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スウェーデン生活+その後

2010-2013年スウェーデンに在住し帰国。雑記、鳥・植物の写真
*海外情報はその当時のもの。
*禁無断転載

すずめの戸締り

2023-12-30 00:23:51 | 書評・映画評など
「すずめの戸締り」(新海誠監督、東宝)を見終わった。年末にようやく映画を見る時間が出来た。新海監督の映画は「君の名は。」以来となる。普通に楽しめた。あの高さから水の中に落ちてスマホが使用できるのか?とかスマホを充電しないで使用できる時間が長くないか?とかフェリーにお金を払わずにどうやって乗ったのか?もし払えたなら、どうしてわざわざ船室の外で寝たのか?など、ところどころ突っ込みたくなるが、「君の名は。」でも同じようなことはあったかもしれぬ。ちなみに「要石」は千葉県・佐原の香取神宮に本当にあり、しかも位置の離れた茨城県・鹿島神宮にももう一つあって、「ミミズ」ではなく「ナマズ」の頭と尾を抑えているという伝説が実在する。3・11をテーマにしており、日本の他海外(特に中国)で大ヒットしたのだという。まあ、映画としては普通に楽しめるのではなかろうか。良かった。
Wikipedia「すずめの戸締り」
君の名は。
佐原その15

すしの美味しい話

2023-12-10 22:43:41 | 書評・映画評など
「すしの美味しい話」(中山幹著、中央公論社)を読み終わった。1996年の刊行で、ずいぶん昔の本である。古本屋で買った。しかし読んでみて「面白い」と思える本に久々に出合った。特に寿司はSushiとなって今や全世界に普及しているだけに、海外に行かれる方は渡航前に日本人としてこの本の一読をお勧めしておきたい。寿司の歴史を紐解くと、東南アジアの各地にも残る「なれずし」が今の寿司の祖先である。滋賀県の三輪神社というところにドジョウのなれずしを作る伝統が今でも残っており、かつその寿司が最も寿司の原型に近いという話、これは強烈であった。調べるとどうも三輪神社は2023年現在Google検索に引っかかるので健在であるらしく、HPを検索するとドジョウのなれずしも作り続けられているらしい。チャンスがあれば一回行ってみたいと思う。そして江戸時代である。「華屋与兵衛」は寿司屋のチェーン店として今でも名前が残されているが、元々は現代の寿司の発案者なのである。寿司の屋台の話も面白かった。復元された実物は江戸東京博物館で見ることができる。京都の「鯖街道」の話も良かった。調べたらウィキペディアにもちゃんとぺージがあった。そして戦後、寿司の「委託加工制度」の話。これも凄かった。戦後の大混乱期に寿司を継続するためにみな死に物狂いで知恵を絞ったのである。そして最後、現在も残される伝統的な寿司店――大阪の「小鯛雀鮨 すし萬」、京都の「いづう」、浅草の「金太楼鮨」など、調べるとみんな今でも現役である。日本には創業100年を超える寿司屋が今でもごろごろとあるのである。これらの店もいずれチャンスがあったら回ってみたいものである。日本人として、ぜひ知っておくべき知識が詰まっていると思う。お勧めできる本である。
Wikipedia「寿司」
Wikipedia「華屋与兵衛」
両国その9
Wikipedia「鯖街道」
エストニア旅行その17 雑
寿司
南仏旅行その20 夜のニース市街

なぜか結果を出す人の理由

2023-11-05 23:50:09 | 書評・映画評など
「なぜか結果を出す人の理由」(野村克也著、集英社文庫)を読み終わった。努力しても結果を出せない人もいる反面、まったく努力しなくても結果を出してしまう人もいる、努力は大事だが、その努力の方向性が正しいのかどうか、それは常に検討しなくてはならない――と説く。本の中身としては既に知っているエピソードも多いので自分にとっては新規性は少なかったが、それでも「才能に恵まれなくても努力を重ねてきた」という稲葉篤紀選手の話などは中々に凄い。大学生までは1塁手で、プロに入ってから外野手の練習をして、人一倍の努力をしてゴールデングラブ賞にまで登り詰めるのである。最後に野村監督がミーティングを開始するときに必ず言っていたという一言「知らないよりは知っていた方がいいし、考えないよりは考えていた方がいい」という一言、これは自分にも参考になる。そのくらいのつもりで毎日勉強していればひとかどの人物にもなれるだろう。さらっと読めてよい書であった。
野村克也氏死去

