けものたちのないしょ話/中国民話選/君島久子・編訳/岩波少年文庫/2001年
自慢の宝の衣をなくし、湖の流れ口をとめた黒竜のため、水浸しになった村。
黒竜退治のため、銅でつくった竜の頭をかぶり、手と足の指に鉄のつめをはめ、それから口に一本の剣をくわえ、背中に三本の剣をくくりつけ、両手に一本づつもった、ひとりの子どもが、小さな竜になって黒竜にたちむかいます。
戦いが三日三晩つづき、小さな竜は、黒竜の口の中へとびこみ、あばれまわります。あまりの痛さに、黒竜は、ねをあげます。
そこでのやりとりが、妙にリアルで楽しい。
「おまえがでてくれたら、おれは、もう、どこかへおちのびて永久に帰ってこないよ」
「よし、じゃあ、おれをどこから出してくれるのだ。」
「おしりの穴はどうだろ。」
「ばかいえ、ウンチをするついでに出されたと思われちゃこまる。」
「そうだな。じゃ、鼻の穴からすべりでてはどうだい。」
「ばかいえ、鼻水といっしょにかみ出されたと思われちゃあいやだ。」
「耳の穴にするか。」
「耳くそといっしょに、ほじくりだされたっていわれるぞ。だめだだめだ。」
「もうたまらん。わきの下からでも、はいだしてくれよ。」
「だめだだめだ。そこからはい出せば、おれをはさみ殺すにきまってる。」
「それなら、足のひらに、穴をあけてとび出すがいい。」
「だめだ。足のひらから出たら、おれをふみ殺すにきまってる。」
「なあ、ちび竜よ。もうかんべんしてくれ。さあ、おれの目をくりぬいて出ていけ。」
独眼の竜は、遠くまでのがれ、ちび竜は、二度と姿を現しませんでした。
いろいろなものをのみこんだネコや赤ずきんにでてくるキツネのおなかの中からでてきたりと、おなかの中から出てくるのもいろいろですが、こんなのも ありでしょうか。
ペー族はチベット系民族で、2010年現在195万人といいます。