郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録 前編

2016年11月21日 | 宝塚
 桐野利秋、宝塚登場! 星組公演『桜華に舞え』の続きです。
 といいますか、行ってまいりました。宝塚へ。
 突然仕事が入ったり、その他もろもろで、ブログを書くのが遅くなってしまい、ついに昨日、東京公演千秋楽でしたが、私が観劇しましたのは9月13日です。

 生まれて初めての宝塚観劇です。
 いつものように、中村さまがご一緒してくださることになりましたので、心強くはあったのですが、チケットを手に入れるところから大騒動でした。
 せっかくだから、なにがなんでもSS席で見たい! ということで、宝塚好きの知り合いに問い合わせてみたりしていたのですが、宝塚好きといいましても、私の知り合いはファン歴が浅く、さまざまなチケット入手手段をためしてみてはいるそうだったのですが、確実なものはなさそうでした。しかも、桐野を演じます星組トップ北翔海莉さんの引退公演になるとわかり、結局、都合のいい日の二人分のチケットを確実に手に入れるためにはこれしかなさそうだ、と、宝塚ホテル東館ジュニアスイート宿泊とセットで、なんとか購入することができました。

 東京からの中村さまとは、宝塚ホテルで落ち合うことに。ところが、当日の私の飛行機が、予想外の車両整備のために遅れまして、伊丹空港からタクシーをとばすはめに。
 宝塚ホテルで、チケットを受け取ってくださっていた中村さまをひろい、荷物を預けてそのままタクシーで劇場へ。おかげさまで、軽く昼食をとる時間も確保できました。
 席は、SS席の中では後ろの方ですが、そのかわりにほぼ中央。見やすく、かつ臨場感もほぼ満点、という席でした。



 当時の錦絵をモデルにしましたこの幕、ちゃんと架空の登場人物の名まで出ています。

星組公演『桜華に舞え』『ロマンス!!(Romance)』初日舞台映像(ロング)


 いえね。歌も踊りも迫力でして、実に楽しく、あっという間に時が経ちました。

 これまで宝塚といえば、ずいぶん以前に「ベルサイユのばら」をテレビで見たことがあるだけだったんですが、こんなに場面転換が早いものでしたっけ??? 「ベルばら」は見てて退屈だったように思うのですが、今回、退屈している暇もなかったんです。
 まあ、ですね。昔いいと思っていた映画が、現在見ると非常に悠長で退屈であったりしますから、宝塚も、時代にあわせた演出をこころがけている、ということなのかもしれません。
 しかし、転換が早いだけに、だと思うのですが、事前にネットで見た観劇の感想では、セリフの薩摩弁がわからず、「時代背景をよく知らないので一度見ただけでは内容がわかり辛い」というようなものが複数ありました。

 いや私、十分に時代背景は知っているつもりなのですが、なにしろ、時系列は無視され、相当に荒唐無稽な筋立てですし、主要人物に架空の人物が複数います。
 しかも、悪役(この劇では、です)の山縣有朋までが、あの宝塚独特の化粧の、麗しいやさ男だったりしますから、もう、誰が誰なんだか、さっぱり見分けがつかない状態。
 わからないままに、大筋の印象としましては、いい感じ、だったと思います。
 
 私にとって、よかった最大の要因は、物語の焦点が、恋ではなく友情にあてられていたから、でした。
 映画「半次郎」を見て……。でも少し書いたのですが、この映画のなにが不満だったって、やはり、人間関係の中心に友情ではなく恋がきていたからだと思うんですね。愛人だったさとさんが、最後の場面に現れて桐野にすがりつくって、まったくもってありえない上に、感興もなにもぶち壊しの設定でした。
 その点、宝塚版『桜華に舞え』は、ですね、主人公・桐野の次に重要な人物として、衣波隼太郎という名の薩摩郷士を創作し、桐野の幼なじみで親友であり、途中から道が離れて西南戦争では敵味方に別れて戦い、しかし最後に戦場で隼太郎が桐野を抱き起こし、新生日本への志を引き継ぐ、といいます、直球、ストレートな、男の友情物語でした。

宝塚『カフェブレイク 紅 ゆずる』


 衣波隼太郎役は、星組二番手男役で、本日21日、北翔さん退団とともに星組トップになりました紅ゆずるさん。

 私、少々、宝塚について、お勉強をいたしました。
 一昨年、宝塚は百周年を迎え、テレビ露出や地方公演が増えて、どうやらそんなきっかけから、私の友人もファンになったようなんですね。
 このときトップ・オブ・トップといわれ、歴代でも有数の人気を誇っていたのが、星組男役トップの柚希礼音さん。私の知り合い、友人も、軒並みこの方のファンだったみたいです。
 そして礼音さんの下で、長年、二番手を務めていましたのが紅ゆずるさんで、去年、礼音さんが引退しました後、紅さんトップ就任、と思われていました。ところが紅さん、体を壊していたりしたこともあったようで、専科(芸達者が集まった特別クラスで客演集団)から、礼音さんより一期上(もっとも入団年の関係から年は下だそうです)の北翔海莉さんが、トップとして星組にやってきたようなわけだったんですね。

