日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(597)「敢不」と「不敢」(Ⅲ)。

2020-05-03 19:22:13 | 訓読

(01)
  借虎威(戦國策)
① 虎求(百獸)而食(之)得(狐)。
② 狐曰子無〔敢食(我)〕也。
③ 天帝使〔我長(百獸)〕。
④ 今子食(我)是逆(天帝命)也。
⑤ 子以(我)爲〔不(信)〕吾爲(子)先行。
⑥ 子隨(我後)觀。
⑦ 百獸之見(我)而敢不(走)乎。
(借虎威、戦國策)
従って、
(01)により、
(02)
① 虎(百獸)求而(之)食(狐)得。
② 狐曰子〔敢(我)食〕無也。
③ 天帝〔我(百獸)長〕使。
④ 今子(我)食是(天帝命)逆也。
⑤ 子(我)以〔(信)不〕爲吾(子)爲先行。
⑥ 子(我後)隨觀。
⑦ 百獸之(我)見而敢(走)不乎。
従って、
(02)により、
(03)
① 虎百獸を求めて之を食らひ狐を得たり。
② 狐曰く、子敢へて我を食らふこと無かれ。
③ 天帝、我をして百獸に長たら使む。
④ 今、子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。
⑤ 子我を以て信なら不と爲さば、吾子の爲に先行せむ。
⑥ 子我が後に隨ひて觀よ。
⑦ 百獸之我を見て敢へて走ら不らんや、と。
然るに、
(04)
⑦ 敢不(走)乎⇒
⑦ 敢(走)不乎=
⑦ 敢へて(走ら)ざらんや=
⑦ 敢へて逃げないなどといふことが、あるだろうか。
は「反語」である。
cf.
】②《動》にげる。はや足でにげる
(学研 緩和大辞典、1978年、1269頁)
従って、
(04)により、
(05)
「番号」を付け直すと、
① 敢不走(敢へて走らざらんや)。
敢不走(敢へて走らずんばあらず)。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(06)
① 敢不走乎(敢へて走らざらんや)。
ではなく、
① 敢不走(敢へて走らず)。
であるならば、「反語」ではない
従って、
(05)(06)により、
(07)
①  敢不走(敢へて走らず)。
② 不敢不走(敢へて走らずんばあらず)。
に於いて、
① は、② の「否定」であって、
② は、① の「否定」である。
然るに、
(08)
①「逃げたくない」といふ「気持ち」。
②「逃げたい」   といふ「気持ち」。
といふ、「(アンビバレントな、)二つの気持ち」があって、
① の方が、②よりも、大きい。のであれば、
① 敢不走(敢へて走らず)。といふことなる。
従って、
(07)(08)により、
(09)
①「逃げたくない」といふ「気持ち」。
②「逃げたい」  といふ「気持ち」。
といふ、「(アンビバレントな、)二つの気持ち」があって、
② の方が、① よりも、大きい。のであれば、
② 不敢不走(敢へて走らずんばあらず)。といふことになる。
従って、
(07)(08)(09)により、
(10)
①   敢不走(敢へて走らず)。
② 不敢不走(敢へて走らずんばあらず)。
に於いて、「順番」に、
① 敢へて逃げない。
② 敢へて逃げる。
といふことになる。
然るに、
(11)
「不走(逃げない)」といふことは、
 「止(とどまる)」といふことである。
従って、
(10)(11)により、
(12)
①  敢止(敢へて止まる)。
② 不敢止(敢へて止まらず)。
に於いて、「順番」に、
① 敢へて逃げない。
② 敢へて逃げる。
といふことになる。
従って、
(10)(11)(12)により、
(13)
「順番」を付け直すと、
①  敢不走(敢へて走らず)。
②  敢  止(敢へて止まる)。
③ 不敢不走(敢へて走らずんばあらず)。
④ 不敢  止(敢へて止まらず)。
に於いて、
①=② であって、
③=④ であって、
① と ③ は「矛盾」し、
② と ④ は「矛盾」する。
従って、
(13)により、
(14)
①  敢視(敢へて視る)。
② 不敢視(敢へて視ず)。
に於いて、
① と ② は「矛盾」する。
従って、
(09)(14)により、
(15)
①「視たい」  といふ「気持ち」。
②「視たくない」といふ「気持ち」。
