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28日付読売社説「国立大交付金 性急な競争原理導入は危険だ」

2007-05-30 00:32:16 | 時事問題
国立大学の経営はよそごととは言え、回り回って私大経営にもかかわってくるので、他人事とは言い切れない。28日付の読売社説「国立大交付金 性急な競争原理導入は危険だ」を読んでビックリした。国立大学に関して恐るべき事態が進行するかもしれないというはなしだ。国立大学の「運営費交付金」の配分基準を変えようということらしい。
「国から国立大学に交付される「運営費交付金」は、大学運営の基盤的経費だ。教職員の人件費、光熱費、施設維持費、研究室経費などに使われる。
 学生数などを基に算定する今の交付金配分の方法について、財務省や、経済財政諮問会議など政府の有識者会議から、研究成果や実績に基づく配分に改めるよう求める声が強まっている。
 これは疑問だ。財政規律を目的とした競争原理を、交付金の配分にまで持ち込む必要があるだろうか。」

安倍内閣支持の読売新聞が、ここまで踏み込んで反対するのも珍しい。財務省が先ごろ公表した「研究成果や実績に基づく配分」試算によれば、全国87国立大のうち74大学で交付金が減額されるという。
「減額が最も大きい兵庫教育大では90・5%減と、今の約1割になる。“ワースト10”のうち9校が教育大だった。地方の国立大も「減額組」がほとんどで、増額組は倍増の東大、京大など旧帝大をはじめ13校にとどまった。」

兵庫教育大学が9割減という算定を見て、目が点になった。私の子供の担任だった先生がこの大学で研修を積まれたし、私たちの大学の卒業生もお世話になっているのだ。「けしからん!」と思わず叫んだ。このような配分では地方大学つぶしと言われても仕方がない。その批判を甘受した上で「選択と集中」の原理で、資源を13の大学に集中的に振り向けようということなのだろうか。

同社説では「競争原理の導入を言い出したのは、経済財政諮問会議の民間議員たちだった。これに財務省などが同調した。」と指摘しているが、財務省は実は乗り気ではないのではないのか、と勘ぐりたくなる。財務省が上記のような試算を出せば、地方ならびに地方大学が怒り出すのは明らかだからだ。

社説はさらに次のように、余り一般的に意識されない事実を指摘してるが、これは有り難かった。
「高等教育への公的財政支援は、日本の場合、対GDP比で先進諸国の半分しかない。厳しい財政の下で、予算拡充は難しいとしても、再生会議には大学の強化につながる前向きな提言を望みたい。」

(もっとも、予算拡充しろと言ってくれるのであれば、もっと嬉しかったが)
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慚愧に堪えない

2007-05-29 11:50:37 | 時事問題
松岡農相の自殺には、既視感があった。先週末帰宅時、電車の中で前に座っている人が読んでいる夕刊紙に、松岡農相の顔写真とならんで「自殺」という大きな文字が躍っているのを見たからである。「心労が募ったのか。やめればよかったのに。」と少しかわいそうに思った。しかしその日の夜のニュースでは、松岡農相自殺のニュースは報じられていなかった。

今になって調べてみると松岡農相の自殺ではなかった。今月18日、阿蘇市の松岡事務所関係者が自殺したことの報道であった。(「松岡農水相 地元の事務所関係者が首つり自殺」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070525-00000011-gen-ent)

心優しい安倍首相がこの衝撃に耐えられるのかしらと思った。安倍首相が、ダーティーな松岡氏を農相に任命して、実際起きたスキャンダルに関して庇い続けていたことに関係するストレスが、松岡氏の自殺の一因であると思われるからだ。

28日午後安倍首相は次のように語ったと報じられている。
「大変残念です。慚愧(ざんき)に堪えない思いです。ご冥福を心からお祈り申し上げたいと思いますし、残された奥様はじめ、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げたいと思います。」
(http://www.asahi.com/politics/update/0528/TKY200705280440.html)

