スウェーデン生活+その後

2010-2013年スウェーデンに在住し帰国。雑記、鳥・植物の写真
*海外情報はその当時のもの。
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無題

2021-08-23 23:19:33 | 考えてみたこと
コロナの感染はどんどん拡大していく。
その一方で、政府の緊急事態宣言なんてどうせ効果がない、なんでまだ自粛をしなくてはいけないのだ、どうせ変わらないのでは、コロナはそんなに怖いのか、何と言っても死者は少ないじゃないか、などの意見は多数見られる。それで思ったこと。

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最新の対人地雷は「兵士を殺さない」ように設計されていると聞いたことがある。火薬の量を減らし、爆発しても足を吹き飛ばすだけで、命を奪うことはないようになっているのだと。何故なら、敵の部隊に負傷兵を増やして、部隊の負担を増やす方が作戦として効果的であるからである。

そうなると、地雷を踏んでも「致死率は低い」という事になる。また、地雷原すべてに全部、びっしり濃密に地雷が埋まっているわけではない。そんな数の地雷はどんな軍隊でも準備できないからだ。地雷原を歩いても地雷を踏まない兵士の方が圧倒的多数になる。となれば「地雷はあるけど、踏む確率は凄く低い、そしてもし踏んだとしても死ぬ確率もかなり低い」ということになる。それではあなたが兵士だとして、指揮官から「目の前に地雷原があるけど、踏む確率は低いし、踏んでも足が吹っ飛ぶだけで死ぬ確率は低い。だから、みんなで地雷原を歩いて突破しよう」と言われたら、どう感じるだろうか?

生き残っても、足がない生活が待つ。その生活を誰が補償してくれるのか。少なくとも指示した指揮官はしないだろう。

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新型コロナウイルス感染症の死亡率はだいたい2%前後と報告される。また、現時点では死者の数はまだ1日あたり50人にも届いておらぬ。なのでこれを見て「死者が少ないのだから、別にコロナを恐れる必要などない」という意見が一定数見受けられる。この意見は自分には上記の指揮官の言葉にダブって聞こえる。たしかに死亡率は低いし、死者の数も(現時点では)少ないのは事実である。そこまでは合っている。

しかしこの意見で触れられていないのが 1)新型コロナウイルス感染症患者全体の20%が中等症(肺炎を伴う病状)に移行し、全体の5%は集中治療管理を有する重症になること、2)ひとたび重症になるとなかなか回復しないこと、治療に1ヶ月単位を要すること、3)コロナ感染後にはlong COVIDと呼ばれる後遺症が存在すること、この後遺症の好発年齢は20-40歳台であり、味覚障害・呼吸困難・集中力低下などで、しかも有効な治療法が存在しないこと――である。

いくら死亡率が低くとも、一人の死者の背後には無数の苦しむ人、後遺障害で苦しむ人がいる訳で、「恐れる必要がない」ということにはならない。40歳や50歳台の人が長期入院したり、後遺障害が長期に残ったりすれば、その悪影響ははかり知れぬ。何より死亡率が低いのは「きちんと治療した時の話」であり、肺炎を起こして酸素化が落ちてきた人に酸素が供給できなければ、インドで発生したことが日本でも起きることになる。
After Coronaその12

国は病床をさらに提供するように今日、医療機関に指示を出したようである。確かにあまりにも非協力的な医療機関には是正がなされるべきであろう。しかしながら、である。

たとえ、感染者数が落ち着いたとしても、今の東京のように連日4000名以上の感染者数が続けば、入院できない患者数は累積赤字のようにたまっていく。今の東京都が確保している病床数は5967床、これに対して自宅療養者は24000名以上、入院・療養等調整中は11000名以上なのだ。病床数を仮に2倍に増やしても足りようはずがない。結局、連日4000名の感染者数が続く限り追い付けるわけもないのだ。文字通り焼け石に水である。
デルタ株の感染力は強い。簡単には減っていかないだろう。今のような「感染者数を減らす方向のない」対策だけでは問題は解決しないだろう。感染者数を減らす作戦――結局、自粛となってしまうのだが――がセットとなることが、どうしても必要である。
After Coronaその16
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