徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

今年も糠漬け

2014年06月05日 | 生活

毎年この時期になるとキュウリ、ナス、トマトなどの夏野菜が多く出回り始めますね。そうなると、食べたくなるのが糠漬けと炊き立てのごはん。昨年末に冷凍しておいた糠床を2-3日かけて解凍し、糠と塩を足して糠漬け復活です。

いつもは平タッパーでやっていたのですが、今年は100均で買ってきたフタ付きの4Lのバケツで仕込みました。縦長のバケツだとキュウリとか茄子を縦に挿し込むだけでOKなので、糠床をあまりかき混ぜないで済むので好都合です。毎年これをやっていて感じるのは、床をかき混ぜすぎると旨さが無くなる、という事。この極意を糠漬け専門店の女将がこう書いています。

ぬか床千束店主・下田敏子さん

混ぜ過ぎないことは、とても重要です。一般的には、よく混ぜなければならないというイメージがあるかと思うのですが、混ぜ過ぎると空気が入りすぎて、ぬか床の中にある乳酸菌が少なくなり、美味しくない様になってしまうんです。正しい混ぜ方はぬか床の天と地をひっくり返す様なイメージですね。真ん中は混ぜなくてもいいんです。

そして、軽く混ぜた後は表面をパンパンとよく叩いてならし、空気を抜きます。表面積を少なくして、酸化防止をするためです。ぬか床は、あまり手をかけ過ぎないこと。少しほったらかすくらいが美味しくなります。ほったらかしっぱなしではいけないんですが、“愛情を持って見守る”ことが大事です。発酵には時間がかかりますから、菌の持つ力を信じること。子育てと同じですね(笑) http://www.kirishima.co.jp/aji/2011/winter/19/02.html

これですね、とにかく毎日2-3回はかき混ぜろ、と書いてあるサイトが多いですがそんな事をすると旨い糠漬けは食えないよ。

とは言うものの、もっと基本的な事は塩加減。これ、意外と忘れるんですよね。塩を入れすぎると塩辛くなって良くないのは勿論ですが、野菜を漬け続けていて、塩の補給を忘れていると漬物がボーっとした味になって旨くなくなる。それで、アアそうだ塩を足さなくっちゃ、と思い出すといった具合です。

今年はまだ産膜酵母さんの白い膜が表面に現れていないので、発酵が完成していないと見えます。早く酵母膜張らないかな...

ああ、それと糠床の細菌フローラに関する興味深い学術報告を見つけました。 https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8908/8908_tokushu_6.pdf

これは九州大学の研究(10年かけた!)で、4つの糠漬け専門店と16の家庭から糠床サンプルを採取してそれに含まれる細菌、酵母群をRNA解析で調べて比較したデータと、糠床の立ち上げから時間経過でそのフローラがどのように変化するかを調査しています。

以下転載、

Lb. acetotoleransは,北部九州地方の糠床に共通して存在し,また糠床の発酵・熟成に要重要な働きをしているようである.100年以上の長期間,発酵と熟成を繰り返すという操作の結果生まれてきたフローラは意外とシンプルであるが堅牢であることが分かった.特に興味深い点は,ダブリングタイムの異なる2つの乳酸桿菌(Lb. namurensisとLb. acetotolerans)を優占種としていることである.

また、産膜酵母について下記の興味深いコメントがある、

抗真菌剤を加えて,酵母の増殖を完全に抑えても細菌叢に大きな変化は見られなかった.一方糠床中の有機酸濃度を解析した結果,抗真菌剤を添加した糠床の酢酸とエタノールの濃度が比較的高い値を示した.産膜酵母は,エタノール資化能があり,ワインなどの風味成分を生成することが知られている.このことからも糠床中の酵母は,細菌叢と片利共生であり,糠床の独特なにおい成分に寄与していることが示唆される.

 古い糠床が、旨い糠漬けを生み出す理由は、安定した細菌フローラと産膜酵母にあるという事ですね。