(01)
(ⅰ)
1 (1) P A
(2) P→P 11CP
(3) ~P∨P 2含意の定義
4 (4) ~P A
4 (5) ~P∨Q 4∨I
4 (6) P→Q 5含意の定義
4 (7)~~P∨(P→Q) 6∨I
8 (8) P A
8 (9) ~~P 8DN
8 (ア)~~P∨(P→Q) 9∨I
(イ)~~P∨(P→Q) 3478ア∨E
(ウ) ~P→(P→Q) イ含意の定義
エ(エ) ~P& P A
エ(オ) ~P エ&E
エ(カ) P→Q ウオMPP
エ(キ) P エ&E
エ(ク) Q カキMPP
(ケ)(~P&P)→Q エクCP
といふ「計算」に於いて、「左側」に書かれた「数字と片仮名」は、「仮定」が行はれた際の、「その行」を表してゐる。
従って、
(01)により、
(02)
(ⅰ)に於ける、「仮定」そのものを、「左側」に書くならば、
(ⅰ)は、
P (1) P A
(2) P→P 11CP
(3) ~P∨P 2含意の定義
~P (4) ~P A
~P (5) ~P∨Q 4∨I
~P (6) P→Q 5含意の定義
~P (7)~~P∨(P→Q) 6∨I
P (8) P A
P (9) ~~P 8DN
P (ア)~~P∨(P→Q) 9∨I
(イ)~~P∨(P→Q) 3478ア∨E
(ウ) ~P→(P→Q) イ含意の定義
~P&P(エ) ~P& P A
~P&P(オ) ~P エ&E
~P&P(カ) P→Q ウオMPP
~P&P(キ) P エ&E
~P&P(ク) Q カキMPP
(ケ)(~P&P)→Q エクCP
といふ風に、書くことになる。
従って、
(02)により、
(03)
(2) P→P 11CP
(3) ~P∨P 2含意の定義
(イ)~~P∨(P→Q) 3478ア∨E
(ウ) ~P→(P→Q) イ含意の定義
(ケ)(~P&P)→Q エクCP
とふいふ「5行」に関しては、「仮定」の数が「0個」である。
然るに、
(04)
「仮定」の数が「0個」である。
といふことは、「特定の仮定」に「依存」しなくとも「真」である。
といふことである。
然るに、
(05)
「特定の仮定」に「依存」しなくとも「真」である。
といふことは、「恒に真である」といふことである。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
(2) P→P(同一律)
(3)~P∨P(排中律)
(イ)~~P∨(P→Q)
(ウ) ~P→(P→Q)
(ケ)(~P&P)→Q
といふこれらの「5つ式」は、5つとも、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(07)
(ⅱ)
1 (1) Q→ P A
2 (2) ~P A
3(3) Q A
1 3(4) P 13MPP
123(5) ~P&P 24&I
12 (6)~Q 35RAA
1 (7)~P→~Q 26CP
(ⅲ)
1 (1) ~P→~Q A
2 (2) Q A
3(3) ~P A
1 3(4) ~Q 13MPP
123(5) Q&~Q 24&I
1 3(6)~~P 2RAA
1 3(7) P 6DN
1 (8) Q→ P 27CP
従って、
(07)により
(08)
② Q→ P
③ ~P→~Q
に於いて、すなはち、「対偶(Contraposition)」に於いて、
②=③ である。
従って、
(08)により、
(09)
P≡太陽は西から、昇る。
~P≡太陽は西からは昇らない。
Q≡バカボンのパパは天才である。
~Q≡バカボンのパパは天才ではない。
であるとして、
① Q→ P≡バカボンのパパが天才であるならば、太陽が西から昇る。
② ~P→~Q≡太陽が西から昇らないならば、バカボンのパパは天才ではない。
といふ「仮言命題」に於いて、
②=③ である。
然るに、
(10)
「常識」として、
~P≡太陽は西から昇らない(東から昇る)。
然るに、
(11)
(ⅱ)
1 (1) Q→P A
2(2) ~P A
12(3)~Q 12MTT
従って、
(08)~(11)により、
(12)
② Q→P≡バカボンのパパが天才であるならば、太陽が西から昇る。
といふ「言ひ方」は、
② ~Q≡バカボンのパパは天才ではない。
といふ「言ひ方」に「等しい」。
然るに、
(13)
(ⅱ)
1 (1) Q→P A
2(2) ~P A
12(3)~Q 12MTT
に対して、
(ⅲ)
1 (1) P A
1 (2)~Q∨P 1∨I
1 (3) Q→P 2含意の定義
4(4) ~P A
