満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

長生き競争 作:黒野伸一

2015-02-25 | 本の紹介


初版:2008年。今から7年前。
ドラマにもなった作品だから、「あっ、コレ知ってる!」と思う御仁も多かろう。

黒野作品「万寿子さんの庭」←以前の記事はコチラ
が面白かったので、つい触手が動いた。

聡、弘、明男、正輝、博夫、規子 男5人に女1人。全員76歳。
6人は小学校時代の同級生だ。
76歳といえば20代から見ればジジイにババアだと思いがちだが、
大病さえしなければ比較的元気なのだ。そこそこ金も持っているし暇もある。

そこである日開かれた同窓会でマッチョで元気な明男が能天気な提案をする。
「この中で誰が一番長生きをするかって賭けをしよう」
「みんなで掛金を供託し最後に生き残ったやつが総取りする」

歳を重ねるごとに同じような年代が集まると語られる話の内容も違ってくる。
若い頃は異性の話、それから仕事、上司、結婚、子供の成長と流れ
中年を過ぎると親の介護に加え、健康の話が多くなっていく。
ともすれば不健康自慢の大会のようになってしまう時すらある。

誰それが結婚したとか、離婚したとかの話が
気がつけば誰それが死んだとか、誰それが入院したとか…。

本書でも語られていたのだが「健康寿命」なるものがあるらしい。
女性75歳 男性71歳。平均寿命に比べると随分と若い。
それを無事にクリアし75歳~80歳までの5年間が一番危ないらしい。
危険地帯を乗り越え80歳になるとまたしばらくは大丈夫だそうな。

で、フっと気がつけば自分たちは全員76歳だ。
一番危ない75歳から80歳に突入している。
明日の朝、無事に目覚める事が出来るかどうかも解らん状態なのに
生き残りを掛けて賭けをしようとしている。
言いだしっぺの明男は日頃の鍛錬に自信があるのか総取りは「オレだ」みたいな顔をしている。

とここで老人特有の頑固さと意地が、少量飲んだ酒の勢いで芽をふき
賭け金総額五千七百万円のゲームがスタートした。
実際は金持ちの博夫が皆の元気の元になればと、多額な金額を提供したのだがの。

一見、能天気さとバカバカしさが混同したような賭けだが
危険もはらんでいる。
普通友人同士なら誰かが病気になった時に心配するもんだが
そこに金が絡むと、果たして本当に心から心配出来るもんか?と
でも、そんな話にはならなかった。
そこが70代。だから70代なのかもしれん。

聡の今年41歳になる独身娘の智子。
彼女の話は良かった。単なるバカな若作りのスネかじり娘かと思ったら違った。
社内リストラを敢行し、アホでどうしようもない上司を歯牙にもかけず
パッと自らの首を切り会社を辞める潔さ。
子供の頃、戦争を体験した聡たち老人には適わないのかもしれないけれど
ちゃんと今の時代を自分なりに戦っているのだなっと感じた。
私もつい最近、妖怪会社を退職したのでとても実感できた。
そうだった。私も日々戦ってた(笑)

小学生の頃、70代のバー様に「死ぬのは怖くないの?」と聞いた事がある。
バー様曰く「信心があるから怖くなんかね~」
バー様の仏壇には色んな神さまが雑居状態で、何にでも手を合わせていた。
幽霊も妖怪もなんでも信じていた。
「怖くない証拠にワシが死んだら幽霊になって会いにいくよ」っと言っておったが…
結局、会いに来なかった。
会いたかった気持ち半分。本当に会いに来たら怖い気持ち半分。
でも、ちょっと期待して待ってた自分が居た。

30代の頃、義母の看病で病院に寝泊りしたことがある。
ガン病棟だったもんで10ほどある病室に、毎晩順番のようにすすり泣きが聞こえた。
ここに入ると皆さん十日は持たない。それでも義母はひと月ほど頑張った。
この時ほど死を身近に感じたことは無かったけれど
今思えばまだまだ他人ごとだったのかもしれん。

生まれたからには死なねばならない。これは命を得たモノの宿命だろう。
この本は、おちゃらけた題名ほどお笑い話ではないので、重いと感じる人も多いかもしれん。
でも、本当に誰もが通る道なのだ。
だから手にとって読んでみた。
本当に勉強になった。私もこんな風に70代以降をすごせたらな~っと思った(笑)

もしよければ読んでみるべし


しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 作:泡坂妻夫

2012-09-26 | 本の紹介


本と言えばビジネス本・ハウツー本しか読まない夫が、雑誌の切り抜きを持って
「この本が読みたい」っと珍しくも言った本。

泡坂妻夫氏の本は若い頃に何冊か読んだ事があるが
この本はまったく知らんかった。
夫が読み終わった後に読もうと思えば、何日かかるか解らんので
先に読ませて頂いた(3時間で読めた…笑)

が、泡坂氏の作品にしては…文章的に不可思議な部分が多く
スラスラと言葉が流れない。
新潮文庫から出版されているのに、担当者は何も言わなかったのか?
「なんでじゃろう?」「おかしいぞ」っと思いつつも最後まで読むと…

アッと驚く結末があった!

久しぶりに鳥肌が立った(笑)

とはいえ、内容で鳥肌が立った訳ではない。
昔私は、雑誌の編集作業していたことがあるので、その方面で驚いたのである。
アマチュアマジシャンとして名をはせている泡坂氏らしいトリックであった。

いや~。泡坂先生。お疲れさまでした。

思わずそんな言葉が出てしもうた(アハハハハハハ)

夫がこの本を読み出してから2週間。やっと半分まで読んだようだ。
スラスラと流れない言葉が収録されているので、手間取っているのか?
果たして、このトリックに気が付く事が…彼は出来るであろうか?
(ネット上でこのトリックが解らないっと書いている人も居たからの~)
とても楽しみである(笑)


■ストーリー
とっても胡散臭い心霊師、及びトリック暴露師のヨギガンジーは…
ある日ひょんな事から新興宗教2代目選びのお家騒動に巻き込まれる。
次々と消える信者たち。その行方を探るうちに
なんと教祖に見込まれ2代目を決める大事な儀式を取り仕切ることになる。
布教のために作られた本、「しあわせの書」に隠された謎は!?

