国際学どうでしょう

私が気にしている情報のメモ

チェイニー、ムシャラフ、カルザイ

2007-02-28 01:12:04 | 時事問題
相当頭が痛い問題である。備忘のためにメモ。

2月26日、米国チェイニー副大統領はパキスタンを秘密裏に電撃訪問して、パキスタンのムシャラフ大統領と会見した。
「パキスタン当局者らによると、チェイニー副大統領はムシャラフ大統領に、対武装勢力の「統一戦線」結成を呼び掛けた。また、米中央情報局(CIA)のカッペス副長官が会談に同席し、アフガニスタン国境に近いワジリスタン地方にアルカイダが新たな本拠地を設けたことを示す衛星写真などを、大統領に直接示したとされる。CIAはこの報道についてのコメントを拒否している。
当局者によれば、ムシャラフ大統領は「パキスタンは可能な限り努力している。武装勢力や暴力の根本原因はパキスタンでなく、アフガン側にある」と、あらためて主張した。」(http://www.cnn.co.jp/world/CNN200702270009.html)

チェイニー副大統領は、パキスタンのテロ対策が不十分であることを厳しく問いただしたようだ。この背後には民主党が多数を占める議会で、大統領の行う外交政策に対する批判が高まっていることがある。チェイニー発言に対してパキスタンから「パキスタンはいかなるものからも命令を受けない」との反発も生まれたとも報道されている。

上記のワリジスタン地方は部族地方であり、ムシャラフ大統領はこの部族地方の支配者に対して大きな自治を認めていた。アメリカはこの自治が、アルカイダに対する寛容さに繋がることに神経質になっている。昨年秋ムシャラフ大統領が訪米した際、この自治がアルカイダなどの闘いの緩和につながらないことを断言していた。(http://www.nytimes.com/2007/02/27/world/asia/27cheney.html)

しかしその実があがっていない。タリバンが、パキスタンとの国境地域を使い国境越しにアフガニスタンを襲撃し、カルザイ大統領の権威を損なおうとしていること。また同じ地域でアルカイダが活発に活動をしていることがアメリカでは懸念されている。(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/02/26/AR2007022600873_pf.html)昨年夏ロンドンで飛行機テロを企てようとした犯人は、このパキスタンのアフガン国境地方を訪問していたと言われている。

またムシャラフ大統領が「武装勢力や暴力の根本原因はパキスタンでなく、アフガン側にある」と断言しているところから分かるように、彼とアフガニスタンのカルザイ大統領は犬猿の仲である。アフガン側からは、パキスタンはタリバンを密かに支持しているという批判がある。

チェイニー副大統領に関しては次のような報道もあった。
「アフガニスタン東部パルワン州のバグラム米空軍基地入り口で27日、爆発物を身につけた男が自爆し、米軍主導の多国籍軍の発表によると、同軍兵士ら3人が死亡、23人が負傷した。死者は20人を超えているとの情報もある。爆発発生時、同基地には、アフガン訪問中のチェイニー米副大統領が滞在していたが無事だった。アフガンの旧支配勢力タリバンは本紙などに対し、「副大統領を狙った」と犯行声明を出した。」(http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070227id24.htm)



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事務所費問題をめぐる社説について

2007-02-22 01:27:39 | 時事問題
20日、小沢一郎民主党代表は、高額すぎると批判された事務所費の内訳を詳細に公表した。高額であったのは事務所費で不動産を購入したからである。不動産は政治団体(陸山会)が利用するものであり、小沢氏個人には何の権利もないと説明した。

事務費問題は分かりやすい問題であったために(また他に大きな問題もなかったために)21日の大手五紙は社説でこの問題を取り上げた。五つの社説を読んでとても面白かった。五つの社説とも多かれ少なかれ小沢氏の説明を評価していた。なかでも、朝日新聞「小沢氏の一歩 さあ、どうする自民党」や毎日新聞「社説:小沢氏会見 次は自民党が公表する番だ」が、もっともストレートに小沢氏の行為を評価していた。

たとえば、朝日は「政治資金の使途を詳細に公開するのは、新たな疑念や批判を招く可能性もある。それを覚悟のうえで公開に踏み切った小沢氏の決断を評価したい。」とする。これらの社説はタイトルから明らかなように、事務所費で批判を受けている自民党出身の閣僚に対しても公表を迫っている。

