国際学どうでしょう

私が気にしている情報のメモ

北朝鮮核問題迷走に関する雑感

2007-06-24 14:50:40 | 時事問題
北朝鮮は寧辺などの核再処理施設を凍結させて、その代償として韓国から原油5万キロリットルを受け入れる。この「初期段階」は4月中旬までに完了されると予定されていた。今年の2月の頃だ。

しかし北朝鮮はマカオの銀行で凍結されていた銀行預金の解除を求めた。この資金の一部は不正な活動で得たものであると、米財務省に認定されたことが凍結の発端である。

核問題と金融制裁問題がどのように連関するのがよく分からなかったが、アメリカは北朝鮮を核問題協議に引き出すために、この問題に関しても、北に譲歩した。

「初期段階」はすんなり進むだろう。問題はその後であると私は考えていたが、予想外の展開が起きた。マカオの銀行で凍結解除した資金が北にわたらないという訳の分からないことが起きた。

北はマカオに現金を取りに行くのではなく、北に送金することを求めたようだ。しかしこのような問題のあるお金の送金を引き受ける銀行はなかった。最終的には米国とロシアの中央銀行が超法規的に送金を引き受けて、北と取引している極東のロシアの銀行に送金をすることになったという。しかも結局凍結された資金のほぼ全額が解除されたらしい。アメリカのものすごい譲歩である。

さらに先日(6月21日~22日)、突然ヒル次官補が北を訪問した。金融制裁問題にけりがついたので、核問題のリスタートをはかるために、彼は関係諸国を訪問していたのであるが、北もロシアの口添えで自国にも調整に来るように求めたという。そしてアメリカはそれを入れて、あたふたとヒル次官補は平壌に飛んだ。あたふたしていたので、ヒル次官補のチームはほんの少数の国務省の人間だけであったという。

アメリカの態度が「こんなに軟化して大丈夫なんか?」。ブッシュ政権が外交で得点をあげることができるのは、北朝鮮だけなので焦っているのであろうか。

日本ではこの動きに関して、拉致問題の解決を置き去りにするなという声がある。この問題には嫌な予感がする。北が核問題の解決の代償として、日本の貢献なしにはすまない大規模なものをわざと要求して、日本が拉致問題にこだわるから核問題が解決できないと言いそうな気がしてならない。
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沖縄戦自決教科書検定に関するメモ

2007-06-23 15:01:31 | 時事問題
沖縄戦集団自決に関する高校教科書の記述をめぐって議論が絶えない。以下は備忘録にすぎず、結論はない。

問題の発端は、集団自決に関して、日本軍に強いられたという箇所を削除するようにという検定官の修正意見がついたことである。

22日、沖縄県議会では、この検定意見を撤回するようにとの意見書が全会一致で採択された。それを受けて23日付、産経社説「沖縄戦集団自決 文科省は検定方針を貫け」は、文科省の修正意見は、「日本軍の命令によって住民が集団自決を強いられたとする誤った記述に対して付けられたものだ。軍の関与や体験者の証言を否定しようとはしていない」と述べて、具体的に軍命令説の生成の課程を次のように書いている。
「 集団自決は昭和20年3月下旬、米軍の第1陣が沖縄本島西の渡嘉敷、座間味島などに上陸したときに起きた悲劇的な出来事である。軍命令説は、昭和25年に発刊された沖縄タイムス社の沖縄戦記『鉄の暴風』に書かれ、大江健三郎氏の『沖縄ノート』などの本に孫引きされた。多くの教科書もこの軍命令説に基づいて書かれていた。
 しかし、作家の曽野綾子さんが『鉄の暴風』の記述に疑問を提起したノンフィクション『ある神話の背景』を出したのをはじめ、学者らによる実証的な研究が進められた結果、軍命令説は信憑性を失った。また、集団自決当時の女子青年団員や沖縄の元援護担当者らから、軍命令はなかったという証言が相次いでいる。」

数日前のNHK「クローズアップ現代」もこの問題を取り上げていた。文科省の検定官が修正意見の根拠として掲げたのは、集団自決を命じたとされる将校が事実無根を訴えた裁判判決と林博史『沖縄戦と民衆』(岩波書店)という著書であるという。

