どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

このあと どうしちゃおう

2022年01月31日 | ヨシタケ シンスケ

     このあと どうしちゃおう/ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社/2016年

 

 おじいちゃん 生前に 真剣に、机にむかっています。

 腕を組んだり、お茶を飲んだり、居眠りしたり、鼻くそをほじったり、あくびをしたりとしてできたのが「このあと どうしちゃおう」ノート。(表紙の見返し)

 それを見つけたのが、孫の男の子。

 ノートには、”このあとのよてい”、”てんごくにいくときのかっこう”、”うまれかわったらなりたいもの”、””こんなかみさまに いてほしい”、”てんごくって きっと こんなところ”、”いじわるなあいつは きっとこんなじごくにいく”、”こんな おはかを つくってほしい”、”みんなをみまもっていくほうほう”、”みんなにつくってほしい きねんひん”などなど。

 ノートを見ていた男の子は、なんだかわくわくしてきて 天国に行くのが たのしみになってきました。でも ちょっとまてよ と思いました。もしかしたら ほんとはすごく さみしくて 死ぬのが怖かったかもしれない。だから たのしいことを たくさん考えて かいたのかも。

 男の子も「このあと どうしちゃおう」ノートをつくろうとおもいましたが、死んだあとのことより いまいきているうちに やりたいことが いっぱい あることに 気がつきました。

 おじいちゃんのノート

 <うまれかわったら なりたいもの>

 すえっこ ピザ屋さん お金持ちに飼われているねこ クイズのチャンピオン 宇宙飛行士 動物園のコアラ

 <天国って きっと こんなところ>

  おばあちゃんがいる とにかくおさしみがおいしい 有名人に結構会える 景色のいいトイレがある みんなかならずどこかほめてくれる 髪型かえ放題

 <いじわるなあいつは きっとこんなじごくにいく>

 トイレが一個でいつも順番待ちのトイレ きつくていつもこいしがはいっているくつ ぬれててつめたいふく 誕生日のプレゼントが注射 何をしてもおこられる どこでもギュウギュウ

 

 ほろりしたのは、残ったみんなを見守っていく方法。

 月なって かさぶたになって リンゴになって とおりすがりの赤ちゃんになって ジャムをすくうスプーンになって かぜでクルクルまわるビニール袋になって

 ドキリしたのは、お客がいっぱいのレストランで ひとりぼっちコーヒーを飲む姿。おじいちゃんのところだけ静寂感がただよっています。


 残す財産はなく、死んだあと心配になるのは、せいぜい断捨離して残された人に迷惑をかけないこと。天国から見守るという発想はありませんでした。

 おじいちゃんのユニークな覚書?をみながら、どんな人生だったかに思いをはせました。


お国じまんのたいこ‥静岡

2022年01月30日 | 昔話(中部)

          静岡のむかし話/静岡県むかし話研究会編/日本標準/1978年

 

 同じ宿屋に泊まった駿河、相模、伊豆の三人がお国自慢。

 駿河の人は、日本一高い富士山に、腰を下ろし駿河湾の水で足を洗うような男がいるという。

 相模の男は、琵琶湖の水をたった三口で飲み干してしまう、とてつもないでっかい牛がいるという。

 伊豆の男は、天城山に、でっかいケヤキの木があって、そのどうまわりの太さは、大の男がひとまわりするには、どうしても三日三晩は かかるという。

 駿河の男が「そんなでっかいケヤキの木を いったいなににするんだな」と。伊豆の男にたずねると、「相模の国の大牛の皮を使って 太鼓をつくる。」という。

 そんな太鼓ができても、だれがたたくかと、駿河の男が伊豆の男にたずねると、「駿河の富士に腰掛けている男に たたかせるのさね。どんなもんだ、どんなもんかねえ・・。」

 

 オチがすっきりしている自慢話です。


密林一のきれいなひょうの話

2022年01月29日 | 絵本(日本)

     密林一のきれいなひょうの話/おはなし・工藤直子 え・和田誠/瑞雲舎/2018年


 つやつやぴかぴかの きれいなはんてんを じまんしていた ひょうでしたが、ある朝、めがさめると せなかがすうすう。

 おどろいた おどろいた のこっている はんてんは みっつだけ。

 ひょうは、いえでをしてしまった はんてんを さがしにでかけました。

 わに、かえる、まんとひひに 一枚づつ あげるはめになって

 ところが まんとひひから 「ひょうの はんてんが ひらひら とんでいて、まるで ちょうちょみたいだったよ。はんてんがちょうちょうになりたがったのだから、ちょうちょうは、はんてんに ないりたいかもね」ときいて、ちょうちょに おねがいしてみると のはらいっぱいの ちょうちょが ひょうの からだに とまりました。