内容的にはミステリーの中でも、そんなに特筆する部分はないと思う。
登場人物もあまり魅力的とは言えんしの~(笑)

早く読める人なら1時間程度で読破出来る作品なので
ちょっと別な意味で感動してみたい人にはおススメ。
特に出張へ行く時なのどに買い
新幹線の中で読破し
夜にお姉ちゃんの居る場所で飲む時などに重宝すると思う(アハハハハ)

マジック商品として買うとこの値段では買えないのでお得です(笑)

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち

2012-04-02 | 本の紹介
4月になりました! 春だぞ。春。
っと思ってウキウキしておりますが…横浜地方は相変わらず寒いです。

ここのところ、当ブログは、本や映画の話が少なくなっておりますが
本もマンガも沢山読んでますし、映画も沢山見ています。
自宅のパソコンがイマイチ調子が悪いもんで、レビューまで書けない状況です。
後でっと思うとレビューというものは新鮮さが失われる…っというか
忘れてしまうというか(アハハハハハ)←単なる言い訳ですだ(笑)

さて、それでは久々の本のレビューです。



最近思うに、これはマンガか?っと思うような表紙の本が多いですの。
この本のイラストは「越島はぐ」さん。

ちょっとイラストが綺麗だし、可愛くて美人で胸も大きいし…
な~んて思ってたら…買っていた。それも2巻一緒に。。(笑)

鎌倉の片隅でひっそりと営業している古本屋「ビブリア古書堂」。
そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。
残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。
接客業を営む者として心配になる女性だった。
だが、古書の知識は並大抵ではない。
人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、
いわくつきの古書が持ち込まれることも。
彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。
これは“古書と秘密”の物語。※「BOOK」データベースより

私自身は本を膨大に読んでいる方だと思うのだが
残念なことに知識は薄い(笑)
読んでいく端から内容を忘れて行くもんで、知識としては残らんのだ(ハハハハ)

そんな私とは正反対で、本の内容どころか、作者やその背景から
文章までも一語一句シッカリ覚えてしまうのが、このビブリア古書堂の栞子さん。
で、若くて美人で胸が大きい(笑)

祖母が残した夏目漱石の「漱石全集」。
子供の頃に触ると異常なほどに祖母に怒られた記憶がある。
そんな記憶がトラウマとなり、お陰で本が読めなくなった五浦大輔。
「漱石全集 第8巻」そこに記された献呈署名と、ビブリア古書店の印を見つけた彼は
全集を持って古書店を訪れたが…店主の栞子さんは入院中だという。
亡くなった祖母が持っていた古い本に秘められた秘密とは?
謎を解き明かす栞子さんに、惚れる五浦大輔の今後は~(笑)

■ビブリア古書堂の事件手帖(第一巻) 栞子さんと奇妙な客人たち
夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)
小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)
ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)
太宰治『晩年』(砂子屋書房)

■ビブリア古書堂の事件手帖(第二巻) 栞子さんと謎めく日常
坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋)
アントニイ・バージェス『時計仕掛けのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)
福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)
足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)

ネットによると第三巻も出ているらしい。
著作権などの関係があるのか…取り上げている作品が古すぎて良く解らん。
とりあえず作品の内容が解らなくても謎解きにはついて行ける。
っというか、それほど軽いタッチの謎解きだと思う。
ただし、これが深くて小難しい謎解きなら、ついて行けんがの~。

作者本人も「あとがき」にて、本には詳しくないっと述べている。

とはいえ、んじゃ面白くないのか?っと問われればオモシロイっと答えると思う。
多分、大多数の人が表紙絵に惹かれて買ったかと思うが
そこそこ内容が面白いということと
主人公栞子さん自身の謎と五浦君との今後が気になり続けて買う人も多いのだろう

もし、ライトノベル系が好きで読むのなら少々違う感じがするし
推理小説が好きで読むのなら、物足りないだろう。
また恋愛小説にしてはピンとこないし…(笑)

色々な部分をモーラしているとも言えるし、全部が中途半端とも言える。
でも、なんかオモロイ(アハハハハ)

あまりに売れている本らしいので、何故?っと考えながら読むのも
また面白いかもしれん。
ま、だいたいの人は表紙に惚れて買ったんじゃないかと私は思うがの(笑)

本好きは書店で働くべからず。ってな名言があったかどうか?

私は小学生の頃、大きくなったら何になりたい?っと聞かれ
宝探し(今ならトレジャーハンター)か本屋さんっと答えていた。
中学生の頃は、作家かマンガ家。
高校生になった頃には、図書館司書と言っていた(笑)

結局は本や雑誌を作る製作の仕事についたので
どうしても本にまつわる仕事がしたかったんだと思う。

今、とても無理な話だとは思うのだけれど
北鎌倉のこんな古書店で働けたら、それが一番の私の理想のような気がする。
本好きなら誰もが一度は思い描いた夢
「本に囲まれて暮らしたい~」ってなアレである。

鎌倉の片隅でひっそりと営業している古本屋「ビブリア古書堂」。
そこの店主は古本屋のイメージにピッタリなオバちゃんである。
残念なのは、ペチャパイで人を観察するのが好きだと言うこと。
接客業を営む者としては…。
まあまあなのだが、古書の知識は殆どない。
人に対しても、本に対しても人一倍の情熱を燃やすオバちゃんのもとには、
いわくつきの古書が持ち込まれることも。
オバちゃんは古書にまつわる謎と秘密を、
まるで見てきたかのように勝手に解き明かしていくのだが…
はて…? 当たっているかどうか?
これは“古書と秘密とオバちゃん”の物語。※「満天」データベースより

で、ペチャパイなオバちゃんの絵が表紙となっていてもな~
多分、誰も買わないだろうな~~(ガハハハハハ)