文書による命令は確かになかった。しかし日本軍が米軍の残虐さを伝えて、米軍に捕虜にならないように述べ、手榴弾を渡すなど、状況から考えて、軍が集団自決を促す有無をいわせぬ誘導があったという反論が紹介されていた(林博史氏も自ら出演して、同じ趣旨のことを語り、自己の著作の記述がつまみ食いされたことを怒っていた)。今回の文科省の措置は、日本軍が集団自決を強制したということを薄める意味があるというニュアンスが番組を貫かれていたように見えた。
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中国プラス1

2007-06-20 06:36:28 | 時事問題
「中国プラス1」という表現を見て、何のことか見当がつかなかった。18日付の日本経済新聞社説「投資先に浮上するカンボジア」の中で見かけた用語である。

社説の趣旨は冒頭の段落に尽くされている。次のようなことだ。
「安倍晋三首相がカンボジアのフン・セン首相と会談し「新たなパートナーシップ」をうたった共同声明を発表するとともに、投資協定に署名した。日本はカンボジアの和平や復興に貢献してきたが、今後は同国を単なる援助先としてではなく、日系企業の投資先としても考えるなど戦略的な関係強化が課題となる。」

カンボジアとは戦火や内乱に見舞われた国という認識しかない私には、時代が変わったなと驚くしかない。そして問題の「中国プラス1」というのは次のようなくだりで使われている(ついでに書けば、CLVという略語も初めて見かけた。)。
「カンボジアをはじめラオス、ベトナム3カ国は頭文字から「CLV」と呼ばれる。3カ国は最近、中国の人件費上昇で「中国プラス1」の投資先として浮上しつつある。」

googleで検索すると次のような情報を得ることができた。
国際化・海外取引 : アジアの現状とこれから-中国編-
「生産拠点として中国進出を考えるとき、現在はコスト増大への対策が必要になってきています。日本で言えば高度経済成長期の頃に似ており、中流意識の国民が増えてきています。そのため、人件費も高騰するといわれており、その人件費の削減を考えなければいけません。
 また、SARSや反日感情などの問題もありますし、リスクがないわけではありません。その対応策として『中国プラス1』といわれています。中国1カ国だけに集中しておくのは危険なので、投資戦略としてプラス1の国を考えておくことが必要になるでしょう。」
http://blog.chamberweb.jp/blog.php/18/111

投資戦略として、人件費高騰やいわゆる「チャイナリスク」を考慮に入れて、中国ともう一つの国に分散して投資するということなのであるか。中国、中国と草木もなびいた時代も終わりつつあるのか、時代の移り変わりは速すぎてついていけないなと感じざるを得ない。

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ジエチレングリコール

2007-06-17 23:22:33 | 時事問題
【以下は"F.D.A. Tracked Tainted Drugs, but Trail Went Cold in China - New York Times,June 17, 2007"を読みながらのメモである。】

ジエチレングリコール混入問題が世間を賑わせている。日本でも中国産の練り歯磨きが回収された。この問題は根が深いことを知った。

96年、ハイチでも同じ事件が起きたのだ。薬の甘味料として用いられたグリセリンが、実はジエチレングリコールであったために、少なくとも88人が死亡した事件が起きたのだ。

米国のFDAは、この問題を座視できず調査した。その結果分かったことは欧州の仲介者を通じて輸入された偽グリセリンは中国産であったことだ。

しかし輸出元のSinochem International Chemical Companyも中国の行政当局も、米国の調査依頼に腰が重かった。ようやく生産者が大連のThe Tianhong Fine Checmicalsだと分かったが、当初は電話番号だけで、住所は知らされなかった。電話をかけても話し中で、全然らちがあかない。97年末にFDAの担当者が、その会社に行ったところ、プラントは破壊されていて、全くなすすべがなかったという。FDAでこのざまなので、他の小国の機関はどうしようもない。

この後、輸入した薬品については原産者と製品内容を特定する必要性が専門家から助言された。さらにグリセリンをテストする安価な方法も発展した。しかしまた2006年、パナマで同じような事件が起きた。