といふ、「(アンビバレントな、)二つの気持ち」があって、
② の方が、① よりも、大きい。のであれば、
② 不敢視(敢へて視ず)。といふことになる。
従って、
(15)により、
(16)
② 不敢視(敢へて視ず)。といふ「漢文(訓読)」は、たとへば、
② 視たくとも(勇気が無くて)視ない。
といふ「意味」になる。
然るに、
(17)
①  敢視(敢へて視る)。
② 不敢視(敢へて視ず)。
③ 敢不視(敢へて視ず)。
であるため、「訓読」としては、
②=③ である。
然るに、
(18)
①  敢視。
② 不敢視。
③ 敢不視。
の於いて、「漢文の語順」としては、
① の「否定」は、飽くまでも、
② であって、
③ ではない。
然るに、
(19)
(ⅰ)① の方が、② よりも、大きい。
(ⅱ)② の方が、① よりも、大きい。
に於いて、
(ⅰ)は、(ⅱ)の「否定」であり、
(ⅱ)は、(ⅰ)の「否定」である。
従って、
(15)~(19)により、
(20)
①  敢視(敢へて視る)。
② 不敢視(敢へて視ず)。
に於いて、
① に対する、
② の場合は、
② 視たいのではあるが(それだけの勇気が無くて)視ない。
といふ「意味」になる。
然るに、
(21)
蘇秦といふ者は、鬼谷先生を師とす。
初め出游し、困しみて帰る。
妻は機を下らず、嫂は為に炊がず。
是に至り、従約の長となり、六国に并せ相たり。
行きて洛陽を過ぎる。車騎輜重、王者に擬す。
昆弟妻嫂、目を側めて敢て視ず、俯伏して侍して食を取る。
(三省堂、明解古典シリーズ18、1973年)
従って、
(20)(21)により、
(22)
② 昆弟妻嫂、目を側めて敢へて視ず、俯伏して侍して食を取る。
に於ける、
敢へて視ず
の場合は、
不敢視(敢へて視ず)。
でなければ、ならない。
然るに、
(23)
② 不敢視
(三省堂、明解古典シリーズ18、1973年)
従って、
(22)(23)により、
(24)
果たして、
② 昆弟妻嫂、目を側めて敢へて視ず、俯伏して侍して食を取る。
に於ける、
② 敢へて視ず。
の場合は、
② 不敢視(敢へて視ず)。
である。
従って、
(20)~(24)により、
(25)
② 不敢視
といふ「漢文」は、
② 蘇秦を視たいのではあるが(兄弟・妻・兄嫁には、それだけの勇気が無くて、まともに、蘇秦を)視ることが出来ない。
といふ「意味」になる。


(596)「(命題論理と集合の)分配法則」とその「否定」(Ⅱ)。

2020-05-03 12:23:38 | 「は」と「が」

(01)
(ⅰ)
1  (1) P∨(Q&R)    A
 2 (2) P          A
 2 (2) P∨Q        2∨I
 2 (3) P∨R        2∨I
 2 (4)(P∨Q)&(P∨R) 23&I
  5(5)    Q&R     A
  5(6)    Q       5&E
  5(7)      R     5&E
  5(8) P∨Q        6∨I
  5(9)       P∨R  7∨I
  5(ア)(P∨Q)&(P∨R) 89&I
1  (イ)(P∨Q)&(P∨R) 1245ア∨E
(ⅱ)
1      (1) (P∨Q)&(P∨R) A
1      (2)  P∨Q        1&E
 3     (3)  P          A
 3     (4)~~P          3DN
 3     (5)~~P∨Q        4∨I
 3     (6) ~P→Q        5含意の定義
  7    (7)    Q        A
  7    (8)~~P∨Q        7∨I
  7    (9) ~P→Q        8含意の定義
1      (ア) ~P→Q        23679∨E
1      (イ)        P∨R  A
    ウ  (ウ)        P    A
    ウ  (エ)      ~~P    ウDN
    ウ  (オ)      ~~P∨R  エ∨I
    ウ  (カ)       ~P→R  オ含意の定義
     キ (キ)          R  A