「慚愧(ざんき)に堪えない」とは、任命権者としてスキャンダルを庇い続け、結果として自殺に至らしめたことを恥じておられるのだと思った。

しかしどうもそうではないという解釈が出ている。
首相コメント「慚愧に堪えず」、「残念だ」の間違いか
 安倍首相が松岡農相の自殺について、「慚愧(ざんき)に堪えない」と述べたことについて、「『残念だ』という意味で使ったのであれば、間違っている」という指摘が出ている。
 「慚愧」は「恥じ入ること」(広辞苑)という意味だからだ。首相周辺は「最近は反省の意味でも使われており、問題はない」としている。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070528ia27.htm

「慚愧に堪えず」は、恥じ入るではなく、残念だということらしい。真相はよく分からないが、言葉遣いは難しいと改めて思った。

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読売社説「中国・株バブル 人民元切り上げが鎮静化の鍵だ」

2007-05-27 23:20:54 | 時事問題
5月9日のNHK総合「クローズアップ現代」「株急騰 過熱する中国マネー」を見て衝撃を受けていたので、普段なら読み飛ばす内容の27日付読売社説を熟読した。

5月9日の放送では、中国では株はパチンコなどのギャンブルのようなものであると解説されていた。証券会社がシャッターを開けるまでに、端末を確保しようと投資家の長蛇の列ができている。まさにパチンコだ。

投資家は企業情報などお構いなしに、市場の動きを睨んで、短期で売買を繰り返す。なにせ上場されている国営企業の公表されている情報が信頼にたるものではない。中国では所詮政治が経済をコントロールするのであるから、今年秋の党大会までは国が株式市場を保護するに違いないと、投資家は思いこんでいる。

年金のすべてを株で運用するという中国人老夫妻が「中国では臆病な人は飢え死にする。勇気のある人だけが生き残る」と言い切ったのにも驚いた。しかもこの夫妻ただ者ではなかった、2月の上海市場の下落のときに、「買い」という決断をしたのである。当然市場の回復とともに利益を得た。

中国の株式市場って、なんてバブリーで、リスキーなんだろう。果たして大丈夫なのか?と私の潜在意識にすり込まれていた。

27日付の読売社説は、1ドル=7・65元程度と人為的に安く抑えられている人民元が、いろんな弊害をもたらしていることを説いている。

「中国人民銀行が巨額のドル買い介入を続けた結果、中国の外貨準備高は1兆2000億ドルに膨らんだ。中国は外貨を米国債などに投資している。仮にそれを大量に売却すれば、ドル安や米金利上昇が進み、世界の金融市場は混乱する。
 一方、ドル買いの対価として人民元が中国国内に放出され、株式市場や不動産に流れている。
 2月末には、上海総合株価指数の急落をきっかけに、世界同時株安が起きた。その後、上海株価は、急落前の水準を上回って急騰している。指数は、1年間で2・5倍、年初から5割上昇した。
 個人に広がった株投資ブームが背景にある。投機マネーも流入し、カネ余りのバブルが発生している状態だ。」

そして次のように結論づける。「バブルが崩壊すれば、反動も大きい。細心の注意を払いつつも、基本的には元高の方向を容認するしかあるまい。」

やはり今年秋の党大会以降、中国は経済調整のために金利を引き上げて、元高の方向に持っていくのであろうか?
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ベンベーかビーエムか

2007-05-26 17:37:43 | 雑談
先日学生さんと話しをしていて、格好いいN.S.先生がビーエムに乗っているというはなしになった。「ビーエム?」。すぐにBMWのことと分かったが、あれは「ベンベー」と言うのではないか。そもそもドイツ車なのだから、ビーエムってありえないと思った。

検索したらヤフー知恵袋にいくつか類似の質問が出ていた。

「BMWを何と呼びますか?あなたの年齢と一緒に教えてください。
わたしは47才で「べんべー」です。

ベストアンサーに選ばれた回答
17歳車好き高校生です
普通に「ビーエムダブリュー」と言います。
周りの車に詳しくない子たちは「ビーエム」と言ってますよ
おじいちゃんは「ベンベー」と言ってました。」


「昔、自動車の「BMW」を「ベンベー」と呼ぶ人がいましたが、
あれはドイツ語読みとかなのでしょうか?
もしそうだとしたら現地の人は「ベンベー」と呼んでいるのでしょうか?
また何で日本では最近そういう風に言わなくなったのでしょうか?

