どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

たぬきのおもち

2021年03月31日 | せなけいこ

      たぬきのおもち/せな けいこ/金の星社/2018年

 

 瀬名さんの絵本としては、やや大きめ。

 雪の日、うさぎさんの家で、おもちを食べているのをみて、すきをみておもちをたべてしまったたぬき。

 もどってきたうさぎさんをみて、おおきなおもちに ばけたたぬき。ぷーとふくらんで おおにゅうどうにばけて にげだしました。

 外には、雪だるま。

 雪だるまのたぬきさんは うさぎさんがもっているおもちに 手を伸ばします。

 正体がばれた たぬきさんでしたが うさぎさんは 「でも、たぬきも おなか すいてたんだよ、きっと」と、やさしく おもいやります。

 

 雪とお餅がでてきて、正月あたりに読みたい絵本です。

 火鉢で餅を焼いていますが、今はもう見かけない風景でしょうか。


レブラコーンとタンポポ・・アイルランド

2021年03月30日 | 昔話(ヨーロッパ)

     世界の花と草木の民話/外国民話研究会・日本民話の会:編訳/三弥井書店/2005年

 

 ジャック・フォックスという男が、ご自慢の大麦畑で、靴を作っているレブラコーン(こびと)を見つけました。ジャックは母親から、もしレブラコーンから目を離さないでいたら金の壺のあるところに案内してくれると聞いていました。

 レブラコーンは、ジャックの目を離させようと、酒を進めたり、ジャックの牛が野原から逃げたとか、脅かしたりしますが、ジャックは目を離そうとしません。

 するとレブラコーンは一面にタンポポが咲いている野原につれていき、タンポポの根元を掘るようにいいます。そのときジャックはレブラコーンの目に、ちらっと何かがよぎるのを見た気がしました。用心したジャックは用心のために、レブラコーンが指したタンポポの上に靴下をうえにかぶせました。こうしておけばほかのタンポポと見分けがつきます。

 それからジャックは、シャベルを取りに家に帰り、おかみさんに、自分たちの幸運を話します。

 ところが、ジャックが野原に行ってみると、一面に咲くタンポポの全部に、ジャックと同じ靴下がかぶさっていました。風が吹いてきて、野原の靴下をゆらしました。それはジャックがはじめてレブラコーンを見たとき、帽子が前後に揺れていたように、何百ものタンポポがわらっているのを聞いたような気がしました。

 がっかりして、うなだれて家に帰ると、ジャックはおかみさんに今見てきたことを話しました。「そうね、でもひとつだけいいことがあったのよ。これからはあんたの靴下を編む必要がなくなったっていうことさ」

 

 他力に頼っていては幸運はなかなかつかめません。おくさんはジャックの話を聞いて、新しい家と納屋と、いままでずっと夢見ていたものを期待しますが、期待が裏切られると別のしあわせをちゃんと見出します。


地主の頭は何斤か?・・中国、ふたりの兄弟の話・・フランス、ほか

2021年03月29日 | 昔話(外国)

 「先に怒ったほうが負け」という話で、兄弟が出てきて、やりこめられた兄を弟がカバーする話。


地主の頭は何斤か?(子どもに語る中国の昔話/こぐま社/2009年)

 一年間働けば他より賃金を多く払うという地主のところに兄が出かけていきますが、地主からだされた3つの問題ができず、一文ももらえずにかえってきます。

 次に弟がでかけ地主をやりこめ、兄の分の賃金も持ち帰ります。


ふたりの兄弟の話(世界むかし話 フランス・スイス/八木田宣子・訳/ほるぷ出版/1988年)

 兄が年三百フランという、そのころにしてはいい金額で農場に働きにいきますが、主人がいう条件は、さきにはらをたてた者は、背中のひふをひときれ、はぎとられる というもの。

 兄は野原でハリエニシダを刈りにいきますが、仕事を一休みしようとすると犬が噛みつきます。怒った兄がこんなところで働けないとはらをたてると、主人は、兄の背中からひふをひと切れはぎとってしまいます。

