徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

量子の謎 続き

2010年12月12日 | 物理

シュレジンガーの猫というのはシュレジンガーがコペンハーゲン解釈に反論するため重ね合わせの状態をマクロな猫の生死に関連付けたパラドックスである。外から見えない箱の中にウランとガイガー計測器とそれに連動し、アルファ崩壊を計測すれば青酸ガスを発生する装置と生きている猫を入れる。アルファ崩壊は量子過程なのでそれが起こったとしても観測するまでは重ね合わせの状態と考えられる。さて猫はアルファ崩壊が起こり計測されればそれに連動して放出される青酸ガスで死ぬ。崩壊が起こらなければ生き続けると普通は考える。ところがコペンハーゲン解釈では猫は箱を開けて生きているか死んでいるか確認(観測)するまでは量子の重ね合わせ状態であり、生きている事と死んでいる事の不定状態(重ね合わせ)であると解釈する。なんでこんな事が議論になるのかと言うくらい奇妙なテーマであるが、物理学者は延々とこれについて100年近く議論を続けている。最近これに決着をつけそうな理論が出てきている。脱コヒーレンスである。簡単に言うと、生きた猫と死んだ猫はミクロのそれぞれを構成する量子状態の平均値に差が無い。なぜなら生と死のコヒーレント(同期した)な量子などは存在せず猫の中では生きている確率と死んでいる確率が同居しているだけで、生きており且つ死んでいる重ね合わせの確率は無い。この状態を脱コヒーレンスと呼ぶ。よってシュレジンガーの猫(マクロ現象)は生きているか死んでいるかであって重ね合わせの状態には無いという至極当たり前な結論になる。

さて、量子もつれ。これは観測問題の延長にある。宇宙のどこか銀河系とアンドロメダ星雲との中間地点にあるカルシウム原子がSPSカスケードで二つの光子ペアを放出したとしよう。片方の光子は銀河系の地球に飛んできて検出器で偏向が観測される、その瞬間に遠くアンドロメダへ飛んだ光子の片割れの偏向が地球で観測された偏向と直角方向に確定する、まるで光速を超えた通信をしたように.... これは元々コペンハーゲン解釈に反論するためアインシュタイン等が提案したEPRパラドックスが実は現実に起こっている事を示しておりジョン・ベルの定理をアスペが実験で数値化しこのような事が実際に起こっている事が証明されている。そして其れがどの様にして起こっているかは誰も知らない。多世界解釈によれば光子ペアが発生した瞬間に偏向ごとに並行宇宙に分離したと解釈するがその証明は永遠に出来ない。

謎である。

 


量子の謎

2010年12月12日 | 物理

謎の量子力学の話をしよう。 量子力学が示す物質の振る舞いはとても、とても奇妙である。はっきり言うと、この現象を真に理解している人間は現時点で誰もいない(断言します)。アインシュタインの相対論は発表当時、理解しているのは3人しかいないと言われた。それは時空の変換というパラダイム・シフトを受け入れる難しさと、リーマン幾何という高度な数学的理解を要求されたからであるが100年経った現在ではそれは常識(古典)となり謎は無い。ところが量子論は根本の部分で謎を残しており、未だに真の理解に至ってはいない。

その謎は三つある。

1.観測問題

2.マクロ系のスーパーポジション (シュレジンガーの猫)

3.量子もつれ(Quantum entanglement)

観測問題とは何かというと、例えば二重スリットを通過した電子が干渉パターンを示す現象がある。電子は粒子のはずなのに波動方程式に従い波のような広がりを示し、二重スリットの右と左を通過する状態が重ね合わされている。ところがどちらのスリットを通ったか確認しようとしてスリットにセンサーを取り付けると重ね合わせは解消し粒子としての電子が検出され干渉パターンは現れなくなる。この干渉は電子を一時間に一個づつ個別に飛ばしても起こる(日立、外村)。この重ね合わせという状態は何を示しているのかについて喧々諤々、未だに明快な答えは無い。コペンハーゲンにあるボーア研究所が発信したコペンハーゲン解釈というのがある。これは、重ね合わせの状態は不定で無意味であり観測した瞬間に実在となるという考え方(解釈)で我々が従来持っていた認識と全く違う考え方である。これを聞いたアインシュタインは”月は我々が見た時にだけ存在すると言うのか”と呟いた。しかし、こうでも考えない限り、重ね合わせの状態というのは奇妙で理解不能な状態なのである。

もちろん、このコペンハーゲン解釈は一種の思考放棄でもある。そこで、これを説明しようとして、いくつかのほかの説が現れた。その代表としてエベレットの多世界解釈、ボームのパイロット波(量子ポテンシャル)等がある。多世界解釈というのは、重ね合わせの状態にある電子は右のスリットを通る宇宙と、左のスリットを通る宇宙が並行に存在しそのどちらかの宇宙に存在する観測者が其れを見る。というもので論理的な矛盾は見事に解消する。しかしである、量子過程が起こるたびに宇宙が分岐する?! 例えば原子崩壊の際の中性子の放出方向は量子過程であり360度球殻状の波動関数を持つ。とすると原子崩壊が起こるたびに、この全ての方向に応じた宇宙に同時に分岐しているというのか?原子爆弾が爆発するとき膨大な数の原子崩壊が起こり、其れが360度全ての方向への宇宙に分岐する!これではコペンハーゲン解釈よりも謎が深まった、としか言いようが無い。おまけに並行宇宙は干渉しないのでこれを証明するすべは無い。ボームの仮説に関しても支持する向きは少ない。つまり重ね合わせの状態を、証明付きで説明する理論は存在しないのである。D.リンドリーはその著書の中で ”結局、これはコペンハーゲン解釈のとおりで、我々が経験し得無い事は理解も出来ないのではないか。” と書いているが、これが正解なのかもしれない。 続く....