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バーにかかってきた電話:東直己

2011-08-09 | 本の紹介


いつものバーで、いつものように酒を呑んでいた「俺」は、
見知らぬ女から、電話で奇妙な依頼を受けた。
伝言を届け相手の反応を観察してほしいという。
疑問を感じながらも依頼を果したのだが…
その帰り道、何者かによって殺されそうになった。
そして、ひとり調査を続けた「俺」が知ったのは
依頼人と同じ名前の女が、地上げ放火ですでに殺されていたことだった。

東直己という人の本を、まったく初めて読んだ。
ところがこの「バーにかかってきた電話」を読んだ後、とても感動してしまい
以下のシリーズを一気に全巻読んでしもうた(ハハハハ)

■ススキノ探偵シリーズ
「探偵はバーにいる」
「バーにかかってきた電話」
「消えた少年」
「向う端にすわった男」
「探偵はひとりぼっち」
「探偵は吹雪の果てに」
「駆けてきた少女」
「ライト・グッドバイ」
「探偵、暁に走る」
「旧友は春に帰る」
「半端者」

実は最初の取っ掛かりは、「水曜どうでしょう」でおなじみの大泉洋さんが
「この本の映画化で主演される」っという話を聞いたので…
「ほ~。彼が主演なのかい?」っと興味を持って読んだのが始まりなんどす。

面白いことに…読めば読むほど本の主人公と大泉さんとのキャラが離れていき…
いったいどんな内容の映画になるんだ?っと違った意味での興味が湧いたくらいです。
(すみません。大泉さん。何時も応援していますです。ハハハハハ)

高学歴の主人公「俺」が、頭が良すぎる弊害か、平凡な人生の先を見越してしまい
社会の組織の中で働くのを嫌い、すすきのを中心に便利屋稼業を営んでいる。

私から見れば、何の組織にも入っていない便利屋稼業の方が
よっぽど大変な人生じゃないかと思うんだが(笑)
ま、主人公の「俺」は、朝寝をしてサウナに入り喫茶店で朝食を取り
賭けごとで金をソコソコ儲け、いつものバーを皮切りに
いつもの「すすきの」に点在する店を飲みまわり、気が付くと寝床に居たってな生活が
自分に一番合っているっと思っているのだから仕方が無い(笑)

この本を読みながら思い出したのは、探偵物語の松田優作さん。
多分に意識しているように感じる。
あのハチャメチャさにインテリの塩味を効かせた感じ…が、この主人公かの~
最後に探偵物語と同じく、撃たれて死ぬんじゃないか?っと思ったが
本のシリーズでは年々歳を取りながらも、まだ生きている(ハハハハハ)

ところで私がこの本の何処に「とても感動」をしたのかと言うと…
私が結婚前に謳歌していたあの札幌が、実に生き生きと描かれていたからである。

「懐かしい~~」

っと毎度、毎度、叫びながら読んでおりやした(アハハハハハ)

ウィキ情報ですが、東さんは1956年生まれ
つまり私が高校一年の時に彼が三年生ってな年齢差での(笑)
また内地(本州)を嫌い、とことん北海道が好きってな気質がアリアリで
「ああ~。私もそうであった」ってな表記が実に多い

このシリーズは「俺」という一人称でズーっと進む話なので
この俺を作者が自分自身と切り離して書くのが難しいと思う
なのでこの本の「俺」は、作者自身をも反映しているんじゃないかな?

シリーズが進むにつれて、私が結婚によって内地へ出た後の札幌の変貌が
様々な問題点を含みながら描かれている。
「そうか…今は昔と違って、こんな状況なのか」っとシミジミ思った。

小説なので真実の部分は解らないが…
札幌が低迷している雰囲気は、時々実家へ帰る程度の私にも感じる。
本に書かれている背景が、ある程度の真実を映し出しているとしたら
その方が札幌を離れ地方に居を構えている私には「なるほど」っと思えた。

私が初めて親の監視の網を潜り抜け
札幌の大繁華街ススキノに足を踏み入れたのは、高校3年生の卒業間近な時であった。
この本の主人公は「北海道大学」へ席を置きながら家庭教師なんぞをし
すすきので遊び始めた頃である。

札幌で「北海道大学」といえば、全ての親が黙り込むような聖地である。
(多分…今もそうであろうと思う)
私も中学生の時に「北海道大学」へ通う学生が家庭教師として付き
それだけで親が安心している姿を見て笑ったもんである

当時私は、部活に重きを置いた学生生活を送っていたので
「夜のススキノ」って所へ足を踏み入れたことが、それまで全くなかった。
受験の為に部活を引退し、卒業まで間があった3年生達は
「少しハメを外そうか」っと算段し、「夜のススキノ」へ遊びに行く事を決行した。

行った場所は、当時若者に大人気だったディスコ「マハラジャ」(笑)
ドキドキしながら入り、ドキドキしながら踊り、
それでも可愛いもんで8時には店を出た(アハハハハハ)
気分が高揚していたもんで、誰が言い出したのか「お茶でも飲もう」ってな話となり
よくは知らないススキノの、とある一軒の店のドアを押した。

そこはなんと…ホストクラブ。であった~(笑)

幸いなことに思ったよりも良い店で、一目で高校生だとバレる面々に
「こんな時間までススキノで遊んでいてはダメ」っと諭してくれ
お客が他に居なかったのが幸いしたのか、タダでジュースを出してくれ
「まっすぐ家に帰るんだよ」っと送り出してくれた。
(総勢10名がホストクラブでジュースを飲んだのだ…相当な料金だと思う)

初めての「すすきの探訪」は、若者人気のディスコで遊んだ楽しさより
ホスト達の温かい人情味溢れる接待に感動した一夜となった。
それぞれが家路に着いたのは10時前であったが…それでも親から先生にバレ
その後、キツ~イお仕置きを受けた面々であった。