     キ (ク)      ~~P∨R  ∨I
     キ (ケ)       ~P→R  ク含意の定義
1      (コ)       ~P→R  イウカキケ∨E
      サ(サ) ~P          A
1     サ(シ)    Q        アサMPP
1     サ(ス)          R  コサMPP
1     サ(セ)    Q&R      シス&I
1      (ソ)~P→(Q&R)     サセCP
1      (タ) P∨(Q&R)     ソ含意の定義
従って、
(01)により、
(02)
①  P∨(Q&R)
②(P∨Q)&(P∨R)
に於いて、
①=② である。
従って、
(02)により、
(03)
③ ~{P∨(Q&R)}
④ ~{(P∨Q)&(P∨R)}
に於いて、
③=④ でなければ、ならない。
然るに、
(04)
(ⅲ)
1(1) ~{P∨(Q&R)} A
1(2) ~P&~(Q&R)  1ド・モルガンの法則
1(3) ~P         2&E
1(4)    ~(Q&R)  2&E
1(5)    ~Q∨~R   4ド・モルガンの法則
1(6)~P&(~Q∨~R)  15&I
(ⅴ)
1(1)~P&(~Q∨~R)  A
1(2)~P          1&E
1(3)    ~Q∨~R   1&E
1(4)   ~(Q&R)   3ド・モルガンの法則
1(5)~P&~(Q&R)   24&I
1(6)~{P∨(Q&R)}  5ド・モルガンの法則
従って、
(04)により、
(05)
③ ~{P∨(Q&R)}
⑤ ~P&(~Q∨~R)
に於いて、
③=⑤ である。
然るに、
(06)
(ⅳ)
1  (1) ~{(P∨Q)&(P∨R)} A
1  (2) ~(P∨Q)∨~(P∨R)  1ド・モルガンの法則
 3 (3) ~(P∨Q)         A
 3 (4) ~P&~Q          3ド・モルガンの法則
 3 (5) ~P             4&E
 3 (6)    ~Q          4&E
 3 (7)    ~Q∨~R       6∨I
 3 (8)~P&(~Q∨~R)      57&I
  9(9)        ~(P∨R)  A
  9(ア)        ~P&~R   9ド・モルガンの法則
  9(イ)        ~P      ア&E
  9(ウ)           ~R   ア&E
  9(エ)        ~Q∨~R   ウ∨I
  9(オ)    ~P&(~Q∨~R)  イエ&I
1  (カ)    ~P&(~Q∨~R)  2389オ∨E
(ⅴ)
1  (1) ~P&(~Q∨~R)    A
1  (2) ~P            1&E
1  (3)    (~Q∨~R)    1&E
 4 (4)     ~Q        A
14 (5)  ~P&~Q        23&I
14 (6) ~(P∨Q)        5ド・モルガンの法則
14 (7) ~(P∨Q)∨~(P∨R) 6∨I
  8(8)        ~R     A
1 8(9)     ~P&~R     28&I
1 8(ア)     ~(P∨R)    9ド・モルガンの法則
1 8(イ) ~(P∨Q)∨~(P∨R) ア∨I
1  (ウ) ~(P∨Q)∨~(P∨R) 3478イ∨E
1  (エ)~{(P∨Q)&(P∨R)} ウ、ド・モルガンの法則
従って、
(06)により、
(07)
④ ~{(P∨Q)&(P∨R)}
⑤ ~P&(~Q∨~R)
に於いて、
④=⑤ である。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
③ ~{P∨(Q&R)}
④ ~{(P∨Q)&(P∨R)}
⑤ ~P&(~Q∨~R)
に於いて、
③=④=⑤ である。
従って、
(02)(08)により、
(09)
①  P∨(Q&R)
②(P∨Q)&(P∨R)
⑤  ~P&(~Q∨~R)
に於いて、
①=② であるため、
① の「否定」と、
② の「否定」は、両方とも、
⑤  ~P&(~Q∨~R)
