スイスの昔ばなし 王子と美しいパセリ/竹原威滋:編・訳/小峰書店/1989年初版
三人兄弟が出てきて、末の王子が位を継ぐという、よくある昔話。冒頭部が他のものと違います。
年老いた王さまが、三人の兄弟に課題を与え、うまくやりとげた者に跡を継がせようとします。
一つ目は、王さまの指輪をとおりぬける百エレの長さの亜麻布を手にいれるというもの。
末の王子はヒキガエルから小さな箱をもらい、上着のポケットいれて、城に帰ります。
二つ目の課題は、クルミの殻にはいるくらいの小さな犬を手に入れること。末の王子はヒキガエルから小さな犬が入っている箱をもらいます。
そして三つの目の課題は、一番美しい妻を手にいれること。
糸巻きを車にしたマカロニの箱、イナゴの御者、二匹のイエネズミの一行が砂埃をあげて、曲がり角についたとき、車は立派な馬車にかわり、ヒキガエルは美しい乙女にかわります。
スイス版では、兄弟同士があらそうことはありません。末の王子は乙女と結婚しますが、王さまは、上の二人の兄弟に相続分を支払います。
ところで、この話の導入部ですが、パセリを食べて美しく育つ娘がでてきます。このパセリちゃんがヒキガエルになったのは、あまり美しくなった乙女をめぐって、争いがおこり、このままでは不幸が起きるにちがいないと、母親が「世界の果ての橋の下にいる、みにくいヒキガエルになってしまうがいい!」と、呪いの言葉をはいたのが原因でした。
呪いの言葉が現実になるというのは、よくあるパターン。
兄弟同士が争わず、ヒキガエルの正体がはじめにでてきて、安心できます。
前半部と後半部のつなぎは「さてさて、娘の方は、どこへなりと好きなところへ行かせてておきましょうよ」。
パセリがだいすきな娘が、自分の庭にはあまりパセリがなかったので、隣にある尼僧院に盗みに入るところもあります。
パセリ好きの子になってほしいという願いが込められているのでしょうか。リンゴなどほかのものでもよさそうですが・・・。
ぞうのヘンリエッタさん/リズ・ウォン:作・絵 石津ちひろ・訳/岩崎書店/2019年
図書館の新刊コーナーから借りてきました。
子どもより、大人のほうが身につまされる絵本です。
ぞうのヘンリエッタさんは、しずかなくらしが好きでした。
ある日、だいすきな湖の中で、ゆったりかんがえごとをしていて、何かにゴツンとぶつかってしまいます。
ほうたいをして、たんこぶがなおるのをまっていると、パッリンと音がします。
たんこぶだと思っていたのは、がちょうの卵で、あかちゃんが生まれたのです。
あわてて、湖に走っていって、巣の中の戻し、ずーっと待ち続けますが、がちょうのお母さんはもどってきませんでした。
ガーコちゃんをつれかえったヘンリエッタさんが、ガーコちゃんの世話をはじめます。
ガーコちゃんは、だいすきな紅茶のカップでパシャパシャ、しんぶんはびりびり。
がちょうを育てることになったヘンリエッタさんのしずかなくらしはがらりと変わり、すっかりつかれはてます。
それでもヘンリエッタさんは、がちょうの生活をおしえようと、えさのとりかた、およぎかた、はねのはばたかせかた、そしてとびかたも。
やがて、どんどん大きくなったガーコちゃんの旅立ちのときが、やってきます。
自分の子育てのことを思い出しました。しょっちゅう熱を出し、次から次へと病気にかかり、すこし落ち着いたのは三歳をすぎたころ。共働きだったので保育園への送り迎えで時間に追われた日々。小学校に入ると午後は学童クラブ。鍵をなくしたことも。
子育てがうまくいった実感は全然なく、悔いがのこる子育てでしたが、とにかくバタバタしていました。
今ではその頃を懐かしく思いだすことがあるのも不思議。
砂糖菓子の男 ギリシアのむかしばなし/アルニカ・エステル・再話 ユーリア・グコーヴァ・絵 酒寄進一・訳/西村書店/