さらに毎日新聞は、今回の問題に関して議論されている政治資金規正法の改正論議よりも、公開が先であるとまで述べている。
「自民党からは早速、「巨額な資産を取得した原資は何か。そういう疑問には答えていない」(中川秀直幹事長)といった声が出ている。しかし、自民党はその前にすべきことがある。松岡農相らが事務所費について可能な限り内訳を公表することだ。これまで農相らは、政治資金規正法で内訳は公表するルールになっていないことを理由に説明を拒み、安倍晋三首相も与野党の協議に委ねてきた。もはや、この姿勢では許されまい。
 小沢氏は会見で「首相をはじめ、閣僚、与党幹部も事務所費の公開に踏み切るよう希望する」と語った。まず、与党もそれに応じたうえで、双方の説明が妥当か、堂々と議論すべきだ。規正法の改正論議はその次の話である。」(毎日新聞「社説:小沢氏会見 次は自民党が公表する番だ」)

もっとも毎日新聞は、政治団体が政治資金で不動産を取得することへの疑義は呈している。
「しかし、そもそも「団体代表・小沢氏」と「個人・小沢氏」が文書を交わすというわずらわしい手続きまでして政治献金で不動産取得や秘書寮建設をする必要があるのかという根本的な疑問は残る。
 秘書寮を賃貸でなく、政治団体が土地を取得し建設した点について、小沢氏は「献金してくれた人たちの意思を大事にしたい」と説明し、家賃を払うより、資産が残る分、長期的には有効だとの考えを示した。だが、これだけの資金を集められるのは、ごく限られた政治家であり、多くの国民は「政治献金で都内の土地を取得する」とは想定していなかったのではなかろうか。政党交付金として税金が政党に交付されている今、公私の区別には一段と気をつかわなくてはならないはずだ。」

確かにその通りであり、我々の感覚らすれば賃貸すればいいのに、なぜわざわざ不動産を取得するのかと考えてしまう。この点朝日は小沢氏に甘いのではないか。
「小沢氏は「(秘書寮は)賃貸でもいいが、家賃として献金がなくなってしまう。資産として活用する方が献金を有効に生かせる」と語った。資産の名義は小沢氏になっていても、私的には処分できないよう定めた確認書を公表した。
 政界を引退したら「後進への支援や、ライフワークである日米、日中の草の根交流の基金に充てたい」と言う。」(朝日新聞「小沢氏の一歩 さあ、どうする自民党」)

このように小沢氏の言い分のみを並べている。
これに対して小沢氏に対して厳しい評価をしているのが読売新聞だ([政治とカネ]「小沢さん、前副議長の問題もある」)。読売は、はじめから小沢氏の行為に「政治とカネの問題をめぐる論議に、一石を投じることになるだろうか。」と疑問符をつける。そして公表が遅すぎたと述べて、政局が関連していることを述べる。それならば民主党の方にも問題があるとたたみかける。
「民主党の角田義一前参院副議長の疑惑についても真相を調査し、明らかにすべきだ。在日本朝鮮人総連合会傘下の団体から献金を受けた疑惑は、外国人や外国人団体からの献金を禁じた政治資金規正法に反し、事務所費とは異質かつ遥(はる)かに重大な問題だ。
 角田前副議長の問題を放置することなく、厳正な対応を取ってこそ、民主党への信頼も高まるのではないか。」(読売新聞[政治とカネ]「小沢さん、前副議長の問題もある」)

事務所費とは関係ないが、政治とカネという視点からすれば関係ないとは言えない角田氏の問題を持ち出すのは微妙ではある。しかも寄付は50万円だけだ。しかしクリーンを売り物にしている民主党からすれば、ゆるがせにはできない問題である。朝日が小沢氏を持ち上げ、読売が小沢氏を揶揄するとは、十数年前とは逆転した構図である。何とも皮肉な展開だ。

今後の対策については日本経済新聞が詳しい(「事務所費問題さらに議論を」)。
「…自民党の改革加速議員連盟は先に資金管理団体の不動産取得を全面禁止する提言をまとめている。これを機に政治団体の不動産取得の是非やあり方について、さらに論議を深める必要がある。
 一方、民主党は現在、領収書の添付が義務づけられていない事務所費などにも、1万円超の支出はすべて添付を義務づける規正法改正案を今国会に提出する方針だ。公明党は5万円以上の事務所費に領収書添付を義務づける法改正を主張している。自民党内では領収書添付に消極的な声が多いが、これは透明性を高める有力な手段だろう。事務所費を政争の具にするのではなく、問題点を冷静に検証して、必要な法改正に取り組むことが与野党の責務である。」

