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日野日出志「地獄の子守唄」

2011-04-03 19:28:03 | 日野日出志


これだ! これが日野日出志なのだ!

 日野日出志「ホラー自選集」の第3話は「地獄の子守唄」です。この作品は、以前に紹介した「地獄変」のパイロット版とも言うべき作品で、作者を思わせる(どころか日野日出志を名乗っている)漫画家が主人公です。



 この人物の造形に惚れ惚れします。ギャグのようなホラーのような絵柄でもって、なぜか読者に向かって語りかけてくるのが不気味です。家の二階からどこに話しかけているのを考えてしまいます。このカメラの引きも映画的です。コマをまたいで一つのセリフをしゃべっていたりもして、見事な間の表現です。よく見るとカメラの引きが加速していて、奇妙な遠近感も感じます。ドブ川や工場の煙突といったその後の日野日出志作品に多く現れる舞台設定もここで確立したのでしょう。

 この後は日野日出志の少年期の出来事が語られていきます。母親が狂人でいつも地獄の子守唄を歌っており、いつしか自分も歌うようになったこと。その母は自分を嫌っていること。父も兄も女中も自分とはあまり関わらず、常に孤独であること。その孤独の中で怪奇趣味が高じたこと。

 ある日、日野日出志は自分に特殊な能力があることに気がつきます。近所のいじめっ子三人組にいじめられた際に、その恨みを絵にしてみたところ、絵の通りにいじめっ子達が死んでしまったのです。そして自分の母親さえも地獄の絵に描いてしまうのでした。大人になった日野日出志は、金を持ち逃げした友達や、漫画のライバルや、自分の漫画をコケにした編集者を同様に殺していったのでした。

 このように恐ろしい秘密を持っていることを読者に向かって告白してきた日野日出志は、さらにこう言います。



 ここでもセリフの間と人物の動きがずらされていて、それがかえって連続性を生み出しているように感じられます。

 さてこのように日野日出志の秘密を知ってしまった人が殺されることになりました。3日後にもっとも残酷な方法で死ぬことになるそうです。このブログを読んでしまった皆さんの無事をお祈り申し上げます。



 強大なインパクトを持つ表紙。「蝶の家」「七色の毒蜘蛛」「白い世界」「博士の地下室」「泥人形」も収録。


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