国際学どうでしょう

私が気にしている情報のメモ

社説の歯切れの良さ:希望入団枠廃止と西山事件

2007-03-30 19:11:04 | 時事問題
プロ野球ドラフトの希望入団枠廃止に関する毎日新聞の30日付社説「希望入団枠廃止 巨人の「拒否権」を許すな」は歯切れがよかった。希望枠廃止の過程で「「拒否権」を行使するかのような巨人の振る舞いに、抵抗できない11球団という図式」が見えたことを批判しているのだ。
「巨人戦の視聴率が低迷し、今季も地上波テレビのナイター中継数が大幅に減少している。巨人戦頼みという安易な商法は明らかに色あせてきている。だからこそ12球団が結束し、新たなビジネスモデルを構築していかなければならない時代を迎えている。
 今回の迷走ぶりは、プロ野球界の立ち遅れを象徴するシーンでもあった。舞台裏の醜態はもうたくさんだ。選手はプレーの中身でファンの期待に応えてほしい。」

このような正論は、私のような巨人が大好きなばかりに、アンチ巨人になってしまった人間にも心地よい。

希望入団枠に関しては、西武球団の裏金問題を発端として、アマ側から廃止の声が上がった。希望枠制度が裏金問題の温床となる可能性を秘めているからだ。

この希望入団枠問題に関しては、面白い現象が起きた。朝日(24日付「ドラフト裏金 心弾まぬ球春スタート」)と産経(25日付「プロ野球開幕 ファンの視線大切にせよ」)が異口同音に希望入団枠の即時廃止を主張し、問題の先送りをはかろうとしたプロ野球界を批判し(もちろん毎日も同様の見解)、それに対して読売は「選手の獲得、移籍など人事面での改革については、FAなど他の制度もあわせ、球界挙げての慎重な議論が必要だろう」とボソボソ留保を表明したのである(24日付読売社説「プロ野球開幕 プレーオフの楽しみが『セ』でも」)。読売新聞は、当然自己と深い関係にある巨人をあからさまに批判できないのであろう。

もちろん誰でも自分と関わりに深い問題については議論することは難しい。毎日新聞も西山事件の裁判については、少なくとも社説レベルでは取り上げることは今のところない。元毎日新聞西山太吉氏が、沖縄返還の費用負担の日米密約に関する外務省高官の虚偽発言により精神的苦痛を受けたとして損害賠償を求めた裁判だ。

東京地裁は民法の除斥期間の規定を適用して、つまり本質を論じず、法技術的な小手先の論理を用いて、請求を棄却した。裁判所がよく使う手である(朝青龍や白鵬のげたぐりで勝負をつけるようなものである)。

この問題を取り上げたのは読売と朝日であった。28日付読売新聞社説「『密約ない』を撤回してもいい時」では、裁判では西山氏敗訴だが、それで密約がないとした外務省高官の発言にお墨付きが与えられたわけではないと主張する。そして政府に対して密約はなかったとする発言を撤回するように求めている。29日朝日新聞社説「日米密約 真相に目をつぶる判決」も同様の趣旨である。毎日も同じような趣旨の社説を載せてしかるべきなのであるが、何かのタブーがあるのだろうか。
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18日付毎日社説「西武隠ぺい工作 球児をカネで汚染するな」への脊髄反射

2007-03-18 15:40:04 | 雑談
18日の毎日新聞社説は「西武隠ぺい工作」を取り上げていた。西武ライオンズが早大元野球部員に対して不明朗な資金を渡していたこと、さらにその問題が発覚しそうになったときに口裏を合わせ工作を仕掛けたことが批判されている。そしてプロ野球側にドラフト制度で「希望入団枠」撤廃など透明性の高い制度を作り上げることを希望し、アマ側にも反省を求めている。