 そうです、ぼくはみつりんいち きれいなひょうになりました。(ひょうとちょうの蜜月関係がいつまで続くのかな。そのうち斑点も帰ってくるのでしょうか)

 動物の絵がとても可愛く、ひょうも ねこのよう。

 最後のページでは、ひょうのはんてんを わには ポケットに、かえるはもうふがわりに、まんとひひは、ちょうねくたいにして得意顔です。

 全文ひらがな なのに、題名に「密林」とあるのは? 普通は「文」「作」とあるのですが、「おはなし」とあるのは、読み聞かせを考慮したのでしょうか。

 初版は1975年で、2018年の復刊といいます。


となりのせきの ますだくん

2022年01月28日 | 絵本(日本)

     となりのせきの ますだくん/武田美穂/ポプラ社/1991年

 

学校に入りたての頃、よくみられる光景でしょうか。

みほちゃん、学校へ行くのが どうも気が重いようです。

となりのせきの ますだくんが あれこれ いってくるのです。

「せんせー みほちゃんが ずるやすみ しまーす」

さんすうのじかん、「せんせー みほちゃんは てをつかって まーす」

給食で、きらいなもを こっそりのこすと、大きな声で「いけないんだー」

なわとび、かけっこが にがての わたしに 「へたくそ へたくそ」

かえりのじかんに けんかして きにっていた ピンクの えんぴつ ますだくんが おっちゃった。けしごむ なげたら、ますだくん びっくり。

やだな やだな やだな。

でも 次の日 学校の もんでまっていた ますだくん 「ごめんよ」

 

表紙の みほちゃんのとなりが怪獣なので、?とおもっていると、ますだくん いろいろあって 怪獣にみえたんですね。

席が隣で、みほちゃんが きになって どうしても ちょっかいを だしてしまった ますだくん。

鉛筆を 折ってしまったあと、「ごめん」といって、ふたりで かえるところでは、ちゃんと 人間の後ろ姿です。ますだくん、つぎは みほちゃんが ほんとうに こまったとき 手をさしのべる頼もしい存在になりそうです。


ねこのき

2022年01月27日 | 絵本(日本)

     ねこのき/長田弘・作 大橋あゆみ・絵/クレヨンハウス/1996年

 

 オレンジいろの、ながいしっぽのねこは はなのすきな おばあさんのねこでした。

 あるひ、オレンジいろの ながいしっぽの ねこは あさがきても かえってきませんでした。いつもは あさがくるころ どこからか かえってきたのですが・・。夜になっても、空の星を かぞえおわっても ねこは かえってきませんでした。おばあさんのねこは くるまに はねられたのです。

 おばあさんは ちいさな にわに しんだねこを そっとうめました。

 きせつがすぎて、はるがくると にわに ちいさな 芽が顔を出しました。ちいさな芽は まいにち ぐんぐん おおきくなって みどりの はっぱをつけて あっというまに りっぱな きに そだちました。

 はなの ていれをしていた おばあさんが ふしぎな きを みあげると そこには オレンジいろの 実が ひとつなっていました。

 おばあさんの うえた 花が いっせいにさきみだれた すばらしい 朝、オレンジいろの実 がおちました。

 それは オレンジいろの ちっちゃな こねこでした。

 

 背景の地の色は、黄色、青、黄土色、紫と各ページさまざま。字は大きめ。

 各ページに えがかれている 庭や植木鉢の花も やさしい感じで 落ち着きます。 

 ひとりぼっちの おばあさんが ねこを 失った悲しみを かたられることはないのですが、それがかえって 悲しみの深さを あらわしていました。 

 「こころという にわにそだつ いっぽんの ゆめのき。これが おばあさんの ゆめのきです。ねこのきです。」というのは、おばあさんの こころの 声だったのかも。


宝の槌・・静岡

2022年01月26日 | 昔話(中部)

          静岡のむかし話/静岡県むかし話研究会編/日本標準/1978年

 