 次に弟が出かけて行って、あの手、この手。

 犬も一緒にでかけていきますが、犬の頭を切りおとしてしまいます。

 怒ることができない主人が馬、めす馬を野原に連れていって、草を食べさせ、つゆを地面におとしてもいけないと言われた弟は、斧で頭を切りおとしてしまいます。

 それでも怒るわけにいかない主人から、ブタを市につれていくようにいわれた弟が、今度はブタを商人に売り、打ったブタのしっぽを全部泥にさします。
 あとからやってきた主人が、怒りで顔を赤くすると・・・・。

 「先に怒ったほうが負け」というタイプには、やはりブタがでてくる話もあります。

 フランス版は頭を切りおとすなどインパクトが強すぎますが、中国版では、地主から地主の頭の重さはどのくらいときかれて、弟は、頭を切りおとしてみましょうと切り返します。

・りこうなハンス(オーストリアの昔ばなし/飯豊道男:編訳 小野かおる・絵/小峰書店/1983

年)

 たくさんお金をもちかえったほうを跡取りにすると父親からいわれ、兄のヨックルが、かなりの額の銀貨をもって勤め口をさがすにでかけます。

 この銀貨に目をつけた司祭が、自分のところで働くようにいいます。ただ、はらをたてたら、ヨックルが持っている銀貨をそっくりよこすように条件を出します。

 司祭は、二匹の犬を連れて大麦をまくようにいいます。そして、犬がうちに帰るいい時間を知ってて、教えてくれるので、一緒に帰るようにいいます。

 大麦をまきおえても、犬は寝そべっているだけ。夕方になってやっと二匹の犬と帰ります。ヨックルが腹を立てていないので、司祭は、畑にまこうと思っていたのは大麦じゃなくて、カブなんだ、大麦の種を拾い集めてくれるよういいます。ヨックルが種をやっと拾い集めてくると、土や石ころが混じっているので、仕事をよくやったとはいえないと司祭が文句をいうと、ヨックルはかんかんになって怒ってしまいます。

 次にハンスルも銀貨の包みをもってでかけ、司祭のところで働くことになりました。ハンスルも大麦をまくようにいわれますが、ハンスルは大麦の袋を穴のなかにほうりこみ、犬のそばの草むらにひっくり返ります。次の日は、兄と同じように、大麦ではなくカブをまきたかったので種を拾い集めるようにいわれでかけますが、この日も大麦の袋をほうりだして、昼近くに家に帰ります。袋をのぞいた司祭が、砂と土だらけで、まともな仕事といえないと 文句をいうと、ハンスルは「畑がすごいやせちなんだから。もっとこやしをやっておけばよかったのに」と、答えます。

 ハンスルは、豚の番をすると子豚を一頭のこし、のこりの豚は商人に売ってしまい、雌牛の番をしたときも、一頭だけのこし、商人に売ってしまいます。豚は湿地にもぐって地獄に、雌牛は天国にいってしまったと聞いた司祭は、まだ腹を立てませんでした。

 肉のスープをつくり、薬味にパセリとセロリを入れるようにいわれたハンスルは、犬も釜にほうりこんでしまいます。司祭は、犬もスープのなかときくと、さすがにどなります。

 ハンスルは、約束の金をもらい、ヨックルの包みも持ち帰り屋敷を継ぎました。

 

 欲張りなのが司祭というのがみそでしょうか。

 

主人とめし使い(アルメニア 世界のメルヘン図書館5 火の馬/小澤俊夫:編訳/ぎょうせい/1981年)

 兄が、さきにおこった方が千ルーブルをだすか、金がなければ十年間給料なしで働くという条件で働きはじめます。

 金持ちの主人は、兄をただ働きさせようと、昼夜かまわず牧草の草刈りを命じます。怒った兄は、千ルーブルの借用書をかいて、家に逃げ帰ります。

 次に出かけた弟は、さきにおこったほうが二千ルーブル払う約束をしますが、主人をおこらせるため、時間になっても弟は牧草地にでかけません。弟が出かける用意ができないうちにお昼。まずは食事です。
 食事がすむと、今度は昼寝。

