日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(621)「矛盾・韓非子」の「述語論理」(Ⅵ)。

2020-05-21 18:26:44 | 漢文・述語論理

(01)
① いかなる矛でも陥せない盾が存在する。⇔
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}⇔
① あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛ならば、yはxを陥さない。
② いかなる盾をも陥す矛が存在する。⇔
② ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}⇔
② あるyは矛であり、すべてのxについて、xが盾ならば、yはxを陥す。
然るに、
(02)
1   (1) ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
 2  (2)    盾a&∀y(矛y→~陥ya)  A
 2  (3)    盾a              2&E
 2  (4)       ∀y(矛y→~陥ya)  2&E
 2  (5)          矛b→~陥ba   4UE
  6 (6) ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} A
   7(7)    矛b&∀x(盾x→ 陥bx)  A
   7(8)    矛b              7&E
   7(9)       ∀x(盾x→ 陥bx)  7&E
   7(ア)          盾a→ 陥ba   9UE
 2 7(イ)              陥ba   3アMPP
 2 7(ウ)             ~陥ba   58MPP
 2 7(エ)         陥ba&~陥ba   イウ&I
 26 (オ)         陥ba&~陥ba   67エEE
1 6 (カ)         陥ba&~陥ba   12オEE
1   (キ)~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} 6カRAA
  6 (ク)~∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} 1キRAA
従って、
(02)により、
(03)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}├ ~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}
② ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}├ ~∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
といふ「連式(Sequents)」、すなはち、
① いかなる矛でも陥せない盾が存在する。故に、いかなる盾をも陥す矛は存在しない。
② いかなる盾をも陥す矛が存在する。  故に、いかなる矛でも陥せない盾は存在しない。
といふ「連式(Sequents)」は「妥当(Valid)」である。
然るに、
(04)
1     (1) ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
 2    (2)    盾a&∀y(矛y→~陥ya)  A
 2    (3)    盾a              2&E
 2    (4)       ∀y(矛y→~陥ya)  2&E
 2    (5)          矛b→~陥ba   4UE
  6   (6) ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} A
   7  (7)    矛b&∀x(盾x→ 陥bx)  A
   7  (8)    矛b              7&E
   7  (9)       ∀x(盾x→ 陥bx)  7&E
   7  (ア)          盾a→ 陥ba   9UE
 2 7  (イ)              陥ba   3アMPP
 2 7  (ウ)             ~陥ba   58MPP
 2 7  (エ)         陥ba&~陥ba   イウ&I
 26   (オ)         陥ba&~陥ba   67エEE
1 6   (カ)         陥ba&~陥ba   12オEE
1     (キ)~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} 6カRAA
1     (ク)∀y~{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} キ量化子の関係
1     (ケ)  ~{矛b&∀x(盾x→ 陥bx)} クUE
1     (コ)  ~矛b∨~∀x(盾x→ 陥bx)  ケ、ド・モルガンの法則
1     (サ)   矛b→~∀x(盾x→ 陥bx)  コ含意の定義
    シ (シ)   矛b               A
1   シ (ス)      ~∀x(盾x→ 陥bx)  サシMPP
1   シ (セ)      ∃x~(盾x→ 陥bx)  ス量化子の関係
     ソ(ソ)        ~(盾a→ 陥ba)  A
     ソ(タ)        ~(~盾a∨陥ba)  ソ含意の定義
     ソ(チ)          盾a&~陥ba   タ、ド・モルガンの法則
     ソ(ツ)       ∃x(盾x&~陥bx)  チEI
1   シ (テ)       ∃x(盾x&~陥bx)  セソツEE
1     (ト)   矛b→ ∃x(盾x&~陥bx)  シテCP
1     (ナ)∀y{矛y→ ∃x(盾x&~陥yx)} トUI
1     (ニ)すべてのyについて、yが矛ならば、あるxは盾であって、yはxを陥さない。トUI
従って、
(04)により、
(05)
③ ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}├ ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}
といふ「連式(Sequents)」、すなはち、
③ いかなる矛でも陥せない盾が存在する。故に、すべての矛は、ある盾を陥せない。
といふ「連式」も、「妥当(Valid)」である。
従って、
(04)(05)により、
(06)
④ ∃y{矛y&∀x(盾x→陥yx)}├ ∀x{盾x→∃y(矛y&陥yx)}
といふ「連式(Sequents)」、すなはち、
④ いかなる盾でも陥す矛が存在する。故に、すべての盾を、ある矛は陥す。
といふ「連式」も、「妥当(Valid)」である。
然るに、
(04)(06)により、
(07)
③ いかなる矛でも陥せない盾が存在する。故に、すべての矛は、ある盾を陥せない。
④ いかなる盾でも陥す矛が存在する。  故に、すべての盾を、ある矛は陥す。
に於いて、
③ と ④ は、「矛盾」する。


