ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

慶派仏教彫刻探訪 奈良編⑤‐1

2014-09-11 20:51:21 | 仏教彫刻探訪

今回は無理かと半ばあきらめていたが、なんとか飛び込みセーフ。
そう、奈良国立博物館で開催されている「醍醐寺のすべて」展に行ってきた。
昨年冬に醍醐寺を訪れた時は、事前調査の甘さで総スカンを食らったので
この「醍醐寺のすべて」で快慶作の弥勒菩薩坐像を拝めるとあっては
なんとしても行ってみたいと開催前から思っていたものの、うまく時間が取れないでいたのだ。


9月8日(月)の夜、最寄駅前から乗車できる京都・大阪行きの夜行高速バスに乗り
京都駅八条口前に着いたのが、9月9日(火)の5時50分だった。
近鉄で一路奈良へ。
近鉄奈良駅へ着いたら、駅東側の東向通りにあるマクドナルドで朝マック
腹ごしらえをしたら、猿沢池を眺めながら春日大社の表参道に向かう。
ちらりと横目で興福寺の境内を見たが、観光客はまだいない。
すれ違う人は、通勤・通学途中の人と、地元のランナーと、ウォーキングの人達だ。
春日大社の一之鳥居をくぐり、鹿が群れる浅茅ヶ原、飛火野を抜けると、杜は徐々に深くなっていく。

二之鳥居をくぐり、回廊南門に向かう。

朝日が射しこんで、南門の丹塗りの色が一層鮮やかに見える。
春日大社では、「朝拝」と呼ばれる朝のお参りや、神主や巫女が案内するお参りもあるが
今回は時間の都合がつかないため、申し込むことはしなかった。

春日大社を訪れる度に、回廊に下げられた燈籠の美しさに感嘆する。

春日大社を後にして、土産物屋の並ぶ若草山の麓を歩き、東大寺の境内に入る。
東大寺の開門時刻は、他の寺社に比べて格段に早い7時30分(4月~10月)。

まずは法華堂から。
朝の空気の清々しさも手伝ってか、堂内はいつもよりいっそう静謐で
不空羂索観音菩薩立像を中心として、10躯の仏像が並ぶ空間に気持ちが穏やかになる。
不空羂索観音菩薩立像の背には、あの執金剛神(しゅこんごうじん)が
厨子に納められているのだと思うと、昨年拝観できたのはとても恵まれていたと痛感した。

法華堂から、二月堂に向かう。

二月堂からは、大仏殿の鴟尾越しに、奈良市街地が見下ろせる。
いつもなら戒壇堂へ行くのだが、今回は行かずに、大仏殿へと向かう。
東大寺の門にある彫刻で最も有名な像は、運慶・快慶作の南大門の金剛力士だと思うが
回廊中門にこのような像が安置されていたことに、この日初めて気づいた。
こちらは、兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)立像。
兜跋国(現在の新疆ウイグル自治区トルファン地区か)に出現した毘沙門天と言われ
享保年間の作ながら、異国情緒を感じる像である。

その向かいに安置されているのが、持国天立像。
こちらも毘沙門天と同じく、兜跋国に出現した時の姿を表しているといわれている。
大仏殿、やはり大きい。
近づくにつれ、自分の縮尺感覚が狂っているかのような、不思議な感覚に襲われる 

大仏殿前にある八角燈籠のこちらの一面は、笙を吹く音声菩薩(おんじょうぼさつ)。
下の獅子は、音声菩薩の奏でる音色にとび跳ねるが如くで、ユーモラスだ。

みんなに愛される、奈良の大仏さん。
たしかに大きいけれど、大仏殿の大きさに目くらましを食らっていたぴすけは
「あれ?こんなもんだったか?」
という感じ。
そして、9時30分になってすぐ、東大寺ミュージアムへ。
こちらを訪れるのは初めてだが、かつて法華堂に安置されていた日光・月光菩薩立像を
拝観できたことはうれしかった。
この像は、戒壇堂の四天王との共通性が随所に見られ、また同様に保存状態も良い。
せっかくなら不空羂索観音菩薩の脇侍として、法華堂に戻してほしいと思う。
ここで白眉だったのが、快慶作の地蔵菩薩立像。
「こ、こ、これはすごい!なんなのだ、このお顔は!」
展示ケースの隣に監視員の女性がいたのも気づかず、思わずつぶやいてしまったぴすけ。
筆舌に尽くしがたいその崇高さ、しかし嫌みのなさは、快慶の真骨頂ともいえる。
うわー、醍醐寺の弥勒菩薩を見る前に、すごいものを見ちゃったな
説明文によれば、建仁3(1203)年から承元年間(1208~10)ごろに作製されたとされているが
その出来栄えのすごさたるや、もうこりゃ例の「重源さんの死の前後では月とずっぽん説を採り
建永元(1206)年以前の作品だろうと、勝手に盛り上がる
一人感動と興奮冷めやらぬなか、いよいよ本命・奈良国立博物館へと向かったぴすけであった。
                                                 (つづく) 



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2 コメント

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やはり奈良はいいですね! (芝刈り爺さん)
2014-09-13 07:52:23
うらやましやうらやましや。文化祭とかで、おとなしくしています。休み明けあたりに、ふらりとどこかに行こうと思いますが。
いいですね、お寺仏像、奈良の初秋。

菊の香や奈良には古き仏たち、、、奈良はいい。
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奈良に住みたいくらい (ぴすけ)
2014-09-13 18:21:59
芝刈り爺さん、奈良、良いですよね。
私の知り合いの民俗学者のMさんは、定年退職後に京都に住まいを移されましたが、民俗学的に京都は各所でいろいろな年中行事が行われ、民俗学的な興味も尽きることがなく、飽きることがないそうです。
そういう観点だと、私は奈良に住みたいくらいです。
実は11月に奈良に呼ばれていまして(こちらはお仕事)、それにかこつけて(?)、また仏像探訪しようと目論んでいます。
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