ベストアンサーに選ばれた回答
BMWの現地読みが「ベー・エム・べー」ですが、BMW社の日本法人は「ビー・エム・ダブリュージャパン」なので、今はベンベーとは言わないのだと思います。」


ドイツ人も軟弱になったものだ。ドイツ語に対する誇りを失ったか!どうやら、40代くらいがベンベー/ビーエムの分岐点か?

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読売新聞社説「参議院60年 今の姿のままではいられない」を読んで

2007-05-20 14:08:26 | 時事問題
1947年5月20日、新憲法のもと参議院が活動を始めた。その60年にあたる日に、読売新聞が社説で「参議院60年 今の姿のままではいられない」を掲げていた。大いに参考になった。

参議院が隠然たる力を持っていることは、安倍内閣が参院での過半数確保のために公明党と連立を組み、また参院自民党の支持を得るために、参院自民党が推した人物をそのまま閣僚に据えていることから明らかである。

さらに小泉内閣時代は、首相が重要と考え、衆院を通過した郵政民営化法案を、参院は否決した。私はいまだに分からないのだが、参議院が、このような「重要法案」を否決することができるのであろうか。参院が何のリスクもなく「重要法案」を否決できるということが、私は現行憲法上の一大欠陥であると考えている。

さらに、郵政民営化法案に反対した与党参議院議員が、郵政選挙において与党が大勝したあと、ほとんど同じ法案に賛成投票し、その後も何ごともなかったかのように振る舞っていることが、この私の考えを強めた。リスクなしに否決できるような権限を人間の集団に与えるのは、ろくなことではない!

ところで読売社説によれば、「参院に求められているのは本来、衆院に対する抑制、補完の機能だろう。」であるという。参院存続を前提とすれば、その通りであろう。そしてこのような参院を前提とした改革案が、すでに2000年に出されているという。恥ずかしい限りだが、私は知らなかった。

改革案によれば、
「参院を「再考の府」と位置づけ、政権や権力と距離を置き、大所高所から中長期的な審議を重視するよう求めている。首相指名の廃止や、閣僚・副大臣就任の自粛など、具体的な提言もしている。
 だが、意見書は無視されたままだ。自民党の新憲法草案に意見書の内容を盛り込む動きもあったが、参院側の強硬な反対で見送られた。参院の力の低下や既得権の放棄につながるからだろう。」

参議院が既得権にどっかりと座り込んでいる姿が見えてきた。次の参議院選挙で「参議院をぶっ壊す!」という政治家・政党は出てこないのであろうか。
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ジエチレングリコール入りの歯磨きペースト

2007-05-19 21:52:55 | 時事問題
パナマでジエチレングリコール入りの歯磨きペースト6000チューブが発見された。ブランドは"Excel" "Mr.Cool"の二つである(それぞれジエチレングリコールの含有量は2.5%と4.6%)。パナマ税関の発表によれば、これらはどうやら中国産らしい。

ジエチレングリコールは、昨年、パナマ政府が咳止めシロップに混ぜて、少なくとも100人以上の死者を出した物質である。(このときのジエチレングリコールは、グリセリンと偽装されたもの。これも中国産)

パナマ当局によれば、ジエチレングリコール入り歯磨きペーストは、歯磨き後に、はき出すゆえに有害ではなく、またまだ被害者も出ていない模様。もちろんジエチレングリコールを歯磨きペーストに混入することは許されていない。ヤレヤレ。
(Poisoned Toothpaste in Panama Is Believed to Be From China,http://www.nytimes.com/2007/05/19/world/americas/19panama.html)
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野球特待制度緩和雑感

2007-05-12 13:53:37 | 時事問題
高野連は結局のところ野球特待制度を持つ高校への処分を緩和した。「経済的事情で転校または退学が懸念される生徒」の場合は、高校は独自の裁量で救済できるとし、野球部長も1年間の謹慎が1ヶ月に短縮された。この背景には全国約400校、約8000人という処罰対象の予想外の大きさがあった。

大手各紙とも社説でこの問題を取り上げていた。各紙とも基本認識は同じであり、特待制度自体は問題なく、その運用方法が問題である。であるから特待制度を原則禁止している学生野球憲章の見直しが必要であるということだ。

