ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

いちいちビビッてられっか!?

2018-12-07 22:35:06 | 日記
ちょうど5年前の12月31日。

私は介護職デビューほやほやで
入社2ヶ月、1人夜勤4回目のド素人で
今は亡きハルオが夜中にベッドからずり落ちたために
あたふた、おろおろ、めそめその
年明けを過ごしたのだった。

巨体老人を起こしあげることなど到底できず
まるで添い寝するかのように
床に寝かされた彼に寄り添って
ごめんなさい、ごめんなさいと
朝がくるまで謝り続けたっけ。

そして朝一番に出社した同僚の手を借りて
起こしあげたはいいが
今度は上司にどんな叱責を受けるだろうかと怖くて怖くて
「申し訳ありませんでした!」と
おでこが膝につくくらいの勢いで謝罪したっけ。

あれから5年。
60代になった私は同時に5年のキャリアを有する中堅となり
スキルは上がっていないのに態度だけはデカイ
業界あるあるのオバチャンに成長した。

そして昨夜の夜勤。

「ベッドから落ちちゃった。助けてください」と
94歳のジイさまから非常コールがきた。

はいは~い。今行くから待っててねえ。

もはや私は怯まない。

部屋に行くと、ベッドからずり落ちたらしいジイさまが
床に足を投げ出した格好で座っている。

一応は起こしあげる努力はしてみるが
彼も大きく、足に力がまったく入らないので
非力な私には救助不可能。

でも、私は慌てない、微塵もあせらない。

あと2時間もすれば他の職員が来るから
それまで床で寝ててちょーだいね。
どこか痛い? ああ、痛くない。なら大丈夫。

「ええ? ボク死んじゃうンじゃない?
救急車呼んだ方がいいんじゃない?」

普段から気の弱いジイさまはオロオロしている。

ダイジョーブ! そんなに簡単に死なないから。

とりあえず寒くないようにして
早番が出勤してくるまで何度も顔を出しては
ガンバレ!と声援を送る。
だって、他の利用者のところにも行かなくてはならない。
彼だけに寄り添っていはいられないのだ。

早番の男子職員到着後に、ジイさま無事救助。
その後やってきた上司に、私は平然と言う。

○○様、ずり落ち~!
事故報告書あげておいたから、よろしく~!!!

ああ、ハルオに寄り添ったあの夜が懐かしく、微笑ましい。

5年経って私が図太くなったのも事実だが
転倒やずり落ちにいちいち驚いていられないほど
それは日常茶飯事なのである。



サナエよ、われわれはもう降参だ。

2018-12-05 22:34:43 | 日記
サナエが狂ってきた。

ウツで短期記憶の欠落も見られるが
時間の認識はあるし身の回りのことは自分でできているし
だから、服薬以外に介助は必要じゃなかった。

おかしくなってきたのは今年に入ってからだったか。

一日に何度も何度も風呂に入り
そのたびに着ているものをすべて洗濯する。
服薬介助のため訪問すると
いつも洗濯機が回っていて
着ているものがなくなった彼女はいつも
バスタオルで身を包むしかない状態。
お陰で水道代が異常なまでに膨れ上がり
給湯器はしょっちゅう“湯切れ”になっている。

ここまでは、確か以前にも書いた。

もう面倒見切れない!と
その時点で誰もが思っていたのだが
彼女が本当に狂ってしまうのは、実はここから先のことだった。

今年の夏。
「ねえ、台所の流しが詰まっちゃったんだんだけど」
そう言ってサナエが事務所にやってきた。

おかしい。料理しないのになぜ流しが詰まる!?

管理者が様子を見に行くと
なんと、流しに詰まっていたのは便だった。
いったいどうやったのか見当もつかないが
詰まりの原因が便であることに間違いない。

そのころから、サナエの狂った行動が日常となる。

部屋から漂ってくる強烈な便臭。
中に入ってみると
あるときは、浴室で排便している。
またあるときは、トイレで、ではあるが
しゃがみこんで便器の中の便を指でこねまわしている。

部屋には
トイレットペーパー代わりに使ったと思われる洋服が散乱し
ゴミ箱には便まみれになった布パンツが捨てられ
床には便を拭きまくった跡が残っていて…

もはや、彼女の着るものはない。
パンツの1枚もない。
とりあえず履かせてみたリハビリパンツだって洗濯してしまうのだから
もう、降参だ。

あらためて言うが、ウチは介護サービス付き高齢者住宅である。
施設ではなく、住宅である。

サナエのように一日中監視してないとダメな高齢者は
ウチでは無理なのである。

ところが頼みの綱の家族は、すでにサナエを捨てている。
電話しても繋がらない。

かわいそうなサナエ。
しかしアナタはもう、ウチでは限界だ。