さらに産経(【主張】事務所費公表 自浄能力が試されている)は独自の視点で、政治資金に第三者の監査を入れることやネット上での公開を求めている。
「透明性を高める決め手は、公認会計士による外部監査やすべての政治資金についてインターネットで公開する-などだ。いずれの政党が政治とカネの問題に真摯(しんし)に立ち向かい、自浄能力を示せるのかが試されている。」

ネット上に政治資金の収支が公開されれば、これほど私たちにとって喜ばしいことはない。簡単に情報にアクセスでき、情報を分析のために処理することができるからだ。
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中国のアフリカ外交に批判的な社説二つ

2007-02-21 03:28:02 | 時事問題
1月末から胡錦濤主席はアフリカ訪問をした。このことに関する二つの社説に接した。一つめは、2月19日付の読売新聞「中国資源外交 アフリカからも噴き出す警戒論」である。今回、中国は重要な石油輸入先スーダンなど6カ国に総額3億ドル超の経済援助を約束した。中国の対外援助の半分以上はアフリカ向けである。

その何が問題なのか?
「中国は相手国の独裁政治や人権弾圧に一切口を出さず、ひたすら資源獲得に走っている。日米欧の先進国は、中国のそうしたやり方に不信を募らせてきた。
 とくに、「世界最悪の人道危機」とされるダルフール問題を抱えるスーダン情勢が問題となっている。
 胡主席の歴訪直前、米政府は特使を北京に送り、ダルフール問題での「建設的な役割」を求めた。スーダン首脳との会談で、胡主席は反政府勢力との対話や国連関与受け入れを促した。
 内政不干渉を原則とする中国トップの異例の発言は、欧米諸国の批判の高まりを意識したものだ。」

読売新聞のこの書き方も、同日付のニューヨークタイムズの社説(「アフリカ悪政のパトロン」Patron of African Misgovernment - New York Times,February 19, 2007)に比べたらものすごく優しい。次に引用するのが「アフリカ悪政のパトロン」の一節だ。
「中国の石油に対する需要のために、中国はスーダンとの醜悪なパートナーシップに引きずり込まれた。スーダンはダルフールでジェノサイドを行い、すでにそのために少なくとも20万人が殺害されている。中国は、スーダンが効果的な平和維持軍を受け入れるように命じる国連安保理決議を阻止した。今回の外遊で、胡氏はスーダンの債務を帳消しにして、オマール・アルバシール大統領が新しい宮殿を建てるための利息なしの借款を提供したのだ。」

ここから分かるように、少なくとも読売は胡主席のスーダン首脳へのダルフールに関する助言を記録しているし、中国のダルフールに対する間接的関与を記録していないからである。読売社説はさらにアフリカからの対中警戒を記している。
「アフリカ諸国からも警戒論が噴出し始めている。貿易面では、衣類、家電など安い中国製品がアフリカ市場にあふれ、中国の大幅な輸出超過が続く。援助に伴う中国人の大量流入も目立ってきた。
 ザンビアや南アフリカなどの政治指導者は、中国のアフリカ外交を「新植民地主義」と表現するほどだ。ザンビアでは反中暴動、ナイジェリアでは中国人技術者の誘拐事件が起きた。…
 そうした中国に対する厳しい視線は、強引な資源外交の副作用だ。年率2割で急増する対外援助は、どこでどう使われているのか情報開示もなく、国際社会の懸念材料となっている。中国も直視せざるを得ない現実である。」

読売のこの書き方もニューヨークタイムズの社説に比べたら上品である。
「アフリカのうまく統治されている諸国でさえ、中国の増大する経済的役割は、貧者を助けることはあまりない。中国のザンビアにおける鉱山投資は…労働者や環境に配慮する近隣のものからの苦情を引き起こしている。中国の投資銀行は、赤道原則として知られる国際的ガイドラインに同意しない。そのガイドラインは主要な投資の社会的ならびに環境的インパクトを監視し管理するために使われるのだ。そして安い中国製品の洪水は、もっとも貧しい最底辺の労働者をさらに貧困と失業に追いやっている。」

もちろんニューヨークタイムズは、西洋諸国もアフリカで同様のことをしたことを認める。しかし中国に対して西洋の悲惨な歴史的事例に従うことを誇るべきではないと薦めるのである。おそらく二紙とも中国が大好きなため、中国に対して責任のあるステイクホルダーとなることを希望しているのであろう。
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奇策を探して