14(5)~Q 34MTT
である。
然るに、
(02)(13)により、
(14)
(ⅱ)
1 (1) Q→P A
2(2) ~P A
12(3)~Q 12MTT
(ⅲ)
1 (1) P A
1 (2)~Q∨P 1∨I
1 (3) Q→P 2含意の定義
4(4) ~P A
14(5)~Q 34MTT
は、「仮定」そのものを、「左側」に書くならば、
(ⅱ)
Q→P (1) Q→P A
~P(2) ~P A
Q→P,~P(3)~Q 12MTT
(ⅲ)
P (1) P A
P (2)~Q∨P 1∨I
P (3) Q→P 2含意の定義
~P(4) ~P A
P,~P(5)~Q 34MTT
従って、
(14)により、
(15)
(ⅱ)Q→P,~P(3)~Q 12MTT
(ⅲ) P,~P(5)~Q 34MTT
は、それぞれ、「結論」としては、
② ~Q≡バカボンのパパは天才ではない。
③ ~Q≡バカボンのパパは天才ではない。
で「同じ」であっても、
② バカボンのパパが天才であるならば、太陽が西から昇る。然るに、太陽は西からは昇らない。故に、バカボンのパパは天才ではない。
③ 太陽は西から昇る。然るに、太陽は西からは昇らない。故に、バカボンのパパは天才ではない。
となるため、「論証」としては、「同じ」ではない。
然るに、
(16)
③ 太陽は西から昇り、尚且つ、太陽は西からは昇らない。
といふことは、「矛盾(Contradiction)」に他ならない。
然るに、
(17)
矛盾からは何でも証明できる
⊥(矛盾)がかかわる推論規則がもう一つあります。それは、という内容を持った推論規則で、その名も「矛盾」です。
(小島寛之、証明と論理に強くなる、2017年、164頁)
従って、
(16)(17)により、
(18)
(ⅱ)P,~P├ Q
(ⅱ)太陽は西から昇る。然るに、太陽は西からは昇らない。故に、バカボンのパパは天才ではない。
といふ「連式(推論)」は、「健全(sound)」ではないが、「妥当(valid)」である。
然るに、
(06)(09)により、
(19)
③(~P&P)→Q
③(太陽が西から昇らず、尚且つ、太陽が西から昇る)ならば、バカボンのパパは天才である。
は、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(20)
③(~P&P)
③(太陽が西から昇らず、尚且つ、太陽が西から昇る)
といふ「矛盾」は、「恒に偽である」所の、「恒偽式(contradiction)」である。
然るに、
(21)
2 推論の規則
論理式 A と、論理式 A→B が共に真ならば、論理式 B も真である。
(沢田允、現代論理学入門、1962年、174頁)
然るに、
(19)(20)により、
(22)
③(~P&P)→Q
③(太陽が西から昇らず、尚且つ、太陽が西から昇る)ならば、バカボンのパパは天才である。
は「恒に真」であっても、
③(~P&P)
③(太陽が西から昇らず、尚且つ、太陽が西から昇る)
は「恒に偽」であるため、
A ≡(~P&P)
A→B≡(~P&P)→Q
であるとして、
論理式 A と、
論理式 A→B が共に真なる。
といふことは、「絶対に無い」。
従って、
(18)~(22)により、
(23)
(ⅱ)~P,P├ Q
(ⅱ)太陽は西からは昇らない。然るに、太陽は西から昇る。故に、バカボンのパパは天才である。
といふ「連式(推論)」は、「妥当(valid)」であるが、だからと言って、この「推論」からは、
(ⅱ)バカボンのパパが天才である。
といふことには、ならない。
(01)
①「風邪を引いた」ので、「会社を休む」。
と言へるのであれば、
②「風邪を引いた」ならば「会社を休む」。
といふことが、言へなければならない。
従って、
(01)により、
(02)
①「Pである」ので、「Qである」。
と言へるのであれば、
②「Pである」ならば「Qである」。
といふことが、言へなければならない。
従って、
(02)により、
(03)
①「Pである」ので、「Pである」。
と言へるのであれば、
②「Pである」ならば「Pである」。
といふことが、言へなければならない。
然るに、
(04)
29 P├ P
1(1)P A
これ以上短い連式は証明できないし、またその証明は可能な最も短い証明である。
No shorter sequent than this can be proved, and its proof is the shortest possible proof.
