満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

「闇の守り人」と「夢の守り人」 作:上橋菜穂子

2008-05-02 | 本の紹介
冬ごもり~春先にかけて読書に邁進しておったので
ブログでのレビューが間に合っておらぬ
以前に紹介した「上橋菜穂子」さんの「守り人シリーズ」続きを読んだので
二冊一緒に紹介しちゃうのだ

「守り人シリーズ」は現在以下の本が出版されている

「精霊の守り人」 
これは以前に読んだレビューがあるので興味のある方は覗いてみてくれ

ハードカバー版でコレだけのシリーズが続いている
『闇の守り人』
『夢の守り人』
『虚空の旅人』
『神の守り人 来訪編』
『神の守り人 帰還編』
『蒼路の旅人』
『天と地の守り人 第一部』
『天と地の守り人 第二部』
『天と地の守り人 第三部』
『流れ行く者 守り人短編集』

軽装版では「神の守り人」まで
文庫版では「夢の守り人」までが出版されている
私は文庫版で買っているので全部読めていない
あくまで…安い文庫版狙いである(笑)


前作で新ヨゴ皇国の第二王子チャグムを助ける為に活躍した
女用心棒の「バルサ」が自分の過去に決着を付けるために
生まれ故郷のカンバル王国へ戻る旅の話である

幼い頃に何故バルサは故郷を離れねばならなかったのか?
何故愛する父親と離れ養父であるジグロと一緒に
追っ手から逃れ、追っ手を殺しながら旅をし続けなければならなかったのか
どうして女だてらに用心棒稼業になったのか?など
一作目で異彩を放っていた「バルサ」の過去が明らかになる話である

カンバル王国は貧しい土地にある
しかし、カンバル王国の地底深くに住まう
「山の王」との契約により数十年に一度、
宝石であるルイシャ(青光石)を受け取る事が出来るのである
この宝石があれば、国が潤う
だが宝石を受け取るためには、ある過酷な儀式がある
それは「舞い手」と呼ばれる優れた槍の達人のみが行える儀式であった

25年ぶりに生まれ故郷へ帰ったバルサを歯車にし
今、30数年ぶりに儀式への扉が開かれる

ジグロのいまわの際の言葉が胸を突く

「人を助けるのは、人を殺すより難しい」…

バルサは養父ジグロの為、生まれ故郷の人々の為
そして何より自身の為に絡み合った過去の糸を解きほぐす


一作目の「精霊の守り人」出演のメインキャラが出演する「夢の守り人」
女だてらの用心棒稼業に勤しむバルサ
子供の頃よりバルサを助け、力では負けるものの
心の支えとなってきた男、薬師・呪術師見習いのタンダ
二人の間に淡い恋のようなモノが生まれたとしても、おかしくはない
ただ、現代でも通じるが…女も男も少々歳を重ねると恋に臆病になる

生まれ故郷を無事に出発したバルサは
心のよりどころであるタンダに会いたくなった
一目散にタンダの居る「新ヨゴ皇国」へ向かったバルサを待ち受けて居たのは
眠りから目覚めないタンダであった

人が住まう世界とは異なった世界で
人の夢を食らって育つ「花」がある
幸せだったあの頃の夢、現実からはかけ離れたありえない幸せな夢
そんな幸せに満ち溢れた夢に捕らわれた人々は
夢の世界から目覚めることが出来なくなる
誰しも厳しい現実を生きるより
幸せな夢を見続けた方が楽な時期がある

夢と現実の世界の均衡が崩れた原因は
一人の吟遊詩人の男、素晴らしい声を持つ歌い手であった

姪が夢に捕らわれ助けようと見習い呪術師のタンダは
姪の夢の世界へ飛び込んだが、罠にハマって体を乗っ取られてしまう
体を乗っ取られたタンダは歌い手の男を必要に追い続ける
このままではタンダも夢に捕らわれた人々も命が危うい

タンダの師匠であるトロガイの力を借り
バルサはタンダや夢に捕らわれた人々を無事救い出す事が出来るのだろうか

「どうしたらいいかわからないわかれ道にやってきたら
どっちに歩んでいくほうが<好きな自分>かを考えるんだ」

体は乗っ取られても心は捕られていないタンダが発した言葉は深い

人は心で何が正しく、何が間違っているのかを知っている
ただ、色々な事を頭で考え過ぎて何を望んでいるのかを見失うのである
バルサと体力勝負をしても負けてしまうタンダであるが
心の強さは遥かにバルサを凌ぐ

また今回は
若かりし頃のタンダの師匠トロガイの乙女心が描かれており
私にとって好きな一冊となった

以上、二冊続けてのレビューであるが
どちらの出来も良いわ~~~~
先々、文庫化されるシリーズが楽しみである

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