 怒るわけにはいかない主人は、ヒツジを一頭ころしてくるように命じます。弟がヒツジを一匹のこらずころしても、怒れません。

 これ以上、弟をおいておくわけにはいかないと、主人は家に帰そうと決心します。

 主人は春になってカッコウが鳴くまで働くという約束を思い出させようと、二人が森に出かけたときに、おかみさんにカッコウの鳴き声をさせます。

 しかし、弟は「冬にカッコウが鳴くはずがない」と、おかみさんが登っている木の上に、鉄砲でねらいをつけます。

 弟は、さすがに大慌てで怒り出した主人から、二千ルーブルをもらって、兄の千ルーブルの借金をかえします。

 ところでアルメニア共和国は1991年にソビエト連邦から独立しています。


魔法のバラ・・イタリア

2021年03月28日 | 昔話(ヨーロッパ)

     世界の花と草木の民話/外国民話研究会・日本民話の会:編訳/三弥井書店/2005年

 

 強く愛し合っていた夫婦。夫は商いの仕事にいつも妻を連れてまわっていました。

 お互いに相手のことが心配で、どちらか一人が死んだときのことまで約束していました。

 立派な石の墓に埋葬されること、そして生き残った方は、三日三晩墓の前で祈るというものでした。

 何か月後、妻が病気で亡くなり、夫が特別立派な石の墓で祈っていた三日目、商人は思議な光景を目にします。

 大きいヘビが、鳥につき殺された三匹の子ヘビのそばにバラを置くと、三匹のヘビが生き返ったのです。

 商人がバラが魔力を持っていることに気がつき、死んだ妻の花をバラでなでると、妻は魔法のように にっこり笑って生き返りました。

 ある日、商人は商用で長い間、妻から離れていなければならなくなりました。

 長い間一人残された妻は、出会った将校と恋に落ち、一緒に逃げ出しました。

 男が帰ってきて、妻を探しまわりますが、見つかりません。やがて男はジョバンニとよばれる中尉と出会い、やさしい友情で結ばれました。

 中尉は、男に兵士になるようすすめ、ある日、かっての妻をみつけます。妻は、愛人に殺されてしまうと、訴えます。

 愛人の将校は、男を盗みで銃殺されるよう策略します。

 略式裁判で裁かれ、男の死体は墓地に運ばれますが、友人のジョバンニに、バラで鼻の下をなでるように頼んでいたので、あっという間に生き返ります。

 さて、この近くの王の娘が病気になり、世界中の良医が宮廷に呼ばれましたがどうすることもできなくなっていました。ここでも、魔法のバラで王女を生き返らせた商人は、王女と結婚することになりました。商人は結婚式に、あの将校と妻を招待します。そして二人は処刑されてしまいます。

 

 いくら愛し合っていても、長い間、離れていると先は見えなくなります。商人の妻をいちがいに非難出ません。夫婦間の微妙な関係は、子どもには難しいかもしれません。

 将校の策略は、銀のフォーク、スプーン、ナイフの三セットを、こっそり商人の懐に忍ばせるのですが、窃盗は重大な罪だったようです。


あわれな悪魔・・スウェーデン

2021年03月27日 | 昔話(北欧)

          こども世界の民話(下)/実業之日本社/1995年

 

 悪魔が人間の言うことを信用しなくなったのには、こんなことがあったようですよ!。

 

 ある村のお百姓が、雌牛を牧場につれていって「神さま。いつも、わしらをおまもりくださってありがとうございます。この雌牛に、草をたっぷり、たべさせてやってくださいまし。」といのりました。

 悪魔はそれを茂みの中から聞いていて、しゃくにさわりました。「人間ってやつは、何でも、うまくいくと、神さまにお礼をいう。ところがわるくいくと、きまって、おれのせいにするんだからな。ちくしょうめ、みていろ。」