さらに社説では一歩踏み込んで元野球部員の高校時代の野球留学についても言及して、ここにも西武スカウトが関与していたことを指摘している。元野球部員は関西の少年野球リーグで活躍して、岩手の高校に野球留学したのだ。
「少年野球の盛んな関西の球児を招いて野球部を強化し、甲子園に出場して学校の知名度を上げたい学校側の狙いと、競合校の少ない地域から甲子園出場を目指す球児との双方の思惑が合致し、野球留学が広く行われるようになって久しい。昨年、日本高等学校野球連盟(高野連)が行った調査では、少年野球のレベルが高い大阪、兵庫両府県から537人の球児が他県の高校野球部に進んでいる実態が明らかになった。
多感な高校時代に親元を離れ、野球部の寮などで生活する経験を積むことは無益ではないし、野球留学そのものを全否定する必要はない。だが一方で、選手の受け入れや送り出しをめぐって不明朗な金銭が動いているのではないかと懸念されていたのも事実だ。今回の不祥事は、こうした野球留学をめぐる暗部も照らし出した。」http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/

野球留学を全否定するつもりはない。しかしそれを助長する制度について言及しないのはどうか?もちろん「競合校の少ない地域から甲子園出場を目指す球児」とそれとなく示しているが、私が言いたいのは夏の甲子園の一県一校出場枠の撤廃である。参加高校数を勘案して予選での試合数をほぼ同じにするべきである。さらに、余裕のある日程で予選をしっかり行い、甲子園出場高校の数をしぼれば、夏の暑い盛りに過密日程で高校生に試合をさせる必要がなくなるであろう。高校野球を新聞拡販から切り離すべきである。
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「西ノ宮」から「西宮」へ

2007-03-18 03:10:31 | 雑談
18日のJRダイヤ改正にあわせてJR東海道線の「西ノ宮」駅が「西宮」駅に改称された。
JR「西ノ宮」駅、130年ぶりになくなる「ノ」
"西宮の地名は「えべっさん」で知られる西宮神社に由来し、平安時代にはあったことが確認されている。大阪―神戸間の官営鉄道開業により「西ノ宮駅」が出来たのは1874(明治7)年。当時の地名に合わせたという説もあるが、西宮市によると、「過去の文献を調べても『ノ』入りの地名があったことは確認できない」という。旧国鉄の前身にあたる工部省鉄道寮が「東京の人には読めないから」と、隣駅だった三ノ宮とともに「ノ」を入れたとも言われるが、真相は不明だ。"
http://www.asahi.com/national/update/0317/OSK200703170044.html

私は西宮市民でありながらこの問題に全く気がつかなかったが、市は以前からこの問題を提起してきた。ネックは費用。JRは約2億円を提示してそれで沙汰やみ。今回は「西ノ宮駅の西隣に「さくら夙川」駅が開業することになり、同市は新駅周辺の駐輪場などを整備し、JR側にアピール。システム改修は新駅開業に伴う費用としてJR側の負担とし、市の支出は駅の看板改修費の一部など数十万円に落ち着いた」とのこと。

私の勤務先の最寄り駅も同じ問題を抱えている。地名は「岸部」なのだが、駅名は「岸辺」なのだ。おそらく旧国鉄が西ノ宮と同じような理由で岸辺にしたのだろうと推測できる。こちらはどうなるのだろうか?もっとも利用するうえで駅の構造はともかく、駅名は気にならないが。
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ホームエクイティローン:日経15日付社説「株安の裏に米住宅市場の変調」から

2007-03-16 14:22:47 | 時事問題
日経新聞15日付社説「株安の裏に米住宅市場の変調」から学んだこと。

社説要旨は次のとおり。「米国発の世界の連鎖株安がぶり返した。その背景には米住宅ブームの失速がある。ただ今回の株安は、米国の過熱気味経済に対する自立的調整なら健全であろう。しかし住宅ブームを裏付けとした米国の個人消費は、中国や日本経済の下支え役になってきたので注意する必要がある。」

私が気になったところは次の箇所である。
「住宅市場が低迷し、値下がりが広がると、個人が住宅価格の値上がり分を担保に借り入れて、消費する効果が見込めなくなる。株式市場はこの辺を心配している。」