である。
従って、
(09)により、
(10)
①  P∨( Q&R)
②(P∨Q)&(P∨R)
⑤ ~P&(~Q∨~R)
に於いて、
① と ⑤ は、「矛盾」し、
② と ⑤ も、「矛盾」する。
然るに、
(11)
(ⅰ)
1   (1)  P∨(  Q&  R)  A
 2  (2) ~P&(~Q∨~R)  A
1   (3) ~P→(  Q&  R)  1含意の定義
 2  (4) ~P          2&E
12  (5)      Q& R   34MPP
 2  (6)     ~Q∨~R   2&E
  7 (7)     ~Q      A
12  (8)      Q      5&E
127 (9)     ~Q&Q    78&I
 27 (ア)~{P∨(  Q&  R)} 19RAA
   イ(イ)        ~R   A
12  (ウ)         R   5&E
12 イ(エ)      ~R&R   イウ&I
 2 イ(オ)~{P∨(  Q&  R)} 1エRAA
 2  (カ)~{P∨(  Q&  R)} 67アイオ∨E
12  (キ) {P∨(  Q&  R)} 1カ&I
(ⅱ)
1       (1) (P∨Q)&(P∨R) A
1       (2)  P∨Q        1&E
 3      (3)  P          A
 3      (4)~~P          3DN
 3      (5)~~P∨Q        4∨I
 3      (6) ~P→Q        5含意の定義
  7     (7)    Q        A
  7     (8)~~P∨Q        7∨I
  7     (9) ~P→Q        8含意の定義
1       (ア) ~P→Q        23679∨E
1       (イ)        P∨R  A
    ウ   (ウ)        P    A
    ウ   (エ)      ~~P    ウDN
    ウ   (オ)      ~~P∨R  エ∨I
    ウ   (カ)       ~P→R  オ含意の定義
     キ  (キ)          R  A
     キ  (ク)      ~~P∨R  ∨I
     キ  (ケ)       ~P→R  ク含意の定義
1       (コ)       ~P→R  イウカキケ∨E
      サ (サ) ~P          A
1     サ (シ)    Q        アサMPP
1     サ (ス)          R  コサMPP
1     サ (セ)    Q&R      シス&I
1       (ソ)~P→(Q&R)     サセCP
1       (タ) P∨( Q& R)   ソ含意の定義
       チ(ツ)~P&(~Q∨~R)   A
 ―「以下の計算」は、(ⅰ)の(3)~(キ)と「同じ」。―
従って、
(10)(11)により、
(12)
①  P∨( Q&R)
②(P∨Q)&(P∨R)
⑤ ~P&(~Q∨~R)
に於いて、確かに、
① と ⑤ は、「矛盾」し、
② と ⑤ も、「矛盾」する。
然るに、
(13)
P=(xは集合Aの要素である。)
Q=(xは集合Bの要素である。)
R=(xは集合Cの要素である。)
とするならば、
①  P∨( Q& R)
⑤ ~P&(~Q∨~R)
といふ「式」は、
① xは集合Aと(集合Bと集合Cの積集合)の和集合の要素である。
⑤ xは集合Aの補集合と(集合Bの補集合と、集合Cの補集合の和集合)との積集合の要素である。
といふ「命題関数」に、「等しい」。
従って、
(12)(13)により、
(14)
①  A∪( B∩ C)
⑤ ~A∩(~B∪~C)
に於いて、
① の要素は、⑤ の要素ではなく、
⑤ の要素は、① の要素ではない。
従って、
(01)~(14)により、
(15)
①  A∪( B∩ C)
⑤ ~A∩(~B∪~C)
に於いて、
① は、⑤ の「補集合」であり、
⑤ は、① の「補集合」である。
といふことは、「命題論理」としても、「正しい」。