 それからニ、三日たって、雌牛が沼に落ちてでられなくなると、お百姓は「ひどいことをしやがる。また、悪魔の奴のいたずらだな」と、おこりました。

 「やっぱり、俺の思っていたとおりだ。」悪魔は、お百姓が、雌牛をひっぱりだすために、手伝いの人をよびにいったあいだに、雌牛をひっぱりあげておきました。

 今度こそ、礼をいわれるだろうと思った悪魔でしたが、お百姓は「神さま。よく雌牛を、引っ張り上げてくださいました。お礼を申しあげます」と、おおよここびでいいます。


やまびと

2021年03月26日 | 絵本(昔話・日本)

    やまびと/柳田邦夫・原作 京極夏彦・文 中川 学・絵/汐文社/2016年

 

 栃内村の鉄砲撃ちの名人嘉兵衛老人が若いころ、獲物を求めるのに夢中になって山奥に迷い込みました。はるか向こうの大きな岩には、女がいて長い髪をくしけずっていました。嘉兵衛は、やまおんなを銃で倒し、女の毛を少し切り取り、ふところにしまいました。

 下山の途中、急に眠くなった嘉兵衛が物陰で横になると、どこからともなく雲をつくばかりに大きいやまおとこがあらわれ、嘉兵衛のふところの髪を奪い取ると消えてしまいます。

 

 上郷村の娘が、栗を拾いに山にはいったまま帰ってきませんでした。それからニ、三年たって、上郷村の猟師が五葉山のふもとで、娘をみつけました。山で、ものすごく背が高く瞳の色がちがう男にさらわれたといいます。

 娘は、「その人の子どもを何人か産んだんだけれど、その人は似ていないから自分の子ではないといって、どこかへ連れ去ってしまいます。殺すのか、食べるのか、わかりません」「今は出かけているけれど、もう帰ってくるかもしれない」といいます。それを聞いた漁師は急いでその場から立ち去ります。

 

 二つの村の言い伝えでしょうか。結局、山人がどんな存在であるかはわかりません。遠野を囲む山々に棲む山人は、そうしたものであると、突き放しています。

 

 もとになったのは、1910年に発行された柳田国男の「遠野物語(1910年)」。


ひな鳥とねこ・・ミャンマー

2021年03月25日 | 昔話(東南アジア)

            こども世界の民話(下)/実業之日本社/1995年

 大きな壺に隠れた、おかあさん鳥とひな鳥、それを狙うねことの、緊迫しながらも ユーモアのやりとりが楽しい話。

 隠れていたひな鳥がくしゃみがしたくなって、「おかあさん、くしゃみしたい」といいますが、おかあさんは隠れていることがばれるからと、おこっていいきかせます。

 しばらくたつと、ひな鳥は「一回きりでいいから、くしゃみさせて」といいますが、おかあさんは、「だめよ。 ぜったい、だめ」

 しばらくたつと、またまた、ひな鳥は、おかあさんの耳元でささやきます。「ちいちゃなくしゃみを、一回きりでいいから、させて」といいますが、おかあさんは、「だめよ」

 しばらくたつと、また、ひな鳥は、おかあさんの耳元でささやきました。「ちいちゃなくしゃみを、一回の半分きりでいいから、させて」。

 もう、めんどうくさくなった、おかあさんは、「いいわ。」といってしまいます。

 「ハッハッハックション」

 みつかりそうになったおかあさん鳥とひな鳥の運命は?

 

 ところでなぜ、ねこが やってきたのか?は、前段です。

 ひな鳥が、おかあさんにケーキを食べたいとおねだりすると、おかあさんは、人間が捨てた薪の端っこをひろってくるようにいいます。

 ひな鳥が 薪のはしっこを、二つ三つ見つけてもってかえろうとすると、年老いたねこがひな鳥を見つけ、こっちにやってきました。
 ねこは、ひな鳥をたべようとしますが、ひな鳥が、「あたしを、にがしてちょうだい。そうすれば、ケーキをすこしわけてあげるわ」と頼むと、そのままどこかへいってしまいました。

 おかあさんは、「今すぐ、大きなケーキをやいてあげるからね。そうすれば、お前が食べても、まだ、そのねこにあげるぶんが、のこるでしょ」

 やがて、大きな大きなケーキが焼けました。おかあさん鳥は、ねこにやるぶんを、のこすように、念を押しますが、ケーキがとてもとても、おいしかったので、ひな鳥はみんなたべてしまいました。

 やがて、ねこがやってきて、おかあさん鳥とひな鳥は、大きな壺にかくれ、息をひそめます。

 

 ところで、いまミャンマーは大変な状況。国を守るべき軍隊が民衆を弾圧するとは!