タイトル通りギリシャの昔話で、抑えた色調で不思議な顔の描き方に特徴があります。
一人の王女が、自分好みの男がいなかったので、アーモンド、砂糖、麦で一人の男の像をつくり、四十日と四十夜祈り続けると、男は命を宿します。
はっとするような美しい男で、その美しさはたちまち、世界中に知れわります。
うわさを聞きつけた遠い国の女王が、砂糖菓子の男をつれさってしまいます。
王女は鉄の靴三つを作らせ、砂糖菓子の男を探す旅に出ます。
月の母のところたどりつきますが、砂糖菓子の男のゆくえはわかりません。
月の母はアーモンドの実をひとつ王女にわたして、こまったときにはわるようにいいます。
王女は、月の息子にいわれたように太陽のところへ。鉄の靴一足をはきつぶしたころ、太陽の母のところへたどりつきますが、やはり男の行方はわかりません。
太陽とその母は、王女にクルミをひとつわたし、こまったこととがあったらわるようにいいます。
王女は、太陽にいわれたとおり、星のところへ旅をつづけます。
星たちと星の母が、砂糖菓子の男のいる場所を知っていました。ここでは、ハシバミの実をひとつわたされます。
王女はアーモンドで金の糸車と糸巻きをだし、一晩だけ砂糖菓子の男をわたしのところへよこしてくれるなら、糸車と糸巻きを女王にあげると約束します。
このあたりは昔話のパターンで、男が眠り薬をのまされていたので目を覚ましません。
次に金のメンドリとヒヨコと交換しますが、やはり男は目をさましません。
三度目は、男は眠ったふりをして、馬にまたがり城から逃げ出します。
女王のたくらみを教えてくれたのは、仕立屋でした。
長い話だと、ここから逃走談がはじまりますが、意外なオチが待っています。
女王も自分の相手は自分でつくろうと、男の像を作り、祈りをささげますが、ぶつぶつ文句ばかりならべたので、四十日後、男がくさってしまいます。
絵では女王が恐ろしく描かれていますが、砂糖菓子の男に逃げられ、声を上げて泣き出す憎めない存在です。悪役が怒るというのはあっても、泣き出すのは、はじめてでした。
グルジアの民話 五つのぼうけん物語/かんざわ とらお・訳 小宮山量平:編・解説/理論社/1977年新装版
グルジアは2015年4月以降、ジョージアの名称で呼ばれています。1991年に旧ソ連より独立していますが、この名称の経過も興味深い。
初出は1973年で再版で名称の変更はあるのでしょうか。40年以上も前に発行されていて、時代の変化も感じます。
「チンチラカのちえ」には、チンチラカという末っ子が、山男の髪の毛で作った橋をにげだすところがあります。
「髪の毛橋」といえばイギリスの「賢いモリー」が思い浮かびます。モリーでは髪の毛一本ですが、この話では「髪の毛で作った橋」とあるだけです。
モリーでは三人の女の子ですが、この話では三人兄弟。
展開も同じようで、王さまから命じられて、チンチカラが、山男からいただいて(早い話、盗み)くるのが、黄金の壺、黄金でできたパンドリという楽器、山男そのもの。
山男が「やあーい、チンチカラ! もう一ぺん、きてみろやい」と叫ぶと、チンチカラは「いいともさあ、こんどくるときゃ、ともだちになるぜえ」と二回繰り返します。モリーが「またくるわ」とさけぶのといっしょです。
難題は、山男をつれてくること。チンチカラは、指物師のふりをして箱をつくります。山男が箱を調べようとすると、一回目、二回目はすぐに壊れてしまいます。三度目に山男が箱に入ると、チンチカラはすぐに、上から釘づけにしてしまいます。
山男は髪の毛橋で、ころげまわったり、ちからいっぱいつっぱたり、うなったりして、箱もろともチンチカラを橋から谷の底へおとそうともがきますが、チンチカラは、髪の毛橋をだいぶとおりすぎたところで、髪の毛橋に来たといったので、山男の目論見はうまくいきません。
