(01)
パースの法則
排中律や二重否定の除去と等価な命題のひとつで、変なものとして、パースの法則があります。
任意の命題P, Qについて、
((P→Q)→P)→P
が成り立つ
『「PならばQ」ならばP』ならばP
なんか、パズルのような命題ですね。
(排中律、二重否定の除去、パースの法則 - Qiita)
然るに、
(02)
((P→ Q)→ P)→ P
((PならばQ)ならばP)ならばP
といふことは、
① PならばQ を「仮定」し、その上、
② P を「仮定」するならば、
③ P を「演繹」出来る。
といふ「意味」である。
然るに、
(03)
[規則]
2 推論の規則
論理式「P」と「P→Q」が共に真ならば、論理式「Q」も真である。
(沢田允、現代論理学入門、1962年、173・4頁)
然るに、
(04)
論理式「P」と「P→Q」が共に真ならば、論理式「Q」も真である。
といふことは、
② P を「仮定」し、その上、
① PならばQ を「仮定」するならば、
③ Q を「演繹」出来る。
といふ「意味」である。
然るに、
(05)
② P を「仮定」し、その上、
① PならばQ を「仮定」するならば、
③ Q を「演繹」出来る。
といふことは、
① PならばQ を「仮定」し、その上、
② P を「仮定」するならば、
③ Q を「演繹」出来る。
といふことである。
従って、
(02)~(04)により、
(06)
①((PならばQ)ならばP)ならばP。
②((PならばQ)ならばP)ならばQ。
に於いて、
① は、「パースの法則」であって、
② は、「ラッセル・ホワイトヘッド、ヒルベルト・アッカーマン、ルカジェヴィッツ」が採用した「規則」である。
然るに、
(07)
① PならばQ を「仮定」し、その上、
② P を「仮定」するならば、
③ Q を「演繹」出来る。
といふ「規則」は、「少しも変」ではなく、むしろ、さうでない方が、「変」である。
従って、
(07)により、
(08)
① PならばQ を「仮定」し、その上、
② P を「仮定」するならば、
③ Pと、 Q も「演繹」出来る。
といふ「法則」も、「少しも変」ではなく、むしろ、さうでない方が、「変」である。
然るに、
(09)
① PならばQ を「仮定」し、その上、
② P を「仮定」するならば、
③ Pと、 Q も「演繹」出来るのであれば、もちろん、
④ P は「演繹」出来る。
従って、
(09)により、
(10)
そのやうに、
((P→ Q)→ P)→ P
((PならばQ)ならばP)ならばP
を「理解」する限り、
① パースの法則
は「思ったほど、変なもの」であるとは、言へない。
然るに、
(11)
①((P→Q)→P)→P
が「真」である。といふことは、
①((P→Q)→P)→P
は「偽」ではない。
といふことである。
然るに、
(12)
①((P→Q)→P)→P
が「偽」であるためには、必ず、
①((P→Q)→P)→偽
でなければ、ならない。
然るに、
(13)
①((P→Q)→P)→偽
であるためには、
①((偽→Q)→偽)→偽
でなければ、ならない。
然るに、
(14)
①((偽→Q)→偽)→偽
であれば、
①((偽→真)→偽)→偽
であるか、
①((偽→偽)→偽)→偽
である。
然るに、
(15)
①((偽→真)→偽)→偽
①((偽→偽)→偽)→偽
は、両方とも、
①((真)→偽)→偽
であって、
①((真)→偽)→偽
であれば、
① 偽→偽
である。
然るに、
(16)
① 偽→偽 は、
① ~偽∨偽 であって、
① ~偽∨偽 は、
① 真∨偽 であって、
① 真∨偽 は、
② 恒真(恒に真)である。
従って、
(11)~(16)により、
(17)
①((P→Q)→P)→P
は、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(18)
系Ⅰ:任意の連式は、それがトートロジー的であるときまたそのときに限って導出可能である。
(E.J.レモン、論理学初歩、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、114頁)