 ぼろぼろの着物を着たみすぼらしいとしよりが、泊めてくれるようお願いしたのは、欲の深いおじいさんのところ。

 ここであいてにされず、心の優しいおじいさんの家にいって泊めてもらったとしよりは、宝の槌をお礼に差しだします。

 「ほしい物の名前を三度呼んでから横に振ると、名を呼んだものがでてくる。しかし二つの物を一度に出そうとよくばると、たいへんな不幸なめにあう」という。

 ここまでは、よくあるパターン。

 心の優しいおじいさんが、「こんな、はずかしいもんだけえが、まあ一つあがんなさいや」と、ほかやけのイモをとりだします。食べ物が具体的にかたられているのはめずらしく、冬だったら雰囲気が出ます。欲の深いおじいさんも、囲炉裏のはしにすわって、おいしいおかずで夕ご飯を食べているところに、みすぼらしいとしよりが、たずねてきます。

 おじいさんは、すぐには宝の槌をつかいません。日照りでお米の収穫不足が二年、三年とつづいたとき、宝の槌を思い出し、米をだすと、こまっているひとにも米をわけて、よろこばれます。

 うらやましがったのが、となりのよくばりじいさん。宝の槌をかり、米と、それをおさめる蔵を同時に出そうとします。それが「米食らぇー、米食らぇー」と聞こえて、ネズミがやってきて、少ししかない米を全部たべてしまい、ひどい貧乏になってしまいます。

 

 よくばりじいさんのところで、汚い物などがでてくるより親しみやすいでしょうか。


こんなとき きみなら どうする?

2022年01月25日 | 五味太郎

     こんなとき きみなら どうする?/五味太郎/福音館書店/2014年

 

13とおまけつきの五味さんからの質問状です。

回答が出そうなものと、だいぶ考え込むものの二つ。

絵本の背後で、ニヤリしている五味さんの表情がうかんできます。

質問の六番目は、ページいっぱいのヒヨコがかかれ、「ほうっておけば かえってくるかな?」「みんな いなくなってしまうのかな?」「きみなら どうする?」

質問の七番目は、すごく おそいけれど ぜったいおちない ひこうき と すごく はやいけれど ときどき ついらくすることのある ひこうき と きみ どちらにのりたい? どちらにも のりたくない?!

質問の十番目は、きみ どのくすりのむ? のまない? とあって、「あたまが よくなるくすり」「けんかがつよくなる くすり」「おなかが すかなくなるくすり」「せがどんどんのびる くすり」の四種類。

 

人生は 決断の連続。判断の基準を幅広く求めていく必要もあります。


てんてんちゃん

2022年01月24日 | エインワース

    魔女のおくりもの かめのシェルオーバーのお話2/ルース・エインワース・作 河本祥子・訳/岩波少年文庫/1997年初版

 

 五人の子どもの末っ子キャシーが、木の枝を集めているとき、おなじように木の枝を集めているおばあさんにあいます。おばあさんのかごがなかなかいっぱいになりそうにないので、キャシーはまるで妖精のように走り回り、おばあさんのかごをいっぱいにしてあげます。すると、おばあさんは、お礼に、はんてんもようのたまごをくれます。

 たまごからうまれたのは、指ぐらいのおおきさの女の子でした。キャシーは、”てんてんちゃん”と名前をつけ、からだを洗ったり、髪をとかしたり、おままごとの道具を使ってごはんをあげたりしました。

 てんてんちゃんは、だんだん背がのびて太ってきましたが。どんなに眠っても、どんなに食べても、お人形ぐらいのおおきさにしかなりませんでした。てんてんちゃんは、よくうそをつき、気に入らないことがあると、つねったり、かんだり、ひっかいたりしました。いちばん悪いのは、ほかの子どもたちを、からかったり、いじめたりすることでした。

 キャシーのいちばんすきなお人形を、腹立ちまぎれにこわしてしまったとき、お母さんが罰として、てんてんちゃんを箱の中にとじこめましたが、キャシーは、ヤマネのようにからだをまるめて、寝てしまうだけでした。

