国際学どうでしょう

私が気にしている情報のメモ

軽い帝国(Empire Lite)の幻想

2006-06-30 00:10:10 | 時事問題
アフガニスタンのことは全く分からないので、エコノミスト誌の記事を要約して勉強する。記事は、6月24日付「軽い帝国(Empire Lite)の幻想」というもの。サブタイトルは「安全なくして、国家建設は機能しない」。「軽い帝国」という用語は気になる。マイケル・イグナティエフの著作の表題に由来する。この著作は、すでに翻訳も出ている。『軽い帝国―ボスニア、コソボ、アフガニスタンにおける国家建設』、中山俊宏訳、風行社。ここにこだわりすぎると混乱するので要約に進む。

タリバン後のアフガニスタンは、半分満たされたグラスのようである。2001年の軍事作戦以来、北部は経済的ならびに政治的復興が目覚ましい。昨年は14%も経済成長した。450万人の難民が帰還した。アフガニスタン人は、大統領選挙、議会選挙、新しい憲法にも投票した。女の子が学校に行くし、女性が大臣ポストにも選ばれた。携帯電話が飛ぶように売れている。カブールでは高層オフィスビルも建っている。

しかしグラスの半分はからである。アフガニスタン南部は常に問題があり、悪化している。パキスタンとの長い国境はアルカイダやタリバン残党の聖域である。南部ではアヘンの栽培が拡張している。さらに南部では、アメリカ主導の多国籍軍は、アルカイダ討伐に力を注ぎ、一般人の生活を安全にする地味な仕事をおろそかにしている。

タリバンは再編され、数千の武装人員を抱える。過去数ヶ月、1000人程度が南部の戦闘で亡くなっている。タリバンが抑圧したアヘン栽培が、記録的に栄えている。中央政府の権力は南部の奧まで届かない。他方中央政府が、地域的なごろつきや軍閥に依拠することが、冷笑を生んでいる。カルザイ大統領は、ほかに選択がないと言う。しかし1990年代の混沌とした軍閥時代との比較が避けられない。その時代はタリバン台頭で幕を閉じたのだ。タリバンは、無慈悲な宗教的戦士であり、愛されることはないが、少なくとも腐敗していず、秩序を回復したのだ。

南部の不安定が北に広まり、そこでの進歩を危険にさらすかもしれない。一つの兆候は、カブールにおける反米主義の異常なほとばしりである。

7月に、NATOが、アメリカ主導の多国籍軍から、南部四州の安全を保つ仕事を引き継ぐ。これはチャンスであり、危険でもある。もしNATOのベンチャーが成功するとすれば、それは現有6000以上の軍が必要であり、またNATO外からの援助、理想的にはムスリム諸国の援助が必要である。兵士は、より厳格な交戦規則と多くのヘリコプターが必要である。素早く安全に駆けつけるためである。カルザイ大統領には、腐敗した多くの役人を解雇することが必要である。南部の経済建設が、優先されなければならない。

2001年の侵攻の後に、少数の特権的な都市をのぞいては、国全体の基本的安全を保証することにほとんど注意が払われていない。これは素朴な考え方の結果である。すなわち限定的なアメリカの介入は、広範な支持と正当性を持った友好的政府を呼び出すだろうということである。これをマイケル・イグナチエフは「軽い帝国」と批判的に呼んだのだ。アフガニスタンでこのモデルが成功したと考えられたことが、二年後においてイラクで似たようなことが試みられた一つの理由である。しっかりと努力すれば、アフガンは崩壊から免れうるだろう。教訓は明らか。安全を与えることをせずに、さらに国家建設の試みをすることはどうしようもないのだ。
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日本の格差について

2006-06-29 00:06:26 | 時事問題
エコノミスト誌6月17日号の記事から。タイトルは「日は昇っても一部の日本人は影の中」、サブタイトルは「経済回復に影響されない感情的議論」。日本の格差の問題を扱ったもの。橘木俊詔氏や大竹文雄氏という著名な学者の発言が引用されている。新卒採用を重視する雇用制度の改革などを示唆するが、特に目新しい点はない。備忘のために要旨をメモ。

