ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

禅頂行者道を歩く(1) 古峯神社~地蔵岳~薬師岳

2012-05-25 23:57:55 | 登山(両毛・常総)

【5月24日(木)】
古峰原バス停→ハガタテ平→地蔵岳山頂→三ツ目→薬師岳山頂



天気予報とにらめっこしながら、昨年からの計画を遂行するのは今しかないと判断したぴすけは
勝道が日光を開いた時に歩いたと思われる道の一部を、辿ってみることにした。
この道は、日光修験道の入峰修行で歩かれる「禅頂行者道(ぜんじょうぎょうじゃみち)」として知られており
今回歩いたルートは、華供峰と呼ばれる春峰・秋峰の両峰禅頂(りょうぶぜんじょう)の一部にあたる。
下調べでは、日光から鹿沼に向かう方が、下り基調のためか歩行時間も短いようだったが
勝道と同じく、鹿沼から日光へと向かうことで、何か得られるものがあるのではないかと考えた。
かりに、体調不良や事故があった場合でも、日光から鹿沼へ向かう場合は
細尾峠を越えてしまったらエスケープルートは皆無で、古峰原バス停まで歩かねばならないが
鹿沼から日光へ向かう場合は、細尾峠を越えてからも、中禅寺温泉か明智平に下りられるし
場合によっては中禅寺湖道路に出る、という選択肢も残っている。
累積標高(+)約1520m、(-)約914m、距離にして約15km(カシミール3D利用)の道のりのため
日照時間の長いこの時期に、鹿沼から日光へ向かうしかないと意を決した。


最寄り駅5時56分発のJR宇都宮線に乗り、途中栗橋駅で東武日光線に乗り換え
新栃木駅で新鹿沼駅行きの接続列車に乗り継ぎ、新鹿沼駅に着いたのが7時18分。
新鹿沼駅7時35分発のリーバスは予定より遅れて来たが
古峰原バス停には予定どおりの8時31分に到着した(運賃は400円)。

昨年訪れた時は紅葉の時期だったが、新緑が鮮やかなこの時期も格別だ。
古峯神社と、昨年お世話になった栄屋という土産物店に向かって礼をして、いざ、出発

古峯神社の庭園・古峯園を横目で眺めながら、10分ほど舗装された林道を歩く。
庭園のツツジも見事なようだが、道路脇の山肌も、たくさんのヤマツツジに彩られている。

地蔵岳へ向かう登山口には、熊出没注意の看板が。
ここで熊鈴をつけ、ゲート脇から登山道に入る。

歩き始めは砂利道の林道だが、林道終点を過ぎると、道が洗掘され、ゴーロが混ざる悪路になる。
この道は、下りの際にも歩きにくく、昨年10月の時には珍しく膝が痛くなった
降雨時や降雨後は、大変歩きにくい道になることが予想される。

ゴーロの道を抜けると、スギの植林帯を歩くようになるが
ここまでの悪路と、この間の単調さ、そこそこの傾斜に、早々に体力の消耗を感じる
こんな調子で、はたして日光まで抜けられるのだろうかと、おおいに不安を抱く

沢が近付いた登山道脇に、小規模だがニリンソウの群落があり、気分一新

数回、沢を渉る。

沢筋には、バイケイソウと思われる株がかなりあった。
前方が明るくなり、尾根が見通せるようになれば、ハガタテ平はもうすぐだ。

古峰原バス停を8時45分に出発後、約1時間50分、10時33分にハガタテ平に到着。
その名の如く、広く平らな場所で、トウゴクミツバツツジの一株が鮮やかに花を咲かせている。
ここから南に向かえば行者岳を経て古峰ヶ原へと至る。
勝道は、剣ヶ峰(横根山)から三枚石を経て深山巴の宿で修行し
そこから行者岳・竜ノ宿を経て、ここ、ハガタテ平から薬師岳へと向かったといわれている。