然るに、
(19)
1 (1) ~(~P∨P) A
2(2) ~P A
2(3) ~P∨P 2∨I
12(4) ~(~P∨P)&
(~P∨P) 13&I
1 (5) ~~P 24RAA
1 (6) P 5DN
1 (7) ~P∨P 6∨I
1 (8) ~(~P∨P)&
(~P∨P) 17&I
(9)~~(~P∨P) 18RAA
(ア) ~P∨P 9DN
従って、
(18)(19)により、
(20)
② ~P∨P
といふ「排中律」は、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(21)
1 代入の規則
一つの恒真式のなかの命題変項を他の命題変項、または論理式でおきかえることによって得られた式は同じく恒真式である。
(沢田允、現代論理学入門、1962年、173頁)
従って、
(20)(21)により、
(22)
② ~P∨P
といふ「排中律」は「恒真式(トートロジー)」であり、その「代入例」である、
③ ~(P→Q)∨(P→Q)
といふ「排中律」も「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(23)
パースの法則(パースのほうそく)は哲学者であり論理学者であるチャールズ・サンダース・パースにちなむ論理学における法則である。彼の最初の命題論理の公理化において、この法則を公理に採用した。この公理は、含意と呼ばれるただひとつの結合子を持つ体系における排中律であると考えることもできる(ウィキペディア)。
従って、
(01)(22)(23)により、
(24)
③ ~(P→Q)∨(P→Q)
といふ「恒真式(トートロジー)」から、あるいは、
③ P
が、「演繹」出来るかも、知れない。
然るに、
(25)
(1) ~(P→Q)∨(P→Q) 排中律(代入例)
2 (2) ~(P→Q) A
3 (3) ~P∨Q A
3 (4) P→Q 3含意の定義
23 (5) ~(P→Q)&(P→Q) &I
2 (6)~(~P∨Q) 35RAA
2 (7) P&~Q 6ド・モルガンの法則
2 (8) (P&~Q)∨(P→Q) 7∨I
9 (9) (P→Q) A
9 (ア) (P&~Q)∨(P→Q) 9∨I
(イ) (P&~Q)∨(P→Q) 1289ア∨E
ウ (ウ) P&~Q A
ウ (エ) P ウ&E
オ (オ) (P→Q) A
ウオ (カ) Q エオMPP
ウオ (キ) ~Q ウ&E
ウオ (ク) ~Q&Q カキ&I
ウ (ケ) ~(P→Q) オクRAA
コ(コ) ~P∨Q A
コ(サ) P→Q 含意の定義
ウ コ(シ) ~(P→Q)&(P→Q) ケサ&I
ウ (ス) ~(~P∨Q) コシRAA
ウ (セ) P&~Q ス、ド・モルガンの法則
ウ (ソ) P セ&E
(タ) P イウエオソ∨E
従って、
(24)(25)により、
(26)
③ ~(P→Q)∨(P→Q)
といふ「恒真式(トートロジー)」から、確かに、
③ P
が、「演繹」出来る。
然るに、
(27)
1 (1) P→Q A
2 (2) P A
12 (3) Q 12MPP
1 (4) P→Q 23CP
(5) (P→Q)→(P→Q) 14CP
(6) ~(P→Q)∨(P→Q) 5含意の定義(で、排中律の代入例)
従って、
(27)により、
(28)
① P→Q
② P
から、
③ ~(P→Q)∨(P→Q)
が、「演繹」出来る。
従って、
(25)~(28)により、
(29)
1 (1) P→Q A
2 (2) P A
12 (3) Q 12MPP
1 (4) P→Q 23CP
(5) (P→Q)→(P→Q) 14CP
(6) ~(P→Q)∨(P→Q) 5含意の定義(で、排中律の代入例)
に対して、
7 (7) ~(P→Q) A
8 (8) ~P∨Q A
8 (9) P→Q 8含意の定義
78 (ア) ~(P→Q)&(P→Q) 79&I
7 (イ)~(~P∨Q) 8アRAA
7 (ウ) P&~Q イ、ド・モルガンの法則