そんな人情ある店が、ススキノから消えているとこの本では言う。
20年近く夜のススキノへ遊びに行ったことは無いが、もしそうなら寂しい。

各巻を追うごとに時代と時の流れがキチンと表現されているので
札幌生まれで現在地方に住んでいる人には、とても懐かしく思える本だと思う。
とても面白かった~

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ブランケット・キャッツ:重松清

2011-06-10 | 本の紹介


う~。なんか最近、gooのブログ投稿欄が変わってしもうて使い方がイマイチ(笑)
どうにも写真サイズが旨くいかん。。。デカイの~(ハハハハハ)

高い料金を出して、2泊3日で猫をレンタルする話の短編集なのだが
相手は猫だぞ。レンタルなんぞ無理じゃろうっと思ったが、
猫が話題の本に目がないので読んでみた(笑)

犬は人に付くが、猫は家に付くと言われている。
そこを利用し、猫には家ではなくブランケット(毛布)に付いてもらいレンタルするらしい。

我等夫婦は、新婚旅行でオーストラリアへ行ったのだが
そこで「コアラを抱っこしての撮影会」ってのに参加させられた。
飼育員の説明によると、「コアラはとても気の小さい動物」だそうで
人に抱かれると緊張のあまり尿もれを起したり、寿命を縮めたりするのだっと言い切っていた

だったらこんな撮影会なんぞ
しなけりゃエエんじゃないかい?


っと誰もが心の中で思ったが、既にツアー金額の中に組み込まれたイベントだったし
オーストラリアくんだりまで来て、コアラと接触しないのもなんだし
ここでコアラの寿命云々を論議しても始まらないので
大人しく飼育員の指示に従い、誰がコアラの尿を浴びるのか?っとドキドキしながら抱いた。

結局、誰もコアラの尿は浴びなかったし
コアラよりも、抱いていた人間のほうがよほど緊張したイベントだったが
コアラに触れられたし抱けたという満足感もシッカリあったのはいなめない。

このように、多分、動物にとって悪影響のある行為だろうな・・・っと思っても
人はそれを独自の満足感のために、実行することがままある。

そんな気持ちを持ちながら読んだのだが、さすが重松氏。
読んでいるうちに、それぞれレンタルされる側の猫も
結構、楽しんでいるのでは?ってな表現が見える

子供が居ない夫婦が猫をレンタルしてみたが、二人っきりの生活に突然現れた異物に
夫婦は戸惑いを隠せなくなる話や
祖母の愛していた死んだ猫と似た猫をレンタルした家族に
いじめっ子が借りた猫
など全7作品が収録されている。

猫好きにむけて…とは少しいえない作品だけれど
こんな猫なら、一緒に暮らしてみたいなっと思う猫には出会える作品かと思う。

レンタルされた猫が拠り所としていたブランケットが消えてしまう。
大切なものを失おうとしている娘が、猫が大切なものを失った時にどうするかを試したのだ
ひたすらパニックに陥った猫を見て娘の母が言う

「猫は大切なものを失ったら、困ることしかできないけど
人間は違うの。
大切なものがなくなっても、それを思い出にして
また新しい大切なものを見つけることができるし、
勝手に見つけちゃうものなのよ、人間は」

シュールで淋しい言葉だが、ウソではない。
でも年代によるかもしれない。また新しい何かを見つけなくても
思い出だけで生きていける場合もあるんじゃないかな。

今回の震災で大切なものを失った沢山の人々が居るが
新しい大切なものを見つけることが、そんなに必要なことだとは私は思わない。
大事なのは、失った大切なものに恥じないように生きることじゃないかな

ところで、震災と言えば…相変わらず日本の政治はトホホじゃの~
この未曽有の大震災に権力争いをしている場合じゃないだろうに。
なぜ一丸となって戦わん?

国民は今、節電を心がけたりしながら自分が出来ることを着々と進めておるぞ
誰が悪いと追及している場合か?
言わしてもらえば、いざって時の明確なマニュアルすら作っていなかった
前政権の自民党にも問題があっただろう。
全ての根源に前政権の長い統治の末の汚泥がこびりついている。
自分たちが政権を握っていた時の野党と同じことをやって、なにが楽しい?
時と場合を考えよ!

結局…日本の政治家は無能で、役人が国を動かしているんだの
どうせ無能なら、せめて皆で力を合わせ一つでもよいから何か結果を出してみろ
たまたま違う政党が政権を握っておったとしても
種を蒔いて、それを放置し、ここまで雑草をはびこらせたのは自民党だ。
それを真摯に受け止めて、権力闘争を二の次にし
新たな日本を創る姿勢を見せない限り、自民党にも未来はない。

お願いだ。負けない日本を創るために、国民・政治家・役人・企業、皆で力を合わせ
この難局をなんとしても乗り越えよう。
未来を担う子供たちの為に。

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万寿子さんの庭:黒野伸一

2011-04-19 | 本の紹介


ちと…本書の紹介画像が大きかったか?(笑)

右目の斜視にコンプレックスを抱く20歳の京子が
就職を機に引越した先で、変わりものの78歳万寿子さんと出会う。

始め、万寿子さんから様々なイヤガラセを受け、信じられない状況となるのだが
負けじと万寿子さんと対峙しているうちに、二人の間に年齢という枠を超えた友情が芽生える

「思いやり」とか、「都会で暮らす淋しい二人」とか
そんな関係でない所に、とても好感が持てた。

昔からそうなのだが、少々年配のご婦人に向かって若者は「お母さん」と呼ぶことが多い。
まったくの他人なのに、話すキッカケを作るための愛想の良い表現で使うこの言葉は
意外と年配のご婦人には嫌われている言葉なのだ。

他にも「お父さん」だの「おばあちゃん」だの「おじいちゃん」だの。
「私には、ちゃんとした名前があるの!」
「私はアナタの
お母さんでもおばあちゃんでもないの!」


そう心の中で思っている紳士淑女は、若い人が思っている数より相当多い。
かくいう私も20歳ころ、50歳前後の方に「お母さん」っと言い、とても怒られた経験がある。
その後、そういう呼称で呼ぶことを辞め、
そして私も50代となったが、今なら私を怒った彼女の気持ちが良く解る。
ただ年齢を重ねただけで、個人ではなく呼称で呼ばれるのは確かに我慢ならん(笑)