(E.J.レモン、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学入門、44頁と、原文)
然るに、
(05)
「・・・・・という仮定が与えられるならば、・・・・・と正しく結論することができる」という煩雑な表現の略記法があれば好都合であろう。このためわたしは、論理学の文献のなかでしばしば、しかし誤解を招きやすい仕方で、断定記号(assertion-sign)、
├
を導入する。これは「故に」(therefore)と読むのが便利であろう。
(E.J.レモン、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学入門、16頁)
従って、
(04)(05)により、
(06)
① P├ P
といふ「連式(sequent)」は、
①「Pである」ので「Pである」。
といふ「意味」である。
然るに、
(07)
(ⅰ)
1(1)P A
(2)P→P 11CP
といふ「計算(calculus)」は、
① P├ P
② ├ P→P
といふ「連式(sequents)」に、相当する。
然るに、
(08)
② ├ P→P
といふ「連式」は、
②「Pである」ならば「Pである」。
といふ「意味」である。
従って、
(03)(07)(08)により、
(09)
(ⅰ)
1(1)P A
(2)P→P 11CP
といふ「計算」は、
①「Pである」ので、「Pである」。
と言へるのであれば、
②「Pである」ならば「Pである」。
といふことが、言へなければならない。
といふことを、示してゐる。
然るに、
(10)
(ⅱ)P→P├ ~P∨P
1 (1) P→P A
2 (2) ~(~P∨P) A
3(3) ~P A
3(4) ~P∨P 3∨I
23(5) ~(~P∨P)&
(~P∨P) 24&I
2 (6) ~~P 35RAA
2 (7) P 6DN
12 (8) P 17MPP
12 (9) ~P∨P 8∨I
12 (ア) ~(~P∨P)&
(~P∨P) 29&I
1 (イ)~~(~P∨P) 2アRAA
1 (ウ) ~P∨P イDN
(ⅲ)~P∨P├ P→P
1 (1) ~P∨ P A
2 (2) P&~P A
3 (3) ~P A
2 (4) P 2&E
23 (5) ~P& P 34&I
3 (6)~(P&~P) 25RAA
7 (7) P A
2 (8) ~P A
2 7 (9) P&~P 78&I
7 (ア)~(P&~P) 29RAA
1 (イ)~(P&~P) 1367ア∨E
ウ (ウ) P A
エ(エ) ~P A
ウエ(オ) P&~P エオ&I
1 ウエ(カ)~(P&~P)&
(P&~P) イオ&I
1 ウ (キ) ~~P 7カRAA
1 ウ (ク) P キDN
1 (ケ) P→ P ウクCP
従って、
(10)により、
(11)
② P→P
③ ~P∨P
に於いて、
②=③ である。
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
(ⅰ)
1(1)P A
(2)P→P 11CP
といふ「計算」は、「途中」を「省略」して、
1(1) P A
(2) P→P 11CP
(3)~P∨P 2含意の定義
といふ風に、書くこと出来る。
然るに、
(13)
1(1) P A
(2) P→P 11CP
(3)~P∨P 2含意の定義
といふ「計算」は、
① P├ P
② ├ P→P(同一律)
③ ├ ~P∨P(排中律)
といふ「連式」に相当する。
然るに、
(14)
③ ├ ~P∨P(排中律)
といふ「連式」は、
③ Pでないか、または、Pである。
といふ、「意味」である。
然るに、
(15)
(3)~P∨P
であるならば、
(3)~真∨真 であるか、
(〃)~偽∨偽 であるかの、いづれかである。
然るに、
(16)
(3)~真∨真
(〃)~偽∨偽
であれば、
(3) 偽∨真
(〃) 真∨偽
である。
然るに、
(17)
(3) 偽∨真
(〃) 真∨偽
は、「真理表(Truth table)」により、両方とも、「真」である。
従って、
(14)~(17)により、
(18)
② P→P すなはち、
③ ~P∨P は、
③ ~真∨真 であるか、あるいは、
③ ~偽∨偽 であるが、いづれにせよ、「真」である。
然るに、
(19)
② P→P すなはち、
③ ~P∨P は、
③ ~真∨真 であるか、あるいは、
③ ~偽∨偽 であるが、いづれにせよ、「真」である。
といふことは、
② ├ P→P(同一律)
③ ├ ~P∨P(排中律)
に於いて、 Pの「真偽」は、「未定」である。
といふことに、他ならない。
従って、
(06)(12)~(19)により、
(20)
① P├ P
② ├ P→P(同一律)
③ ├ ~P∨P(排中律)
に於いて、
① Pの「真」は、「確定」であって、
② Pの「真」は、「未定」であって、
