(01)
吸収法則
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2つの二項演算について閉じている集合があるとする。これらの演算に交換法則と結合法則が成り立ち、吸収法則も成り立つ場合、これらを抽象代数学的には束と呼ぶ。また、2つの演算子を「交わり」と「結び」と呼ぶ。交換法則と結合法則は、一般的な代数的構造でも成り立つことが多いので(例えば、実数の加算と乗算など)、吸収法則が束を特徴付けていると言える。ブール代数やハイティング代数は束の一種なので、これらも吸収法則に従う。
古典論理学がブール代数のモデルであるように、直観論理とハイティング代数には同様の関係がある。そのため、それぞれ論理和と論理積に対応する演算 ∨と∧ に吸収法則が成り立つ。
a∨(a∧b)=a∧(a∨b)=a
ここで、=は論理式における同値の意味である。
吸収法則は、適切さの論理、線形論理、部分構造論理では成り立たない。
従って、
(01)により、
(02)
「記号」を変へると、
P∨(P&Q)=P&(P∨Q)=P
ここで、= は論理式における同値の意味である。
然るに、
(03)
(ⅰ)
1 (1)P∨(P&Q) A
2 (2)P A
3(3) P&Q A
3(4) P 3&I
1 (5)P 12234∨E
(ⅱ)
1 (1)P A
1 (2)P∨(P&Q) 1∨I
従って、
(03)により、
(04)
① P∨(P&Q)
② P
に於いて、
①=② である。
(05)
(ⅲ)
1(1)P&(P∨Q) A
1(2)P 1&E
(ⅳ)
1(1)P A
1(2)P∨Q 1∨I
1(3)P&(P∨Q) 12&I
従って、
(05)により、
(06)
③ P&(P∨Q)
④ P
に於いて、
③=④ である。
従って、
(04)(06)により、
(07)
① P∨(P&Q)
② P
③ P&(P∨Q)
④ P
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
従って、
(07)により、
(08)
「番号」を付け直すと、
① P∨(P&Q)
② P&(P∨Q)
③ P
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(08)により、
(09)
「記号」を変へると、
① a∨(a∧b)
② a∧(a∨b)
③ a
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(09)により、
(10)
① aまたは(aであってb)
② aであって(aまたはb)
③ a
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(11)
① 日本人または(日本人の男性)
② 日本人であって(日本人または男性)
といふのは、要するに、
③ 日本人(日本人の男性と女性)
に、他ならない。
従って、
(11)により、
(12)
① a∨(a∧b)
② a∧(a∨b)
③ a
に於いて、
①=②=③ である。
といふこと、すなはち、
① aまたは(aであってb)
② aであって(aまたはb)
③ a
に於いて、
①=②=③ である。
といふことは、「当然」である。
(01)
① ~(P& Q)
といふ「式」は、
①(Pであって、尚且つ、Qである。)といふことはない。
といふ「意味」である。
然るに、
(02)
② ~P∨~Q
といふ「式」は、
② Pでないか、または、Qでないか、または、その両方である。
といふ「意味」である。
然るに、
(03)
①(Pであって、尚且つ、Qである。)といふことはない。
② Pでないか、または、Qでないか、または、その両方である。
に於いて、
① ならば、② であり、
② ならば、① である。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① ~(P& Q)
② ~P∨~Q
に於いて、
①=② である。
(05)
③ ~(P∨ Q)
といふ「式」は、
③(Pであるか、または、Qであるか、または、その両方である。)といふことはない。
といふ「意味」である。
然るに、
(06)
④ ~P&~Q
といふ「式」は、
④ Pではないし、Qでもない。
といふ「意味」である。
然るに、
(07)