でも結局はそんな事も、諦めて受け入れていってしまうのだろうと思っていたのだが
本書の万寿子さんは、78歳となってもハッキリと嫌なモノは嫌!っと言える女性であった。
だから自分より周りが、見かけだけで「おばあちゃん」っと呼ぶのも我慢ならないし
手助けなんかもしてほしくない。
まだまだ自分の事は自分で出来るのだから、放っておいて欲しいと思っていたのだ。

そんな時に20歳の京子が現れる。
他の人と同じく年寄り扱いしていたが、ズケズケと本当の事を言ってやったら
なんと同等の立場で反目してきた(笑)
これが万寿子さんにとって、どれだけ嬉しく、そして楽しい出来事だったか

私も既にそんな淋しい気持ちを経験している。
10歳か20歳かしか違わないのに、タメ口で話してくれるような人が居なくなってきた
ま、そりゃ~そうか。とも思うが…少々淋しい(笑)

もともと私自身が傍若無人な怖いもの知らずな性格だったもので
10歳や20歳違ったからといって、一線を引いたりせずに年上との交流を保っていた
月日が流れ私が歳を取り、逆の立場になった時に
そういう傍若無人な後輩が、最近は少なくなってきているのがなんとも悲しい(笑)
そうやって考えてみれば、私は年上には可なり好かれていたな~っと思う。
ある意味、貴重種だったのかもしれん(アハハハハハ)

よく「異業種交流」は楽しいし勉強になると聞くが
「異年代」ってのも同じく楽しいし勉強になるんだがの~~(笑)

さてこの物語は最後には、ちょっと重たい介護の話へと発展する。
ただ家族が親を介護したり、介護士がお金を貰って介護するのとも違う
友情から端を発した介護の姿が見られる。
それが良いとか悪いとかではなく、そうしたいから自然とそうなった介護。
ほとんどの人が「無理」と思ってしまうだろうと思うのだが
なぜか気持ちが解る。そうは出来ないけれど、とても気持ちが解る。

万寿子さん、幸せだな~
京子ちゃんも、幸せだ。

作者の黒野さん、私と同じ歳の男性だ。どうしてこういう話が書けたんだろう
読み始めたら止まらない。機会があれば是非、一読あれ~



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妖怪アパート

2011-04-05 | 本の紹介


主人公の稲葉夕士は中学一年の時に両親を交通事故で亡くす。
その後、夕士は叔父の家で暮らすこととなるが、同じ歳の娘が居る家庭では馴染めない。
高校は学生寮のある学校を選び、叔父の家から出る決意をする。
しかし夕士が入学する前に学生寮が全焼してしまう。
叔父の家から学校へ通えないこともないのだが、叔父の家を出たい夕士は
アルバイトで稼いだお金を元に学校の近所でアパート探して回る。
だがなかなか高校生の夕士が借りられるような安い物件はなかった。

そんなとき、「前田不動産」に出会い「寿荘」という賄い付きの格安物件を紹介される。
ところがそこは…ちょっと不思議な「妖怪アパート」であった。

妖怪アパートの大家は卵鬼神という巨大タマゴに小さな目鼻のついた御仁だし
一見普通のサラリーマンのように見える佐藤は、実は人間に憧れている妖怪だったり
いつも庭掃除している妖怪、玄関で挨拶する妖怪、掃除が趣味な妖怪など、ちょっと不思議な妖怪たちに
親に虐待され死んでしまった子供の幽霊「クリちゃん」、クリを守る犬の幽霊シロ
賄い担当だが手だけの幽霊「るり子」さんなど、成仏出来ずこの世をさまよう幽霊たち
それに本当に人間なんですか?っと思わず聞きたくなるような人間が数名居住している

ここは一見普通のアパートのように見えるが
実は妖怪&幽霊&人間の3世代同居のアパートなのであった~(笑)

本作は単行本で1~10巻で完了。
文庫本ではまだ1~5巻までしか出ていない。
文庫で購入している私は続きが読みたくてウズウズしておる。

「自分ってものをしっかり作ることができなかった人間は、
なにがあっても自分に自信が持てないんだよ」


私は現在、妖怪だらけの会社へ通っているもんで…(笑)
時々何が真実なのか見えなくなる時がある。
なんでそんな些細なことで心を閉ざしたり、暴力的な行動に出たりするのか解らず
どうにも頭を悩ませていた。

そんな時にこの本の上記フレーズを読み、「ああ、そうか」っと頭の霧が晴れた気がした。
彼等は自分に自信が持てないまま成長し、学校生活より広い社会に出て
周りを怖いと思っているのかもしれん。
だから必要以上に自分を誇示し、受け入れられないと人を呪い、
悪い結果を全て他人のせいにしてしまっているのかもしれんの。

「絶対に自分は間違ってない。間違っているのは他人の方だ」っと叫ぶ彼等に
どうしてそこまで自分に自信が持てるのかが不思議だったのだが
裏返せば逆で、自分に自信がなく自分と向き合うのが怖いので、
滅多やたらと、吠えている可能性が高いのだろう。

根は素直で良い子達なのだが、これといった会話もしていないのに
印象などで簡単に、自分を認めてくれる人とそうでない人に分けてしまう。

仕事で彼らの成長を促すために、ある程度のところで彼らに任せる上司などに
「仕事を自分に押し付けた」と言ってしまう。
解らないなら解らない。出来ないのなら出来ないと上司に報告し
意見を聞き、どうしたら良いのかを相談することが出来ないらしい。

ほんの少し、自己を見つめ視野を広げれば、もっと大切な事が目に入るのに。

悲しいことに彼等は類は友を呼ぶで、小さいながらも団結し
社長の覚えが目出度いことを笠に着て、「オレらの一言でお前なんぞ辞めさせられんだ!」なんぞと
空虚な言葉を発してしまった。

この先彼等が歳を取り、万が一にも自分を見つめ、自分の小ささに気付いたときに
この言葉は、一生自身のアホさ加減を苛む言葉となるだろうに。っと思ったが…
還暦過ぎた夫曰く、若い頃に自分を作れなかった者は一生無理。と切り捨てる
そして、周りの誰もが同じことを言っていた。