 イスラム教徒の少数民族ロヒンギャ族に対する虐殺など現象面だけを見ると わからないことばかり。


シマフクロウとサケ

2021年03月24日 | 絵本(昔話・日本)

      シマフクロウとサケ/古布絵製作・再話 宇梶静江/藤原書店/2020年

 

 以前、宇梶さんの古布絵というアイヌの刺繍をいかした手法の魅力にひかれました。

 村の守り神、シマフクロウのカムイチカㇷ゚が自ら、語りながら進行します。。

 カムイチカㇷ゚が、一人暮らしがつまらなくなって 山を下り、浜へやってきました。シマフクロウが、浜へ降りていくと、そこには神の魚サケの群れがやってきます。

 まっさきにやってきたサケは、シマフクロウを敬いますが、最後のサケたちは「でっかい目玉をしたものが、おそれおおい神だというのか」「どんな神さまがいるからといって、おれたちがおとなしくしなければならないんだ」と守り神であることを認めません。

 シマフクロウはがまんができなくなり、銀のひしゃく、シロカネピサックをとりだし、海を干上がらせてしまいます。

 海が干上がり、先頭のサケは死を悟ります。悲痛なサケのうなり声を聞いたシマフクロウは・・・。

 侮辱されたと思ったシマフクロウが、カッとなって、サケの命を危険にさらしますが、すぐに反省するあたりが、人間的です。

 アイヌのカムイユカ(神謡)と副題があるのですが、謡とありますから、歌できいたら聞いたらまた別の趣があるように思いました。

 「フムフムカト フムフムカト」「テレケテレケ ホリピリピ」は、鳴き声やたてる音をあらわす歌の一節というのですが、実際どんな音だったんでしょう。残念ながら音が聞けないのが絵本です。


シダの花・・リトアニア

2021年03月23日 | 昔話(ヨーロッパ)

     世界の花と草木の民話/外国民話研究会・日本民話の会:編訳/三弥井書店/2005年

 

 夏至の夜に、おなかをすかせて物思いにふけって森の中を歩いていた作男は、シダがひっかかったのに気づきませんでした。その瞬間シダは花を咲かせ、花はまいあがり消えていきました。

 ところがシダの花は不思議な花でした。作男は大地の下に埋められている宝が見えるようになり、あそこには金、この石の下には金銀、切り株の下には銭というのが見えました。

 掘り出せばその持ち主になれるのだが、シャベルがないし、爪で掘るわけにもいかない。手に入るのがわかっているなら急ぐ必要がないと、気分良く家にたどり着いた作男。寝ようとしてわらじの紐をといたとたん、花がすべり落ち、消えてしまった。

 このとたん、作男は埋まっている宝のこともきれいに忘れてしまった。

 

 やはり、宝物を手に入れるのは簡単ではありません。


そこつ長屋

2021年03月22日 | 絵本(日本)

    らくごえほん そこつ長屋/野村たかあき・作 柳家小三治・監修/教育画劇/209年

 

 落語というと、長屋、八っあん、熊さん。

 八っあんが朝に観音さまのおまいりをすませて仁王門のところまでくると、いっぱいの人だかり。

 人のまたの間をかきわけ、かきわけていくと、身元が不明のいきだおれ。

 「ねてるじゃないんですよ、いきだおれ」「死んでいる?だ、だ、だって、いきだおれといったじゃないですか。死んでいるなら 死に倒れだろ」

 世話人から知っている人かどうかみてくださいといわれた八っあん、よーくみると、同じ長屋にすんでいる兄弟同然の熊。

 おかみさんも、しんせきもいなくて、ひきとってくれないかといわれた八っあん。

 そこつ者の八っあん、「ひきとれって言われれば ひきとらないこともないですけど・・。じゃあ、こうしましょう、ともかくひとまず当人つれてきます。」

 ここらからが落語の真骨頂。

 死んでいるのにつれてくるの? と思っていると、熊さん登場です。「お前はね。昨日、悪い酒にあたっちゃったんだよ。観音さまのところまできて、たおれて、そのまま冷たくなって、死んだのも気がつかないで帰ってきたろ!」

