世界の花と草木の民話/外国民話研究会・日本民話の会:編訳/三弥井書店/2005年
強く愛し合っていた夫婦。夫は商いの仕事にいつも妻を連れてまわっていました。
お互いに相手のことが心配で、どちらか一人が死んだときのことまで約束していました。
立派な石の墓に埋葬されること、そして生き残った方は、三日三晩墓の前で祈るというものでした。
何か月後、妻が病気で亡くなり、夫が特別立派な石の墓で祈っていた三日目、商人は思議な光景を目にします。
大きいヘビが、鳥につき殺された三匹の子ヘビのそばにバラを置くと、三匹のヘビが生き返ったのです。
商人がバラが魔力を持っていることに気がつき、死んだ妻の花をバラでなでると、妻は魔法のように にっこり笑って生き返りました。
ある日、商人は商用で長い間、妻から離れていなければならなくなりました。
長い間一人残された妻は、出会った将校と恋に落ち、一緒に逃げ出しました。
男が帰ってきて、妻を探しまわりますが、見つかりません。やがて男はジョバンニとよばれる中尉と出会い、やさしい友情で結ばれました。
中尉は、男に兵士になるようすすめ、ある日、かっての妻をみつけます。妻は、愛人に殺されてしまうと、訴えます。
愛人の将校は、男を盗みで銃殺されるよう策略します。
略式裁判で裁かれ、男の死体は墓地に運ばれますが、友人のジョバンニに、バラで鼻の下をなでるように頼んでいたので、あっという間に生き返ります。
さて、この近くの王の娘が病気になり、世界中の良医が宮廷に呼ばれましたがどうすることもできなくなっていました。ここでも、魔法のバラで王女を生き返らせた商人は、王女と結婚することになりました。商人は結婚式に、あの将校と妻を招待します。そして二人は処刑されてしまいます。
いくら愛し合っていても、長い間、離れていると先は見えなくなります。商人の妻をいちがいに非難出ません。夫婦間の微妙な関係は、子どもには難しいかもしれません。
将校の策略は、銀のフォーク、スプーン、ナイフの三セットを、こっそり商人の懐に忍ばせるのですが、窃盗は重大な罪だったようです。