つまり「個人が住宅価格の値上がり分を担保に借り入れ」るという、私には全く分からない制度である。ネットで調べると、これは「ホームエクイティ」というもので、米国では平均的家計が持つ最大の資産であるという。
「これ【ホームエクイティ】は借り入れ金額を差し引いた後の純資産としての住宅価値である。これは住宅を担保とした家計の借り入れ余力であり、住宅ローンの返済分が純資産の増加として蓄積されている。例えば30万ドルの住宅ローンがあつても住宅価格が40万ドルなら10万ドルの借り入れができる。住宅価格が上昇すれば借入額も増えるというわけだ。」(http://nsk-network.co.jp/050829.htm)

なるほど米国は金融制度が発達していると感心しきりであった。もっとも日本でもこの「ホームエクイティローン」がないわけではない。千葉銀行が実施している。次のようにセールスポイントを明示している。

「 最大2000万円まで繰り返しご利用でき、かつ、お使いみちも自由なローンなので、お子さまの入学・進学から車の買い換え、住宅のリフォームまで、暮らしのニーズに幅広くお応えすることができます。」
「ご自宅を有効活用する不動産担保ローンなので、無担保ローンに比べ、低金利でご利用いただけます。」

しかし賃貸住まいの私には関係ない話ではある。
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お笑い安倍劇場:松岡農相光熱費問題から学んだこと

2007-03-15 02:41:17 | 時事問題
本ブログに対する「松岡農相」というキーワードでのアクセスはまだやまない。お金のかからない光熱費に巨額の費用が計上されているという分かりやすい問題は、ほとんど「お笑い」の様相を呈しているからでもあろう。松岡農相が釈明すればするほど、松岡農相を庇えば庇うほど「お笑い」である。

まず松岡農相の迷言。高額の光熱費の理由を問われて、その理由とされた「ナントカ還元水」である。これに関して毎日新聞が10日付で次のように完全にちゃかした記事を書いている。
"近事片々:3択問題。松岡利勝農相の国会答弁「ナントカ還元水」…
 3択問題。松岡利勝農相の国会答弁「ナントカ還元水」。ナントカに当てはまるのはどれ?
(1)舌の根乾かぬ
 ただのはずの議員会館光熱水費を年間507万円と報告。国会で「確認して答える」と言った2日後に説明拒否。この水を飲むと約束をほごにできる。
(2)1本5000円
 高価なミネラルウオーターを購入しているとの説も。「今、水道水を飲んでいる人はほとんどいない」の発言に、水道水利用者から苦情も殺到する。
(3)うそ八百 
この水で虚偽をなめらかに言えるようになる。でも民主党議員のアポなし訪問で還元水を作るはずの浄水器は見つからず、ピンチに。
正解は来週、農相本人に語ってもらおう。"
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/kinji/news/20070310dde001070002000c.html

この記事を書いた記者は人が悪い。本当は「(4)下手な言い訳」であろう。光熱費に別の費用を含めていたけれども、本当のことを言うと、政治資金規正法違反に問われるのがいやなので、ついつい見苦しい言い訳をしてしまったということなのだろう。松岡氏にはダーティーなイメージがすでにつきまとっているのだから、本当のことを言ってこんな問題をさっさと片付けることができたはずだ。

たとえば次の産経新聞記事にある民主党中井議員のように国会答弁すれば、マスコミや野党から叩かれたかもしれないが、人の噂も75日である。
民主・中井元法相の団体 光熱水費を不正計上
"民主党の中井洽(ひろし)元法相の資金管理団体「洽和(こうわ)会」が、電気代や水道代のかからない議員会館を事務所としながら、平成17年の政治資金収支報告書に光熱水費用として286万円を計上していることが14日、分かった。別項目に記載すべき慶弔の花代や公用車のガソリン代、議員連盟の会費などを光熱水費としていたという。中井氏は「私的な流用は一切ない。間違っていたのなら(報告書を)訂正する」と話している。"
http://www.sankei.co.jp/seiji/seikyoku/070314/skk070314001.htm