2007-02-20 03:34:12 | 時事問題
2月12日の朝日新聞社説「G7 限界に来た円安頼み」には次のような部分がある。
「今回のG7は、成長重視の戦略を掲げる安倍政権の経済運営に影響を与えるだろう。
 金利をできるだけ低く抑えて脱デフレを確かにし、高い成長を求める。低金利を背景にした円安も輸出企業の業績を助け、景気をよくする。
 そんな成長戦略は、海外からの円安不満が広がれば、続けられなくなるからだ。低金利政策はデフレだから許された。貿易黒字を稼ぐための円安誘導策だと見られるようになれば、懸念や不満は不公正だとの非難に代わる。
 日本の経済実態から日銀の利上げには反対してきた英国の有力経済紙が、日銀はドル売り円買いの市場介入をせよ、という社説を載せた。そんな奇策を求めるほど事態は切迫している。
 正攻法の策は、はっきりしている。超低金利で息をついているのは、不良債権で体力を弱めた銀行業界、そこからの融資にすがる競争力のない企業、それに膨大な借金を抱える政府や地方自治体だ。こうした分野で、正常な金利水準に耐えられる体質へ改善を急ぐことだ。」

安倍政権が推進する「上げ潮政策」の前提である低金利が、国際的に継続できないおそれがあることを指摘して、「正常な金利水準」に上昇しても大丈夫なように体質改善することを訴えている。

私がとても気になったのは些末なことである。円安に対する国際的非難が高まっているという事態の切迫を伝えるため挙げられている「英国の有力経済紙が、日銀はドル売り円買いの市場介入をせよ、という社説を載せた。」という箇所である。ここで要約されていることにつきるのかもしれないが、一体どんな新聞がどのようなことを書いているのかが知りたくてたまらない。

ネットは便利なもので、この有力経済紙の社説と推測できるものにたどりつくことができた。しかも日本語訳である。「日本は円買いすべきだ─フィナンシャル・タイムズ社説」(http://news.goo.ne.jp/article/ft/business/ft-20070209-01.html)である。

この社説の認識は対ドル120円のレートは安すぎるということである。
「収益性の高い輸出業があり、巨額の貿易黒字がある以上、日本の今の円レートはやはり低すぎる。貿易黒字はふつう、為替レートを下げるものではなく、上げるものだ。にもかかわらず円が下落しつづけているのは、金利0.25%の日本では資本利益率(ROC)が低いからだ。このため、もっと利益率の高い海外資産へ投資を回すべく、円が売られている。」

しかし日銀は金利を上げるべきではないとする。「 経済データが弱いことや、インフレ圧力がないことを思えば、金利引き上げは愚行だ。」金利を上げずに円の為替レートを正常な形に持っていく一時的方策があるのだ。積み上げた外貨準備高を使う方法だ。
「しかし過去に円高抑止のために積み上げた8750億ドルの外貨準備高を、減らし始めていくことは可能だ。 …何よりも、外貨準備高を売り減らすことで、日本は円高だけでなく円安にも為替介入する用意があるのだと、よって、円安をずっと続けることよりも円相場の安定をこそ重視しているのだと、日本は世界に示すことになる。」

もちろんこれが一時的方策にすぎず、長期的方法は別であると明記されている。
「 外貨準備高を売却しての円買いは一時的な手法だ。長期的な解決策は、内需拡大による金利上昇と貿易黒字の削減だ。それには日本企業が高い企業貯蓄率を引き下げることが必要で、企業を買収の危険にさらすか、あるいは配当を増やした方が有利になるよう法人税法を改正するなどの策が考えられる。しかしとりあえず今のところは、日本の外貨準備高を上手に慎重に売却することで、かなりの効果を挙げられるはずだ。」

日銀の円買いを支持する声が上がらなかったのは、これが奇策であると認識されているからなのであろう。しかし円安の大本である低金利に対する懸念は、日本の新聞社説には根強い。フィナンシャルタイムズは「経済データが弱い」とする。しかしこれらの社説が出た直後に内閣府が発表した昨年10―12月期の国内総生産(GDP)は、実質で年率4.8%となった。日経新聞はこれに対して2月16日の社説で「さらに息の長い経済成長を目指すには」という題目で、留保付ではあるが利上げを予測している。
「4.8%の高い経済成長率は、超低金利の正常化を目指す日本銀行にとって追い風といえる。日銀は20、21日の金融政策決定会合で利上げの是非を議論するとみられる。現時点では0.25%程度の利上げなら経済に大きな悪影響は及ばないとみられる。ただし決定会合までの株価や為替相場の動き、発表される景気指標、さらには先行きの物価や景気の動向を読み込んで、成長の持続を妨げないよう、深い議論をしたうえで判断することを望みたい。」

経済にド素人の私は利上げが近いのであろうと素直に考えている。
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高耀潔氏、米国への出国を認められる