 そういわれた熊さんが、自分の死体をひきとりにいくのですが・・・。

 そこつものが二人出てきて、ばかばかしいと思いながらも、妙に納得できるのも不思議。

 「こんなことと しってたら、昨日の晩のうちに、もっとうまいものを 食っときゃよかった」・・。まさにそのとおり。


111本の木

2021年03月21日 | 絵本(外国)

      111本の木/リナ・シン・文 マリアンヌ・フェラー・絵 こだま ともこ・訳/光村教育図書/2021年

 

 実話にもとずく絵本です。

 ほんの少し前、インドの各地では、女の子は生まれても歓迎されませんでした。結婚するとき、両親はたくさんのお金を結婚相手の家族に用意しなければなりませんでした。そのうえ、女の子は相手の財産とされていたのです。

 そんな時、一人の男がたちあがりました。選挙で村長になったスンダルは、女の子が生まれてくるのを お祝いして、111本の木を植えて、美しい自然を取り戻そうとしたのです。

 村の近くにあった大理石工場ではたらいていたスンダルさんは、工場からでた土が放りだされて、荒れ地がどんどん広がることに、怒りを覚えていました。

 スンダルさんが ちいさいころ、母親は、頭に水がめをのせ、遠くの井戸まで水をくむにいくのが日課でしたが、毒蛇にかまれて亡くなりました。大きくなって、ふたりの娘と、ひとりの息子にめぐまれましたが、うえの娘を病気で亡くしていました。

 スンダルさんは、自分たちの暮らしが、まわりの自然に ささえられていることや いのちのあるもの、すべてを大切にすることを、子どもたちに話していたのです。

 はじめ、理解されなかったスンダルさんの考えでしたが、村の人とじっくり話し合い、木を育てるのに必要な水を、堀を作り雨水をためました。たまった水は、飲み水にもつかえ、遠くまで水を汲みにいく必要もなくなりました。いまでは、女の子も、男の子とならんで勉強しています。

 エコとジェンダーフリーが結びつかなかったのですが、エコは自然環境を大事にする、ジェンダーフリーは、性別にかかわらず、人として尊ばれるという意味では、共通しています。

 111という数字は、スルダンさんが地面に引いた三本の線、娘、水、木をあらわしています。

 このほかにもスルダンさんの、さまざまな工夫を知ることもできます。


ゆうれいのたまご

2021年03月20日 | せなけいこ

      ゆうれいのたまご/せな けいこ/童心社/1992年

 

 大きな木の下に、へんな たまごが みっつ。

 赤いたまごが ぴちんと われて 小さな赤い手がでてきて、でてきたのは ちいさな かみなりの こども。

 あおいたまごからは、あしがでて おもてにかけだすと 小川に ぽちゃんと とびこんだのは かっぱ。

 みっつめのたまごは、あんまりつめたくて、おとしたら、たまごがわれて、ひゆー どろどろ ちいさなゆうれいが とびだした。きえたとおもったら ゆうれいは なきなきかえってきた。

 なーんで? 

 住宅事情がきびしく ゆうれいは居場所がなかったのです。

 ゆうれいは、ちいさな やなぎの木を買ってもらい 居場所を確保しました。最後は、うれしそうな ゆうれいです。

 

 ゆうれいがはじめからでてくるかとおもったら、三つ目のたまごから。

 たまごから なにが でてくるか 想像するのも楽しそう。ほかのものを 誕生させてみてもいいのかも。 


カバとワニの友情物語、ルウェンゾリ山の火と、ナイル川のカバ(ウガンダ)

2021年03月19日 | 昔話(アフリカ)

         アフリカの民話集/しあわせのなる木/島岡由美子・文/未来社/2017年

 

