ルピナスさん/バーバラ・クーニー・作 かけがわ やすこ・訳/ほるぷ出版/1987年
少女アリスのおじいさんは、アメリカにやってきて、彫刻や看板を制作していました。アリスも時々その仕事をてつだっていました。夜、おじいさんは、遠い国々の話をしてくれると、アリスはいつも言っていました。
「大きくなったら、わたしも遠い国に行く。そして、おばあさんになったら、海のそばの町に住むことにする。」
やがて、町の図書館で働きはじめました。図書館には、外国のことをかいた本がたくさんありましたし、温室にはいると冬のさなかでも、ジャスミンの甘い香りにつつまれます。そこで、ほんものの南の島や高い山に登り、ジャングルにわけいったり、砂漠をよこぎったりしました。いくさきざきで、いつまでも忘れられな人たちに、おおぜいであいました。
ところが旅行中にラクダからおりるひょうしに、背中をいためてしまい、海のそばに暮らす場所をさがしました。海を見下ろす丘の小さな家のまわりには、岩だゴロゴロしていましたが、そこを耕して、花の種をまきました。
つぎの年の春は、いためた背中がまたわるくなり、ほとんどねてすごさなくてはなりませんでした。ところが、前の年の夏にまいた花の種が、岩の間から芽を出して花を咲かせました。その年は、種をまくことはできませんでしたが、翌年の春、ぐあいがよくなったミス・ランフィアスが散歩にいくと、丘の反対側に、青や、紫や、ピンクのルピナスの花が咲き乱れていました。風が種を運んでいたのです。
ミス・ランフィアスは、ルピナスの花の種をたくさん注文し、村の野原や、海沿いの丘に、広い道の両側に、学校のまわりに、教会に裏に、いしがきぞいに・・・・。「頭のおかしいおばあさん」といわれても!。
つぎの年の春、村中がルピナスの花であふれました。
ミス・ランフィアスは、おじいさんからいわれた、「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしてもらいたい」という約束を果たしたのです。
子どもの頃の夢をかなえていったミス・ランフィアスは、ルビナスさんとよばれることになりました。
女性の一生というと、結婚し、子育てをするイメージが多いのですが、ルピナスさんは、生涯一人でした。絵本がかかれた時代には珍しかったことかもしれません。
さまざまな選択肢があったなかで、おじいさんとの約束をはたしたルピナスさんの生き方に共感する方も多いようです。
水彩画に色鉛筆でアクセントをつけるという画法でえがかれた絵は、やさしいかんじでルピナスのイメージとかさなります。
おばあさんになったルピナスさんは、おじいさんからいわれたように、子どもたちにいいます。「世の中を、もっと美しくするために、なにかしなくては」。
子どもたちは、きっと、何かを成し遂げてくれるでしょう。
ところで、ルピナスの花言葉は、想像力、いつも幸せ、あなたはわたしのやすらぎなど。