日本の所得格差は、1980年代初頭以来拡大している。橘木氏によれば、日本のジニ係数は、先進国の中で、大きい方から(格差の激しい)米、英、伊に次いでいる。(グラフからは約0.31程度)かつて日本は、スカンジナビアレベルの平準を誇っていたのだが。

このようなことの背景を見る。大竹氏は、年齢別の家計収入の分配は変わっていないと言う。言い換えれば、ジニ係数の上昇は、日本が急速に高齢化しているという統計的結果によってたいてい説明される。高齢者層では、収入格差が最大となる傾向があるからである。

だが2004年の調査によると、30歳以下の所得格差が大きくなっている。おそらく失業者、フリーターの増加のためであろう。1990年から2005年の間に、非正規労働者の数は、五分の一から三分の一に増えた。そして若者(特に女性)に集中している。

労働流動性のために、日本の企業は債務の山から逃れられた。そしてその結果として記録的な収益が上がっている。企業は労働者を雇用するのに忙しく、パートよりもフルタイムの労働者を探している。さらに回復は地方にも及びつつある。4月には、失業者は前年に比べて26万人減っている。5ヶ月連続の下落である。リクルートによれば、最近の調査では6割の学生が、最初の内定を蹴っているという。若者の間での高い雇用が、格差を減少させ始めているようだ。

しかし格差のディベートは継続している。日本では、規制緩和は不平等と同一視される傾向がある。規制緩和が行われたタクシー業界を考えると、批判者は、規制緩和以来ドライバーの給与が減少したという。しかし大竹氏によれば、ドライバーの数が上昇し、それにより不均衡が減少しているという。日本で「非正規」労働者が増えていることは、収入格差を実際狭めているかもしれないのだ。なぜならばその他の選択肢は失業であるからだ。しかしそのようには考えられていないのである。

しかし厳しい選択が将来控えている。老人の間での格差の拡大が、子供に相続されるであろう。日本が本当に平等について心配するのなら、再配分の議論が議題となるだろう。

より緊急なものは、景気回復にもかかわらず職探しに奮闘している技量のない若者をどうするかだ。彼らの苦しみは、卒業直後の採用を重視している雇用制度により大きくなる。フリーターは、30までにはフルタイムの仕事を探すことが徐々に難しくなる。英米に比べてどれほど小さいものでも、下層社会を出現させないためには、よりよい政策が必要である。
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PAC3が年内に嘉手納基地に配備されるかもしれない

2006-06-28 00:05:38 | 時事問題
「在日米軍、沖縄にパトリオット3…年内配備方針」と読売新聞が伝えている。今月17日に行われたミサイル防衛に関する日米事務レベル協議での話である。北朝鮮の弾道ミサイルを想定したもの。在日米軍へのPAC3配備は初めてである。

「PAC3の防護範囲は半径数十キロ・メートルで、東アジアの米軍拠点である沖縄地域の防空能力を高めるのが狙いだ。イージス艦に搭載する海上配備型のスタンダード・ミサイル3(SM3)と組み合わせて弾道ミサイルを迎撃する。」
(http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060626ia01.htm)

同じ趣旨の話をワシントンポストも伝えている。"U.S. to Deploy Patriot Missiles In Japan to Counter North Korea"

似たような内容ではあるが、ここでは読売新聞が言及していないきわめて原初的であるが、根本的なことを伝えている。

「計画されているPAC3配備は、日本が北朝鮮のミサイルでもっとも脅威を受けている国であるという懸念を浮き彫りにしている。テポドン2号の発射計画の報道は、日本と合衆国を駆り立てて、効果的なミサイル防衛の盾を作り出す共同作業においてさらにあゆみを進めさせた。」
(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/26/AR2006062601256_pf.html)

最後にオチがある。PAC3が配備されても「北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300キロ・メートル)は相当な確度で迎撃できるが、「テポドン2号」(射程約3500~6000キロ・メートル超)には十分に対応できないとされる。」(読売新聞)
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ニューヨークタイムズは米朝直接交渉支持みたい