今回は中国当局も問題を重大視して、中国の会社に「問題点」があったことを認めた。しかし最終的責任はグリセリンの純度をごまかしたパナマの会社にあるとした。しかしニューヨークタイムズは、そもそも中国の会社がごまかしをしていると手厳しく批判した。

ハイチ事件の際、FDAの担当者は、中国は化学薬品の大生産国になったのであるから、中国がこのような問題を取り扱う、そして外国と交渉する、透明で予見可能な制度を持たない限り、これから先ますますひどいことになるであろうと書いたというが、これは至言であると私は思った。

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1人別枠方式

2007-06-15 00:44:33 | 時事問題
選挙制度は、一般的に余り関心を引かないものであるが、極めて重要なものである。その中でもさらに地味な区割りの技術的問題が、6月14日付、大手新聞2社の社説に取り上げられていた。驚くべきことである。

その技術的問題は「1人別枠方式」である。これは衆議院の小選挙区の区割りに関係する。区割りは次のような手順で行われる。

(1)まず全都道府県に1議席ずつ無条件に配分する
(2)残る議席数を最新の国勢調査に基づく人口に応じて都道府県ごとに配分する

このうちの(1)が「1人別枠方式」である。すぐ分かることは、「1人別枠方式」は人口の少ない地方に配慮した方式であるということである(また人口の少ない地方が、現在の与党が強いところであることも容易に推測できる)。

もちろん小選挙区制の区割りは、一票の格差が「1対2以上にならないようにすることを基本とする」のだが、「1人別枠方式」があるためにこの原則を貫くことが困難になる。

ところで社説に取り上げられたのは、「「一票の格差」が最大1対2.17あった2005年9月の衆院選小選挙区の区割り規定について、最高裁大法廷は「憲法の平等原則に違反しない」とする判決を出した。」ことに係っている。

日本経済新聞はストレートに「小選挙区の1人別枠方式を廃止せよ」、「小選挙区制はそれまでの中選挙区制に比べ一票の格差を解消しやすい選挙制度で、その特長が小選挙区制を導入した理由の一つだったはずだ。国会は原点に立ち返って、1人別枠方式を廃止すべきだ。」と主張する。

朝日新聞「衆院定数判決―一票の格差は放置できぬ」も同じ趣旨であるが、過疎地への配慮を見せる。「私たちはこれまで社説で、1人別枠方式を改め、最初から人口に比例して都道府県に配分するように提案してきた。もちろん、過疎地へ政策で目配りすることが大切なのは言うまでもない。」

なかなか難しい問題ではあるが、「1人別枠方式」をなくして、一票の格差が「1対2以上にならないようにすることを基本とする」方がすっきりすることは言うまでもない。
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新四害

2007-06-14 02:08:54 | 時事問題
1950年代、毛沢東は「四害」を取り除く運動を提起し、実行に移させた。「四害」とは、ネズミ、ハエ、蚊、スズメであった。だが「それらに対する撲滅運動は思わぬ結果を招いた。スズメが激減し、地方部で昆虫の大群が大発生して穀物が荒らされ、大規模な飢餓を引き起こした。」
(<北京五輪>マナー向上作戦、「新四害」撲滅を提起, http://www.afpbb.com/article/sports/sports-others/sports-others-others/2194583/1412725)

北京五輪を前にして、中国の指導部は「新四害」を撲滅の対象に選んだ。「新四害」とは何か。「喫煙、路上へのツバ吐き、列への割り込み、大声でののしる行為」である。

例えば、天安門前広場や駅でのツバ吐きに対する罰金を7ドルに上げた。また10万の紙袋を配付している。

毎月11日は、市の監視員が、交通機関や病院などで列への割り込みに注意をしている等々である。

しかし北京市民は醒めている。2月にCCTVなどが行った世論調査では、「行列の日」に関して、72パーセントが効果がないと考え、効果があると答えたのは19パーセントにすぎないという。

この問題に関する記事に引用されていた中国人評論家の意見が適切であると思う。

「この運動は西洋人のためのものです。良いマナーは、この類の大規模な運動ではなく、人々の日常生活を通じて育まれるものです。中国政府が世界に対して好印象を残したいのだと思います。政府のメンツがかかっているのです」
("China Pushes Public To Mind Its Manners"
,http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/06/12/AR2007061202219.html)
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リコール初体験-ナショナル電子レンジ