 何週間かすぎるうちに、てんてんちゃのおぎょうぎは、よくなるどころか、ますます悪くなりました。

 おとなしくて、やさしいキャシ-も、はんてんもようのたまごに、出会わなければよかった、苦労してかえしたりしなければよかった、と思うようになりました。

 ある日、森のほとりを歩いていたお父さんは、こびとたちが石を動かそうとしているのを見つけました。お父さんが石を動かしてあげると、こびとの女王があらわれ、「あなたは、わたしたちが何日もかあるような仕事を、かわりにやってくれましたね。あなたが家に帰るまでに、願いをひとつかなえてあげましょう」といいました。

 お父さんは、「わたしのところにいるてんてんちゃんを、どうすればいい子にできるでしょうか。あの子は悪い子ですが、わたしたちはみんな、あの子がかわいいんです。あの子にも、私たちをすきになってほしいんです。」と尋ねると、女王さまはいいました。「自分以外のだれかほかの人、ほかのもののために、涙をながしたら、やさしい、いい子になるでしょう」

 お母さんが、悲しいお話を子どもたちに読んであげたり、悲しい歌をうたったり、うつくしい音楽を聞かせても、てんてんちゃんは反応を示しません。

 クリスマスが近づいてきて初雪がふったとき、てんてんちゃんが、自分と同じぐらいの大きさの物をかかえて、家にかけこんできました。「小鳥を見つけたよ。寒くて飛べないの。だんろであたためてやろう。」。そういうとてんてんちゃんは、じゅうたんにひざをついて小鳥を、そっと下におきました。

 お父さんが小鳥をみて「小鳥は死んでいる。お父さんが土に埋めてあげよう。」というと、てんてんちゃんは「死んでいるの?でもそんな、冷たくなって死んでいるなんて、私、いやだ。あたためてあげよう。生きてほしいの。もういちど飛んでほしいの。」

 「もう忘れなさい。この小鳥は、もうにどと、飛べないんだよ」とお父さんが言うと、てんてんちゃんは、「もう飛べないって、ほんとう?」と大声でいうと、涙があふれてきて、泣きじゃくりました。これいじょう泣けないというほど泣くと、てんてんちゃんはお母さんのひざにすわって、キスをしてもらい、やさしくなぐさめてもらいました。そのしゅんかんから、てんてんちゃんはかわりました。明るく、いきいきしてきて、いじわるをしたり、だましたり、ひとの不幸をよろこんだりしなくなりました。

 

 創作ですが、不思議なおばさん、こびとがでてきて昔話風です。悪い子のてんてんちゃんを やさしく見守る家族のあたたかさを感じます。


あつかったら ぬげばいい

2022年01月23日 | ヨシタケ シンスケ

     あつかったら ぬげばいい/ヨシタケ シンスケ/白泉社/2020年

 

 「あつかったら ⇒ ぬげばいい」から「さむかったら ⇒ きればいい」まで、ヨシタケ流人生処世術。見開きページの左に悩み事、右側に答え。小型本で持ち運びにも便利。どこから読んでもOK。

 大人も子どもも、女も男も あかちゃんも なやみは様々。作者の答えに納得したら うなずき 納得いかなかったら自分で考えるのも楽しい。肝心なのは 前向きになること。落ち込んでばかりはいられない。人生を楽しくするヒント満載で、必見です。

 ・ふとっちゃったら ⇒ なかまをみつければいい

  体重計にのって、おなかのでっぱりを気にしているおとうさん。身におぼえあり。

 ・だれも きずつけたくなかったら ⇒ じょうずな うそをつけばいい

  昔から、嘘も方便という。

 ・つかれているのかどうか よくわからなくなったら ⇒つかれたことに すればいい

  早く眠ること。

 ・たたかうことを もとめられたら ⇒ ”まだじゅんびができていないといえばいい”

  成績が上がっていない、もっと契約をとれ とは学校、会社の常套文句。

 ・じぶんの いばしょがなかったら ⇒ のはらに しきものを しけばいい

  女どもの中で一人疎外されるお父さん。誰もいないところへ行こう。

 

  身から出た錆で、錆の払落しは?


