物盗られ妄想のケイコは近頃…
人前に出るときは必ずお化粧をする女心には感心するのだが
左右の眉を眉墨で1本につなげるのには参る。
おはようございますと部屋に入ると
その顔が「こち亀」の両さんみたいになっているのだから
笑いをこらえるのが大変だ。
夫のハルオに栄養をつけさせようという妻心には敬服するのだが
自分のおかずを食べろ食べろとハルオのご飯茶碗に放り込み
結局、深夜にお腹が空いてベッドで羊羹を丸かじりしている。
半分ほどになった羊羹を抱きしめ
手も口の周りも羊羹でベタベタにしたまま
イビキをかいている寝姿を夜勤中に見るのは
正直、怖い。
そんなケイコがこの2、3日、息子を探し続けている。
息子…最愛の息子は、実は10年も前に亡くなっている。
2年前に入居してきたとき
ケイコはよく、息子の死を嘆いていた。
しかし今は彼の死を忘れ
「ヨウイチはどこにいますか? まだ帰ってこないんです」と
職員に聞いて回っているのだ。
ヨウイチさん、お母さんを迎えに来てあげて。
そう願うのは、不謹慎だろうか。
人前に出るときは必ずお化粧をする女心には感心するのだが
左右の眉を眉墨で1本につなげるのには参る。
おはようございますと部屋に入ると
その顔が「こち亀」の両さんみたいになっているのだから
笑いをこらえるのが大変だ。
夫のハルオに栄養をつけさせようという妻心には敬服するのだが
自分のおかずを食べろ食べろとハルオのご飯茶碗に放り込み
結局、深夜にお腹が空いてベッドで羊羹を丸かじりしている。
半分ほどになった羊羹を抱きしめ
手も口の周りも羊羹でベタベタにしたまま
イビキをかいている寝姿を夜勤中に見るのは
正直、怖い。
そんなケイコがこの2、3日、息子を探し続けている。
息子…最愛の息子は、実は10年も前に亡くなっている。
2年前に入居してきたとき
ケイコはよく、息子の死を嘆いていた。
しかし今は彼の死を忘れ
「ヨウイチはどこにいますか? まだ帰ってこないんです」と
職員に聞いて回っているのだ。
ヨウイチさん、お母さんを迎えに来てあげて。
そう願うのは、不謹慎だろうか。