2007-06-10 00:46:45 | 雑談
リコールを初めて体験した。ナショナル電子レンジNE-A575を、1990年代の初めに購入して、その後ずっと使い続けていた。特に何の問題もなかったが、5月31日、新聞の一面にでかでかとリコールの記事が載っていてビックリした。

松下のHPによれば「弊社製電子レンジにおきまして、電子部品内部のはんだの亀裂により、発煙・発火に至る可能性があることが判明いたしました」ということらしい。

すぐに電話をしたが、当然つながらない。ネットでもリコールの申し込みができるが対応が分からないので、やはり電話の方がいい。翌日に電話が通じた。当方の都合で、9日の土曜日に訪問対応ということになり、松下から二人がやって来た。選択肢として、1)修理、2)代替品と交換、3)1万円でリコール該当品買い取りの三案が提示された。

すぐに使いたかったし、修理品をまた持ってきてもらうのは面倒だ。1万円もらって新しい商品を購入するのも時間がかかる。当方では2)を選択した。

代替品はNE-TZ15Aというものであった。coneco.netで調べると、平均価格1万3千円程度のものであった。選択肢3)とのバランスを考えれば、その程度のものであろう。

NE-A575の購入価格は正確には記憶にないが、NE-TZ15Aの数倍はしたと思う。しかし10数年使っていたのだから、またNE-TZ15Aもレンジとオーブンを使えるから文句も言えまい(もっとも、つくりは相当安っぽいが…これは松下の人も認めていた)。

十数年も前に販売したものをリコールするのは、ユーザーも色々と面倒だが、メーカーの人も大変な気の使いようで、見ていて気の毒なほどであった。ともかくも大変なことだと思った。
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@niftyメールはFirefox(Mac OSX)と相性がわるいようだ

2007-06-09 01:15:22 | PCSkills
@niftyメールの案内メールが来た。別にそれほど必要がなかったのだが、「100年分のメールを保存できる大容量」と銘打たれていることに心がなびいた。ためしに使ってみるかと思った。

だが驚いたことに、Firefox(2.0.0.4)には適合していないと拒絶された(OSはMacOSX)。私の常用ブラウザがFirefoxとなっているので、いきなり冷や水を浴びせられた感じがした。

きっとみんな競って@niftyメールに登録しているから、サーバーがダウンしているんだろうと思った。でも久しぶりにSafariでも使ってみるかと思って、Safariを立ち上げ、@niftyメールに登録すると、するすると先に進んでメールが使えてしまった。

でもやっぱりためしに使うにしてもFirefoxで使えた方がいいに決まっているし、@niftyもFirefoxを無視する気はないと思うから、とりあえずブログにでも書き込めば、そのうち何とかなるかもしれないと書いてみた次第です。

@niftyメール

追記
他の方の体験によれば、WindowsのFirefoxは○。MacOSXやUnixのFirefoxは×のようです。


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TDグリセリン

2007-06-03 01:52:56 | 時事問題
5月31日、中国政府は、パナマで練り歯磨きなどから有毒物質が発見されたことに対して、中国側の責任を否定する調査結果を発表した。
「昨年秋にパナマで販売されたせき止め薬を服用した百人以上が死亡した問題では、中国の輸出業者が有毒のジエチレングリコールに無害のソルビットを混ぜたものを「TDグリセリン」の名称でスペインの業者に輸出。その際「中国の医薬品規定に合わない」と説明したにもかかわらず、商品が第三者であるパナマの業者に渡り「グリセリン」として医薬品の原料に使われたとしている。
 一方、練り歯磨きからジエチレングリコールが検出された問題については「毒性は低く、大量に摂取しなければ人体に影響はない。(問題となった)練り歯磨きで中毒が発生した例もない」とパナマや米国当局に冷静な対応を呼びかけた。」
(「開き直り?『中国に責任ない』 パナマ有毒物質問題」http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007060102020660.html)

パナマのせき止め薬に「TDグリセリン」が使用された事件では、パナマの業者に責任があるということ。練り歯磨きからジエチレングリコールが検出された問題は大したことではないということだ。

