道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

二桃殺三士

2006-05-07 19:00:18 | 形而上
諸葛孔明が好んだという「梁甫吟」という詩の中に、
「二桃、三士を殺す」という句がある。

これは『晏子春秋』に掲載された、以下のような逸話が典故となっている。
昔、斉の国に三人の勇士がいた。
この勇士の扱いに手を焼いた宰相晏嬰が三人に二つの桃を与え、
「それぞれの功労の大きさに応じて分けなさい」と言った。
すると、三人のうち二人が一個ずつ桃を自分のものにした。
そこで、桃を手にできなかった者は自分の能力の高さと功労の大きさを主張すると、
桃を取った二人は彼に自分が及ばないことを知り、桃を取ったことを恥じて自殺した。
そして、残った一人も、二人を自殺させてしまったことを恥じて、やはり自殺した。

桃二つのために三人が不幸になって死んでしまうとは何ともバカな話であるが、
彼らにとって「桃」は「名誉」のことであり、勇士として命を賭けるものであったのだろう。


さて、この話では「桃」は「名誉」の意味であったが、
これを「恋愛」に置き換えるとどうであろう。
三角関係の果てに悲惨な結末に陥るという筋書きは悲劇の定番であるし、
現実でも、恋愛関係のもつれから不幸に陥る者はいる。
我々は、晏嬰の策略にはまった三勇士を笑えるであろうか。


漫画家の坂田靖子は、作品の中でこんなことを書いた。
「アーサー王は 自分の王妃と騎士ランスロットとの仲を許すべきだったんだ
 そうすれば3人のうち 少なくとも2人は幸福になったんだ
 3人のうちの2人だよ!
 ―――それに残ったひとりだって
 そのうち 何かのまちがいで幸福にならないとも限らないじゃないか―――」

「何かのまちがいで」という最後の言葉が実に良いと思う。


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