荻野洋一 映画等覚書ブログ

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東出昌大が高校生を演じつづけることについて

2014-12-27 08:05:19 | 映画
 NHK朝ドラ『ごちそうさん』で共演した杏と東出昌大が、年あけて元日に入籍することを発表した。ドラマ内でも「長身夫婦」として共演し、お似合いのカップルだと思う。

 ところで、結婚報道では杏28歳、東出26歳と出ていて、改めて吃驚させられた。というのも、東出昌大という俳優は、『桐島部活やめるんだってよ』『アオハライド』といった近作で高校生を演じているのである。『桐島~』の時点ですでに24歳(本稿では撮影時の年令は不詳なので、すべて公開時に統一 請了承)、現在公開中の『アオハライド』では26歳。つまり、アラサーではないか。アラサーの男が高校生役というのはさすがにどうかと思うし、実際『アオハライド』では違和感は拭えなかった。
 同作でヒロインを演じた本田翼も22歳、東出をめぐって本田と恋敵となる高畑充希も23歳。全体の平均年令があきらかに年齢詐称の気配を漂わせ、どうも作品全体が妙なことになっているのである。この作品の原作のことをまったく知らない私のような観客がまず考えるのは、これは回想なのではないかということである。物語の後半は数年後に飛び、東京で立派な社会人になっている主人公たちが、田舎の高校生時代を総括するのである。それなら、前半における「薹が立った」コスプレ気味の高校生時代も正当化されうる。しかし本作はあくまでリアルタイムのハイスクールラヴに終始しており、続編さえ作られても不思議ではない展開なのだ。

 昨今、日本の青春映画は、ますます年齢詐称の傾向を見せているように思う。現在公開中の三池崇史監督『神さまの言うとおり』において主人公の男子高校生を演じた福士蒼汰は21歳、同級生の山崎紘菜は20歳、染谷将太22歳。優希美青だけがぐっと下がって15歳。染谷将太は作品の冒頭でいきなり爆死してしまうので許せるが、この主要キャスト全員が同級生という設定自体、すべての観客にとって承服しがたいのではないか。優希美青はまだ子役が似合う。『放浪記』のヒロインを森光子が演じてもまったく問題はないが、それは舞台でのこと。映画では無理だろう。
 福士蒼汰はNHK朝ドラ『あまちゃん』でも高校生を演じて、かなり違和感があった。同作でヒロインを演じてブレイクした能年玲奈は、見た目が幼くセリフ回しも舌足らずのため、高校生役はまったく問題がなかったが、その能年にしても今年の『ホットロード』では、なんと中学生の役に挑んでいる。中森明夫は、インタビューで能年本人から中学生に見えたか?と質問されて「ちゃんと中学生に見えた」と答弁しているが、それを読んだこちらとしては「嘘言わないで」である。『ホットロード』で能年のボーイフレンドを演じた高校生役の登坂広臣(三代目J Soul Brothers)にいたっては27歳で、やはりアラサー。『ホットロード』を見て私が感じた印象は「すべてが狂っている」である。くしくも『ホットロード』と『アオハライド』の監督はともに三木孝浩。この三木監督を、私は親しみをこめて「年齢詐称的青春映画の巨匠」と呼ぶこととしよう。
 こうしてみると、安里麻里監督『劇場版 零~ゼロ~』が、いかに良心的な作品であることか。全寮制ミッションスクールを舞台とした学園ホラーで、『サスペリア』のように現実離れしているが、中条あやみ(17歳)、森川葵(19歳)ともに高校生の危うさそのものがリアルに表現されていた。
 矢崎仁司監督『太陽の坐る場所』も同様で、女たちが10年後の世界からみずからの女子高校生時代を総括するという内容であるが、主演の水川あさみ、木村文乃、森カンナらのいずれもが、その高校生時代を別の少女が演じている。この変容におけるダブルキャストの符合のしなさ加減が、かえって作品に緊張感をもたらしているのである。


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