2007-02-19 14:06:49 | 時事問題
2月1日以来自宅監禁の状態にあった、エイズ研究者・高耀潔氏の米国への出国が16日に認められた。高耀潔氏は米国では、女性の地位向上を図る「バイタル・ボイス・グローバル・パートナーシップ」からの表彰を受ける予定である。「バイタル・ボイス・グローバル・パートナーシップ」の名誉議長であるヒラリー・クリントン上院議員は、この知らせを中国大使から聞いた、「喜ばしい」、高耀潔氏は自由に米国を旅行できると確信していると述べた。

高耀潔氏に対する決定について、ニューヨークタイムズでは中国が国際的世論の圧力に屈したと書いている。(Detained AIDS Doctor Allowed to Visit U.S. Later, China Says - New York Times, http://www.nytimes.com/2007/02/17/world/asia/17gao.html)他方朝日新聞では「胡主席や呉儀副首相の指示があったので、省当局は出国を許可せざるを得なくなったと聞いている」という高耀潔氏の言葉を伝えている。(農村でエイズ治療の中国医師、米出国へ 胡主席ら許可か(朝日新聞) - goo ニュース、http://news.goo.ne.jp/article/asahi/world/K2007021801440.html)二つの記事が矛盾するわけではないことはいうまでもない。
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エイズ研究者・高耀潔氏の軟禁

2007-02-18 22:36:01 | 時事問題
中国で問題なのは、当局に睨まれるとひどい人権侵害の憂き目にあうことである。売血の注射針の使い回しのためにエイズが蔓延していることを告発した医師が自宅軟禁されているという記事が今月初めに掲載されていた。我々日本人は名前からは判断できないが、軟禁されているのは80歳のおばあさんである。
エイズ研究者、中国が軟禁…実態暴露恐れ訪米阻止
【香港=吉田健一】6日付の香港紙・明報などが報じたところによると、米国の民間人権団体の表彰式に出席するため訪米準備をしていた中国のエイズ対策の第一人者、高耀潔・元河南中医学院教授(80)が、中国当局により河南省内の自宅に軟禁された。
 高氏は、同省農村部での売血によるエイズ被害の実態を告発するなどエイズ対策に尽力しており、新たな実態暴露を警戒する当局が訪米を阻止しようとしたものと見られる。
 同紙などによると、高氏は訪米ビザ申請のため、4日に同省鄭州から北京に向かう予定だったが、10日前から当局者数十人が高氏の自宅を厳しい監視下に置き、高氏の外出を妨害。電話回線も切断されているという。
(読売新聞 2007年2月6日)

さらに上記の記事の続報を見つけた(China Covers Up Detention of AIDS Doctor - New York Times; http://www.nytimes.com/2007/02/16/world/asia/16china.html)
。国際的非難を避けるために、13日の河南日報には河南省の高官三人が春節の挨拶に高耀潔氏宅を訪れる記事が掲載されたらしい。高耀潔氏が健康であり自由であることを示すためである。しかし自宅軟禁は、その厳しさはゆるんでいるが、まだ継続されている。

緩和されているというのは、ニューヨークタイムズの記者が高耀潔氏と電話で話をすることができているからである。2月中旬から電話が通じるようになった。家族も訪問できる。そして高耀潔氏はちょっと外出することができる。しかしそれだけだ。アパートの外には数人の警官が常駐している。高耀潔氏を監視するためである。

高耀潔氏は「二つのことを知りたい。誰がこのような決定をしたのでしょうか。私は80歳であり、私が何の罪を犯したのでしょうか?第二に、インターネット上で誰が私を中傷しているのか見つけなければなりません」と語る。

もっとも高耀潔氏は、河南省の役人の求めに応じて「多忙のために表彰式に出られない」との二行の手紙を書いた。地方の衛生局と彼女の家族に対する政治的圧力を緩和するためである。

記事に引用されていた高耀潔氏の以下の力強い言葉が救いである。
「幸いなことに、私はまだ頭がはっきりしています。そうでなければ政府によりだまされ、政府のために話し、嘘をついたでしょう。私が表彰されるかどうかは問題ではありません。」「表彰式に出席するよりも欠席する方が影響力が大きいと思います。」
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イラク内乱にイラン関与の証拠