ところで、産経新聞で高野連が持つ特権意識を「アマチュア」との関連で次のように指摘しているが、勉強になった。

「高野連が強調するアマチュアなる言葉が歴史に登場するのは1839年、英国のボートレースの参加規定とされる。「職工、労働者、陸海軍の下士官はアマチュアにあらず」との条文は、貴族階層が肉体を使う職業の人々と一緒にスポーツをすることを嫌ったためだといわれる。そこには特権階級による差別意識があった。
 明治初頭、欧米から輸入された近代スポーツは帝大や一高など高等教育機関、いわばエリート層が受け皿となった。付随するアマチュア思想が日本に違和感なく受け入れられる土壌だ。そして学校教育を揺り籠に、差別的な意識は金科玉条の精神に育っていく。
 高野連の視線にどこか特権意識がのぞくのは、こうした背景があるからかもしれない。特待制度はむしろ、エリート層のスポーツ独占に風穴をあける働きがあったのではないか。」
(「野球特待制度 拙速ではない論議重ねよ」、産経新聞、5月12日付社説)


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パナマにおける謎の疾病

2007-05-07 00:06:52 | 時事問題
6日付のニューヨークタイムズは「From China to Panama, a Trail of Poisoned Medicine 」という長文の記事を掲げていた。(http://www.nytimes.com/2007/05/06/world/americas/06poison.html)「中国からパナマへ 毒入り薬の痕跡」とは穏やかではない。

この記事のテーマは、公衆衛生の専門家の間では周知のことらしい。愛知県衛生研究所が詳しくまとめている。
「本年(2006年)9月以降、パナマで多数の死者が出た謎の疾病の原因について、米国疾病予防管理センター(CDC)から「CDCがパナマの謎の疾病の解決を支援」と題するニュースが配信されました。
CDCの国立環境衛生センター(NCEH)の科学者らは、本年9月以降、パナマで多数の死者(10月26日現在、パナマ保健省の発表では34名の死者)が出た謎の疾病について、パナマ社会保障機関(政府機関)が製造した無糖咳止め・抗アレルギーシロップ剤に混入されたジエチレングリコールが原因であったことを突き止めました。疾病は下痢と発熱で始まり急性腎不全、麻痺、死亡に至るもので、患者の多くは60才以上の男性でした。…
パナマの事件が、故意なのか、製造管理不備に起因するものであったのか、その原因の所在は公式発表を待たねば解りませんが、有識者からは製造所における品質管理、製造管理が不十分であったのではないかと指摘されています。」
(http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/3f/deglc.html)

タイムズの記事は最後の部分にかかわる。すなわち問題のジエチレングリコールは、グリセリンと偽って販売されたものであったのだ。ジエチレングリコールとグリセリンは外見が似ていて、何しろ低コストなのである。だがジエチレングリコールは人を殺すのだ。
「(ジエチレングリコールは)水溶性の無色無臭の粘稠な吸湿性液体で、甘味があります。医薬品原料、食品添加物としての使用が認められている国はありません。工業用溶剤、ブレーキ液、不凍液、燃料添加剤などさまざまな用途に用いられています。中毒例の多くは経口摂取によるものであり、中毒症状は吐き気、嘔吐、頭痛、下痢、腹痛で、大量のジエチレングリコールに暴露されると腎臓、心臓、神経系に影響を及ぼします。ヒトに対する経口致死量(LD50)は1000mg/kg体重です」

タイムズはこの販売経路を突き止めている。パナマ(Mediocom)→バルセロナ→(Rasfer)→北京(NSC Fortune Way)→江蘇省の泰興市甘油廠と辿っていったのである。(括弧内は会社名)

偽グリセリン(ジエチレングリコール)は中国国内でも、パナマと同様の問題を引き起こしていることも示されている。中国の医薬品の規制が非常にずさんであることが(「ブラックホール」と表現されている)改めて指摘されている。しかも途中で仲介をした会社は、一つとして商品の中身をチェックしていない。さらにパナマ事件に対する中国当局の姿勢が及び腰であるらしいことも指摘されている。またかと暗澹たる気持ちにならざるを得ない。
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悪魔と食事するときは長いスプーンが必要