2006-06-27 00:15:42 | 時事問題
北朝鮮のミサイル実験問題に関しては、議論はさまざまであるが。ニューヨークタイムズは、北朝鮮先制攻撃という考えに異論を唱えて、核問題に対して米朝の直接会談を示唆している。

朝鮮についての実際ろくでもない考え

北朝鮮はまだ新しい長距離ミサイルを実験してない。しかしアメリカの最良の対応に関して、奇怪な考えがすでにワシントンの周囲を飛び交い始めている。その中には、ミサイルに対するアメリカの先制攻撃を行うという二人の民主党の防衛専門家による提案も含まれている。それはピョンヤンではそれほどまじめさを引き起こさないが、ブッシュ政権のそれほど耳障りではない軍事的対応の準備を、比較的政治家にふさわしいものとしている。

昨日上院外交委員会の共和党長老たちがこの問題で北朝鮮との直接対話を呼び掛けたことに対して、ホワイトハウスが注意を払う方がはるかに良いのであろうが。

ピョンヤンは予言できない。すでに核兵器を持っていると主張している。そして長距離ミサイル実験が成功すれば、合衆国まで核兵器を運搬する能力をついに得る道への意義ある一歩を画するだろう。しかしながら、少なくとも今は、先制軍事対応を正当化するほど緊急ではないのである。アメリカの過剰反応は、善よりも害であろう。

北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの実験をするべきではない理由はたくさんある。しかしながら北朝鮮は実験をする権利がある。他方、ワシントンは、北朝鮮のミサイル発射台を爆破する明白な法的権利がない。そうすることは、究極的には外交的手法で、中国の積極的な支持を得て解決されなければならない問題について、外交的地歩を失うことになろう。

ワシントンは二つの基本的目的を見据える必要がある。第一は、明らかなことであるが、北朝鮮に対して核兵器や長距離ミサイル計画を放棄するよう説得することである。第二には、ピョンヤンの牽制あるいはワシントンの反応が、北東アジアの核兵器競争を誘発させないようにすることである。

この政権は、任期のほとんど、北朝鮮とのまじめな核兵器外交に入ることを拒否している。例外は昨年夏の短期間であった。アメリカ外交官は、実質的な会談に入ることが許されたのだ。その会談は相当素早く、広範な原則的協定に至った。進歩がとまったのは、ワシントンが急に無関係の金融制裁を課し、その制裁は交渉できないと宣言した後であった。北朝鮮は、それから、核交渉から退出するという、きわめて北朝鮮らしいやり方で反応をした。

これはきわめて対称的である(時期がアメリカに有利ではないということを除いて)。今や北朝鮮は、ミサイル実験のモラトリアムを放棄しつつある。北朝鮮は、その件について交渉するということを希望して放棄に同意をしたのである。

この危機はそれ自体十分危険である。しかしもしワシントンにより扱いが間違われたらならば、それは潜在的に破滅的な地域的結果をもたらす。そして日本と中国の間にさらにくさびを入れるであろう。
http://www.nytimes.com/2006/06/26/opinion/26mon1.html
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割りばしは間伐材の有効利用じゃなかったのね

2006-06-26 01:36:31 | 時事問題
別の件で「市民のための環境学ガイド」を参照していたら、「割り箸の使用はもったいない。韓国には割り箸は無い」という記述に出会った。ありゃ?と思った。実は相当前、偉い先生が集まる宴会で、私が次のような発言をして座をしらけさせたことを覚えていたからだ。「当局は割りばしが間伐材の有効利用だって言ってますよね!」。言い方がまずかっただけなのかもしれない。しかし自分の馬鹿さ加減には自覚があるので、割りばしが間伐材の有効利用であることは当然なんだ、余計なことを言わなきゃよかったと反省したのであった。

「環境ガイド」では「日本では、割り箸は間伐材からだからかえって環境にやさしいという誤解が蔓延している。決定的な誤解・ウソだ。現在の割り箸は、ロシア材を中国に密輸して作っているものが多い。日本人が割り箸を使うと、ロシアの森林が減っている。」と述べて、別サイト「環境三四郎」が典拠に挙がっている。(もっとも「もったいない」こと)

