初版:2008年。今から7年前。
ドラマにもなった作品だから、「あっ、コレ知ってる!」と思う御仁も多かろう。
黒野作品「万寿子さんの庭」←以前の記事はコチラ
が面白かったので、つい触手が動いた。
聡、弘、明男、正輝、博夫、規子 男5人に女1人。全員76歳。
6人は小学校時代の同級生だ。
76歳といえば20代から見ればジジイにババアだと思いがちだが、
大病さえしなければ比較的元気なのだ。そこそこ金も持っているし暇もある。
そこである日開かれた同窓会でマッチョで元気な明男が能天気な提案をする。
「この中で誰が一番長生きをするかって賭けをしよう」
「みんなで掛金を供託し最後に生き残ったやつが総取りする」
歳を重ねるごとに同じような年代が集まると語られる話の内容も違ってくる。
若い頃は異性の話、それから仕事、上司、結婚、子供の成長と流れ
中年を過ぎると親の介護に加え、健康の話が多くなっていく。
ともすれば不健康自慢の大会のようになってしまう時すらある。
誰それが結婚したとか、離婚したとかの話が
気がつけば誰それが死んだとか、誰それが入院したとか…。
本書でも語られていたのだが「健康寿命」なるものがあるらしい。
女性75歳 男性71歳。平均寿命に比べると随分と若い。
それを無事にクリアし75歳~80歳までの5年間が一番危ないらしい。
危険地帯を乗り越え80歳になるとまたしばらくは大丈夫だそうな。
で、フっと気がつけば自分たちは全員76歳だ。
一番危ない75歳から80歳に突入している。
明日の朝、無事に目覚める事が出来るかどうかも解らん状態なのに
生き残りを掛けて賭けをしようとしている。
言いだしっぺの明男は日頃の鍛錬に自信があるのか総取りは「オレだ」みたいな顔をしている。
とここで老人特有の頑固さと意地が、少量飲んだ酒の勢いで芽をふき
賭け金総額五千七百万円のゲームがスタートした。
実際は金持ちの博夫が皆の元気の元になればと、多額な金額を提供したのだがの。
一見、能天気さとバカバカしさが混同したような賭けだが
危険もはらんでいる。
普通友人同士なら誰かが病気になった時に心配するもんだが
そこに金が絡むと、果たして本当に心から心配出来るもんか?と
でも、そんな話にはならなかった。
そこが70代。だから70代なのかもしれん。
聡の今年41歳になる独身娘の智子。
彼女の話は良かった。単なるバカな若作りのスネかじり娘かと思ったら違った。
社内リストラを敢行し、アホでどうしようもない上司を歯牙にもかけず
パッと自らの首を切り会社を辞める潔さ。
子供の頃、戦争を体験した聡たち老人には適わないのかもしれないけれど
ちゃんと今の時代を自分なりに戦っているのだなっと感じた。
私もつい最近、妖怪会社を退職したのでとても実感できた。
そうだった。私も日々戦ってた(笑)
小学生の頃、70代のバー様に「死ぬのは怖くないの?」と聞いた事がある。
バー様曰く「信心があるから怖くなんかね~」
バー様の仏壇には色んな神さまが雑居状態で、何にでも手を合わせていた。
幽霊も妖怪もなんでも信じていた。
「怖くない証拠にワシが死んだら幽霊になって会いにいくよ」っと言っておったが…
結局、会いに来なかった。
会いたかった気持ち半分。本当に会いに来たら怖い気持ち半分。
でも、ちょっと期待して待ってた自分が居た。
30代の頃、義母の看病で病院に寝泊りしたことがある。
ガン病棟だったもんで10ほどある病室に、毎晩順番のようにすすり泣きが聞こえた。
ここに入ると皆さん十日は持たない。それでも義母はひと月ほど頑張った。
この時ほど死を身近に感じたことは無かったけれど
今思えばまだまだ他人ごとだったのかもしれん。
生まれたからには死なねばならない。これは命を得たモノの宿命だろう。
この本は、おちゃらけた題名ほどお笑い話ではないので、重いと感じる人も多いかもしれん。
でも、本当に誰もが通る道なのだ。
だから手にとって読んでみた。
本当に勉強になった。私もこんな風に70代以降をすごせたらな~っと思った(笑)
もしよければ読んでみるべし