 ともかく、北翔さんは、歌、踊り、演技と三拍子そろった男役で、当初は、もっと早くトップになるかと思われていたのだそうですが、今ひとつ地味だったんでしょうか、専科に属して客演を重ねた苦労人でした。
 去年、星組トップになったときから、短期間で紅さんにトップを譲って退団するのではないか、と、思われていたみたいです。

 パンフレットによれば、『桜華に舞え』は、北翔さん退団公演のための当て書きだったそうですので、桐野から隼太郎に渡されたバトンは、北翔さんから紅さんに渡されるバトンと、重なって見えたりもするわけです。
 映画「半次郎」を見て……。で書いておりますが、海軍軍楽隊(薩摩バンド)が戦場で惜別の演奏をする場面。これも映画と同じように、ヘンデルの「見よ勇者は帰る」でやっていましたが、友情メインなだけに映画よりもじんときました。

 「陸軍分列行進曲は鹿鳴館に響いた哀歌」で書いたのですが、江藤淳氏の晩年の著作・『南洲残影』に涙した私としましては、ぜひラストシーンにかぶせて、陸軍分裂行進曲をお願いしたかったところなのですが、それはかないませんでした。

南洲残影 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


分列行進曲 軍艦行進曲―よみがえる軍楽隊ベスト
松本秀喜,片山正見,服部省二
キングレコード

 
 えーと、一応、書き終えたのですが、なぜか全部保存ができませんで、前後編に分けることにしました。
 前編の最後は、桐野を取り上げてくださった作・演出の斎藤吉正氏と、真摯に演じてくださった北翔さんへの感謝でしめくくり、私らしい史実とくらべての考察は、後編にまわします。



上は、宝塚劇場売店の舞台写真売り場です。


クリックのほどを! お願い申し上げます。

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5 コメント

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ありがとうございました。 (中村太郎)
2016-11-23 03:38:23
難しい宝塚歌劇のチケット取り、しかもSS席をお任せしてしまい、すみませんでした。
お陰様で、大劇場での観劇と手塚氏縁の憧れの宝塚ホテル宿泊と2つの夢までも叶えて頂きました。
あらためて、御礼申し上げます。
郎女さまの観劇録の拝読後、ネットをうろちょろ検索しました。
宝塚ファンの皆様は、登場人物についてほとんどわからず、架空人物と実在人物の区別がつかず、かなり戸惑われたようですね。(特に公演前)
私は宝塚スターがわからず、観劇中、大いに戸惑いました。立場が違うのですが、戸惑いだけは一致したようです。(笑)
それにしても、西南役・桐野に知識があり、かつ宝塚に詳しい観劇者は果たして居たのか知りたいものです。(笑)
薩摩弁は本当にわからなかったようですが、涙を流された方も多かったんですね。
今回BDを見て、やっと聞き取れたヒサの言葉。「ビンタが悪か」は流石に一般の方には難しいと思いました。
でも良い舞台でした。
贅沢を言えば、新人公演の天華えまさまの桐野も見たかったです。
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ビンタが悪か (郎女)
2016-11-23 17:32:12
とは、すごいですね。
なんか、NHK大河よりも、鹿児島弁、本格的な気がするのですが、気のせいでしょうか。

私、今回初めて、宝塚って体育会系なんだ、と知ったですが、星組さんは格別そんな感じで、薩摩士族の紐帯を、上手く表現してくれたように思います。

とまあ、そんなこと、あんなことを後編に書いたのですが、不具合が続いて、いつまでもアップできず、ストレスいっぱいです。しくしく。

再演してくれたら、また行きましょう! ぜひ、ご一緒に(笑)
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紅ゆずるさん退団 (中村太郎)
2019-02-05 18:55:57
驚きました。えっ?!もう、という気持ちです。
10月退団なので3年間トップということですから、そんなに短いという訳でもないのでしょうか。
その反面、「桜花に舞え」から、2年以上も経ってしまったんですね。北翔さんも結婚なさったし。
退団ニュースのコメントで、紅さん10月退団なら明日海さんの退団はまだ先になるのかみたいなものがありました。
どなたかが「桜花に舞え」を再演してくださるのを期待するばかりです。(笑)
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訂正 (中村太郎)
2019-02-05 18:59:38
桜花➡桜華、でした。(汗)
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紅さんが (郎女)
2019-02-05 21:05:55
明日海さんより先に退団なさるとは、思いませんでした。紅さん、けっこう体調をくずしやすい、みたいな話は聞いたことがありますので、そのせいでしょうか。
でも、明日海さんも最近、やつれておられるような。写真を見ただけの印象ですが。
明日海さんの退団公演は、ぜひ行きたいと思うのですが、今年、腕の再手術もあり、なかなか思うように出られそうもないのが、辛いところです。
「桜華に舞え」もまた、ぜひ、ご一緒したいです。
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