松岡農相は案外心優しいのかもしれない。安倍首相に迷惑をこれ以上かけてはいけないと思い、ついつい絶妙な「ナントカ還元水」と口走ったのが運の尽きである。

さらに驚いたことに「ナントカ還元水」に関して、毎日記者がおちゃらけで出した「(2)1本5000円」という答えで、松岡農相を庇おうとしている政府関係者もいるらしい。琉球新報の12日付社説を見て、笑いがこみ上げてきた。
農相の光熱水費・世間が納得する説明を
"政治資金収支報告書によると、資金管理団体「松岡利勝新世紀政経懇話会」は1990年6月、東京都江東区内に設立。同年の光熱水費は7万6000円だった。その後徐々に増え、94年は118万円を計上した。
 95年1月には議員会館への移転届を国に提出。翌年からさらに増え続け、ピークの2002年には779万円に達した。政府関係者は「松岡氏は500ミリリットルで5000円する水を飲んでいる」と整合性をつけることに躍起だが、それにしても年間700万円余は考えにくい。与党内でも疑念は消えないようだ。"
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-22031-storytopic-11.html

まじめそうな人が真剣に奇天烈なことを行って笑いを誘うという喜劇のセオリーを突っ走っているのだ。さらにまじめで誠実そうに見える塩崎恭久官房長官も必死に松岡農相を庇うが、フォローになっていない。「松岡氏は精いっぱい国会で答弁している。政治資金収支報告を適切にやっていることを理解している」と述べて、マスコミからは政治資金規正法の精神をないがしろにしていると叩かれている。

今回の教訓は、まわりに迷惑をかけると思い、下手な言い訳をするとますます泥沼にはまり、まわりはますます迷惑する。自分の非をあっさりと認めて、世間の非難を一身に受けるのが最良の危機管理であるということだ。
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慰安婦問題に関する雑感

2007-03-12 23:49:18 | 時事問題
慰安婦問題が再燃している。米下院外交員会で慰安婦問題に関して日本非難決議が上程されているそうだ。何かまた新たな問題が起きたのか。そこでの主張はどのようなものかと考えていたら、産経新聞の古森義久氏が調べてくれていた。たとえばマイク・ホンダ議員は次のように述べているという。
「日本の国会は戦争での個人の損害賠償は講和条約の締結で解決ずみという立場をとるが、他の諸国はそうは考えない。若い女性の多くは日本軍により自宅から拉致され、売春宿に連行された。1993年には河野洋平氏による談話が出たが、日本政府の誠意ある謝罪ではなく、人為的で不誠実な意思表示に過ぎなかった。20年ほど前に日本の文部省は検定教科書のなかの慰安婦の悲劇を削除、あるいは削減してしまった」(同決議案の提案者の民主党マイク・ホンダ下院議員)
「日本側がアジア女性基金を作り、元慰安婦たちに賠償をしようとしたことは歓迎するが、それは政府としての正式の認知ではなく、賠償金受け手への日本の首相の謝罪書簡も日本政府としての明確で公式の謝罪ではない」(ホンダ議員)
(「慰安婦」糾弾の正確度は 産経新聞 3/3)

要するに日本軍が植民地や占領地の女性を強制連行して、性的奴隷にしたのに、日本政府は公式に誠実な謝罪をしていないということである。しかしながら日本軍の関与に関する新たな証拠の発見があったわけではない。

