おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

日本人の音楽教育#6 これがラスト

2019年04月22日 | 書籍紹介
カヴァイエ先生の本です。

30年前と現在とどのくらい日本の音大は変わったでしょうか。

この本の最後の方にこのようなことが書いてあります。

「日本の音楽大学は完全に凍り付いている」

日本の音大に伴奏科や室内学科がないこと、入学試験の課題曲、学内試験の方法、学生のレパートリーの狭さ、音楽全般の知識の少なさ。
これらのことを嘆いていらっしゃいますが、次の文を読んだ時にきっと今も昔と大差ないのではないかと思いました。

日本の音大で教えた経験のある著名なドイツ人教授の言葉を引用して、
「日本の音楽大学は完全に凍り付いている。そこで生じていることはことごとく20年も30年も昔のままで、何一つ変わっていない。そもそも変わる可能性もない。それは凍結状態の動物のようなもので何ら動こうとしない。」

老教授たちについて、
「彼らが昔ドイツで教わってきたメソッドはそれ自体凍結されたメソッドであり、あえていえば二流のメソッドに他なりません。」

「今の調子で行くと音楽芸術という分野に関しては、日本は20年先も30年先も、50年先もヨーロッパやアメリカよりもおくれをとっているはずです。」

日本に招聘された多くの外国人教師と個人的に話し全く同じ意見だったこととして、
「日本では音楽教育制度上のいかなる新しい実験や試みに対しても恐ろしいほど消極的で改革しようとする意欲が全くない。」という不満を漏らしていたとのこと。

30年たった今、カリキュラムがどの程度変化したかは知りませんが「二流のメソッド」は今もおそらく主流です。

ヨーロッパやアメリカにおくれをとっているどころか今やアジアの中でもおくれを取っています・・

全く新しいアカデミアを是非築いてほしいと次のようにおっしゃっています。
「新しいカリキュラムの計画に当たって、常にオープンなそして自由な心を持つこと。すなわち、変化を恐れるな、ひとつの考えに決して固執するな、柔軟であれ、他の音楽学校でやっていることと異なっているのではないかといったことを何ら気にするな。」

いかがでしょうか。
学校ということではなくとも、音楽教室でも20年、30年前と現在が大きく変化したとは思えません。

新しいことを勉強されている先生は少なくありません。
なのに、それを実際に生徒さんのレッスンで試される先生は少ないように思います。

「いいとわかってはいるのですが」と・・

学生の頃、ドイツ人の先生のゼミで先生がリサイタル前に1曲弾いてくださいました。
危うくなった所がありました。内心驚きましたが、弾き終えて先生は一言。
「ここがまだあやふやでちゃんと覚えられていない。ここをもっとやらなければ。」

それを聞いた時に、生徒と対等の気持ちで接して下さっているのだと思いました。
現代曲が得意な先生でしたがその時はシューベルトのソナタを弾いてくださいました。

その先生のゼミの試験曲に武満徹の曲が課題になりました。
同じ日本人の作品なのに全く知らない曲、とうより武満さん自体あまりに遠い作曲家でした。なのにドイツ人は知っているという・・

まさにピアノ音楽でさえ狭い範囲のものしか知らない学生であったわけです。

音楽的に遠いと思っていたのに、武満さんに渋谷でバッタリ遭遇したことがあります。

2016年6月来日したユーリ・バシュメット&モスクワ・ソロイスツ のコンサートのアンコールがこの曲でした。Waltz from "The Face of Another"
コメント
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