・カバとワニの友情物語

 動物の村に住んでいたカバでしたが、「カバくん、体の大きな動物には、ライオンやチーターたちからほかの動物たちを守るという役目があるのに、きみはよわむしすぎてその役目を果たせない。だから、きょうかぎり、この村から出て行っておくれ」と、動物からいわれて、村をでていきましたが、どこにいけばいいかわかりませんでした。

 そんなカバに救いの手をさしのべたのはワニでした。水の中でくらせばいいじゃないかといわれ、ワニから泳ぎを教えてもらったカバ。

 すぐに泳げるようになったカバでしたが、ワニの真似をして魚を食べようとしても、水辺をとおりかかったインパラを食べようとしても、ワニからすごい剣幕で怒られてしまいます。獲物を横取りするなというのです。それからサバンナにいって草を食うようにいわれたカバは、それからは夜のうちに、陸に上がって、草を食べるようになったのです。

 

 カバが草食というのが、なかなか結びつきませんが、大きな体を維持するためには、量も必要です。

 

・ルウェンゾリ山の火と、ナイル川のカバ(ウガンダ)

 むかしむかし、カバと火は大の仲良し。

 カバは毎日火のところにいって、たくさんおしゃべりをして楽しくすごしていました。火は山の上に住んでいたので、カバは毎日山をのぼって会いに行き、日が暮れるころに山をおりて家にかえりました。(これは これは大変そう!

 火とカバが友だちと聞いたウサギが、「お互いの家を行き来しないのなら、カバくんが思っているほど、火はきみのことなんか友だちだとおもっていないさ。」といいました.

  カバは火を家に招待しますが、火は山の上にいなくちゃいけないんだと、ことわります。

 ウサギから再度友だちでないといわれたカバは、火を自分の家に案内することになりました。

 火が山をおりていくと、火がたどった道がぼうぼうもえて山火事がおきました。そして火がカバの家に入ると、その家は火事になってしまいます。そのころのカバは、体にふさふさと毛が生えていたのですが、このときの火事がもとで、体がつるつるになって、体が乾くとまだやけどのあとが痛むので、水の中にはいってははだをいたわるのです。

 

 カバは火のそばにいっても 耐えられたのでしょう。


あちこちで桜の開花が・・・

2021年03月18日 | 日記

最近は全国の桜の開花もまちまち。近くのソメイヨシノは、まだ先でしょうか。

 

こちらは一足早い陽光桜。七分咲きです。

椿もいい感じで咲いています。


なんでもモッテルさん

2021年03月18日 | 絵本(日本)

     なんでもモッテルさん/竹下文子・文 アヤ井アキコ・絵/あかね書房/2019年

 

 表紙を見ると外国人の一家のよう。しかし作者を見ると日本の方です。

 モッテルさんは、小高い丘に、何部屋もある立派なお屋敷をもち、なんでも買って、なんでも持っています。

 世界中から買い集めた壺や彫刻、絵画、何台もの車。

 マーダおくさんは、きらきらひかる宝石や指輪、ネックレス。きれいな洋服も靴もいっぱい。

 こどものテルルちゃんとモットくんも、人形やぬいぐるみ、おもちゃがいっぱい。甘いお菓子も山ほど。

 けれども、一つ買うともうひとつほしくなり、買っても買ってもきりがなく、部屋からモノがあふれ場所のとりあいで喧嘩もしばしば。

 ところが、ある日大嵐がやってきて、モッテルさん一家は、地下室に避難。

 大嵐が屋根を吹き飛ばし、テーブルもイスも、彫刻も、宝石も、金庫も空高く まいあがっていき、嵐が過ぎると、壁と窓とドアのほかは なーんにも ありませんでした。

 途方に暮れるモッテルさんのところに、心配した村の人が駆けつけました。たべものをもってきてくれた村の人は、かたずけまでも手伝ってくれてました。

 やがて小さな家をたてたモッテルさんのところは、村人の集いの場になっていきました。

 

 お金では買えないかけがいのないものを手にいれたモッテルさん一家。村の人たちに助けられるまでは、みんなこわそうな目をしていますが、村の人と交流するところは、とっても優しい目です。登場人物のネーミングも楽しい。