これに対して日本軍の直接的な強制はなかったと読売や産経社説は主張している。そしてそのあたりを曖昧にして解決をした河野談話を非難している。
「河野談話は、慰安所の設置や慰安婦の移送などに「旧日本軍の関与」があり、慰安婦の募集は業者が主だが「官憲等の加担」「甘言、強圧による」などがあったとしていた。さらに、すべての元慰安婦に「心からのお詫びと反省」を表明し、補償に関する訴訟に「十分に関心」を払うとしている。
 だが、河野談話の作成にかかわった石原信雄官房副長官(当時)の証言によると、「関係各省庁が国の内外で徹底調査したが、政府や軍が女性の強制連行を指示したような文書や証拠は一切なかった」という。…
 一時的に譲歩し、謝罪すれば、その後の対日批判は収まると判断したのかもしれない。だが、実際は逆だった。日本政府への責任追及が逆に高まり、今回の下院決議案も「河野談話が根拠になった」(提出者の一人、マイク・ホンダ議員)。政治の一時しのぎのツケが回ってきたというべきだ。」(産経社説 3/7 慰安婦決議案 一時しのぎのツケがきた)

そして「慰安婦問題 偽史の放置は禍根を残す」(産経社説 3/10)として河野談話の見直しを求める。これは安倍晋三氏の首相になる以前の見解に近いのであろう。3月6日、安倍首相は「当初、定義されていた強制性を裏付ける証拠はなかった。定義が変わったことを前提に考えなければならない」と述べた。しかしその後「政府の立場は河野談話に書いてある通りだ」と述べている。

これに対して朝日社説では、このような強制があったかどうかの議論をして問題を蒸し返すのは、木を見て森を見ずの議論である。全体として日本は責任を負っているのであると、河野談話の維持を主張する。
「どのようにして慰安婦を集め、戦地に送り、管理したのか。その実態は地域や時代によって異なる。しかし、全体としては、植民地や占領地の女性たちが意思に反して連れて行かれ、日本軍の将兵の相手をさせられたことは間違いない。
 河野談話が「軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と結論づけたのは、潔い態度だった。
 細かな事実にこだわって弁明ばかりするよりも、民族や女性の人権問題ととらえ、自らの歴史に向き合う。それこそが品格ある国家の姿ではないか。」(朝日社説 3/10 慰安婦問題―国家の品格が問われる)

毎日社説は河野談話の維持を主張するが、強制があったかどうかの事実については歴史家にまかせろという議論をする。おそらく政治と歴史を峻別するべきであるということなのだろう。
「「河野談話」は、政治決着だったといえる。見直し論は、厳密な史実の裏付けがないことを理由にしているが、戦争責任問題を含めたこの種の問題での政治決着には、あいまいな部分が残るのはやむを得ない。史実を争うなら、歴史研究者に委ねるのが一番だ。…
「河野談話」見直し論のように、政治が不用意に蒸し返すと事態がかえってこじれるケースはよく見られる。長期的な視野に立っての国益をまず考えるのが政治家の責務のはずだ。不健全なナショナリズムをあおる行為は厳に慎まなくてはならない。」(毎日社説 3/8「従軍慰安婦」問題 「河野談話」の継承は当然だ)

私個人としては毎日社説に賛同としたい。日本軍が植民地女性の強制連行に関与しているという証拠がない限り、河野談話以上の責任の取り方は難しい。しかしかといって河野談話を見直す議論を政治日程に上らせるのは得策とも思えない。このような動きが、日本は過去の侵略を美化しようとしていると曲解されるのが火を見るより明らかであるからだ。

米下院決議を推進している人たちは、日本が女性を強制連行して、性的奴隷にしたということに確信を持った人たちである。朝日社説も、日本の罪を追及する人が、日本の謝罪を理解していないと批判している。しかしこのような人たちを説得するのは大変難しい。
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松岡農相光熱費問題と衛藤氏復党

2007-03-11 23:57:15 | 時事問題
ブログを一週間更新しなかったが、アクセスが絶えない。こんなことはこのブログでは珍しい。原因は明らかである。松岡農相というキーワードでここを訪問する方が驚くほど多いのだ。

無償の議員会館に事務所を置く松岡農相の政治管理団体が多額の光熱費を計上していた問題に関連しているのだろう(03年約416万円、04年約518万円、05年約507万円)。政治資金規正法によれば、光熱費には内訳の記載や領収書の添付が不要である。普通に考えれば、領収書のとれないお金をここに計上していたのであろう。