ハガタテ平から地蔵岳へ向かう道は、尾根上の快適な道である。

と、目の前にポトリと何かが落ちてきた。
このお方も、美しいな~
こんにちは。
君のことは知っているよ。
エゾハルゼミ、だよね。
今日は多分あまり人が歩かないだろうから、このままそっとしておくね
羽化してそれほど時間が経っていないのか、個体差なのかわからないが、全体的に緑が勝っている。
緑の薄衣をまとった森の住人だ。
耳を澄ませば、エゾハルゼミの音が聞こえている。
この日、エゾハルゼミの音は、ハガタテ平と地蔵岳の間でしか聞こえなかった。

シロヤシオとトウゴクミツバツツジの花を眺め、エゾハルゼミの音を聞きながら、楽しく歩く
まだ開花前で、蕾を持っている木もたくさんあったので、来週が見ごろか。

地蔵岳へは、いったん崩落しかかっている山腹をトラバースし、カラマツ林をジグザグに登る。

ジグザグだった道から、まっすぐに尾根に続く道に入ると、山頂はすぐだ。
地蔵の祠がある地蔵岳山頂(山頂標識は少し先にある)まで、ハガタテ平から35分。

地蔵の祠からおもむろに視線を上げれば、木の間越しに男体山が見える。
男体山と対峙すると、男体山から何らかの威力が発せられているように感じる。
恐らく、かつては樹高も異なり、遮るものがない景観が得られた時もあっただろう。
登りきった正面に男体山が聳える様を見て、衝撃を感じ、畏敬の念を抱いた人も多かったに違いない。

地蔵岳から三ツ目まで、左手に白根山を眺めながら歩く。
オオカメノキの白い花が目立つ。

地蔵岳から歩くこと15分。
三ツ目から東に眼をやると、夕日岳のピラミダルな山容が望める。
林道終点でバナナを1本食べた後は、歩きながらグミをつまむくらいだったため
ここで昼にしようか、夕日岳を往復するか、そのまま薬師岳を目指すか迷ったが
まだ11時30分だったことと、尾根に上がってから余裕が出てきたため、薬師岳を目指すことにした。
入峰修行の道は、地蔵岳から薬師岳に向うので、昨秋登った夕日岳を割愛し
予定より30分早く歩いている貯金を、これから先の行程のために保持することにしたのだ。
三ツ目を出てすぐの所で、薬師岳方面から歩いて来た50歳代の御夫妻と思われる2人に
後からおじいさんが来るので、三ツ目で待っているからと伝えてほしいと頼まれた。
どちらから歩いていらしたのか尋ねると、中禅寺温泉からとのことであった。
6時から歩いているらしい
しばらく歩くと、御夫妻が話していたとおり、70歳代後半かと思われるおじいさんが
ストックを使いながら、ゆっくりだがしっかりとした足取りで、こちらに向かって来る。
「こんにちは。先ほどすれ違った御夫妻から、三ツ目で待っていると伝えてほしいと頼まれました。」
「はあ、そうですか。ありがとう。」
おじいさんが答えた声ははっきりとしていて、息も上がっていない。
ゆっくりでも着実に1歩1歩進む姿を、「いいな~」と思いながら見送る。

三ツ目から薬師岳までは、小さなアップダウンが続く。

1406m峰と思われる尾根上には、石祠が祀られている。

トウゴクミツバツツジとシロヤシオの紅白の対比が新緑に映えて美しい。

トウゴクミツバツツジ

シロヤシオ

尾根の右手に眼をやると、赤薙山から女峰山へと続く一里ヶ曽根の稜線が望める。

反対に、左手に眼をやると、足尾へと続く谷が望める。

1453m峰と思われる尾根上には
剣を持った石造不動明王と、宝暦14(1763)年銘の石祠が祀られている。

三ツ目を11時30分に出てから1時間5分後の12時35分、薬師岳の肩に到着。
このまま直進し、薬師岳へと向かう。

薬師岳山頂は、薬師岳の肩から5分ほどの場所で、石祠が安置されている。

山頂はそれほど広くはないが平らな場所で、見晴らしが良い。
男体山・大真名子山・女峰山を眺めながら、後半の思案をしつつお昼を食べた。
                                                       (②へつづく)



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