川岸の風景

2022年01月22日 | 日記

 いくつかある散歩コースで、今日は風もなく川岸を散歩。ちょっと大雨が降ると歩けなくなる遊歩道ですが、おなじように散歩する人がちらほら。

 時々会うのが岸でカメラを構えている人。なにをまっているのか声をかけているとカワセミをまっているという。カモや白鷺の姿がみられますが、カワセミは一度もみたことがありません。といっても、こちらにきたのは最近なのでみかけないのも当たり前か。

 整備された岸の近くでは、絵を描いている人も。それも一人だけではない。かとおもえば、釣りをする人も。

 こんなところでもほとんどがマスク姿。いかにも律儀なのが日本人らしい。


竜宮・・岐阜

2022年01月22日 | 昔話(中部)

          岐阜のむかし話/岐阜児童文学研究会編/日本標準/1978年

 

 竜宮伝説もさまざまですが、竜宮に滞在することなく、帰ってくる話。

 

 か助は、水泳ぎや魚とりにかけては村一番の若者。祭りの近いある日、村の者が か助に、灯明淵に投網をうってくれとたのみにきました。

 灯明淵は水深く人のよりつかないところで、魚たちのすみかにもってこいの場所。あるとき、一人の若者が、灯明淵より川上に船をこぎだし、水面をみていると、いままで見たこともないような美しい人の姿を水中に見つけました。「おまえはだれじゃ」と声をかけて水ん中に手を差しのべたとき、その美しい人の姿はにわかに消え、ヤナギの根元には、ひとえの着物がきちんとたたんであるのを見つけました。

 ここから羽衣伝説かと思いきや、着物を船にひきこんだ若者は、さっき水の中でみかけた美しい人のことを思うと、恐ろしゅうなって、着物をもとにもどします。

 この話は、だれとはなしにつたわっていました。

 気の重い か助でしたが、「神さまにそなえる大きいコイをあげてくれ」といわれ、灯明淵のいちばん深そうなところに船をこぎ、投網をなげ、ころあいをみはからって網をひくと、水の中にひきこまれるかとおもえるような、つよい力がつたわってきました。

 か助が、勇気を出して水の中にもぐり、ほらあなを潜り抜けると、かがやくような広場に出ました。そこには、まばゆいばかりの御殿がたっていました。

 赤ひげのじじが、でっかいドチやナマズ、コイやフナ、川ガニや川エビをしたがえてかまえ、そのまん中に、うわさに聞いた美しい人がたっていました。

 気の遠くなる思いの か助に、地上で聞きなれない響きの声がかかります。

 「かえりたくば、かえしてあげる。ふたたびくることなかれ」。はっとわれにかえったか助は、水面におしあげられ、岸辺におよぎつきました。

 それから、灯明淵には竜宮があるとうわさされ、ここで漁するものもいなくなったという。

 

 灯明淵は沼でしょうか?。竜宮は海だけのものではなさそうです。


うさぎちゃん スキーへいく

2022年01月21日 | せなけいこ

     うさぎちゃん スキーへいく/せな けいこ/金の星社/2002年

 

 お留守番のはずのうさぎちゃん、そんなのいやだよと、飼い主のリュックサックにもぐりこんでスキー旅行についていきました。

 道中ちょと長いので、リュックサックのお菓子を全部食べちゃった。

 ウェアーとスキーを借りて、滑りはじめますが、靴から飛び出してしまい、雪の中のうさぎちゃん。

 雪だるまになっていったさきが、のうさぎさんのところ。スキーを教えてもらい、お茶までごちそうになりました。それから、住所を交換して お手紙を書く約束まで。



 表紙のチェック模様があたかそうで、おもわず手に取りました。

 お手紙からすると、うさぎちゃんの住所は、東京都大田区。のうさぎさんは志賀高原の山でした。
 そういえばスキーとは無縁になりました。


おおきなトラとシカのはんぶんくん

2022年01月21日 | 絵本(昔話・外国)

    おおきなトラとシカのはんぶんくん/バーニス・フランケル・作 レナード・ワイスガード・絵 こみやゆう・訳/好学社/2021年

 

 とくにうたっていませんが、昔話によくみられるパターンで、三人のシカの兄弟の末っ子が 大活躍します。

 一番目の兄さんは 大きくて力持ち、二番目の兄さんは 大きくて早足。末っ子は、兄さんたちの はんぶんぐらいのおおきさで、みんなから「はんぶんくん」とよばれていました。

 「はんぶんくん」は、大きくなりたいとおもっているだけで、しごとといえば、返事をするくらいでした。

 ある日、兄弟が森の中の 新しい 場所を 探検していると、おおきなトラがあらわれました。「はんぶんくん」は、やっつけて おいはらってと 叫びますが、兄さんたちにトラにはとてもかなわないと くびをよこにふりました。

 たよれるものが じぶんしかないと おもった はんぶんくんは、おおきく いきをすいこむと ありったけの声で いいました。

 「おい、トラ! ぼくに かかってこい!」

 トラは びくっと たちどまり こうかんがえました。「このよわそうに みえる ちいさな シカが、こんなに 大きい声で どうどうとしているのは、なにかわけが あるにちがいない」

 二度、はんぶんくんから 逃げ出した トラでしたが またやってきたトラのせなかには  キツネが のっていました。すると はんぶんくんは?