③(Pであるか、または、Qであるか、または、その両方である。)といふことはない。
④ Pではないし、Qでもない。
に於いて、
③ ならば、④ であり、
④ ならば、③ である。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
③ ~(P∨ Q)
④ ~P&~Q
に於いて、
③=④ である。
従って、
(04)(08)により、
(09)
① ~(P& Q)
② ~P∨~Q
③ ~(P∨ Q)
④ ~P&~Q
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。ものの、
これらの「等式」を、「ド・モルガンの法則」といふ。
従って、
(01)~(09)により、
(10)
①(Pであって、尚且つ、Qである。)といふことはない。
② Pでないか、または、Qでないか、または、その両方である。
③(Pであるか、または、Qであるか、または、その両方である。)といふことはない。
④ Pではないし、Qでもない。
に於いて、すなはち、
①(Qであって、尚且つ、Pである。)といふことはない。
② Qでないか、または、Pでないか、または、その両方である。
③(Qであるか、または、Pであるか、または、その両方である。)といふことはない。
④ Qではないし、Pでもない。
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
といふことが、「理解」出来るのであれば、その人は既に、「ド・モルガンの法則」を知ってゐる。
といふ、ことになる。
従って、
(09)(10)により、
(11)
① ~(P& Q)
② ~P∨~Q
③ ~(P∨ Q)
④ ~P&~Q
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
といふ「ド・モルガンの法則」は、「当り前」のことを、述べてゐるに、過ぎない。
のであって、そのため、わざわざ、
のやうな「ベン図」を用ひて、「説明」する「必要」は無い。
然るに、
(12)
(ⅰ)
1 (1) ~(P& Q) A
2 (2) ~(~P∨~Q) A
3 (3) ~P A
3 (4) ~P∨~Q 3∨I
23 (5) ~(~P∨~Q)&
(~P∨~Q) 24&I
2 (6) ~~P 3RAA
2 (7) P 6DN
8(8) ~Q A
8(9) ~P∨~Q 8∨I
2 8(ア) ~(~P∨~Q)&
(~P∨~Q) 29&I
2 (イ) ~~Q 8アRAA
2 (ウ) Q イDN
2 (エ) P& Q 7ウ&I
12 (オ) ~(P& Q)&
(P& Q) 1エ&I
1 (カ)~~(~P∨~Q) 2オRAA
1 (キ) ~P∨~Q カDN
(ⅱ)
1 (1) ~P∨~Q A
2 (2) P& Q A
3 (3) ~P A
2 (4) P 2&E
23 (5) ~P& P 34&I
3 (6) ~(P& Q) 25RAA
7(7) ~Q A
2 (8) Q 2&E
2 7(9) ~Q&Q 78&I
7(ア) ~(P& Q) 29RAA
1 (イ) ~(P& Q) 1367ア∨E
(ⅲ)
1 (1)~(P∨ Q) A
2 (2) P A
2 (3) P∨ Q 2∨I
12 (4)~(P∨ Q)&
(P∨ Q) 13&I
1 (5) ~P 24RAA
6(6) Q A
6(7) P∨ Q 6∨I
1 6(8)~(P∨ Q)&
(P∨ Q) 17&I
1 (9) ~Q 6&RAA
1 (ア) ~P&~Q 59&I
(ⅳ)
1 (1) ~P&~Q A
2 (2) P∨ Q A
1 (3) ~P 1&E
4 (4) P A
1 4 (5) ~P&P 34&I
4 (6)~(~P&~Q) 15RAA
1 (7) ~Q 1&E
8(8) Q A
1 8(9) ~Q&Q 78&I
8(ア)~(~P&~Q) 19RAA
2 (イ)~(~P&~Q) 2468ア∨E
12 (ウ) (~P&~Q)&
~(~P&~Q) 1イ&I
1 (エ)~( P∨ Q) 2ウRAA
従って、
(12)により、
(13)
① ~(P& Q)
② ~P∨~Q
③ ~(P∨ Q)
④ ~P&~Q
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
といふ「等式(ド・モルガンの法則)」は、「命題計算」としても、「正しい」。
然るに、
(14)