しかしながら松岡農相は「何とか還元水や、暖房とか別途そういうものが含まれる」と5日の参院予算委員会と釈明した。9日には民主党の芝博一、蓮舫両参院議員は、アポなしで松岡氏の事務所を訪問し、浄水装置も多数の暖房装置もなかったと説明した。しかし同日の参院予算委員会で、松岡農相は「必要な報告はすべて適切に行っている。それ以上の報告は、現行の法制度が求めていないので差し控えたい」と答弁した。見苦しいとしか言いようがない。

安倍内閣に批判的ではない日経新聞ですら9日社説「納得できぬ松岡農相の答弁」において、松岡議員を農相として不適切であると言い切っている。これはゆゆしきことである。
「政治資金には税金の政党助成金も充てられている。収支報告書の内容に疑念を持たれた以上、政治家が説明責任を果たすのは当然だ。農相答弁には、与党内からも「説明になっていない」という不満が漏れる。光熱水費の答弁で逃げの姿勢を続けるのであれば、農政でいくら立派なことを言っても信頼されまい。農相として「不適切」な姿勢である」

他方同じ人事に関して、安倍首相の肝いりで、衛藤晟一前衆院議員の復党も決まった。これに関して、安倍政権を支持する産経新聞も、11日付社説で注文をつけている(「自民党復党 国造りへもっと意尽くせ」)。
「首相は安倍政権の運営にとって衛藤氏復党がいかに必要かを説明するだけにとどまらず、近代政党として筋が通った復党ルールを確立し、属人的ではないことを明確にすべきだ。」

二つは全くレベルの違うことなのかもしれないが、安倍内閣が平衡感覚を失いつつある兆候のように見える。
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政治とカネ関連の新聞社説メモ

2007-03-03 17:30:28 | 時事問題
以下は単なるメモである。

朝日・毎日・産経・日経は、予算案が衆議院予算委で可決されたことを社説で取り上げていた。この四紙ともニュアンスの違いは多少あるが「政治とカネ」の問題が置き去りにされないように、すなわち政治資金規正法の改正に後ろ向きの自民党を批判し、それを責めきれない民主党に対する猛省を迫っていた。

たとえば毎日新聞は次のようである。
MSN-Mainichi INTERACTIVE 社説
" 民主党の小沢一郎代表は先月20日、自らの資金管理団体が不動産取得費などを事務所費として4億円以上計上していた問題について内訳や領収書などを公表した。
 これに自民党が反応し、与野党が詳細を公表した上で実態解明が進み、建設的な論議が展開されることを国民は期待した。
 ところが、自民党は全くなしのつぶてだ。…
 佐田玄一郎前行革担当相の参考人招致も実現していない。…
 加えて政治資金規正法改正の論議も迷走気味だ。公明党は5万円超の事務所費に領収書の添付を義務付ける改革案をまとめた。
 しかし自民党内には領収書添付について「政治活動の自由が守れない」と反対論が多い。改正案を作る気があるのか疑いたくなる。
 安倍晋三首相も党に任せるばかりで指導力を見せない。これが支持率低下の一因でもあろう。
 もちろん、民主党の責任も大きい。小沢代表は詳細を公表したものの、角田義一前参院副議長の政治資金不記載問題は解明されていない。これでは小沢氏が公表した効果も薄れてしまう。
 民主党執行部は詳しい説明をするように角田氏を説得すべきだ。参院民主党をはじめベテランの角田氏に遠慮があるのだろうが、それでは国民は納得しない。
 あの手この手を使って与党から譲歩を引き出すのは、少数である野党の役目だ。国会質問は野党の生命線だが、委員会での質問は迫力を欠き、政府を追い詰める新事実の発掘も乏しかった。
 党内には1年前、党首交代にまで発展した偽メール問題のダメージが残り、質問者に自己規制が働いているという声もあった。それが事実ならあまりにもひ弱であり、国民の負託に応えていない。"
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070303k0000m070173000c.html