(620)「矛盾・韓非子」の「述語論理」(Ⅴ)。

2020-05-21 17:15:01 | 漢文・述語論理

(01)
 ― 矛盾・韓非子 ―
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、吾盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。誉(之)曰、吾盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざるなり=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がゐた。自分の盾を誉めて言った。 私の盾を突き通すことができるものはない。 又其の矛を誉めて言った。 私の矛の鋭いことには、どんな物でも突き通すことができないものはない。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の(盾と矛を売る)人は、答へることが、出来なかった。
従って、
(01)により、
(02)
① いかなる矛でも陥せない盾が存在する。⇔
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}⇔
① あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛ならば、yはxを陥さない。
② いかなる盾をも陥す矛が存在する。⇔
② ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}⇔
② あるyは矛であり、すべてのxについて、xが盾ならば、yはxを陥す。
然るに、
(03)
1   (1) ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
 2  (2)    盾a&∀y(矛y→~陥ya)  A
 2  (3)    盾a              2&E
 2  (4)       ∀y(矛y→~陥ya)  2&E
 2  (5)          矛b→~陥ba   4UE
  6 (6) ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} A
   7(7)    矛b&∀x(盾x→ 陥bx)  A
   7(8)    矛b              7&E
   7(9)       ∀x(盾x→ 陥bx)  7&E
   7(ア)          盾a→ 陥ba   9UE
 2 7(イ)              陥ba   3アMPP
 2 7(ウ)             ~陥ba   58MPP
 2 7(エ)         陥ba&~陥ba   イウ&I
 26 (オ)         陥ba&~陥ba   67エEE
1 6 (カ)         陥ba&~陥ba   12オEE
1   (キ)~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} 6カRAA
  6 (ク)~∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} 1キRAA
従って、
(03)により、
(04)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}├ ~∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}
② ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)}├ ~∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
といふ「連式(Sequents)」、すなはち、
① いかなる矛でも陥せない盾が存在する。故に、いかなる盾をも陥す矛は存在しない
② いかなる盾をも陥す矛が存在する。  故に、いかなる矛でも陥せない盾は存在しない
といふ「連式(Sequents)」は「妥当(Valid)」である。
然るに、
(05)
夫不可陷之盾与無不陷之矛、不可同世而立。今堯舜之不可両譽、矛盾之説也=
夫不〔可(陷)〕之盾與[無〔不(陷)〕之矛]、不[可〔同(世)而立〕]。今堯舜之不〔可(両譽)〕、矛盾之説也⇒
夫れ〔(陷す)可がら〕不るの盾と[〔(陷さ)不る〕無きの矛]とは、[〔(世を)同じくして立つ〕可から]不。今堯舜の〔(両つながら譽む)可から〕不るは、矛盾の説なり=
いかなる矛であっても、突き通すことが出来ない「盾」と、いかなる盾であってあっても、突き通さないことが無い「矛」とは、同時に存在することはできない。堯と舜とを同時に誉めたたへることが出来ないのは、この「盾と矛の例へ」と同じである。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
「韓非の言ってゐること」は、「漢文」としても、「日本語」としても、「述語論理」としても、「正しい」。
cf.
儒教思想を批判した韓非は、儒者が堯・舜を、万人を感化した聖人であるとして賞賛するのを反対して、堯が万人を感化したなら、もはや舜はその後をうけて人民を感化する必要はないし、舜が堯にかわって万人を感化する必要があったとするならば、堯は聖人として不十分であったという証拠になる。という。したがって堯・舜ふたりとも聖人であるというのは矛盾であるとして、この話を引用したのである。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、34頁)