(12)で示した、例へば、
(ⅰ)
1 (1) ~(P& Q) A
2 (2) ~(~P∨~Q) A
3 (3) ~P A
3 (4) ~P∨~Q 3∨I
23 (5) ~(~P∨~Q)&
(~P∨~Q) 24&I
2 (6) ~~P 3RAA
2 (7) P 6DN
8(8) ~Q A
8(9) ~P∨~Q 8∨I
2 8(ア) ~(~P∨~Q)&
(~P∨~Q) 29&I
2 (イ) ~~Q 8アRAA
2 (ウ) Q イDN
2 (エ) P& Q 7ウ&I
12 (オ) ~(P& Q)&
(P& Q) 1エ&I
1 (カ)~~(~P∨~Q) 2オRAA
1 (キ) ~P∨~Q カDN
といふ「計算」を「説明」すると、
(a)
1 (1) ~(P& Q) A
2 (2) ~(~P∨~Q) A
といふ「2つの仮定」は、「矛盾」してゐるため、その「矛盾」を示すことが出来れば、「背理法(RAA)」により、
(1) ~(P& Q)
(2) ~(~P∨~Q)
といふ「2つの仮定」の、「どちらか一方」を、「否定」することが出来る。
(b)
2 (2) ~(~P∨~Q) A
3 (3) ~P A
といふ「2つの仮定」は、「矛盾」してゐるため、その「矛盾」を示すことが出来れば、「背理法(RAA)」により、
(2) ~(~P∨~Q)
(3) ~P
といふ「2つの仮定」の、例へば、
(3) ~P
を「否定」することが出来る。
(c)
実際に、
23 (5) ~(~P∨~Q)&
(~P∨~Q) 24&I
といふ「矛盾」が示せたため、「背理法(RAA)」により、
2 (6) ~~P 3RAA
となって、次に、「二重否定(DN)」により、
2 (7) P 6DN
となる。
(d)
同様にして、
2 (ウ) Q イDN
を得る。
(e)
2 (7) P 6DN
2 (ウ) Q イDN
から、
2 (エ) P& Q 7ウ&I
を得る。
(e)
1 (1) ~(P& Q) A
2 (エ) P& Q 7ウ&I
から、
12 (オ) ~(P& Q)&
(P& Q) 1エ&I
といふ「矛盾」を得ることが出来た。
従って、
(a)(e)により、
(f)
2 (2) ~(~P∨~Q) A
を「否定」して、
1 (カ)~~(~P∨~Q) 2オRAA
となって、「二重否定(DN)」により、
1 (キ) ~P∨~Q カDN
となる。
従って、
(a)(f)により、
(g)
1 (1) ~(P& Q) A
から、
1 (キ) ~P∨~Q カDN
を得ることになる。
従って、
(14)(a)により、
(15)
12 (オ) ~(P& Q)&
(P& Q) 1エ&I
1 (カ)~~(~P∨~Q) 2オRAA
1 (キ) ~P∨~Q カDN
といふ「計算」の他に、
12 (オ) ~(P& Q)&
(P& Q) 1エ&I
2 (カ) ~~(P& Q) 1オRAA
2 (キ) P& Q カDN
といふ「計算」も、「可能」である。
然るに、
(16)
(ⅰ)
1 (1) ~(P& Q) A
2 (2) ~(~P∨~Q) A
3 (3) ~P A
3 (4) ~P∨~Q 3∨I
23 (5) ~(~P∨~Q)&
(~P∨~Q) 24&I
2 (6) ~~P 3RAA
2 (7) P 6DN
8(8) ~Q A
8(9) ~P∨~Q 8∨I
2 8(ア) ~(~P∨~Q)&
(~P∨~Q) 29&I
2 (イ) ~~Q 8アRAA
2 (ウ) Q イDN
2 (エ) P& Q 7ウ&I
12 (オ) ~(P& Q)&
(P& Q) 1エ&I
2 (カ) ~~(P& Q) 1オRAA
2 (キ) P& Q カDN
(ⅱ)
1 (1) P& Q A
2 (2) ~P∨~Q A
1 (3) P 1&E
4 (4) ~P A
1 4 (5) P&~P 34&E
4 (6) ~(P& Q) 15RAA
1 (7) Q 1&E
8(8) ~Q A
1 8(9) Q&~Q 78&I
8(ア) ~(P& Q) 19RAA
2 (イ) ~(P& Q) 2468ア∨E
12 (ウ) (P& Q)&
~(P& Q) 1イ&I
1 (エ)~(~P∨~Q) 2ウRAA
従って、
(16)により、
(17)
① P& Q
② ~(~P∨~Q)
に於いて、すなはち、
① Pであって、尚且つ、Qである。
②(Pでないか、または、Qでないか、または、その両方である。)といふことはない。
に於いて、
①=② である。