③ Pの「真」は、「未定」である。
然るに、
(21)
1(1) P A
(2) P→P 11CP
(3)~P∨P 2含意の定義
といふ「計算」が、仮に、
1(1) P A
1(2) P→P 11CP
1(3)~P∨P 2含意の定義
と書かれるとするならば、その場合は、
② Pの「真」は、「確定」であって、
③ Pの「真」は、「確定」である。
といふことを、示してゐる。
(22)
例へば、
(ⅲ)~P∨P├ P→P
1 (1) ~P∨ P A
2 (2) P&~P A
3 (3) ~P A
2 (4) P 2&E
23 (5) ~P& P 34&I
3 (6)~(P&~P) 25RAA
7 (7) P A
2 (8) ~P A
2 7 (9) P&~P 78&I
7 (ア)~(P&~P) 29RAA
1 (イ)~(P&~P) 1367ア∨E
ウ (ウ) P A
エ(エ) ~P A
ウエ(オ) P&~P エオ&I
1 ウエ(カ)~(P&~P)&
(P&~P) イオ&I
1 ウ (キ) ~~P 7カRAA
1 ウ (ク) P キDN
1 (ケ) P→ P ウクCP
といふ「計算」に於ける、
1 (1)
2 (2)
3 (3)
2 (4)
23 (5)
3 (6)
7 (7)
2 (8)
2 7 (9)
7 (ア)
1 (イ)
ウ (ウ)
エ(エ)
ウエ(オ)
1 ウエ(カ)
1 ウ (キ)
1 ウ (ク)
1 (ケ)
といふ「部分」は、
1 ウエ(カ)
であれば、 (〃)の「行」では、
1 (1) ~P∨ P A
ウ (ウ) P A
エ(エ) ~P A
といふ「3つの仮定」が「真」である。といふことが、その時点に於いて、「確定」である。
といふことを、示してゐる。
従って、
(20)(21)(22)により、
(23)
(ⅰ)
① P├ P
② ├ P→P(同一律)
③ ├ ~P∨P(排中律)
に於いて、
① Pの「真」は、「確定」であって、「未定」ではなく、逆に、
② Pの「真」は、「未定」であって、「確定」ではなく、同じく、
③ Pの「真」は、「未定」であって、「確定」ではないのであれば、
といふのであれば、
1(1) P A
(2) P→P 11CP
(3)~P∨P 2含意の定義
といふ「計算」を、
(1) P A
1(2) P→P 11CP
1(3)~P∨P 2含意の定義
といふ風に、書くことは、出来ない。
然るに、
(24)
困難さの第二の理由には、自然演繹には「仮定の解消」(最初に仮定しておいて、あとでなかったことにする)という手続きがあり、それがなかなか理解しづらいことです。自然演繹は、「仮定の解消」のおかげで公理なしに演繹システムになり得ており、その意味で「仮定の解消」は自然演繹の本質だと言っても過言ではありません(小島寛之、証明と論理に強くなる、2017年、144頁)。
従って、
(23)(24)により、
(25)
1(1)P A
(2)P→P 11CP
といふ「計算」に於ける、「仮定の解消」とは、
① P├ P
② ├ P→P(同一律)
に於いて、
① Pの「真」は、「確定」であって、「未定」ではなく、逆に、
② Pの「真」は、「未定」であって、「確定」ではないからである。
といふ風に、「説明」することが出来る。
従って、
(03)(25)により、
(26)
①「Pである」ので、「Pである」。
と言へるのであれば、
②「Pである」ならば「Pである」。
といふことが、言へなければならない。
といふことと、
① P├ P
② ├ P→P(同一律)
に於いて、
① Pの「真」は、「確定」であって、「未定」ではなく、逆に、
② Pの「真」は、「未定」であって、「確定」ではない。
といふことによって、
1(1)P A
(2)P→P 11CP
といふ「計算」に於ける、「仮定の解消」を、「説明」することが出来る。
然るに、
(27)
① 未然形
(c)
「ば」に続いて「仮定条件」を表す。
*未然―「未だ然からず」、すなわち「まだ、そうなっていない」の意である。
⑤ 已然形
(a)「ば」「ども」に続いて「確定条件」を表す。
*已然―前の「未然」の反対で、「已に然り」、すなわち、「すでにそうなっている」の意である。
(中村菊一、基礎からわかる古典文法、1978年、23・24頁)
従って、
(26)(27)により、
(28)
①「Pである」ので、「Pである」。
と言へるのであれば、
②「Pである」ならば「Pである」。
といふことが、言へなければならない。
といふことは、「古文」で言ふと、
① Pなれ(已然形)ば、Pなり。
と言へるのであれば、
② Pなら(未然形)ば、Pなり。
といふことが、言へなければならない。
といふことに、相当する。
従って、
(26)(27)(28)により、
(29)
① P├ P
② ├ P→P(同一律)
といふ「連式」は、
① Pなれ(已然形)ば、Pなり。
② Pなら(未然形)ば、Pなり。
といふ「日本語」に、相当する。