即答力

2023-10-09 23:40:07 | 書評・映画評など
「即答力」(松浦弥太郎著、朝日文庫)を読み終わった。人生に必要なのは「即答」を重ねてチャンスをつかむことだと説く。インターネットがこれだけ普及したのも、皆の疑問にインターネットが「即答」してくれるからではないのか、という氏の指摘は確かにその通りである。あとがきを読むと、松浦弥太郎氏自身が「暮らしの手帖」をやめ、「クックパッド」に転職した直後でこの本を書いたようである。先のドナルド・キーン氏も「私の人生を振り返ってみると、私の人生を左右してきたのは明らかに幸運であって、長い熟慮の末の決断ではなかった」と述べている通りで、人生の転機はだいたい「ふらっと」「思いもよらぬ方向から」やってくることが多い。そういう時にそのチャンスを「即答」でサッとつかめるか、どうか。これは自分自身もそうだし、若い人たちを見ていても同じことを思う。チャンスをつかんで大きく伸びて行けるかどうか、それはそういう時の「即答」の如何によるのである。良著だと思う。
ドナルド・キーン自伝
新100のきほん

ドナルド・キーン自伝

2023-07-22 23:33:44 | 書評・映画評など
体調の問題もあって休んでいる間に読書ができた(気づいたら、半年以上にわたって一冊の本も読んでいなかった)。「ドナルド・キーン自伝」(ドナルド・キーン著、角地幸男訳、中公文庫)を読み終わった。東日本大震災の時、「大震災を機に日本国籍を取得した」とニュースになっていたことをご記憶の方もいるかと思う。2019年に96歳の長寿を全うされた。生涯独身であったのだという。自伝もまた、氏一流の分かりやすく丁寧な文章で書かれ、氏の人柄を感じさせる。印象に残ったところをいくつか。
1、日本に本格的に住み、日本語で日本文学の研究に没頭していたキーン氏が、一回アメリカ映画「ジュリアス・シーザー」を見て、その英語でのセリフに深く感動し、「酔いしれてしまった」という状況になったことがあった。英語を日常生活で話すこともほとんどなくなっていたにも関わらずである。それについて彼が書いたのが「私が日本語にどれほど打ち込もうと、それ以上に私の中の何かが、英語の言語の響きに深く揺り動かされたのであった」。そして「これは、必ずしも悲しむべきことではなかった。もし私が、日本語で書かれた作品の美しさを過不足なく翻訳で再現しようとするならば、英語に対する私の愛情なくしてそれが出来るはずもなかった」と続けている。なかなかに深い。スウェーデン時代、インド人が「世界のどこに住もうとも、子どもにはヒンディー語で話しかけてヒンディー語で教育を開始する」と言っていたが、どれほど英語を学ぼうとも日本人の場合、思考のベースとなる言語はどこまで行っても日本語なのである。子どもの教育に当たって、これは忘れてはならないポイントであろう。
2、最後に「私の人生を振り返ってみると、私の人生を左右してきたのは明らかに幸運であって、長い熟慮の末の決断ではなかった」と記している。日本文学との出会いも、日本での多くの仕事も、幸運があって舞い込んできたものが多かったようである。もちろん幸運もあっただろうが、それをちゃんと生かしたのは氏の絶え間ない努力であったのだろう。ただ人生の重要なポイントは、意外に運で決まってしまう、誰でもそんなところがあるのかも知れない。
それほど厚い本ではないが、面白いしお勧めできる本である。三島由紀夫との交流の話(下田での交流の話もある)も出てくるが、また何か三島由紀夫の小説も読んでみたくなった。
Wikipedia「ドナルド・キーン」
下田その3
豊穣の海
「空気」の研究

