世界むかし話 中近東/こだま ともこ・訳/ほるぷ出版/1988年初版
昔話では、生まれたとき、とびっきりの贈り物をするのが妖精です。
三人の妖精が、木こり夫婦の赤ちゃんにおくったもの。一つは娘が悲しむとき涙のかわりに真珠がこぼれるというもの。二つ目は、娘がほほえむと、あたりにはバラの花がさきみだれ、三つ目は、娘が歩くと、足元にはみどりの若草がもえでるというもの。妖精は名付け親にもなり、バラ姫という名前もおくります。
月日がたち、バラ姫のうわさを聞いた、ある国のお妃が、ぜひとも息子の王子と結婚させたいと思います。
王子は夢の中で、バラ姫とあっていました。
王子は、バラ姫と結婚させてくれるよう木こり夫婦にいうと、夫婦は、ふってわいた幸運に喜んで、お嫁にやる約束をします。
結婚式の日に、バラ姫をむかえにいったのは、バラ姫と、にていた娘がいる貴婦人。貴婦人は、みんなをだまして、自分の娘と王子を結婚するよう悪だくみを考えます。
貴婦人は朝からバラ姫に塩からいものしか食べさせず、花嫁の馬車には水差しと、人が一人入れるくらいの大きなバスケットを積み込みます。
宮殿にいくとちゅうで、バラ姫は、喉が渇き、水差しの水を飲ませてくれるよう貴婦人にいいます。すると水一杯の代償は目玉です。
しばらくいくと、また喉が渇いて、水一杯の代償も目玉。そして貴婦人はバスケットにバラ姫を押し込み、高い山のてっぺんにはこんで、捨ててしまいます。
やがて貴婦人の娘と王子は結婚しますが、王子は、真珠のなみだも、バラも咲かず、みどりの草もはえないことに疑問をもちます。
一方、バラ姫は、バスケットの中から聞こえる泣き声をききつけたごみそうじのおじいさん(急にごみそうじのおじいさんがでてきて、とまどうのですが、山の上でごみを拾っていたのでしょうか?)にすくわれます。
悲しくて泣いてばかりしていたバラ姫でしたが、楽しかったころを思い出して、微笑むとバラが一輪さきます。
娘のために季節外れのバラを買うことにした貴婦人は、バラ姫の目玉とひきかえにバラを手に入れます。もういちどおなじことがあって、バラ姫は、両方の目玉をとりもどします。
(目玉をとりもどすというのは、いかにも昔話です)
物語はまだまだ続くのですが・・・・。
この物語には、やや長い前段があります。バラ姫の母親は、じつは王さまの末娘でした。上の姉は40歳と30歳の姉。一番上の姉にいわれて「わたしは、およめにいくのを、もうそんなにまっていられないのです。どうぞおわすれなく」と、王さまに手紙を書きます。
王さまは、矢を放つようにいい、「矢が落ちたところにいる男が、おまえたちの夫じゃ」といいます。
その結果、一番上は大臣の息子、二番目は大僧正の息子、三番目は木こりと結婚することになったのでした。
手紙を読んだ王さまが、姉がじっと我慢してたのに、末娘が辛抱できないというのは罰があたったのだといって、宮殿を追われ、木こりと結婚したのでした。
昔話にはあまり登場人物の年齢がでてこないと思っていると、思いがけず年齢がでてくるものがありました。姉妹が40歳、30歳というのもびっくり。
前段が長く、後半も長いという構成は、アラビアンナイトの世界を思わせます。
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