おかもろぐ(再)

趣味のブログ

<< ようこそ! >>

主な記事のインデックス
ゲーム関連
ゲームクエスト投稿文
クラシックCD紹介
旅行記
日野日出志作品紹介
   

日野日出志「博士の地下室」「泥人形」

2011-04-15 23:38:52 | 日野日出志
 日野日出志「ホラー自選集」の第4話「博士の地下室」と第6話「泥人形」をまとめて紹介します。私はこの2話が苦手なんですよ。

 「博士の地下室」は日野日出志が傾倒する映画「フランケンシュタイン」の影響があるような気がします。不気味な洋館に博士夫婦、助手、召使い、家政婦の老婆が住んでいます。博士と助手は美しい動物を作ろうと、地下室で動物実験を繰り返していました。けれども失敗続きで、産まれてくる動物達は身体に障害を持っているものばかりでした。そんな動物達を処分させるために召使いが雇われていたのですが、動物達を不憫に思った召使いは自分の小屋に隠していたのでした。

 博士の夫人は妊娠しており、老婆が身の回りの世話をしています。博士の研究を知った婦人は「でも動物なんて自然のままが一番美しいものだわ」「それを人間の手でつくりかえるなんて」と言いますが、博士は聞く耳を持ちません。ところが、ある風の強い夜に召使いの小屋が吹き飛ばされて、隠されていた動物達が庭にあふれかえってしまいます。博士は自分の手で処分しようと飛び出しますが、それを不審に思った婦人が庭を見ると……。



 この動き、テンポ、構図、異様な画風に引き込まれてしまいます。そして老婆に呼ばれて婦人のもとに戻った博士が見た光景は……。

 この作品は1970年に発表されています。近年のバイオテクノロジーの発達によって生命倫理学が注目されていますが、生命を人間がいじるという根源的な不安をストレートに描いた問題作でしょう。

 「泥人形」も1970年の作品です。「怨念の漫画家が現代の悪を告発する!」と扉ページに書いてあります。こちらは公害問題についての作品で、毒の煙を出す煙突が立ち並ぶ工場地帯が舞台です。周辺に住む子供達はだれもが(先天的か後天的かわかりませんが)身体に障害を持っています。



 「泥人形」はストーリーらしいものはありません。子供達が空き地に集まり、泥をこねて巨大な人形を作ります。すると工場の煙が人形に吸い込まれていき、ついには動き出します。その泥人形に向かって子供達が恨みをぶつける、という救いの無いようなできごとです。それなのに最後のページではなぜか不思議な安堵感があります。子供達が現実と折り合いをつけながらも懸命に生きているからでしょうか。

 これら二作の共通点は「科学技術とその弊害」と言えます。だれもが科学技術に対して持っている素朴な疑問を怪奇漫画の体裁にしたものでしょう。科学技術によって身体の設計が変異させられた者達がたくさん出てくるという点が、私がこれら二作を苦手とする理由なのかも知れません。


日野日出志作品紹介のインデックス