私が驚いたのは、毎日の社説において民主党に対する批判が具体的で厳しいことである。現在の政治的沈滞の大きな原因は、民主党の長老議員に対する遠慮と元気のなさであると認識しているからであろう。

さらに産経の社説の次の箇所がよく分からなかった。総連系団体から献金を受けた民主党議員を2人としていることだ。
【主張】予算案通過 首相は着々と実績を積め|主張|論説|Sankei WEB
"総連系団体からの民主党議員2人への献金は事務所費問題より深刻だ。政治資金規正法は、外国人や外国人団体からの献金を禁じている。2人とも“知らん顔”を決め込んでいるが、民主党は独自に調査するという考えはないのだろうか。"
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070303/shc070303000.htm

角田義一氏以外に誰が総連系団体から献金を受け取ったのか?ちょっと調べると該当する記事が出てきた(これも産経新聞のものだ)。次のようなものである。なるほどこのような事実があったのか。
Yahoo!ニュース - 産経新聞 - 民主議員また違法献金 近藤昭氏、総連系企業から320万円
"民主党愛知県連代表の近藤昭一衆院議員(愛知3区)が代表を務める民主党愛知県第3区総支部が、平成14年と15年、政治資金規正法で献金を禁じられている在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の関連団体関係者経営の5つの会社から計320万円の献金を受けていたことが1日、分かった。近藤議員は外部から「違法献金では」との指摘を受け、昨年までに全額を返金した。"
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070202-00000004-san-pol

注記
産経も、安倍政権に対する好意的態度は明らかであるが、次のように自民党に対する批判的姿勢がある。「自民党は【政治資金規正】法改正には慎重論が多く、党の内規改正で対応するとしている。不透明な部分をそのままにしようという後ろ向きの姿勢で、4月の統一地方選や7月の参院選を乗り切れると考えているのだろうか。責任ある保守政党としての自浄能力が問われている。」
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北朝鮮:高濃縮ウランによる核開発計画への疑問

2007-03-02 14:31:50 | 時事問題
北朝鮮の高濃縮ウランによる核開発計画について疑問が提示されている。2002年10月の米朝協議の席で、北はいったんこれを認めたがその後否定に転じた。

産経新聞は次のようにこの疑問を否定する記事を載せている。
"【ワシントン=有元隆志】米国家情報長官のもとで北朝鮮情報分析の責任者を務めるジョゼフ・デトラニ氏は27日の上院軍事委員会で証言し、高濃縮ウランによる北朝鮮の核開発計画について、「北朝鮮は濃縮ウランの生産するのに十分な機材を入手した」と述べ、北朝鮮にはウラン濃縮計画が存在すると強調した。
 北朝鮮は2002年10月の米朝協議で、いったんは計画を認めたもののその後否定に転じた。米国の専門家のなかからも米政府の情報を疑問視する声が出ているが、デトラニ氏の発言はこれに反論したものだ。"
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070228/usa070228003.htm

しかしデトラニ氏の同じ発言を別なように解釈する記事もある。
U.S. Had Doubts on North Korean Uranium Drive - New York Times
"In a little-noticed exchange on Tuesday at a hearing at the Senate Armed Services Committee, Joseph DeTrani, a longtime intelligence official, told Senator Jack Reed of Rhode Island that “we still have confidence that the program is in existence ― at the mid-confidence level.” Under the intelligence agencies’ own definitions, that level “means the information is interpreted in various ways, we have alternative views” or it is not fully corroborated."
http://www.nytimes.com/2007/03/01/washington/01korea.html

産経新聞はデトラニ氏の最後の言葉(at the mid-confidence level)に注意しなかったのだ。この意義はニューヨークタイムズの解説によれば、「この情報は種々に解釈され、私たちはいくつかの見解がある」すなわち十分に確証されていないということであるとされる。

