質問されちゃったよ。
めんどくさいな。「わかりません」ですましちゃおうか。
でも、この質問の答えは考えれば解りそうだ。
まず、死神は『死の前では生命は平等である』と言っているだけで、『平等に生命は尊い』なんて事は一言も言っていない。
むしろ、死神の言いたい事は逆だ。『どの命も虫けらと同価値である』というのが死神の言う『死の前では生命は平等である』という言葉の本意だ。
「ようするに、『死』の前ではミジンコも子猫も同等な命であるということですよね?」
「そうだ!」
それならば、猫を可愛いという思いは単なるえこひいきって事になる。
ミジンコを可愛いと思って飼う人はあまりいないだろう。そもそも理科の実験でもなけりゃミジンコなんて飼わない。
「猫を可愛いと思うのは人間のエゴで、可愛くないミジンコだって生きていることに変わりない?」
「うん」
そうすると、虫を平気で殺せる人が、その一方で猫殺しを非難するのは単なるえこひいきって事になる。それが、死神の言う『生命のランクづけ』ってことだろう。そういうふうに考えるなら、須藤さんが良く語っていた『仏教』の教えが応用できる。
「猫を殺すのも、蚊取り線香をたくのも罪の重さに変わりないって事ですよね?」
「そうだ、そのとおりだ」
解けた。
「なら、結果が同じになる事の、罪の重さは同じです」
「そうだな」
死神は言う。
「お前はおそろしく頭がいいな」
いやいやそんなそれほどでも。
「その腹黒さに、その悪知恵が加わりゃ、怖い者なしで天下一の犯罪者になれる!」
いやいや犯罪者になるつもりはないから。