2007-05-05 03:39:32 | 雑談
連休で雑誌を整理していたが、記事を読み出したのではかどらない。次のような文章がいたく気に入った。
「非道な世界では、時には悪とかかわらざるを得ない。しかしあまり長居したり、あまりに多くのものを捧げてはいけない。特にいつか悪と戦うことを予期するのであればなおさらである」
(In a diabolical world, you may have to sub with devils some of the time. But don't sit too long at the table, or offer too many tasty dishes - especially if you expect to fight them one day.)

この記事の中に"sup with devils" という表現がある。分からなかったので辞書をひいた。悪魔とともに食事する、悪魔と取引するなどの意味であるようだ。(ちなみに、この記事で悪とは、サダム・フセイン、ミロシェヴィチなどが例示されていた。)

さらにネットで調べるとすぐに関連する次のような面白い表現が出てきた。
He needs a long spoon who sups with the Devil.

悪とかかわるときは、十分注意することが必要であるという意義らしい。悪とかかわるときには、悪の毒気にやられないように、長いスプーンを使うということであろうか。含蓄のある表現であると感心した。
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文民という言葉

2007-05-04 00:10:14 | 時事問題
5月3日のNHKの憲法記念日特番を少しだけ見た。三浦朱門氏が改憲論を論じていた。三浦氏は現行憲法が翻訳調であることを指摘していた。憲法前文が例として挙げられるのかと思いきや、「文民」という言葉を指して、こんな言葉は憲法発布まで聞いたことがなかった。現行憲法のベースには英文があるのだと論じていた。

三浦氏が指摘しているのは、憲法第六十六条第二項「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」の中の「文民」である。「文民」は日常語でないことは確かであるが、20数年前私が大学生の頃、「文民統制」という風に普通に使われていたように思う。

ところで「文民」について、政府はどのように解釈しているのだろうか。平成13年5月22日付の平岡秀夫衆議院議員(民主)の質問趣意書がネット上ですぐ検索できた。

この際「文民」についても定義がなされている。
「「文民」は、その言葉の意味からすれば、「武人」に対する語であって、「国の武力組織に職業上の地位を有しない者」を指すものと解される。」
「政府は、従来から、国政が武断政治に陥ることを防ぐという同項の規定の趣旨に照らして、「旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの」もまた、同項にいう「文民」には該当しないと解してきている」

平岡議員の質問は、中谷元防衛庁長官(当時)が自衛隊出身であることに関して、この条項との関連を尋ねたのであった。これに対して「元自衛官は、過去に自衛官であったとしても、現に国の武力組織たる自衛隊を離れ、自衛官の職務を行っていない以上、「文民」に当たると解してきており、お尋ねの国務大臣の任命が憲法第六十六条第二項に違反するとの御指摘は当たらない」と返答がなされている。

さらに憲法第六十六条第二項に「文民」が入れられた経緯もすぐに検索できた。

極東委員会の昭和21年7月2日付「日本の新憲法についての基本原則」には、国務大臣は文民(civilian)でなければならないとする原則が盛り込まれていた。しかし第9条第2項で軍隊保持を禁じられているので、文民条項はいったん置かれないこととなった。
しかし「第9条第2項に「前項の目的を達するため」という語句が加えられていたことに極東委員会が注目したため、文民条項問題は再浮上することとなった。すなわち 9月21日の会議で、中国代表が、日本が「前項の目的」以外、たとえば「自衛という口実」で、実質的に軍隊をもつ可能性があると指摘した。そのため、検討の結果、同委員会は文民条項の規定を改めて要求することになった(同月25日決定)。同委員会の意向は、ホイットニー民政局長から吉田首相に伝えられ、貴族院における修正により、憲法第66条第2項として文民条項が追加された。」(http://210.128.252.171/constitution/shiryo/04/126shoshi.html)

そしてさらに次のように付言されている。「なお、「文民」とは、このとき貴族院小委員会でcivilianの訳語として考案された造語である。」

三浦朱門氏の発言には確かな根拠があったのだと分かった。
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