北方の原型 ロシアについて

2023-01-22 21:31:03 | 書評・映画評など
「北方の原型 ロシアについて」(司馬遼太郎著、文春文庫)を読み終わった。今回のウクライナのこともあって何となく手に取った本である。主に日本とロシアとの関係について述べたものであるが、確かにかつて教科書で学んではいても、すっかり忘れていたことを改めて学びなおした感がある。文中に出てくる司馬のロシア評「外敵に対する病的な猜疑心」「火力に対する信仰」「一回獲得した領土に対しては強い執念を持つ」というのはいずれも今回のウクライナ侵攻で発揮されているように見える。へルソン放棄やリマン、イジュームの陥落に当たってはロシア国内からかなりの批判がでたようだが、ロシアからすれば歴史的にもかなり異例の事態であったのだろうし、何年の月日を費やしても、また領土を取り返しにこようとするのであろう。この時期に読んでみる価値はあると思う。お勧めである。
Wikipedia「司馬遼太郎」

新100のきほん

2022-11-14 22:19:49 | 書評・映画評など
「新100のきほん」(松浦弥太郎著、マガジンハウス新書)を読み終わった。100の生活上のルールを並べて、その一つ一つに簡単な解説を添えたもの。スーッと簡単に読めた。「きほん」の一つ一つは確かに理にかなっているが、それを日常生活で全部守れるか、というとなかなかドキッとするところである。でも心にはとめて頑張って行こう。
「自分らしさ」はいらない

わたしが正義について語るなら

2022-09-19 23:49:58 | 書評・映画評など
「わたしが正義について語るなら」(やなせたかし著、ポプラ新書)を読み終わった。以前の「アンパンマンの遺言」でも氏の生涯については読んでいたので、割とすいすいと読むことが出来た。精神的にも色々煮詰まっていたことが多かったせいか、前回の読書は3か月前。だいぶ本を読まない生活が続いていた。ウクライナ戦争についてずっと追いかけているせいもあるが、氏が語る「本当の正義とは」ということは含蓄があるように思われる。「正義を行う時には、自分も傷つくことを覚悟する必要がある」「傷つくのは嫌だから、みんな長いものに巻かれろ、となる」「でもそれではいけない。そうしていると世の中はどんどん悪くなってしまう。勇気をもって、傷つくことを恐れずにやらなくてはならない」「正義でいばっている奴というのは、どこか嘘くさい」。確かにすべてその通り。「アンパンマンのマーチ」が氏のメッセージそのままなのだという。よく聞くと含蓄のある歌詞かも知れない。
アンパンマンの遺言

「自分らしさ」はいらない

2022-06-12 23:48:14 | 書評・映画評など
『「自分らしさ」はいらない』(松浦弥太郎著、集英社文庫)を読み終わった。題名の通り「自分らしさ」を主張するのではなく、心を使って相手のことを思いやること、その原理に基づいて行動することを説いている。これまでの著作の中でも読ませる著である。そして一番最後の一言、幸せはこの4つのこと以外ない、1)役に立つこと、2)ほめられること、3)必要とされること、4)愛されること--この一言は含蓄があると思う。一読をお勧めしたい。
あなたにありがとう。暮らしのなかの工夫と発見ノート

あなたにありがとう。暮らしのなかの工夫と発見ノート

2022-05-01 21:24:24 | 書評・映画評など
「あなたにありがとう。暮らしのなかの工夫と発見ノート」(松浦弥太郎著、PHP文庫)を読み終わった。人間関係には時間がかかること、相手に何か見返りを求めて付き合ってはならないこと、周囲は自分が思うほど自分のことを気にしないことなど、心に残る言葉が多かった。本に引用されている池澤夏樹の「スティル・ライフ」からの引用の言葉が良かった。
――この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかも知れない。
今日もていねいに。 暮らしのなかの工夫と発見ノート
Wikipedia「スティル・ライフ(小説)」