新編世界むかし話集⑦/インド・中近東編/山室静・編著/文元社/2004年
イスラエルの昔話とされる話。
北バビロニアのモスルの町では、ユダヤ人と回教徒が、もう何代にもわたって平和と相互理解のうちに、となりあって暮らしていました。
ある年のこと、この地方には少しも雨が降らず、空は大地をうるおすことをやめました。今年は旱魃になるらしいと、人々が心配していると、食料品の値段があがってきて、小麦の値段は、一週間、一週間ごとにあがりました。全回教徒がモスルの大寺院に参拝してお祈りをささげましたが、無駄でした。回教徒たちは、じぶんたちの祈りがきかれないのをみて、ユダヤ人の隣人のところにやってきて、きみたちも神に祈ってくれるよう訴えました。
モスルの町のユダヤ人は、みなシナゴグ(ユダヤ人の会堂)にあつまって、それから彼らの先祖や賢いラビたちの葬られている旧墓地にいき、祈りを捧げました。「助けたまえ、われらの主よ、そしてこの土地に雨を恵みたまえ。どうしてわれわれとわれわれの子どもたちは、われらの回教徒の隣人とともに、死なねばならないのですか?」
彼らが祈ったり訴えたりしているあいだに、空は重たい黒雲におおわれてきて、みるみる雨が降りそそぎはじめたのです。回教徒たちはこれを見ると、ユダヤ人たちを肩車して、歌ったり踊ったりしながら、彼らの家まで送っていったのです。
それからというもの、モスルのユダヤ人と回教徒とのあいだには、ただ平和と愛情だけがあることになったのです。
(2004年の出版でありながら、イスラム教徒を回教徒と訳している理由がよくわかりません)
イスラエルとパレスチナ(ハマス、ヒズボラなど)の戦争は、大量の虐殺をうんでいる。ユダヤ人とイスラム教徒が平和に暮らしていた昔話から、学んでほしいと思うが・・・。