 

 知恵と勇気のお話です。地も含め、セピア色の濃淡だけで描かれている落ち着いた色合いです。


とらとおじいさん

2022年01月20日 | 絵本(昔話・外国)

     とらとおじいさん/アルビン・トレセルト・文 アルバート・アキノ・絵 光吉夏弥・訳/大日本図書/2011年

 

 ジャングル一といばっていたとらが、オリに閉じ込められてしまいました。

 そこへやってきたおじいさんにお願いして、オリからだしてもらった とらでしたが、でたとたんにおじいさんに おそいかかります。食べることはしないと約束していたにもかかわらずに!。

 おじいさんは、とらに 「おまえさんは わしを たべるというが むちゃでないか だれかに きいてみたい」と 木や牛、道にきいてまわります。

 木は、「えだをはり、はをしげらせて、にんげんたちを、こかげで やすませてやったり、あまやどりを させて やったりしているが、にんげんは、わしのだいじな えだをきって たきつけに もってってたりするんだ。まあ、しかたがないから とらに たべられてやるんだな」

 牛は、「にんげんのために、はたらきどおしなのに、ありがたがるどころか、むちで ぴしぴし やってこきつかう。しかたがないから とらに たべられてやるんだな」

 道は、「にんげんや くるまが とおりやすいように、たいらな いいみちを つくってやっているが、にんげんは あちこち ほりかえしたり、つばをはいたり、ごみを すてたり するんだ。おんしらずは、にんげんもとらも おんなじさ。まあ、とらに たべられてやるんだな」

 おじいさんは、とらの ばんめしに なるよりしかたがないと 思ったとき、きつねにあいます。きつねは よく 話を聞こうと とらのところへ いき そして、さいしょから 再現してくれるよういい、とらが オリにはいると 戸を閉めてしまいます。

 

 インドのパンジャブ地方の昔話を脚色したとありましたが、類似の昔話が世界のあちこちにあります。「ちいさい げき」とあるように、とら、おじいさん、木、牛、道、きつねの会話で進行していきます。

 昔話を、劇の台本風に構成していて、親しみやすくなっています。 


ただぼっさん・・岐阜

2022年01月20日 | 昔話(中部)

          岐阜のむかし話/岐阜児童文学研究会編/日本標準/1978年

 

 富士山をつくったという巨人伝説。

 美濃と近江の国境に、ただぼっさんという大きな男がおったそうな。背の高いことは星空にとどくようで、こしの太いことは、百艘の船の帆をまいても、まききれんほどじゃっだぞ。

 北のほうからふいてくる寒い風に、ただぼっさんが、「どっこからふいてくるだ」と聞くと、風は、ひろい海をわたってふいてくるとこたえた。

 南のほうからふいてくる風にも聞くと、「お日さまのま下の、あついあついすな原から、ひろい海をわたってふいてくるだよ」という。

 ただぼっさんが、海ってどこにあるだかと、みまわしても、どこにもみえない。おかのうえにあがってみても、それらしいもんは見えない。とうとう駿河の国まできて、はじめて海を見たが、いくら眺めても海のむこうは、かすんでいて見えなかった。

 ただぼっさんは、海のむこうをみたいと、近江の国から土を運んで山を作り、のぼってみたが、海はひろびろとして、そのむこうには なにもみえない。

 もっともっと高くしなきゃと、せっせと土をはこび山をつくり、やがてその山は、雲の上に頭をだすようになった。

 この山が、富士山で、土をとったあとは琵琶湖になり、もっこからこぼれおちた土が伊吹山になったんだと。

 ただぼっさんは、晴れた日に、富士山の上に顔をだすというが、これまでみたものは、だあれもないんだとさ。

 

 巨人の大きさの比喩もさまざま。ただぼっさんも、じつに壮大です。