郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

二人の皇后とクリノリン

2006年01月04日 | 日仏関係
フランツ・ヴィンテルハルターが描く、ウージェニー皇后と女官たちです。色とりどりのクリノリンドレスが、とても華やか。

これまでも、このブログに何回か登場させました第二帝政期のパリ、なのですが、その栄華は、五稜郭陥落の翌年、普仏戦争とそれにともなう内乱で、あっけなく崩壊してしまいます。
ナポレオン三世は、ナポレオンの甥ではあるのですが、亡命先で育ち、いろいろと苦労を重ねた人です。
女性関係は、かなり乱脈でした。
スペイン貴族だったウージェニー皇后が、ナポレオン三世を射止めたのは、身体を許さないでじらしたので、他に仕方がなくなって結婚となった、といわれております。

このウージェニー皇后、鹿島茂氏の『怪帝 ナポレオン三世』によりますと、かなり政治に口を出したお方で、普仏戦争でも、パリから前線の夫に指令を出したというのですが、それが本当だったとすれば、とんでもないお話です。
同じ負けるにしても、下手な負け方、になってしまいますわね。

しかし、ヨーロッパのファッションリーダーとしては、華々しい活躍をしたお方です。
なんといっても、パリは当時から、ファッションの中心地、です。欧州だけではなく、アメリカからも、パリへ洋服を作りにくる女性がたくさんいたのですし、ファッションは、素材となる絹織物やその他もろもろの装飾品も含めて、フランスを富ませる大きな産業、だったのです。
その最大の広告塔が、ウージェニー皇后です。
バロック、ロココの昔へ帰ったような、絢爛豪華なクリノリンドレスは、ウージェニー皇后が流行らせた、といわれています。

この時代、オーストリア帝国にも、美しい皇后がおられました。
ババリアの狂王ルートヴィヒ二世の従姉妹で、ヴィスコンテの映画『神々の黄昏』ではロミ・ーシュナイダーが演じていた、皇妃エリザベートです。
このお方のクリノリンスタイルは、薄い紗を幾重にも重ねたような白いドレスの肖像が残っておりますが、息を呑む美しさです。
オーストリア宮廷の堅苦しさを嫌い、皇妃の務めを放って、放浪を重ねていたという変わった皇妃です。

しかし、普仏戦争の数年前、普墺戦争の敗戦で帝国が苦境に陥ったときには、ハンガリーへ出かけて支持を訴え、オーストリア・ハンガリー二重帝国として、帝国存続の基盤を強固なものにすることに、尽力しています。
政治的に見るならば、エリザベート皇后は、肝腎なところで、実に賢明に動かれているのですね。
ハンガリーの皇后として戴冠したときの衣装は、とても美々しいクリノリンスタイルなんですが、ウィーンのファッション産業はパリの足元にもおよびませんから、広告塔としては、ウージェニー皇后のような自国への貢献には、なっていませんけどね。
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