2007-02-15 01:11:01 | 時事問題
イラン関与の武器で170人死亡=米軍が「証拠」公表-イラク
【カイロ11日時事】イラク駐留米軍高官は11日、記者団に対し、イランで製造されイラクに持ち込まれた精巧な爆発成形弾(EFP)などにより、2004年6月以来、米軍など多国籍軍の少なくとも170人が死亡し、620人が負傷したと主張した。AFP通信が伝えた。
 同高官は「イランはEFPやその他の物資の過激派組織への供給に関与している」と指摘。武装勢力の訓練などにかかわったイラン革命防衛隊の「アルクッズ(エルサレム)部隊」が最高指導者ハメネイ師に報告を上げるなど、これらの活動にはイラン政府の高いレベルが関知していると米軍はみているという。
 イラン関与の証拠とされるEFPや迫撃砲弾の破片などが記者団に示された。同高官は匿名を要求。安全を理由に記者団のカメラや録音機の持ち込みを禁じた。 
(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070212-00000003-jij-int)

上記のようなニュースに接した。ブッシュ大統領が最近しきりに主張している、イラク内乱に対するイランの関与の証拠が提示されたということである。

爆発成形弾(Explosive Formed Penetrator)とは、缶のような容器の中に爆薬をつめ、それに金属のライナーをかぶせたもの。爆発により金属のライナーが飛び散り、装甲車の弱い部分に突き刺さるというものらしい。爆発成形弾は相当効果がある。米軍は上記のプレゼンで初めてEFPによる被害者数を公表した。イラクの米軍では装甲が強化されるとともに、装甲車を避けてヘリコプターによる輸送が多くなっているとも言われている。

ところで、ブッシュ政権はイラク戦争開始のときに、フセイン政権の大量破壊兵器に関する情報の取り扱いに問題があったため、イラク内乱に対してイラクが関与しているという証拠を見せても批判が絶えない。確かに押収され提示された武器はイラン製であるようだが、問題はイラク政府がその武器をアメリカ軍に対して使うために密輸されることを認めているのかどうかということが証明されてないことである。上の記事では米軍がその関与に確信があるとされるが、根拠は提示されていない。また米軍は批判を恐れたのであろうか、バクダッドでしかもカメラや録音機の持ち込みを禁じた上で証拠の提示を行っている。このような証拠が、イラン攻撃のために一人歩きしなければいいが。
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6カ国協議のとりあえずの結論

2007-02-14 04:08:00 | 時事問題
喜ばしいことに、6カ国協議がとりあえず妥結した。北朝鮮は核施設無力化と査察要員の入国を認める代わりに、援助を受け取るということになった(もっとも日本は拉致問題が未解決であるために、北朝鮮援助には当面は関わらない)。外務省速報によれば、最初の60日以内に次のことが実行されるという。
"60日以内に実施する「初期段階の措置」
(1)北朝鮮
1)寧辺の核施設(再処理施設を含む。)を、最終的に放棄することを目的として活動停止(shut down)及び封印(seal)する。
2)すべての必要な監視及び検証を行うために、IAEA要員の復帰を求める。
3)すべての核計画(抽出プルトニウムを含む。)の一覧表について、五者と協議する。
(2)経済・エネルギー支援
 重油5万トンに相当する緊急エネルギー支援を開始する。(注:米中韓露が実施。拉致問題を含む日朝関係の現状を踏まえ、我が国は参加せず。)
(3)日朝
 日朝平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための協議を開始する。(「懸案事項」には、拉致も含まれる。)
(4)米朝
 完全な外交関係を目指すための協議を開始する。(テロ支援国家指定を解除する作業開始)。"
(外務省: 第5回六者会合第3セッションの概要(速報);http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/6kaigo5_3g.html)

その次の段階は次の通りとなる。
"初期段階の次の段階における措置
(1)北朝鮮
すべての核計画の完全な申告の提出及びすべての既存の核施設の無能力化等を行う。
(2)エネルギー支援
 重油95万トンに相当する規模(上記1.(2)の5万トンと合わせ、合計100万トン。)を限度とする経済、エネルギー及び人道支援を供与する。(注:米中韓露が実施。拉致問題を含む日朝関係に進展が見られるまで、我が国は参加しないことにつき、関係国は了解。)"

大まかなことしか決められてない。今後さらに協議で詰められるということである。それにもかかわらず、これは北朝鮮が核施設を無力化するまで援助をしないと断言していた米ブッシュ政権の方針転換である。ブッシュ政権は、援助と核凍結を取引したクリントン政権の「枠組み協定」を批判してきたからだ。

北朝鮮が「枠組み協定」を反故にして、核開発の凍結を解除したことは記憶に新しい。それゆえ米政権は今回の協定は「枠組み協定」とは違うということをアピールすることに力を注いでいる。今回は「凍結」ではなく「停止」「封印」である。さらに今回は北朝鮮に軽水炉型原子力発電所が与えられることにはなっていないこと。今回の協定には、北朝鮮に影響力を持つ中国が関与していることがその差異としてあげられている。

