杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・北朝鮮のミサイル「破壊措置命令」判断の責任の所在は

2009-03-30 01:45:29 | 平和問題
3月23日 政府は、北朝鮮が発射する予定の「人工衛星」問題で、ミサイルなど一部が日本の領土・領海に落下する場合に備え、閣議決定をせずあらかじめ自衛隊法82条の2第3項に基づき浜田靖一防衛相が期限を定める「破壊措置命令」を国民に非公開で下すことを決定したということです。

 この自衛隊法82条の2第3項は
「我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため」と規定されているので、対象に該当するものは、「弾道ミサイル、人工衛星打ち上げ用ロケット、人工衛星など、その落下により人命または財産に対する重大な被害が生じると認められる物体(航空機は除く)」ということになります。


 問題のロケットは東北地方上空を通過するとみられていて、ミサイル発射からは7~8分で日本に到達するということで、自衛隊はイージス艦2隻を日本海に配備しMDシステムの地対空ミサイル「PAC3」も東北に配備することを検討しているということです。

 政府は何らかの方法でこのことを国民に公表することも検討しているということですが、この事実について「知る権利」はなんとしても確保したいものです。

自衛隊法の中に「弾道ミサイル等に対する破壊措置」についての規定があることも読みましたが、どうしてこんな危険な世界になってしまったのでしょうね。
地上に住む一人一人の生活や家族の日常、そしてそこに感情があり心が通っていることを考えると、それを大規模に破壊するようなこの軍備は、コントロール不能の猛獣を飼ってしまったような気がします。


ところが、29日に読んだ新聞によれば、北朝鮮の発射する長距離弾道ミサイルへの対応などの安全保障政策をめぐって政府内で意見が食い違う場面が目立っているということです。
 
 内部のことについては、私たち一般市民はまったく情報を直接入手することなどできずに、せいぜい新聞などで見るしかないのですが、こんな重要なことで意見対立があるというのは、そのことだけで危機感がつのります。
 また、防衛省としては、迎撃に万一失敗した場合の責任を防衛省に押しつけられることを嫌い、破壊措置命令を閣議決定したいとの思いがあったが、首相官邸側は、閣議決定すれば、北朝鮮を刺激しかねないとの判断もあり、慎重な考えだったということで、最終的には、閣議決定は行わないものの、外務、防衛、財務など各閣僚が参加した安全保障会議で決定する手順を踏むことで、防衛省が求めた「責任の共有」に配慮する形になった、と説明されています。

このような重大な判断について、省庁が責任をとりたくないといっているということは、判断が無責任になるということではないでしょうか。
社会で、責任が取れないようなものに決定権が与えられている例は一般的にはないでしょう。
こんな実態が、新聞に書かれていることが問題ですが、書いてもどうせ何も言われないと思われているのでしょうか。



自衛隊法82条の2 (弾道ミサイル等に対する破壊措置)
 防衛大臣は、弾道ミサイル等(弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のものをいう。以下同じ。)が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、我が国に向けて現に飛来する弾道ミサイル等を我が国領域又は公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)の上空において破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる。
2  防衛大臣は、前項に規定するおそれがなくなつたと認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、速やかに、同項の命令を解除しなければならない。
3  防衛大臣は、第一項の場合のほか、事態が急変し同項の内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため、防衛大臣が作成し、内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、同項の命令をすることができる。この場合において、防衛大臣は、その命令に係る措置をとるべき期間を定めるものとする。
4  前項の緊急対処要領の作成及び内閣総理大臣の承認に関し必要な事項は、政令で定める。
5  内閣総理大臣は、第一項又は第三項の規定による措置がとられたときは、その結果を、速やかに、国会に報告しなければならない。
 

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4 コメント

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答えは簡単です (宇宙戦士バルディオス)
2009-03-31 20:58:09
>自衛隊法の中に「弾道ミサイル等に対する破壊措置」についての規定があることも読みましたが、どうしてこんな危険な世界になってしまったのでしょうね。

 日本の周囲が、ならず国家だらけだからです(北朝鮮に限りません。)。自国が平和主義的で、戦争をしかけないとしても、他の国も同じ態度を取るとは限らないのです。
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ここのところ (鉄甲機)
2009-03-31 22:09:15
「表示できません」とあったので、何事かと心配しておりました。
またお世話になります。

>29日に読んだ新聞によれば、北朝鮮の発射する長距離弾道ミサイルへの対応などの安全保障政策をめぐって政府内で意見が食い違う場面が目立っている

>防衛省としては、迎撃に万一失敗した場合の責任を防衛省に押しつけられることを嫌い、破壊措置命令を閣議決定したいとの思いがあった

まるで防衛省を無責任省庁と思わせたい書きっぷりですが、そもそも自衛隊の最高司令官は内閣総理大臣。防衛大臣の判断で自衛隊に下せる命令は「警備行動」までであり、今回のような破壊措置命令は出せないのは自衛隊法にある通りです。
この新聞は「文民統制」のことを何も知らないか、知っていながら印象操作に走ってるんでしょうね。差し支えがなければ、ジャーナリストの名に値しないこの新聞が何新聞なのかお教え下さい。

>こんな実態が、新聞に書かれていることが問題ですが、書いてもどうせ何も言われないと思われているのでしょうか。

読者は馬鹿ばっかりだから、わからないだろうと思ってるんじゃないですか。
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真相はわかりませんが ()
2009-04-01 14:00:04
こちらこそ、よろしくおねがいします。

論調は、政府側の機関の責任のなすりあいのように読めましたが、実態とメディアの視点とどちらが正しいのかよくわかりません。

いずれにせよ、私たちにはあまり知らされていないし、私たちも知らなくても「平気」できています。
この、後者がいけないのだと思います。
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マスコミの意義 (鉄甲機)
2009-04-02 23:53:57
「私たちも知らなくても「平気」」なのかじゃなくて「知らないから「平気」」なんでしょう。何故なら「私たちにはあまり知らされていない」から。

件の記事で言うと、破壊措置命令が防衛大臣権限では出せないということを知らせていない。

>防衛省としては、迎撃に万一失敗した場合の責任を防衛省に押しつけられることを嫌い、

知っている人が読めば「そりゃあ権限がないのに責任だけ取らされるのはかなわんな」と思っても、知らない人は「防衛省は無責任」と思うでしょう。

「私たち一般市民はまったく情報を直接入手することなどできずに、せいぜい新聞などで見るしかない」のに、読者に届く情報はメディアのフィルターを通った偏ったものばかり。
できもしない、と言うよりあり得ない「公正中立の報道」などというご立派な看板はさっさと下ろし、自らの立ち位置を明確にした報道をしてくれれば、読者はその情報に踊らされることは少なくなるでしょう。
報知新聞でジャイアンツ情報を、在阪スポーツ紙でタイガース情報を読むとき、ファンは心の中ではしっかり割り引いて読むものです。
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