明かりが消えたそのあとで 20の怖いお話/マーガレット・リード・マクドナルド著 佐藤涼子・訳/編書房/2004年
ハローウィーンの夜、行い正しい人々は我が家にとどまるか、教会に祈りに出かけた。だがムラド・マックターガタという漁師は、一年中漁に出かけた。その夜、暗く空は荒れ、稲妻がひらめき雷がとどろいた。けれどマックターガドは網の手入れに余念がなかった。
ふいに戸口から緑の目の大きな赤いネコがはいってきた。ネコはにやりと笑い、鋭く白い歯をむきだし、シャーッとうなった。そして、大きな赤いネコは座ってムラドをじっとみた。
するとこんどは、赤い目が燃えている大きな黒いネコがはいってきた。ネコはにやりと笑い、鋭く白い歯をむきだし、シャーッとうなった。そして、大きな黒いネコは座ってムラドをじっとみた。
ふたたび大きな黒いネコ。四匹目、五匹目・・・。しまいには12匹の大きな黒いネコが小屋の中に座り込んで、赤く燃える目でムラドをじっとみた。
やがて、大きな赤いネコがたちあがりこう言った。「さあ、わが友よ! この素晴らしき嵐の夜に黙って座り込んでいいものか? 葬送の歌を歌おうではないか」
そしてネコたちは悲しげな声を長く引いてふるわせた。歌い終えると大きな赤いネコがムラドに向かって言った。「さあ、ムラド! すぐに支払えるかな? われらが今夜おまえのために歌った素晴らしき葬送の歌に?」
ムラドがまだ死んでもいないのに払えないというと、ネコたちはムラドを食べようとする。ムラドがドアの向こうに目をやると、ネコたちの頭越しに地主のヒツジが目についた。「それ、あれがおまえたちへの支払いだ!」とヒツジを指さすと、ネコはヒツジにとびかかり、あっというまにもどってきた。雨にうたれた丘の上に残ったものは、きれいになめつくされた骨の山。
また同じことが繰り返され、地主の雌牛を、「おまえたちへの支払いだ!」というと、ネコたちは、雌牛にとびかかった。雨にうたれた丘の上に残ったものは、きれいになめつくされた骨の山。
三度目に、ムラドは、地主のグレーハウンド犬が支払いだというと、ネコたちは犬をおいかけはじめた。ムラドは助けを求め村へと走った。ところがグレーハウンド犬に追いつけなかったネコがもどってきたので、ムラドは、必死に高い木によじのぼりてっぺんにすがりついた。
黒いネコが一匹、また一匹 木に登ってくると、ムラドは短刀を引きぬき大きな黒いネコにつきさした。これをみて赤いネコが、ムラドごと木を引き倒そうと、木の根のまわりをかきだしはじめた。それからネコたちは鋭い歯でかじりはじめた。木のてっぺんでムラダが大声で叫んだ。「助けてくれ!」。
教会でミサ中の司祭が声に気がつくが、補佐役が もういちど助けを求める声をまとうというので、司祭はミサを続けた。二回目の助けの声がきこえると、司祭は聖水のはいった瓶を持ってきて、ネコたちに振りかけた。
ギャーッ! ギャーッ! ギャーッ!
ネコたちはみんなからだをびくつかせ地面に倒れた。大きな赤いネコは恐ろしい声をあげ空中に飛びあがり姿を消した。赤いネコは悪魔そのもので、黒いネコは悪魔の手下たちがネコの皮をかぶっていたのだ。
その後、ムラドはハローウインの夜には二度と漁にでかけなかった。我が家ににとどまるか教会に祈りに出かけた。行い正しいスコットランドの人々がそうするように。
もとの話に参加型の要素を取り入れて、この話にしたとありました。