気をつけて探すと、最近の新聞記事にもこの関連の話があった。「コンビニの割りばし有料化も? 中国が急激な値上げ」である。

まず割りばしの実態から。
「林野庁の統計(04年)では、日本で1年間に消費される割りばしは248億膳(ぜん)。うち中国からの輸入分は約241億膳と97%以上を占める。中国産品におされ、国産材を使って日本国内で生産する割りばしは約5億膳で、10年前の6分の1まで縮小した。」

なぜ値上げするのかについては、次のように説明されている。
「「日本割箸輸入協会」(大阪市)によると、中国側は(1)シラカバなど原木の値上がり(2)人民元切り上げ(3)付加価値税の還付停止(4)原油価格上昇に伴うコスト増――などを理由に、当初は昨年12月1日から30%、今年3月1日から20%の値上げを通知。12月の30%上げは実施されたものの、残り20%分は市場の混乱を避けるため、当面延期されている状態という。」(http://www.asahi.com/life/update/0619/005.html)

さらにそれだけではない。「中国産割りばし、対日輸出2008年にも停止」という記事もあった。(http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20060413AT1D1205512042006.html)

同僚のN先生が塗り箸のケースを食堂に持参していたが、あのような態度が必要なのであると、N先生を冷たい目で見ていた私は反省せざるを得ない。
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橘玲『臆病者のための株入門』文春新書

2006-06-25 01:05:04 | 
帯にでっかく「カモられずにお金を増やす方法」と書いている。また同じく帯には次のようなことも書かれている。「……「経済的にもっとも正しい投資法」が完成した。それはサンダルをつっかけて近所の証券会社にでかけ、「すみません、●●●●●●●●●●10万円分ください」と注文することなのである」。●は伏せ字であるが、150ページ代を読めばわかると帯に記されている。立ち読みすればすぐわかることなので、伏せ字を起こすと「インデックスファンド」である。

私は、株は別世界のことと考えているので、そんなもんかなと思っただけ。しかし一番蒙を啓かれたのは、この本ではどちらかといえば些末な部分。銀行の「いかがわしいキャンペーン」と題して5つが列挙されているが、その4番目だ。

「D銀行:年利1%5年もの定期預金をキャンペーン中。ただし銀行側の判断で満期が10年に延長される特約がついている」

いい条件ではないか。何が問題なのか?

「この商品の実態は「10年満期、中途解約付加」の定期預金なのだ。そのうえさらに銀行側は、5年目に一方的に早期償還する権利を持っている。だがこのことを正直に告げるとだれもお金を預けてはくれないので、話の順序を逆にして、あたかも魅力的な金融商品であるかのように装っているのである。」

「5年後に現在のような低金利が続いていれば年利1%の預金は銀行にとっては損だから、D銀行は早期償還の権利を行使して契約を強制解約する。逆に金利が上昇して、年利3%や5%になっていれば、1%しか利息のつかない定期預金は銀行にとっては得だから、預金はそのまま継続されるだろう。」

「この預金のポイントは、どう転んでも銀行に有利、顧客に不利なように仕組まれていることだ。その代償として、顧客は年利1%というボーナス金利を与えられているのである。…」

なぜ「蒙を啓かれた」などと述べるのかと言えば、これは、私が口座を持っている新生銀行がキャンペーンをしていたものと同様であり、私も心が動いたからだ。しかし後半の条件が小さい文字で書かれていたのを読んで、一気に萎えたことを覚えていたからだ。リスクなしにうまい話は転がっているわけはないのである。(新生銀行は、日曜休日にコンビニで預金をおろしても手数料が必要ないので愛用している)

ちなみに橘玲氏は、現在は「合理的な投資方法」は行っていないそうである。
「ひとには、正しくないことをする自由もあるからだ。」

臆病者のための株入門

文藝春秋

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中国の核戦力について

2006-06-24 09:44:35 | 時事問題
6月10日付エコノミスト誌記事から。中国の核戦力について。タイトルは「サイロから」。サブタイトルは「ペンタゴンは増強についてやきもきしているが、増強はそれほど急速なものではない」。備忘のためにメモ。

5月に公刊された中国軍事力に関するペンタゴンの年次報告によれば、中国の核兵器はものすごいグレードアップをするところである。アメリカの核攻撃に対する抑止として、中国は長期間、主として一握りの大陸間弾道弾に依存してきた。それは燃料注入に時間ががかりひどく脆弱である。今や中国は、発見されにくくはるかに素早く発射できる新しいタイプのミサイルに移行しつつある。しかしこれはアメリカが憂慮するべき理由であろうか?