今回の協定を好意的に解釈すれば、信頼醸成なくして北朝鮮の核施設の無能力化はありえない。今回はそのための段階的協定であり、最終的な核施設無能力化のためのスケジュールは決めることはできず、次回以降の協議に引き継がれるということになる。

これに対する批判としては、北朝鮮が核兵器を他国に引き渡すことはありえない。核兵器こそ北朝鮮の外交的切り札であり、金正日体制を保証しているものであるから。ゆえに今回の協定は、何だかんだ言っても単なる核開発凍結の約束に過ぎない(「枠組み協定」と一緒)。将来のことに対する北朝鮮の約束は意味がなく、反故にされるということである。

要するに北朝鮮との信頼をいかに醸成していくかというのがキモであろう。一部において北朝鮮は米国大統領選まで模様眺めを続けるであろうと予測されていたことから判断すれば、北朝鮮が少なくとも核凍結についてある程度具体的な行動を約束したのは、喉から手が出るほどエネルギーが欲しいということなのであろう。中国を巻き込んだ枠組みの効力がそれなりにあったということだ。もちろんあまり大きいことは望めないし、おそらく今後も駆け引きが続くのであろうが、この体制を使って北朝鮮の核開発の凍結を続けていくしかないであろう。
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円キャリートレード

2007-02-13 00:18:06 | 時事問題
新聞紙上で円キャリートレードという言葉をよく見つける。何じゃそりゃ?

「低金利の円で投資資金を調達し、それを外貨に換えて高い収益が期待できるものに投資する手法」である。それが行われる条件は、低金利と円安が長期間続くという見込みである。
「円キャリートレードが行われる条件としては、日本の低金利状態が長期間続くという見方ができることに加え、将来的に為替相場が円安に振れる可能性が高いという見方ができることも必要になります。なぜなら、「円キャリートレード」は、円を外貨に換える時点の為替相場と、その外貨を再び円に換える時点の為替相場との為替差益をも狙う取引だからです。」(http://www.fxprime.com/4_market/library/keizai/kouza34.html)

円安の原因は何か?それは内外の金利差であるらしい。
「円安がここまで進んだのは、日本国内の超低金利がしばらくは続くとの観測が市場に広まっているからだ。
 日銀が金利水準を引き上げれば、為替対策には有効に働く。だが、円相場だけで金融政策を決めるわけにはいかない。デフレから抜け出しつつあるとはいっても、個人消費の鈍い動きなどをみると回復の足取りはおぼつかない。円安が進む市場は、そうした日本経済の足元を見透かしている。」(2月4日朝日新聞社説)

つまり個人消費の弱さを考えれば、日銀が利上げに進みにくいだろうという判断が市場で行われているということなのであろう。

また円キャリートレードがさらに一層の円安を進めるという構図も見え隠れする。先頃ドイツで開かれた先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に関して、読売新聞社説は次のように述べている。
「G7声明が、巨額資金を運用するヘッジファンドの監視強化の必要性を指摘した点を評価したい。
 ヘッジファンドが低金利の円資金を調達し、高金利の外貨建て資産に投資して稼ぐ「円キャリートレード」が増えている。円安の要因でもある。」(http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070211ig91.htm)

そんなことは金融機関や機関投資家が行っていることで、個人には関わりのないことでは?と思うが、そうでもないらしい。
「円安の原因とされる円資金を外貨に換えて運用する「円キャリートレード」の主役は個人に移っている。超低金利を嫌い投資信託などを通じ、巨額の個人資金が高利回りをうたう外貨での運用に向かっている。外国為替証拠金取引も活発だ。
しかし、潮目が変わり円高に振れると、損失が生じかねない。投信の販売窓口は郵便局やインターネットへと広がっているが、過度にリスクを負うことになっていないか、個人も注意が必要だ。」(http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070210k0000m070146000c.html)

一つだけ確かなことは、金融問題に関心のない私にまでこのような話が達したことを考えれば、「円キャリートレード」に個人が手を出すにはリスクが高くなりすぎたということであると思う。
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胡錦濤主席アフリカ訪問に関するメモ

2007-02-12 02:13:23 | 時事問題
「工業は大慶に学べ」などということを昔聞いたが、大慶は油田で有名であり、日中国交正常化後、日本が中国から輸入したのは石油であった。その中国も今や石油輸入大国である。近代化のためにエネルギーが必要であり、エネルギーの獲得のために国家が努力するのは当たり前だ。1月30日からの12日間にわたる、胡錦濤国家主席のアフリカ8ヶ国(カメルーン、リベリア、スーダン、ザンビア、ナミビア、南アフリカ、モザンビーク、セーシェル)訪問は、その観点から眺められることが多かった(国家主席就任以来、アフリカ訪問は3度目)。以下はその情報に関する備忘録である。

