くるみわり人形/E.T.A原作 中井貴恵・抄訳 いせひでこ・絵/ブロンズ新社/2008年初版
残念ながらこれまでバレエを見る機会にめぐまれませんでした(何となく敷居がたかく興味をもてませんでした)。
したがって定評があるこの作品の内容についても不案内でした。例によってたまたま手に取った本がこの絵本。
抄訳とあるので原作全体が訳されていないということ。しかしこの本を訳しているのが女優の中井貴恵ということで新しい発見。
「大人と子どものための読みきかせの会」の代表をつとめ、年間100回以上の公演活動をしているという。多分中井貴恵さんの活動は知る人ぞ知るということなのでしょうが、今回はじめて、絵本を通じて、これまでふれたことがなかった世界をみることができるのも大人の楽しみか。
現在から過去にさかのぼり、最後にどんでんがえしがあるこの物語は子どもにとってはやや複雑か。
<あらすじ>
クリスマス・イブの夜、ドイツのシュタールバウム家のマリーはドロッセルマイヤー老人からくるみ割り人形をプレゼントされる。
ところが、兄のフリッツが何度もかたくておおきなくるみを人形の口に押し込んだので人形が壊れてしまう。マリーがくるみわり人形をハンカチでやさしくくるみ、自分の部屋で一緒に眠ることにする。夜中、マリーが目を覚ますと人形の姿がみえない。いつの間にか、おもちゃのたなの中に人形がねむっていた。ちょうど時計の針が12時をしらせるとマリーの足元にねずみが次々にあらわれる。そして食べ残しのケーキが兵隊に変身し、ねずみと大戦争になる。
くるみわり人形も、とつぜん腰の剣をもって、ねずみと戦い始める。そこに七つの王冠をかぶった王さまねずみがあらわれ、くるみわり人形におそいかかろうとする。マリーはとっさにスリッパを王さまねずみに投げつけると、王さまねずみの頭に命中するが、マリーは気を失ってしまう。やがておかあさんの声でマリーは目をさます。
ドロッセルマイヤーおじさんが人形を修理してきたよと声をかけ、くるみわり人形にまつわる話をはじめる。
むかしあるお城でうつくしいお姫さまが生まれ、その誕生を祝って、王さまがパーテーをひらく。王さまが大好物の脂身の入ったソーセージを食べていると、ネズミのマウゼリングス夫人とその7人の息子があらわれ、ソーセージを食べさせてくれという。おきさきが脂身をすこしわけてあげると、親戚のねずみまでが脂身をねだりはじめたので、王さまは脂身のほとんどはいっていないソーセージを食べるしかなくなる。おこった王さまは、ドロッセルマイヤーという職人にねずみ退治の機械をつくらせ、ねずみたちは、次ぐから次へとわなにかかってマウゼリングス夫人の7人の息子は殺されてしまう。
マウゼリングス夫人は、その仕返しのために姫の顔をみにくい顔にしてしまう。王さまは姫の顔を元に戻せなければ職人を死刑にするという。職人とその友人の占い師は解決方法をさがすだすが、それに必要なクラカトークのくるみを探すために世界中を歩くがみつけることができない。ところがそれはいとこのドロッセルマイヤー家にあった。そしてそのくるみと、姫の顔をもとにもどすためには、いちどもひげをそったことがなく、ブーツをはいたこともない若者が必要であったが、この条件にあっていたのが、いとこの息子だった。この若者が順序を踏んでくるみをお姫様に食べさせると、姫はもとの姿にもどる。
しかしこの若者がねずみのマウゼリングス夫人を踏みつけて殺してしまう。マウゼリングス夫人は、自分の息子が7つの王冠をいただき、お前の息の根をとめるだろうと言い残して息絶える。そのとき若者は、みにくいくるみわり人形にかわってしまう。占い師は、この呪いをとくには「自分で7つ頭のねずみを殺さなければならない。みにくい姿であっても、自分を愛してくれる女の子にであわなければならない」と話す。
ドロッセルマイヤーおじさんの話はここで終わるが、マリーが、ねずみと兵隊の戦争や、くるみわり人形を助けようとスリッパを投げつけたこと、7つ頭の王さまネズミはマウゼリングス夫人の7人の息子だったのかしらとなどと考えながら、人形を抱きしめていると、人形はすてきな若者に姿をかえる。そして若者はお菓子の国の王子となのって、マリーとお菓子の国にたびだつ。マリーは生かしの国で夢のような日々をすごす。
クリスマスの夜・・・・・・・。