ところで「TDグリセリン」のTDって何のことか?それに対しては産経新聞の5月14日付記事「中国、食品・薬の安全確保へ本腰 5カ年計画に盛り込む」が答えてくれる。
「昨秋、パナマ市で推計360人以上の子供が犠牲となったせき止めシロップ中毒は、中国外務省の公式発表によると、シロップの原料に江蘇省泰興市グリセリン工場製造の「TDグリセリン」が使われていたためだった。
 TDとは中国語の「替代」つまり代用のこと。同工場のホームページでは「純度95%の代用グリセリン」として、歯磨き粉、化粧品、エッセンシャルオイルに利用可と宣伝されていた。TDグリセリンの値段は、正規のグリセリンの半額。成分については非公開だったが、実際は不凍液などに使われるジエチレン・グリコールだった。」
(http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070514/chn070514002.htm)

TDとは代用の意味だったのだ。そして代用グリセリンとして、ジエチレン・グリコールが生産、販売されていたのであった。問題は「現在、中国ではジエチレングリコールを規制する法律がなく、企業の自主判断に任されているという。」ことである。(「有毒物質を入れても合法?中国産練り歯磨きに致死量の毒物」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070525-00000008-rcdc-cn)

中国が「開き直り」と批判されているのは、中国国内でジエチレングリコールの規制を充分行っていないことの反省がないことである。せめて、中国政府は広義の責任はあるが、狭義の責任はないと言った方がましだったのではないか。
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政治家の道徳的でない振る舞いについて-安倍晋三・岸信介・大野伴睦

2007-06-02 16:03:51 | 時事問題
数年前、安倍晋三氏がテレビで、岸内閣の安保改定について語っていたことをふと思い出した。政治家は、場合によっては、高貴な目的を達成するためにいかがわしい手段をとらざるを得ないという趣旨であった。

具体的には次のようなことである。

1958年、岸信介首相は、安保改定の布石として警職法の改正を行おうとした(警官の職権の大幅拡大)。しかし社会党主導の院外闘争と自民党反主流派の抵抗により、11月22日警職法改正案は審議未了に終わった。

この失策により、岸内閣の権威が失墜した。しかし岸は、この危機を、自民党総裁選挙を強引に早期に実施して党内反対派閥の機先を制し、また次期自民党総裁を譲るという一札を大野伴睦に入れることで乗り切った。

後者は、岸に敵対的であった大野を、味方に引き入れるという目的であった。もちろんこの一札は反故にされた(岸の次の自民党総裁は池田勇人であり、大野は総裁にはなれなかった)。

安倍氏は、このような手段も安保改定という高次の目的のためにはやむをえないと語っていたように記憶する。この判断には賛否両論あろうが、私は安倍氏の見解に賛成せざるを得ない。

なぜこのようなことを思い出したかというと、朝日新聞の次のような社説「教育再生会議―一から出直したら」(6月2日)を読んだからだ。教育再生会議の提言の中の、道徳を教科化するという提言に関する批判に安倍首相が松岡農相を庇い続けたことを引き合いに出しているのである。

「「道徳の時間」を徳育として教科化することにも疑問がある。検定教科書を使うことになれば、政府の考える価値観を教室で押しつけることになりかねない。
 規範意識で思い起こすのは、光熱水費問題などでの故松岡前農水相の説明と、かばい続けた首相の態度だ。子どもが規範を学ぶのは、教室だけではない。」


「道徳」を教えるのは大変難しいと思う。私が「道徳」を教えなければならないとすれば、本当にどうしてよいか分からない。「道徳」は、万人に等しく適用されるべきものである。しかしながら場合によっては、他の目的のために道徳を軽視せざるを得ない場合もある。

諸利害の調整を図る政治家が正直に自己の見解を述べると、まとまるものもまとまらなくなる。政治家は、自分の信念にもとる嘘に近いことを述べたり、怪しげな行為をして、社会をまとめざるを得ない場合もある。政治家は、終局のところ選挙により、その結果を判断されるのである。こういうことを小学生に分かりやすく伝えることは私にはできない。
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