中国は対外援助をするとき政治的条件を付けない。援助を受ける側からすれば、人権侵害が指弾されていれば、中国の援助は西側の人権に五月蝿い国のものよりもありがたい場合がある。であるから西側の観点からすれば「人権、債務不問の「資源外交」」という批判が出てくる。
「…欧米などから中国の人権問題無視のなりふりかまわぬ資源外交への批判が高まった。今回の胡主席のアフリカ歴訪では、大量虐殺などで国際的に批判を浴びるスーダンで、人権問題の解決の糸口を探る調停役も試みる見通し。欧米などからの対中批判をかわす狙いもある。
 欧米など批判は人権無視外交だけではない。パリクラブ(主要債権国会合)などを通じてアフリカの最貧国が抱える債務削減に取り組んでいる最中だが、一方で中国が資源獲得を狙ってアフリカ最貧国への資金支援を増やしている点で、「国際ルールを逸脱している」(ブラウン英財務相)との批判も高まっており、中国は対応を迫られている。
(胡主席アフリカ8カ国歴訪へ 人権、債務不問の「資源外交」;http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200701230034a.nwc)」

ところで2月2・3日のスーダン訪問時の首脳会談では次のようであった。
「国営スーダン通信によると、胡主席は会談で「AUと国連がダルフール地方での平和実現に建設的な役割を果たすべきだ」と指摘。大統領に対し、昨年5月の和平協定に調印していない同地方の反政府武装勢力との対話促進と紛争解決を求めた。」

内政不干渉の中国からすれば一歩踏み込んだ表現だが、しかしAUと国連がダルフール地方で平和維持活動をすることの道が開けるかどうかわからない。さらに
「両首脳は会談後、「戦略的協力関係」を再確認し、ダルフールでの人道支援活動などのための4000万元(約6億2400万円)の資金提供や、新大統領宮殿建設のための1億元(約15億6000万円)の無利子融資など7項目の協定に調印した。(胡錦濤主席、スーダン大統領にダルフール紛争解決要請;http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070203i313.htm)」

毎日新聞では次のように胡錦濤のアフリカ訪問を総括している。援助を与えるだけでなく、中国企業進出のための経済協定も締結したという。
「従来の中国のアフリカ外交は援助や借款を相手国に供与する見返りとして原油や鉱物資源を獲得する形が基本だ。胡主席は▽最初の訪問国カメルーンに総計1億ドル(約120億円)の融資など▽内戦後の経済復興が進むリベリアに2500万ドル(約30億円)の融資--を約束、従来型手法で関係強化を図った。
だが、今回、目を引いたのは中国企業の対アフリカ投資を促進するため、歴訪国で多数の経済協定を締結したことだ。世界有数の銅産出国ザンビアでは経済特区の設置に合意、特区内で操業する中国の鉱山関連企業への課税廃止を取り付けた。南アでは鉱物エネルギー資源に関する合意文書に署名した。」(胡主席 アフリカ歴訪終了 各国には中国への警戒と活用論:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070208-00000008-maip-int)

ところで中国の経済進出は必ずしも好意的に見られているばかりではない。たとえばザンビアに関して次のような情報がある。胡錦濤主席の中国系銅山訪問がデモの懸念のために中止されたという。
「180前後の中国企業が進出、衣料業界などでの劣悪な労働環境や低賃金、度重なる工場閉鎖には現地住民の不満も強い。2005年、現地職員50人の死亡事故が起きた中国企業経営の銅山【胡錦濤主席の】訪問は抗議デモへの懸念から、中止された。」(http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070208/chn070208000.htm)

もちろんアフリカの側の中国を利用しようというしたたかな動きがあることも事実である。南アフリカのムベキ大統領は、6日の胡主席との会見で、南アフリカと経済にとって中国はもっとも重要なパートナーと持ち上げた。その背景が毎日新聞の記事では次のように指摘されている。
「ムベキ大統領が中国を重視する背景には、国際社会での中国の政治力への期待もある。大統領は記者会見で「国連安保理常任理事国の中国との関係を強化すれば、アフリカが抱えるさまざまな問題で国際社会から素早い対応を引き出すことにつながる」と中国の効用を説いた。」

単純な善悪二分論の評価では不十分であることを再認識させられた。
コメント (2)
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