ピアノを演奏するのに必要な筋力があるとしたら、瞬発力だと思います。
素早く力を出す筋力です。
小さな動きで一瞬で音を鳴らす。
これはピアノ演奏では必要不可欠と思われます。
この筋力が弱いと、ボンヤリした音しか出せず、何を弾いても同じ曲にしか聞こえなくなってしまいます。
ピアノは椅子に座ったまま、いかにうまく身体を使うかにかかっているような楽器です。
お行儀よく足を揃えて、指だけで鍵盤を押していればよい楽器ではありません。
さて、この瞬発力。初めからあるに越したことはありませんが、かなり弱い人もいます。
そのような人は、この力の出し方がわからない場合が多い気がします。
鍛えようにも、まず感覚として分からない。
これは難問題です。
4月に中学3年生になった生徒さんで、この問題を抱えた生徒さんがいます。
趣味でしたらそこそこ上手です。気軽に楽しめる曲でしたら一人で弾けます。
しかし、彼女は音楽の道に進む夢を持っています。
このままでは通用しません。
どうしたものか、と私は頭を悩ませておりました。
今年の発表会は全く不満だらけでした。これではどこにも受からない・・
発表会の演奏を聴いて、曲からその力をつけることは無理だとの結論に達しました。
しかも、ハノンもエチュードも弾いています。
そこで、だいぶ前に自分のために買ったこちらのテキストを試すことにしました。
Fundamentals of Piano Technique: The Russian Method ペーパーバック – 2016/12/1英語版 Leon Conus (著), Olga Conus (著) amazon
この後ろの方に、一音を伸ばしたまま4音の和音を弾くものがあります。
押し付けて弾いては手を痛めてしまいます。
なので、生徒さんにこのテキストを使うことは避けていたのですが、方法を間違えなければと思い使ってみました。
最初は、和音を押して弾こうとしていました。手を広げるだけでもきついので、余計にそこに指を置こうとしていました。それでは音も鳴りませんし、手を痛めます。
見えないもを伝えるのは難しく、伝え方もわかりませんでしたが説明しながら弾いて見せました。
初めは本人の頭の中は「???」しかありませんでした。
大きな動きで何かを起こしているわけではないので、どこをどうしているのかわからなかったようですが、ある一言で解ってきたようでした。
今週3週目に入りました。
今の所、効果が出ています。
スケールのカデンツも音が変わりました。
荒療治も必要なのだ、と思ったのでした。
これはアコースティックピアノで練習できているから出来たことでもあります。
電気の方は、音色のコントロールができない他に、無駄な力の使い方が身に付いてしまったり、力の使い方がわからないままになってしまうこともある、と理解して使うべき楽器だと思います。
初めから恵まれた力を持っている人が電気の方で上手になっているのを見て、そちらで練習してもこうなれると多くの人が勘違いをされていますが、それはその人だからです。
ついでに言ってしまうと、国際コンクールで優勝したり入賞した若手のピアニストが、子供の頃に難しくても弾きたい曲を弾かせてくれたとか、すごく褒めてくれたからやる気が出たと仰っていますが、それは出来る人たちだったからです。
誰にでも当てはまることではないのが現実。