(619)「矛盾・韓非子」の「述語論理」(Ⅳ)。

2020-05-21 13:18:24 | 漢文・述語論理

(01)
1    (1)  ∃x(吾盾x)&∃y(吾矛y)       A
1    (2)  ∃x(吾盾x)               1&E
 3   (3)     吾盾a                A
1    (4)          ∃y(吾矛y)       1&E
  5  (5)             吾矛b        A
   6 (6) ~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  A
   6 (7) ∀x~{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  6量化子の関係
   6 (8)   ~{吾盾a&∃y(吾矛y& 陥ya)   7UE
   6 (9)   ~吾盾a∨~∃y(吾矛y& 陥ya)   8ド・モルガンの法則
   6 (ア)    吾盾a→~∃y(吾矛y& 陥ya)   9ド・モルガンの法則
 3 6 (イ)        ~∃y(吾矛y& 陥ya)   3アMPP
 3 6 (ウ)        ∀y~(吾矛y& 陥ya)   イ量化子の関係
 3 6 (エ)          ~(吾矛b& 陥ba)   ウUE
 3 6 (カ)           ~吾矛b∨~陥ba    エ、ド・モルガンの法則
 3 6 (キ)            吾矛b→~陥ba    カ含意の定義
 356 (ク)                ~陥ba    5キMPP
    ケ(ケ) ~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}  A
    ケ(コ) ∀y~{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}  ケ量化子の関係  
    ケ(サ)   ~{吾矛b&∃x(吾盾x&~陥bx)}  コUE
    ケ(シ)   ~吾矛b∨~∃x(吾盾x&~陥bx)   サ含意の定義
    ケ(ス)    吾矛b→~∃x(吾盾x&~陥bx)   シ含意の定義
  5 ケ(セ)        ~∃x(吾盾x&~陥bx)   5スMPP
  5 ケ(ソ)        ∀x~(吾盾x&~陥bx)   セ量化子の関係
  5 ケ(タ)          ~(吾盾a&~陥ba)   ソUE
  5 ケ(チ)           ~吾盾a∨ 陥ba    タ含意の定義
  5 ケ(ツ)            吾盾a→ 陥ba    チ含意の定義
 35 ケ(テ)                 陥ba    3ツMPP
 356ケ(ト)            ~陥ba&陥ba    クテ&I
1 56ケ(ナ)            ~陥ba&陥ba    13トEE
1  6ケ(ニ)            ~陥ba&陥ba    15ナEE
1  6 (ヌ)~~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}  ケニRAA
1   ケ(ネ)  ∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}  ヌDN
1   ケ(ノ)~~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  6ニRAA
1   ケ(ハ)  ∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  ノDN
1  6ケ(ヒ)  ∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}&
          ∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  ネハ&I
   6ケ(フ)  ∃x(吾盾x)&∃y(吾矛y)→ 
          ∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}&
          ∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  1ヒCP
従って、
(01)により、
(02)
~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y&陥yx)},~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}├
 ∃x(吾盾x)&∃y(吾矛y)→∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&陥yx)}&∃x{吾盾x&∃y(吾矛y&陥yx)}.
といふ「連式(Sequent)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(02)により、
(03)
「日本語」で言ふと、
「あるxは私の盾であって、あるyが私の矛であって、yはxを陥すこと」が無く、「あるyは私の矛であって、あるxは私の盾であって、yはxを陥さないこと」が無い。が故に、
「あるxが私の盾であって、あるyが私の矛である」ならば「あるyは私の矛であって、あるxは私の盾であるが、yはxを陥さ、あるxは私の盾であって、あるyは私の矛であって、yはxを陥す」。
といふことになる。
従って、
(03)により、
(04)
「私の矛(y)は、私の盾(x)突き通すが、突き通さない。」
といふことになって、それ故、「矛盾する」。
然るに、
(05)
 ― 矛盾・韓非子 ―
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、吾盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。誉(之)曰、吾盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざるなり=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がゐた。自分の盾を誉めて言った。 私の盾を突き通すことができるものはない。 又其の矛を誉めて言った。 私の矛の鋭いことには、どんな物でも突き通すことができないものはない。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の(盾と矛を売る)人は、答へることが、出来なかった。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① 吾盾之堅、莫能陥也(吾が盾の堅きこと、能く陥す莫きなり)。
② 矛之利、於物無不陥也(吾が矛の利なること、物に於いて陥さ不る無きなり)。
といふ「命題」は、
① ~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}
② ~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}
といふ「命題」を、「含意」し、それ故、
③(陥yx&~陥yx)≡(yはxを突き通すが、突き通さない。)
といふ「矛盾」を生むことになる。