7 (エ) (P&~Q)∨(P→Q) ウ∨I
オ (オ) (P→Q) A
オ (カ) (P&~Q)∨(P→Q) オ∨I
(キ) (P&~Q)∨(P→Q) 67エオカ∨E
ク (ク) P&~Q A
ク (ケ) P ク&E
コ (コ) (P→Q) A
クコ (サ) Q ケコMPP
クコ (シ) ~Q ク&E
クコ (ス) ~Q&Q サシ&I
ク (セ) ~(P→Q) コスRAA
ソ(ソ) ~P∨Q A
ソ(タ) P→Q ソ含意の定義
ク ソ(チ) ~(P→Q)&(P→Q) セタ&I
ク (ツ) ~(~P∨Q) ソチRAA
ク (テ) P&~Q ツ、ド・モルガンの法則
ク (ト) P テ&E
(ナ) P キクケコト∨E
を加へれば、以上のやうに、
① P→Q
② P
から、
③ ~(P→Q)∨(P→Q)
が、「演繹」出来、
③ ~(P→Q)∨(P→Q)
からは、
③ P
が、「演繹」出来る。
従って、
(05)(06)(29)により、
(30)
① PならばQ を「仮定」し、その上、
② P を「仮定」するならば、
③ P が「演繹」出来る。
といふこと、すなはち、
((P→ Q)→ P)→ P
((PならばQ)ならばP)ならばP。
といふこと、すなはち、「パースの法則」が、「証明」された。
ことになる。
然るに、
(31)
因みに、
((P→ Q)→ P)→ P
((PならばQ)ならばP)ならばP。
に対して、
P→ (Q→ P)
Pならば(QならばP)。
は、「ルカジェビッツの公理(1)」であって、
P→ (Q→ P)
Pならば(QならばP)。
の場合は、次(32)の通りである。
(32)
1 (1) P A
1 (2) ~Q∨ P 1∨I
3 (3) Q&~P A
4 (4) ~Q A
3 (5) Q 3&E
34 (6) ~Q&Q 45&I
4 (7)~(Q&~P) 36RAA
8 (8) P A
3 (9) ~P 3&I
3 8 (ア) P&~P 89&I
8 (イ)~(Q&~P) 3アRAA
1 (ウ)~(Q&~P) 2478イ∨E
エ (エ) Q A
オ(オ) ~P A
エオ(カ) Q&~P エオ&I
1 エオ(キ)~(Q&~P)
(Q&~P) ウカ&I
1 エ (ク) ~~P オカRAA
1 エ (ケ) P クDN
1 (コ) Q→P エケCP
(サ)P→(Q→P) 1コCP
然るに、
(33)
自然演繹論理のあるバージョンには、公理が存在しない。ジョン・レモンが開発した体系 L は、証明の構文規則に関する次のような10個の基本的規則だけを持つ。
1.仮定の規則(A)
2.肯定肯定式(MPP)
3.否定否定式(MTT)
4.二重否定律(DN)
5.条件的証明(CP)
6.&-導入 (&I)
7.&-除去 (&E)
8.∨-導入 (∨I)
9.∨-除去 (∨E)
10.背理法 (RAA)
(ウィキペディア改)
従って、
(31)(32)(33)により、
(34)
P→ (Q→ P)
Pならば(QならばP)。
といふ「ルカジェヴィッツの公理(1)」であれば、
1.仮定の規則(A)
4.二重否定律(DN)
5.条件的証明(CP)
6.&-導入 (&I)
7.&-除去 (&E)
8.∨-導入 (∨I)
9.∨-除去 (∨E)
10.背理法 (RAA)
といふ、「ジョン・レモンの規則」で、「証明」されることになる。
従って、
(35)
もちろん、「他の公理(Axioms)」も、「10個の規則(Rules)」で、「証明」される。
然るに、
(01)(23)により、
(36)
パースは、彼の最初の命題論理の公理化において、
((P→Q)→P)→P
といふ法則を公理に採用した。
従って、
(34)(35)(36)により、
(37)
P→ (Q→ P)
Pならば(QならばP)。
といふ「公理」は、「10個の規則(Rules)」で「証明」出来るのに、その一方で、
((P→ Q)→ P)→ P
((PならばQ)ならばP)ならばP。
といふ「公理」は、「10個の規則(Rules)」で「証明」出来ない。といふことは、有ってはならない。
といふ、ことになる。