どんぴんからりん

昔話、絵本、創作(短編)などを紹介しています。

大人だって、絵本!

  大人だって、絵本!/上田絵里/東京図書出版/2009年

 

サブタイトルの「大人だって楽しむ絵本の世界」にひかれて読みました。

 

絵本=子ども という印象が強いのですが、年齢に関係なく楽しめるのが絵本。

出版社や絵本を紹介するものに、対象年齢が書かれているものが多いのですが、たとえ幼児むけといっても、絵を楽しんだり、構図を楽しんだりと、楽しめる要素はさまざま。

関係者の方には先入観はないのですが、あまり絵本に興味がないかたには、もったいない話。

 

ところで絵本入門ですが、絵本の年間出版は2000冊以上もあり、過去のものをふくめると膨大な数。
限られた時間の中ではどれを読むのかも悩むところ。知らないもののほうが圧倒的に多いのは間違いありません。

図書館のお話し会プログラムや学校の読み聞かせ、絵本を紹介している本もあって、こ参考になります。

 

タイトルがわかれば、ネットでいくらでも調べられますが、そこに行きつくのがやっかい。

 

上田さんは、この本で百冊程度の絵本を紹介されていますが、このなかで、自分が目を通したのは二割弱。膨大な中から厳選されたものでしょうから、広い広い世界。

 

テーマをいくつか抜粋してみました。

 ・愛する気持ちー絵本から

 ・春!-出会いと別れの季節に

 ・緑の中で深呼吸

 ・自分のための1冊をさがして

 ・クリスマスに贈るとっておきの絵本

 ・ともだちって、いいね

 ・家族と一緒に過ごす夏

 ・親の気持ち、こどもの気持ち

etc

  紹介されている絵本が少ないでしょうか。

 

 

 

お婆さんの話・・フランス

  シャルル・ペローとフランスの民話/樋口淳・樋口仁枝・編訳/国際文献社/2023年

 

 タイトルはそっけないが、「赤ずきん」と似たような展開の話。

 

 娘がおばあさんのところに、焼き立てパンとミルクを届けに行く途中、ブズーにであいました。

 ブズーはさきまわりして、お婆さんを殺して小さな娘をむかえ、ベッドに横になるようにいいました。

 ・娘

 エプロンをどこにおいたらいいの?

 ・ブズー

 火にくべてしまいな。おまえにはもういらないからね。

 ・娘

 服、ペチコート、ショーツを どこにおいたらいいの?

 ・ブズー

 火にくべてしまいな。おまえにはもういらないからね。

 

娘とブズーのやり取りが続きます。

「まあお婆さん、なんて毛深いの?」

「それはねえ、よく身体を温めるためだよ」

「まあお婆さん、なんて大きな爪なの?」

「それはねえ、しっかり体を掻くためだよ」

「まあお婆さん、なんて大きな肩だの」

「それはねえ、柴をしっかり背負うためだよ」

「まあお婆さん、なんて大きな耳なの」

「それはねえ、よく聞こえるようにだよ」

「まあお婆さん、なんて大きな鼻の穴なの」

「それはねえ、かぎタバコをよく吸いこむためだよ」

「まあお婆さん、なんて大きなお口なの」

「それはねえ、お前をよく食べるためさ」

 

赤ずきん」と違うのは、この先。

 

 おしっこがしたいという娘に、ブズーは ベッドでするようにいいますが、娘は、外でしたいと言い張ります。ブズーは、娘の足に紐を結びつけ、「用は足したかい?、おわったかい」と聞きますが、娘は紐の端をあんずの木に結びつけ、逃げて行ってしまいました。

 

 ブズーは猿人間という注釈がありますが、昔話では、正体をはっきりさせないところがありますから、リズムを楽しめる話でしょうか。

 

 

 

 

ちへいせんのみえるところ

 ちへいせんのみえるところ/長新太/絵本塾出版/2025年

 

背景ははじめからおわりのページまで同じ構図。

海らしきところあらわれるのは?

 

でました! につづけて あらわれるのは

子ども

ぞう

火山

くじら、ぺんぎん(海だからふしぎなしか)

 

ビルも出てきます。

 

地平線を見ているとさまざな空想が・・・。

 

どううけとめるかは 自由自在のようです。

 

1998年復刻版

わすれられない おくりもの

  わすれられない おくりもの/スーザン・バーレイ:作絵 小川 仁央/評論社/1986年初版

 

 森のみんなからたよりにされていたアナグマが、「長いトンネルの むこうに行くよ さようなら アナグマより」という手紙を残し、旅立っていきました。

 冬が終わり、春がきて、そとに出られるようになると、みんなはアナグマの思い出を語り合いました。

 アナグマは、モグラに、紙の切りかたをおしえてくれました。カエルはスケートを教えてもらいました。キツネはネクタイの結び方、ウサギはしょうがパンのやきかたを・・・。

 アライグマは、一人ひとりに、別れたあとでも、宝物になるような、知恵や工夫を残してくれたのです。

 

 少し長く生きていると、さまざまな死に直面しました。両親、兄弟。

 北の大地で、旅行中に亡くなった若い友人がいました。ベランダから飛び降りて自死した知り合いがいました。

 人生終盤の死は避けられず受け入れるしかないのですが、まだ先がながい途上の死の受け止めは・・・。

 みんな何を残して、旅立ったのかを思いおこす絵本でした。

 いつもは読み聞かせを念頭において、絵本を読むのですが、この絵本だけは、複雑な思いでした。

力もちのハンス・・スイス

  オクスフォード世界の民話と伝説6/スイス編/植田敏郎・訳/講談社/1978年改訂版第一刷

 

