「こらこら吐き出すな。手ぇ洗ってないってのはギャグだ。どうも、最近の若い子はギャグを理解できないから困る」
そんなん理解できるか。せっかくのおにぎりがなんだかバッチイ感じがするじゃんか。
「じゃあ、子猫ちゃんの話の続きをしよう」
まだ続けんのか。
「次は、野良猫について考えてみよう。野良猫って近所迷惑じゃなかろうか?」
「えーと、どのように?」
「せっかく出した生ゴミの袋をひっちゃぶいて生ゴミを散乱させた上に、あちこちに糞をして回る!」
それは、たしかに近所迷惑だ。
「それへの防御手段が、水入りのペット・ボトルしかないご近所の苦悩は計り知れない。敵は神出鬼没であたまの隙間さえあればどこにでも勝手気ままに侵入して、そのツメで破き、その牙で食い、どこにでも糞をする! これを暴挙と言わずして何を暴挙と言うべきか!」
そんくらい多めに見てやんなよと思うけど。
「破きつくし、食いつくし、糞しつくす! これぞ現代によみがえった三光作戦! 嗚呼、今や我が帝都は野良猫により陵辱されかけている。それに、対抗すべき手段が水入りのペット・ボトルのみとは! 竹槍で B29 を突くようなものだ!」
そこまでの問題かぁ?
私は死神に言った。
「でも、猫ってペット・ボトルのキラキラが嫌いなんでしょ?」
「キラキラって曇りの日には効果ないだろ。カラスよけの CD も疑問だと思わないか。だいたいカラスは光る物が好きだともいうぜ。キラキラしたもんで動物の侵入を防げるなんて誰が思いついたんだ」
「やっぱ、思いつきなんだ?」
「うん、人間の行動のたいていは思いつきだ」