30代後半、まだまだ若い彼等に何とかチャンスを与えたかったので
少し接触して…色々と注意をしてしまい…なぜか…彼らの矛先が私に来てしまった(笑)
「満天さんって…性格悪いっす」なんぞと社長へ進言したそうな~(アハハハ)

「悲しいことは、悲しんでいいんだ。
腹が立ったら、怒っていいんだ。
それが、そうしたところでどうにもならなくても。
そうすることによって、それは
自分の世界の一部となって「生きる」んだ。」


なかなか嫌な出来事があっても、この年齢になると怒ることが出来ない。
悲しむことは出来るのだが、怒ったところで何にもならないことが解っているし
怒りは何も産まず、自身が惨めになるだけだろうっと思ってしまっていた。

「満天さんって…性格悪いっす」なんぞと言われ
社長が驚いて「そうなの?」っと各所へ確認したらしいことを聞き、怒れば良かったのだろうか?

ところが確認された人々が声を揃えて「満天さんは良い人で、悪いのはアイツ等」と言ってくれたらしい。
なんとも言えず、温かいものが胸に広がったが…重しのような悲しみが心に落ちて離れない。
本書の上記文章を読んだ時、自分が本当はどうしたかったのか?を少し考えた。

多分、何もしなければこういう事にはならなかったと思う。
私がいらぬおせっかいをしたがために、彼等はより墓穴を掘り、ますます孤立化してしまった。
年寄りの意見は聞いて従うもんだった、と思ったところで後の祭り。

その後も何事も無かったかのように接しているが、彼等の「してやったり」のニヤニヤが見える(笑)
まだ、自分達は有利な立場を保っていると、本気で思っているらしい・・・。
ここまで周りが見えない者に振り回された自分に少し腹がたち。
そしてやっぱり年寄りの言う通り、解ってはもらえなかった悲しみが重さを増す。

この出来事の少し前に会社に退職届けを出していたのだが…
会長を含め、大勢の方々から「ノンビリで良いから残って欲しい」と言われた。
本来ならスパっと辞める方向に気持ちは行っていたのだが
上記の件の決着がついていない(笑)
彼等には可哀相だが…やられっぱなしは、私の性に合わぬ。
(ガハハハハハハハ)

「満天さんって、性格悪いっす」…が、あながちウソではなかったってことを
身に染みて感じてもらうってのも、楽しいかもしれんの~~
本当の性格の悪さってもんがどんなもんか知るのも勉強のうちじゃろう(フフフフフ)

五月蝿いけれど言ってくれる人が居たってことが、どれだけ得がたいことか
彼らが気が付く時はくるのだろうか?

「腹が立ったら怒っていい」ってな言葉を読んで
本気でヤリ返さなかったから、彼らは増長しているのかもな~なんぞとも思う。
もちろん歳が歳なので、殴りあうわけにはいかんが…(ガハハハハ)
人間っぽく振舞っているけれど、実際私しゃ大妖かもね(ハハハハハ)

そんな私なら、この妖怪アパートに入居出来るだろうか?
老後はこんな賄い付きのアパートで暮らしたい、なんぞと思いながら読み終えた。
続きが早く読みたいの~っと思う(笑)

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天地明察 作:冲方 丁

2010-12-21 | 本の紹介
冲方 丁…うぶかたとう。1977年生まれ33歳。

「凄い作家が現れた!」



何時も遊んでもらっておる「すずどん」の「あなたが選ぶこの10年のベスト本」という記事で
チロっと書かれていたのがこの「天地明察」(笑)

少し前から本屋の平台に並ぶこの本を見ていたが、なにせ中身が
「江戸の算学」
江戸は好きだが数字は…っと躊躇してしまっていた(ハハハハハ)

こうしてブログを書いているので、満天さんって国語好き?と思う方も多いかと思うが
実はハッキリ・コッキリと答えの出る「算数」「数学」の方が、学科としては得意であった
ただし、式に当てはめバサバサと解答していく問題は得意だったが…
絡み合う図形のココは何センチ?とかいう証明問題は…私にとって最大の敵であったのだ
「ナゼに算数に文章っぽい部分が絡む?」
っという所に納得がいかず。。。たいがい答案用紙に一個か二個のるこの手の証明問題は…
完全に何時も無視しておった(ガハハハハハ)

ところがこの本。まったくの証明問題から入る。

もちろん、証明問題に一々引っかかる訳にはいかないのでスルー状態で読み進めるのだが
それでも大量のお釣りが手に入るほど、この本は面白い。

少し前に「ゆとり教育」で、円周率は「3」と教える。なんて話題があったが
江戸時代には既に円周率は3.14159…っと割り切れないと定義されておった。
地球は丸いということも明確に解っておったのだ
日本人は数学の世界において…退化しておるのか?とか思ってしまう(笑)

私としては近来稀に見るほどの面白さを感じたのだが
直木賞の選考委員から見れば、まだまだだという評価を得ているのが不思議だった

「ところどころ小説として納得いかない細部もあって…」
「せっかくの力量が空転したという印象が…」
「冒頭、話があちこちに飛び…」
「頭で作り出した域を出ていない…」
など、負の要素が多いらしい(ハハハハハ)

先にも述べたが作者の年齢が33歳と若い。
だからといって納得いかないほどの細部は、まったく気にならなかった
力量の空転どころか、芯にシッカリとした太い軸がある作品なので
話が飛び回ったとしても、ちゃんと読者はついていける
頭で読めばその域を出ていないように感じるかもしれないが、
この作品ばかりは熱い血で出来ているっと思う

主人公である「春海」が、初めての天地計測の旅に出る時に、一緒に同行した上司が居る
建部と伊藤という老人二人である。この老人二人が素晴らしい(笑)

※以下本文より

人には持って生まれた寿命がある。
だが、だからといって何かを始めるのに遅いということはない。
その証拠が、建部であり伊藤だった。
体力的にも精神的にも衰えてくる年齢にあって、
少年のような好奇心を抱き続け、挑む姿勢を棄てない。