 一年分つかう薪を、たった一日で家に運ぶようになると、ハンスは、となりのお百姓のところで、働くことになりました。

 ハンスは奇妙な申し出をしました。お金のかわりに、「一年に一回だけ、だれかの耳をたたかせてください。」というものでした。

 ハンスは、薪をのせた荷車に、馬ものせ、持ち帰りました。これをみたお百姓はびっくり。おまけにハンスは、一回に四人分も食べつくします。お百姓は、あたらしく雇ったこの男は、一年もたたないうちに、家にあるものをすっかり食べつくしてしまうだろうと、思いました。それに一年先に耳をたたかれることをかんがえると、ぞっとします。
 お百姓は、この男から逃れるために、指輪を井戸に落としたので、さがしてくるようにいいました。ハンスが、井戸で指輪を探しているうちに、大石や教会の鐘をなげこんで、やっかいばらいをしようとしましたが、なんの効果もありませんでした。そこで、ハンスが旅に出ていくために必要なお金を、品物を用意しました。

 旅に出たハンスは、狩人、漁師のふたりと仲間になり、森の中の小さな小屋を見つけ夜をあかしました。狩人とハンスが、森へ食べ物をさがしにいき、漁師が肉を料理することになりました。漁師がシチューなべを火にかけているとき、ひとりのみにくい小さなおばあさんがやってきて、肉をわけてくれるようにいいました。漁師が、肉を一切れやろうと、お鍋にかがみこむと、おばあさんがだしぬけに、漁師をおしたおし、顔をめちゃくちゃに「ひっかきました。漁師がおそろしさのあまり、炉の下にもぐりこむと、おばあさんは、すがたを消し、火もきえました。

 翌日、こんどは漁師とハンスが、狩りに出かけました。一人残った狩人の前に、ちいさなおばさんがやってきて、漁師とおなじ目にあいました。ひどい目にあった二人は、どっちも自分がどんな目にあったかは、ひとこともいいませんでした。

 ハンスが料理を作っていると、やっぱりやってきたのは、ちいさなおばあさん。ハンスは、おばあさんを、ぐるぐるふりまわし、しばって炉の下へほうりこんでおきました。

 このおばあさんは、魔法使いでしたが、「このさき、大きくて立派な城まで、深い洞穴がつづいている。その城には、龍に見張りされている、お姫さまがいる。この竜を退治したものは、だれでも宝物を、ほうびにもらったうえに、お姫さまをおよめにもらえる。」と、話しました。

 くじ引きで、お城に向かったハンスは、つぎつぎあらわれる龍と三度戦い、龍をたおします。ハンスは、戦う前に、お姫さまから、ぶどう酒とパンをご馳走になり、三倍も力がつよくなっていました。

 たたかう場面は結構ながいのですが・・・。

だいじょうぶ だいじょうぶ

   だいじょうぶ だいじょうぶ/いとう/ひろし/講談社/2006年

 

 子どものころ、ケガしたときに、よくいわれたのが、「痛いの痛いの飛んでいけ!」

 自分の子どもにもよくいっていました。

 それから、「ちちんぷいぷい」もよく言っていた気がする。

 「だいじょうぶ だいじょうぶ」も、そんな言葉のひとつでしょうか。

 なんの根拠もないのですが、こうした言葉は、魔法?のようで 気が安らぎます。

 こまった ことや、こわいこと、おそろしいことがあったとき、おじいちゃんだけでなく、だれかから「だいじょうぶ だいじょうぶ」と、声をかけてもらったら、安心するのかもしれません。

 仕事上の失敗や、人間関係で悩んでいるときにも、こうした言葉をかけられたら、乗り越えるきっかけにもなったのかもしれません。残念ながら、こうしたことが、あまりないままに過ぎてきました。

 いまは、他人に声をかけるのもはばかれるご時世。人間関係がうまくいってこそ、魔法の言葉が生きてきます。

 

 ”ぼく”とおじいちゃんとの思い出が、やさしく描かれていました。

 

 1995年発行の絵本を大型版として2006年に発行されたものです。

ごはん のこすな

   ごはん のこすな/きむら ゆういち・作/童話屋/2020年

 

お父さんがこだわりでつくったハンバーグ。

肉は黒毛和牛、たまねぎは淡路島、野菜は無農薬、お米はカルガモ農法の有機米。ソースは、てづくりのデミグラスソ-ス。

ところが、ゆうたくんは 食べようとしません。

ためしに、ひとくち。 おーうまいじゃないか。

お米、有機野菜をつくる苦労。食べられるしあわせ。

バランスよく栄養を取ることが、病気に負けない、丈夫な体をつくるんだ・・。

お父さんの説教が続き、ゆうたくんが、いざ食べようとすると・・・。

 

ゆうたくん、お菓子を食べて、おなかがすいていなかったのが 説教?を聞いているうちに、気がかわったのか、食べようとすると、お父さんが 味見で全部食べちゃた。

 

作者の食へのこだわりでしょうか。

裏表紙に、ゆうたくんが 体重計にのって なにか 悩んでいるのは?