朝鮮日報は、(デトラニ発言に言及していないが)このニューヨークタイムズ紙の見解を簡単にまとめている。
朝鮮日報 Chosunilbo (Japanese Edition)
"核開発:米政府「北の高濃縮ウラン生産状況は不明」
 米国家情報長官(DNI)室は先月28日、米政府の最高級官僚らに回覧された北朝鮮の高濃縮ウラン(HEU)開発プログラム関連の報告書で、「濃縮ウランの生産過程がどの程度進んだかは不明」と評価した、と米紙ニューヨーク・タイムズが1日付で報じた。
 北朝鮮がウラン濃縮に必要な遠心分離機やアルミチューブを購入し、ウラン濃縮能力の獲得を追求してきた点については「強い確信」を持っているが、北朝鮮が実際にウランをどれほど濃縮できたかは不明、というのが現在の米政府の見解だと同紙は伝えた。
朝鮮日報/朝鮮日報JNS"
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2007/03/02/20070302000003.html

米国は、高濃縮ウラン問題のために94年の枠組み協定で約束されていた重油提供を拒否し、その後の北朝鮮の反発を招いた。ブッシュ政権のインテリジェンスに関する姿勢が、イラク戦争だけでなく、北朝鮮問題でも問われることになるのかもしれない。
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アメリカのイラン政策変更とイラク新石油法

2007-03-01 00:54:09 | 時事問題
チェイニー副大統領がカブール郊外バグラム基地滞在中に自爆テロが行われたことについて、アルカイダは副大統領を狙ったと声明を出した。しかし自爆テロが行われた際に、チェイニー副大統領滞在を知っていたかどうかは疑問視されている。副大統領の滞在は悪天候によるハプニングであるからだ。もっとも自爆テロでは二十名以上の人物が亡くなるという実害をもたらした。それだけでなくアルカイダの活動を印象づける象徴的な意味があった。

頭の痛いニュースばかりが続くが、明るいニュースもないわけではない。たとえばアメリカが、方針転換をしてイランやシリアを含むイラク隣国とイラク問題について交渉のテーブルに着くという。ライス国務長官が米上院歳出委員会で明らかにした。イランやシリアとの対話は、昨年12月のイラク研究グループから提案されていたが、ブッシュ政権がかたくなに拒否してきたものである(もっとも今回の会議は、イラク研究グループが主張したアメリカ主宰ではなく、イラク主宰である)。米国はシリアと外交関係があるが、イランとは79年革命以来外交関係が断絶したままである。

二週間以内に開始される大使級会談では、イラクやその隣国だけでなく、国連安保理常任理事国も参加する。アジェンダはイラク復興問題で、イランの核問題は取り扱われないとされる。さらに4月には閣僚級の会談が行われる予定である。
CNN.co.jp : イラク国際会議開催へ 米国がイラン・シリアと会談か
"ライス長官はまた、会議の成果を踏まえて、4月に主要国(G8)とイラク周辺諸国による閣僚級会議を開く意向を示した。G8に含まれていない国連安全保障理事会の常任理事国、中国も招く。長官はさらにイランとシリアについて、両国政府が「こうした機会にイラクとの関係を改善し、域内の和平と安定に向けて努力することを望む」とコメントした。"
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200702280001.html

ということは閣僚級会議には日本も参加することになるのだ。

さらにイラク政府が石油の収益を分配する法案を閣議レベルで決定した。
"イラク新石油法、閣議が法案承認・地方政府が開発交渉
【カイロ=金沢浩明】イラク政府は26日、新しい石油法案を閣議で承認した。国民議会に提出し5月末の施行を目指す。石油収入を中央政府が管理・分配すると同時に、外国企業との開発交渉などを地方政府に認めた。イラクではクルド系とイスラム教シーア派の居住区に偏在する石油資源が、宗派・民族間の深刻な対立を生んできた。新法が治安回復への好材料になるとの期待も出ている。"http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070227AT2M2700Y27022007.html

アメリカ政府がイラク情勢安定のために求め続けていたものである。もちろんこの二つが具体的な結果に結びつくかどうかは分からないが、イラク安定化につながる明るい兆しであることだけはまちがいない。
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