この下りを読んで、自身を振り返らぬ中高年は居るだろうか?(笑)
もう歳だから…っと自分で終止符を打つほど情けないことはない。
そうは頭で解っていても、なかなか出来ないのが人の常である。
それをあえて若い人が書いた活字で読むと、身に染みてくるのはナゼだろうか

作者はPCゲームやアニメの制作にも携わっていたらしい。
どうりで、作風に不思議と映像がリンクする。

音を効果的に何度も登場させたり、
終盤から始まり、冒頭へ戻る書き方などはドラマの技法を彷彿させる
アニメとゲームで育った世代ならではの書き方が、とても新鮮に感じた。

これは、ドラマになる。(笑)

一人の男の人生を書いた話。大河にはもってこいだろう。狙っておるか?(笑)
彼なら脚本も書けるだろうから行けるかもしれん

大変面白い本なので、機会があれば…とは言わず
積極的に読むべし(アハハハハハ)

さて、本日12月21日16時40分から17時54分の間で
「皆既月食」が起こる
こういう月食が起こるよ~っと正確に言い当てるのも「正確な暦」のお陰なのだ
この本の主人公も、自分の作った暦の正しさを「日食」で証明する。
なにげなく「日食・月食」に触れていたが、それを的確に言い当てるのには
スーパーコンピュータ並みの計算力が必要なのだ。
それを主人公はソロバンで数値を導き出しておる(笑)

今晩、夜空を見上げ月が欠けゆくさまを見ながら
先人達の偉業をヒシヒシと感じるのも、ロマンがあって良いかもしれんぞ
ただし、寒いので暖かくして夜空を見上げるようにな
ロマンで風邪を引いては、アホらしいでの~(ガハハハハハ)

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だましゑ歌麿 おこう紅絵暦 作:高橋克彦

2010-12-09 | 本の紹介
 

「だましゑ歌麿」は高橋克彦原作で「週間文春」に1998年~1999年まで連載され
2009年9月にテレビドラマとして水谷豊主演で放映された。
テレビドラマを見たが…とても本まで読む気になるような作品ではなかった(ハハハ)

その後「おこう紅絵暦」なる本を手にし、読みたいなっと思ったが
「だましゑ歌麿」の続きの作品らしく、先にコチラを読まねば理解が半減するらしい。

結局、悩みに悩んだすえ、高橋克彦作品に今まで不発は無かったことを思いだし
2冊を買いこみ、読んでみることとした(笑)

内容はともかく、やっぱり大御所(笑) 安心して読めた。

彼の作品は、その殆どを読んでいる
SFから時代ものからホラーまで、多岐に渡る作品群を書いているので
人によっては、当たり外れのある作者だと思われている。
が、その筆の滑りは見事で、短編「記憶シリーズ」は絶品である。
ただ、色々な研究が交じり合い、時にトンデモナイ設定を組むので
読者は付いていけなくなる時がままある(笑)

中でも江戸の浮世絵の謎を解く「写楽殺人事件」「北斎殺人事件」「広重殺人事件」は
秀逸で彼の作品の中でも大好きであった。

今回は歌麿と北斎が出てくる。高橋克彦氏の得意分野であろう。

「だましゑ歌麿」では、
深川一帯が嵐による高波に襲われ、大勢の死者を出したのだが
その中に浮世絵師「喜多川歌麿」の妻がいた。
でも、どうやら高波で死んだのではないらしい。
誰かに連れ去られ無残にも殺害されたようだ。

たまたま歌麿は地方へ出かけていて居なかった。
当時は田沼意次の賄賂時代が終わりをつげ、倹約を押し薦める松平定信の時代。
定信に一番目を付けられていたのは…かくいう歌麿であった

バックが大きすぎるが、南町奉行所の同心・仙波は生真面目な性格ゆえに引き下がれない
定信の側には火附盗賊改の長谷川平蔵がいる
果たして真実を明るみに出すことが出来るのだろうか?

なかなか面白い話であったが、火附盗賊改の長谷川平蔵フリークな私にとって
彼が悪役? ってな部分が受け入れがたく、
きっと何処かで正義の味方になってくれるんじゃなかろうか?っと期待してしまうもんで
なんとも入りこみづらいお話であった(ハハハハハ)

も一個の「おこう紅絵暦」は、前作の主役、同心だった仙波の妻となった
元は柳橋の芸妓だった「おこう」が活躍するお話し。
まだ絵師として確立していない北斎(春朗)を使い事件を解決していくお話し。

どちらの本もそれなりに面白いが…高橋克彦氏らしい突飛な設定が邪魔をする(笑)

それに…2部作かと思っていた本書は「春朗合わせ鏡」なる作品が追加され
なんと3部作となっているらしい(コチラは北斎が主役らしいが…ハハハハ)

丁度、「お出かけガールズ」で深川に出かけた時に「だましゑ歌麿」を読んでいた。
ココが洪水に見舞われたのか…っと思い、不思議な感覚に浸った。

もともとは隅田川河口のデルタ地帯。洪水が起こったら一たまりもなかっただろう。
江戸は火事も多かったが洪水も多い。確か80数回起こっていたと思う。

どうやら先の事業仕分けで「スーパー堤防」とやらが廃止となった
200年に一度の大雨に備えての事業だが…
完成までに400年。。。総予算12兆円とは…いくらなんでもザッパ過ぎた(笑)

本気で民衆の命を守りたいと思うのなら、政府も本気にならねばならない。
200年に一度の大雨に備える事業が、400年も掛かってしまっては
2回も多大な被害に甘んじろっと言う訳だ、しかも12兆円も使って(笑)
もう、この感覚が民とはズレている。

ましてや、この廃止に意義を唱えた人の中に
この事業推進途中で河岸のプーさんが消えたのに…なんて言う人も居た。
良く考えて欲しい。根本的にこの二つは違うモノだ(笑)
瓢箪から駒を前面に出してグチる前に、その消えたプーさんは何処へ行ったんだ?
本当はソコん所をシッカリやらなくてはならない立場の人のこの発言に
呆れてしもうた。