中国は保有している核兵器の数を公表していない。ペンタンゴンによれば、アメリカ本土に達するのは20機。サイロに納められたDF-5S(css-4s)。液体燃料を使用。安全のために別に保管されている。弾頭も別に保存されていると考えられている。ゆえに発射準備に2時間かかる。アジアとロシアの標的に達する20から50機のDF-4S(css-3s)、50機のDS-21S(css-5s)がある。核弾頭の総数は数百。

中国の弾道ミサイルは先制攻撃に対して脆弱である。しかし変化しつつある。本年DF-31S(css-9s)の配備が始まるかもしれない。これはトラックあるいは鉄道に搭載しうる。固形燃料を使用。準備時間も大幅に減る。射程が長いDF-31Aも数年後に配備。潜水艦搭載のJL-2も、2007年から2010年に配備予定。これらはすべてアメリカに達しうる。

中国は核兵器の先制不使用の原則を変えないと述べている。ただし中国核兵器廠への通常兵器攻撃を許しうるこの政策の変更を求める議論が中国で行われているとペンタゴンは主張する。

James Mulvenon(the center for Intelligence Research and Analysis)によれば、生き残れる核兵器を中国が配備をするのは、アメリカの台湾紛争介入を抑制するためである。しかし中国は大量の大陸間弾道弾の配備を計画はしていない。中国は最小限の抑止を信じているようだ。

中国のDF-31S配備には数年かかると見られている。また中国は核兵器が搭載できる潜水艦を一台しか持っていない。さらにそれが弾道ミサイルを搭載できるかどうかにも疑問がある。
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中国における大学紛争:卒業証書問題

2006-06-23 00:14:10 | 時事問題
中国河南省の鄭州大学傘下の昇達経貿管理学院で、6月16日未明から学生暴動が起きたというニュースが報じられた。15日、来年度以降の卒業生には鄭州大学の名の入っていない卒業証書を出すと通知したのが原因である。学生が「入学時には『鄭州大学の卒業資格が得られる』と説明していたはずだ」と反発し、授業料の返還などを求めた。(「本科の卒業証書を」中国・鄭州大傘下の学生暴れる,http://www.asahi.com/international/update/0622/006.html)

中国事情に疎い私にはまったく???のニュースであった。ニューヨークタイムズの報道を読んで少し合点がいった。以下は、備忘のためのメモである。

1998年中国政府は、大学レベルの教育拡張を奨励した。そこで雨後の竹の子のごとくできた新設大学は、監督されるべき「母校」を捜した。そしてついでにそれを利用した。新しい大学は、「母校」よりも高い授業料を課したらしい。昇達経貿管理学院は年間2500ドル。ちなみに「母校」である河南省の最高レベルの大学である鄭州大学は500ドルである。要するに自分が学んでいるのよりもハイレベルの大学の卒業証書を買うために、5倍のお金を出したと言うことである。そしてこのようなことをしているのは昇達経貿管理学院だけではないようだ。そしてとうとう当局が規制に乗り出して、このようなことをやめさせたというのが騒ぎの直接の原因である。

ニューヨークタイムズでは、昇達経貿管理学院学生の王さんの、大学は誤りを認めて、返金せよという言葉を引用している。王さんは、親戚から借り集めた資金で大学へ進んだのだ。さらに事態を深刻化さているのは、大学新卒の待遇の悪化である。ほとんどの学生は、期待にあうような仕事を見つけられないという。すなわち親戚に対して借金の返済をするに十分なペイのある仕事である。大学卒業生は過去7年間で5倍となり、今年は410万人に達したのだ。

