違い、歴史的事情に十分注意しなければなりません。

■英語教育における日本語文法の必要

時枝文法ここで、一つ忘れてはならないのは、英語習得の場においては日本語の構造の知識が前提になるという点です。それはそうでしょう。<日本語から英語に移る>わけですから。どこを出発点として移るかを知っていなければ到着地点にどうやって、どれくらい時間をかけて到着したらいいのか分かりません。ところが、英文法書、英語学習書などで日本語の仕組みについて分析しているものはまずありません。ところどころで思い出したように触れるだけです。なぜそうなのか。一つには英語の先生は若いころがむしゃらに英語浸りの生活をしたので、日英文法の比較から学習法を考えるという発想はなかったのかもしれません(英語の先生で国文法を一定レベルまで勉強した方がいたら教えてください)。たしかに、習う側は日本語の構造の分析についてあまり考える必要がないのかもしれませんが、英文法書には、日本語の文法を分かった上で書くという親切があってもいいのではないでしょうか。英語の文法用語を日本語の仕組みに照らし合わせて説明するだけでずいぶん英語アレルギーを減らせるのではないかと思います。(例を挙げると長くなるので書けないのが残念。)

どうでしょう。「理論」の必要ということをぼんやりとでも感じていただけたでしょうか。今回、このシリーズの二つの目的の一つの方に長くつきあっていただいたので、もう一つの方、対話による「関係詞」という一項目の学習法、指導法を考えるパートは次のブログで行いたいと思います。関係詞が何を前提していて、何の理解の前提となるかを示せれば、小さな一文法項目の検討から理論の必要をなっとくしてもらえるのではないかと考えます。学習法、指導法は、二つ挙げます。どちらがよいか、あるいは関係詞などを独立して学ぶ必要があるか、も含めみなさんに考えてもらいたいと思います。

To be continued

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練習問題の答え:以下の日本語の語列を英語にせよ。

(1) 青い花: a blue flower / a flower which (=that) is blue

(2) 庭に咲いている花: a flower which is blooming in my garden

(3) 昨年植えられた花: a flower which (=that) was planted last year


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