どちらにしても、やるなら200年以内に作らねば意味がない。
また200年どころか千年経っても、遜色のない事業を構築しなければならない。
国がすべきこととはそういうことだろう。
江戸はそうやって民を必死で守った歴史を持っている。
治水も灌がいも、今見ても素晴らしい技術が溢れている。

なんてな。つい、深川を歩きながら洪水で亡くなった沢山の人へ思いを馳せ
私こそ、天にグチってしもうた。

ただこの作品もチト微妙であった(笑)
作者の気持ちは解るが、歯車がガチっとハマってないような…
そんな空回り感が随所に見えた。狙いどころは面白いのに、残念である。

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WILL 作:本多孝好

2010-11-15 | 本の紹介


以前に紹介した「MOMENT」の続編である
※「MOMENT」のレビューはコチラからどうぞ~

前作の「MOMENT」名詞で使うと「一瞬」または「瞬間」
今回の「WILL」名詞だと「意志」また「遺言」なんて意味もあるらしい。

前作は、主人公「神田」という大学生が、アルバイトの掃除夫として働いていた病院で
ヒョンな出来事から「余命わずか」な人々の、最後の願いを叶えることとなってしまい
それなりに粛々とだが、熱く要望を叶えようと奮闘している物語であった。

末期患者の最後の願いを叶える為に、彼が奔走した行動の一つ一つに
「普通…そんな風に出来るのかい?」ってな、賢さが垣間見えていて
作者の都合でスムーズに話が運んでいるだけかも?とか思う場面もチラチラ記憶にあった。
が…神田君は、本当に賢かったらしい。

チラっと前作でも某有名大学に在学ってなフレーズがあったが
あれから7年経った本作「WILL」では、アメリカで翻訳の仕事をしているらしい。
7年経ったと言えども未だ29歳。マジで賢さの度合いが伺える

っと言う訳で、前作の主人公が不在なので、今回の主人公は前作でもチラっと出てきた
神田君の幼馴染で葬儀屋を営む女性、「森野さん」が主人公である。
森野さんだって神田君と同じ歳の29歳。ギリとはいえ20代である。
葬儀屋の社長の椅子に座るには、まだ若い。

彼女は18歳で両親を事故で失ってしまい、
寂れた商店街の片隅にある、小さな葬儀屋を継がねばならなかった。

そんな彼女の亡くなった両親への、子供としての「思い」と
葬儀屋として、死者を葬る作業の一つ一つにこもった「思い」と
残された者たちの心にある「思い」など、様々な「思い」が交錯する話となっているのだが

これが、実に…読んでいて重い。
(ハードカバーだから重い訳ではないだ。確かに文庫より重くって肩が凝ったがな…笑)

前作の死に行く人々の「思い」や「願い」を綴った作品よりも
生きている人の思いを通り越した「思惑」の方が、遥かに変な重みを感じてしまう。

前作では大学生の神田の方が、若くして葬儀社を引き継いだ森野より子供であったのが
この7年で神田も就職したり、会社を退職したり、海外で翻訳の仕事をしたりと
様々な経験を積んだせいか大きく人として成長が見られた。

それにひきかえ森野の方は、乗り越えなければならない両親への思いを
未だに引きずった状態で、同じ場所に低迷している感がある。
ただ、やっぱり29歳にしては、誰にも甘えず、一人で踏ん張ろうとする強さもある。

辛いこと苦しいことは経験しないで済むのなら、しない方が良いと誰もが思うが
そういう出来事を経験した方が、本当は、人は大人になれる。

我が社に居る35歳を過ぎても、未だベタベタと甘えた口調で話す女子達を見ていると
もそっと苦労を経験して、大人になれよ…とか思ってしまうのは私だけか?(笑)
さすがに35歳を過ぎれば。大人年齢だよな…とは自分でも思っているらしいのだが
「可愛い、可愛い」と育った子供の末路か? それが抜けないから、見ていて悲しくなる。

彼女達は皆、同じ事を言う。
「親に叱られたことがない」っと…。「親に殴られたことがない」っと…。

むやみに殴ったり叱ったりしない親の元で育ったのは良かったね。っと言っておこう
しかし、叱られなかったからって、良い子だったとは限るまい(笑)
そんなに胸を張って言うことなのか?っと何時も「へ~」っと曖昧に答えながら聞いている

そんな彼女達の学生時代は「校内暴力」の盛んな時代でもあった。
もちろん彼女達が校内暴力の主導者ではない。そんな根性があったとは思えない(笑)
ただ傍観し流れに身を任せていたのだろう。自分たちで何かを変えようともせず
ただ可愛い子でいれば、誰にも怒られず、暴力も受けずに済むのは、親で実証済みだから。

森野はそんな生き方をしていない。29歳、いや、親が亡くなった17歳の時から
自分の行動に責任を持ち、人より早く大人にならなければいけなかった。
でも、彼女が本当の大人になるためには、もう一つの階段を登らなければならない。
それこそが先に述べた我が社の甘えたオバサン達が、常日頃やっている事。
他人に甘えるということなのだ。

世の中とは不思議なものだ。

オバサンになっても平気で甘え続ける人も居れば
若いのに甘えることが出来ずにいるひとも居る。

オバサンになっても叱られたことがないっと自慢げに言う人もいれば
なにかと衝突ばかりを繰り返してしまっていた、っと悲しげに言う人もいる

どちらも人生に不器用だが、私は森野の方が好きだ。

きっと森野の方が自然に歳を取って行くことが出来るだろうと思うから。

7年たって本書を書いた作者にも、何か変化があったらしい。
どことなくクールな文章が、ほんの少しだが読者を慮る気持ちが生まれたようだ(笑)
まだ、細かい所で急ぎ足となる所も気になったが、今後が楽しみな作家さんかも?

この本ばかりは、順番通り読むことをオススメする。
その方が7年の変化を楽しめると思う。

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