教育程度が高いが失業している人々が増えることは、北京を脅かすに足る。大学生の騒動が1989年の天安門事件に発展したのは周知のことである。天安門事件以降の、中国共産党の成功は、都市住民、知識人、その子弟の間で市場経済に対する支持を取り付けたことに依存しているのであるからなおさらである。("Rioting in China Over Label on College Diplomas",http://www.nytimes.com/2006/06/22/world/asia/22china.html)
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「怒りは敵」余談

2006-06-22 00:08:47 | 雑談
小泉首相が竹下元総理の七回忌に際して「怒りは敵だと気づきました。今ごろ気づいても遅いんですが……」と述べたという。これには典拠があるようだ。小泉首相は織田信長好みらしいと聞いたことがあったが、意外なことに徳川家康の遺訓とされるものだ。

Wikiquoteから引用する。

人の一生は、重荷を負うて遠き路を行くが如し。急ぐべからず。
不自由を常と思えば不足なし。
心に望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。
堪忍は無事長久の基。
怒を敵と思え。
勝つことばかり知りて負くるを知らざれば、害その身に至る。
己を責めて、人を責むるな。
及ばざるは過ぎたるに勝れり。

「怒りを敵と思え」もさることながら、私の関心を引いたのは一番下の行の「及ばざるは過ぎたるに勝れり」である。普通は「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」である。これをもじったのであろう。やり過ぎによる弊害は、足らないことによる弊害よりも甚だしいとの意義だろう。ここに慎重な家康の性格がよく表れているとされる。もっともこの遺訓自体は後世の偽書であるらしい。家康のイメージにあわせて誰かがつくったのだろう。偽書にしても(あるいは偽書だからこそ)よくできていると思う。
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テポドン2をめぐるメモ

2006-06-21 00:04:03 | 時事問題
北朝鮮がテポドン2を発射するかもしれないというニュースが駆けめぐっていた。本日ゼミに行くと、学生さんがニュースを見たいのではやく終わりましょうと言った。思わず「テポドン発射か?」と尋ねたが、光市母子殺害事件について最高裁が無期判決を破棄した問題であった。テポドンはどうなったのか?

ワシントンポストの記事("N. Korea Warned On Testing Missile", http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/19/AR2006061900707_pf.html)を見ると、韓国高官の言葉が引用されている。今回の合衆国情報には懐疑的であり、北朝鮮が準備に関してこれほど公開しているのであれば、軍事的テストをするのではなく、人工衛星を打ち上げようと試みているのではないかということである。

随分温度差がある。そこで東亜日報を見ると、「韓米日、「北朝鮮ミサイル接近法」に明白な温度差 」という記事がすぐに目についた。

「韓国政府は、「持続的観察」を掲げ、慎重論で一貫した。/発射準備中のミサイルが、人工衛星を地球軌道に乗せるための衛星打ち上げ用ロケット(SLV=Satellite Launch Vehicle)なのか、あるいはミサイルなのか、さらに準備状況や発射の予想時点などについても、現時点では言明できないということだ。政府内で、一部外信のミサイル関連報道に、「慎重に欠けた推測性の報道だ」という不満まで出ている。」
(http://japan.donga.com/srv/service.php3?biid=2006062045898)

今の韓国政府は、北朝鮮に甘いから…と思いながら、ワシントンポストに戻ると、「北朝鮮がミサイルの燃料注入を完了したようだという報告は、不完全な情報に基礎を置いていると3人の米国高官が述べている」とある。ありゃりゃ。

「アメリカの衛星は、ミサイルの近くに燃料ケースが置かれていることを観察している。しかしながら高官が言うには、燃料注入が起きているという確証がないのである。『私たちは確かなことを言うことができない』と、その情報に接することができるある高官は述べている。」

今回のテポドン発射騒ぎは、誤報であったようなニュアンスの記事であった。しかし安心はできない。安倍官房長官の発言を引用して、とりあえずメモを終える。

「日米首脳会談、あるいはその先にはサミットなどの会議が予定されている。その際にまだこういう状況が続けば当然、懸念が表明されることになる」
(http://www.asahi.com/politics/update/0620/007.html)
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