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チベット鉄道

2006-07-03 00:05:07 | 時事問題
7月1日チベット鉄道が全線で運転を始めた。日本での報道はおおむね事実だけを伝える。産経新聞によれば「青蔵鉄道は、青海省の省都・西寧とチベット自治区の区都ラサ間を結ぶ高原鉄道。全長は約2000キロに達し、経済発展から立ち遅れた内陸部を重点的に開発する中国政府の国家プロジェクト「西部大開発」の目玉の一つ。」
「最も標高が高い地点は海抜5072メートルで、南米ペルーのアンデス山中の地点を抜いて世界一。工事区間の標高平均は4500メートルで、多くの部分が凍土になっており、ロシアやカナダの凍土研究の成果も参考にしての難工事となった。」
「列車の最高時速は100-120キロで、気圧が低いため、飛行機同様の気密構造車体が採用されている。」
(http://www.sankei.co.jp/news/060626/kok032.htm)

しかしニューヨークタイムズの報道は、極めて辛辣だ。以下はその要旨。

チベットや外国の批判者は、チベット鉄道は、チベット族の犠牲において漢民族を利すると述べている。輸送力が高められれば、漢民族主導の経済発展の傾向を強めて、チベットの古代からの精神文化の息の根を止めて、高地の原始的な自然環境を損なうと論じるのだ。

インド在住のチベット独立派の作家 Tenzin Tsundue は次のように言う。「チベット人の圧倒多数の見解は、鉄道は中国支配を固め、大量の漢民族を運ぶということです。雇用は少なくなり、チベット人のためにはチャンスではなく、多くの破壊を意味します。」

中国の役人は、チベット開発を刺激するために重要であると鉄道を擁護する。観光収入を倍増させ、輸送費を最大四分の三にまで減らすと考えている。

チベット鉄道は、北京から青海省のゴルムドまでは1984年に完成した。ゴルムドからラサまでの710マイルがこのたび完成した。最後の区画の計画は、2001年に蘇った。西部開発の重要なものとして擁護された。

北京とラサの直通の列車は、7月1日土曜日、共産党創立85周年にあわせてお目見えした。このイベントは中国の官僚により好意的な報道がされるようにしっかりとコントロールされていた。40人の外国のジャーナリストが、最初の列車に乗るように招待されていた。ニューヨークタイムズを含むそのほかの報道機関は、独自に切符を購入したが、チベットに入る許可が得られなかった。

公式の費用41億ドルだけでも、鉄道は、経済だけで正当化することが難しい。チベット内部の生産は31億2000万ドルである。それゆえに経済活動を高めることにより鉄道を清算することが、もしあるとしても、何十年も先のことである。

さらに、このプロジェクトに関与した外国技術者は、中国のスポンサーの機嫌を損ねないために匿名で次のように述べている。この鉄道は、維持に多くの費用が必要であり、十分な検査なしに10年以上走らせることは困難である。

留保を述べるチベット人は、原則として鉄道に反対をしないが、チベット地方に対する、中国の経済的ならびに軍事的支配を強めるために鉄道が構想されていると述べているのである。中国人がチベット高地の鉱物資源を開発することを助けるであろうとも言う。

たとえば、チベットの都市をつなぐ道路や村落の電化などのような重要なインフラに対する中国の投資は、優先順位が低いと、チベット人は述べている。

中国の官僚が鉄道線を擁護するとしても、彼らはまだいわゆるチベット分離主義、特にダライラマに対する忠誠との戦いにまだ焦点を当てている。
Last Stop, Lhasa: Rail Link Ties Remote Tibet to China
http://www.nytimes.com/2006/07/02/world/asia/02tibet.html
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