ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

常人には理解できない、母と息子の関係。

2016-05-11 00:23:01 | 日記
入浴中に脳出血を起こして溺れかけた80代の女性が
入院治療を経て、ウチに入居することになった。

状態は予想よりはるかにいい。
麻痺も脳障害もなく、自立歩行もじきに可能となる見通しだ。

ただ、この女性は視野狭窄で狭い範囲の正面しか見えず
左耳はまったく聴こえない。
それが援助の要点となるだろう。

しかし援助する上で問題になることが、他にあった。

息子である。

56歳になる息子は独身で、全盲。
ずっと母に支えられてきたのだろう。
母子の絆は、私たちの常識を超えていた。

母親が入居した日から、毎日彼女の居室に寝泊りしている息子。
夜間の排泄援助に行くと
彼が介護ベッドで母親と添い寝している。
母親がトイレ誘導で排尿すると
「お母さん、おしっこが出てよかったねえ」と
彼女の胸に頭をぐりぐり押し付けて喜んでいる。
入浴援助に行くと
「お母さん、僕も一緒に入ろうか?」なんて言ったりする。
食堂でも、白い杖をつきながら
時に利用者であるオジイチャンに杖をぶつけたりしながら
ようやく母親の右隣に座ると
ず~っと母親の手をすりすりと撫で回している。

常人には理解できない母息子関係。
できた上司は「全盲の方だからこその親子関係を理解して…」と言うが
そういうものなのだろうか。

まだまだ修行の足りない私は頭を傾げ
もっと修行の足りない20代のA君は「究極のマザコン」とののしるのであるが…。

ちなみに、この母親の夫であり、この息子の父親は
ブログに度々登場する、徘徊癖のある“オトボケM三郎”である。

彼は夫として父として
妻息子の関係をどう受け止めているのだろう。
今日も日中、ずっと車椅子で寝ているM三郎であったが。


息子を探し続ける母

2016-05-08 23:50:34 | 日記
物盗られ妄想のケイコは近頃…

人前に出るときは必ずお化粧をする女心には感心するのだが
左右の眉を眉墨で1本につなげるのには参る。
おはようございますと部屋に入ると
その顔が「こち亀」の両さんみたいになっているのだから
笑いをこらえるのが大変だ。

夫のハルオに栄養をつけさせようという妻心には敬服するのだが
自分のおかずを食べろ食べろとハルオのご飯茶碗に放り込み
結局、深夜にお腹が空いてベッドで羊羹を丸かじりしている。
半分ほどになった羊羹を抱きしめ
手も口の周りも羊羹でベタベタにしたまま
イビキをかいている寝姿を夜勤中に見るのは
正直、怖い。

そんなケイコがこの2、3日、息子を探し続けている。

息子…最愛の息子は、実は10年も前に亡くなっている。

2年前に入居してきたとき
ケイコはよく、息子の死を嘆いていた。
しかし今は彼の死を忘れ
「ヨウイチはどこにいますか? まだ帰ってこないんです」と
職員に聞いて回っているのだ。

ヨウイチさん、お母さんを迎えに来てあげて。

そう願うのは、不謹慎だろうか。





食用ペット?

2016-05-02 18:36:29 | 日記
他の施設で採用が決まったタバコちゃん(21歳)が
うちで3ヶ月間研修を受けることになった。

初出社の今日
同僚のサワダ(46歳・女性)を見たタバコちゃんは驚いて叫んだ。
「あ、コウちゃんのおばちゃん!!!」

なんでもサワダの息子であるコウちゃんとタバコちゃんは
幼い頃の公園友だちだったそうなのだ。

気の強いサワダが私生活ではどんな表情を見せているのか知りたくて
こっそりタバコちゃんに聞いてみた。

タバコちゃんは語る。

「怖いことを覚えているんです。
昔コウちゃんと遊んでいたときコウちゃんが言ったんです。
ウチはウサギを飼ってるんだって。
怖いのはそのあと。
今日の晩ご飯はカアチャンがそいつをシメ殺してウサギ鍋にするんだ!
そう、コウちゃんが言ったんです
だから私、コウちゃんのおばちゃんは
かわいい動物を食べちゃう怖い人だってずっと思ってたんです」

いやいや、それはサワダがかつて息子に言った
ブラックな冗談だろう。

いやしかし、サワダは上司にトイレ掃除を命じるほどエラソーで
若い男性の同僚たちがビビるほど気性が荒い。
そして思い出すあのひとこと。
「ウチではカエルやカメ、トカゲ、猫に犬と
いろんなペットを飼ってるんだよね」。

サワダの家のペットは食用か!?

年長である私はサワダに怯むまいと思っていたが
明日からは口の聞き方に気をつけよう。