王さまが、箱をあけようとすると、チンチカラは、そのまえに長い梯子をくださるように王さまにお願し、そのあたりの一番高い岩山にのぼってから、箱をあけさせます。
王さまの家来たちが箱を開けると、まっかにおこった山男が、王さまも大臣も、家来も手当たり次第にたべてしまいます。
山男が高い山のチンカラをみつけ、つきすすみますが、山は険しく手も足もかけられません。
チンチカラが「干し草を山のように積んで、火をつけその真ん中に飛び込んで、煙がここまではこんでくれた」といった言葉をまにうけた山男がおなじようにすると、山男は焼け死んでしまいます。
国も王さまの位も、そっくりチンカラのものになって、兄弟も呼びよせます。
チンチカラが、山のどでっぱらにあなをほって、山男のねむっているベッドの真下まで掘り進んだり、
パンドリが「はやく、あいつをつかまえて。チンチカラが、つぼを盗んだよ!」とさけぶのが、二回でてきたりと、リズムもあります。
個人的には、モリーのように、おしまいが結婚でおわるよりすんなり入ってきました。
ぼくたちの ピーナッツ/作・サイモン・リカティー 訳・中川 ひろたか/講談社/2013年
表紙の右下、赤と青の兄弟?が一つのピーナッツを巡って取り合いっこ。
”わたしのよ” ”ぼくのだよ” ”わたしのなんですけど”” ”ぼくのなんだってば”
”わたしのソファなのよ” ”ちがう、ぼくのソファだ”
兄弟は、ぼうし、電話、マラカス、たいこ、ボート、スケボーをイメージ。
取り合いっこ。
”わたしんだ” ”わたしししし” ”わいのわいの” ”それがしの” ”わちきの” ”わだしのあだすの” ”あっしの” ”わがはいの”・・。
訳者の方へ・・おぬしやるなあ!。
結末の二人の顔をみてください。
おまたせクッキー/パット・ハッチンス・さく 乾 侑美子・訳/偕成社/1987年
繰り返しが特徴で、年少から小学校までの読み聞かせでも好評です。、
お母さんが焼いたクッキーが12枚。
ビクトリアとトムが食べようとすると、ピンポーン。おとなりのトムとハナでした。
4人で食べようとするとまた ピンポーン。やってきたのは、ピーターとピーターの弟。
ピンポーン、ピンポーンが続き、全部で12人
新しいお友達がくるたびに分け前は減り、とうとう一人1枚に。
そこへ またまたピンポーン・・・。
今度はどう分けるか心配していると・・・・。
自分の分け前が減るにもかかわらず、やさしくむかいいれる子どもたちです。みんなで食べるほうがおいしそうです。
ビクトリアとトムの友達がやってくるたびに、床は靴跡でいっぱい。でもお母さんはイヤな顔ひとつしません。
イスは8個。12人はどうすわったでしょうか。
あれあれあれれ/つちだのぶこ:作・絵/ポプラ社/2019年
子どもから「がっこうに もっていく あれ どっか いっちゃった」といわれて、すぐにこたえてくれる おかあさん。おかあさんからみれば、何が要求されているかは一目瞭然。不思議はありません。
大人同士で通用する”あれ”。
”あれ”だけで意思が通じる不思議さを、子どもの目線からとらえた絵本です。
年を重ねると、名前がでてこない、今日これをやろうとおもっても忘れることも多くなった。
とりわけ、顔は思い浮かべているのに、名前がでてこないのはしょっちゅう。
しかし、夫婦の間だと、話の内容が分かるので、とりわけ不都合はない。
夫婦の間だと、長い間の習慣や経験から以心伝心で伝わることも多く”あれ”で通用することも多い。もっとも関係がこずれていると、”あれ”じゃわからわないと、一喝されることも。
子ども同士だと”あれ”といっても、会話はなりたちません、
「おとなになったら わたしも あれっていったら なんでも わかっちゃうようになるのかな?」・・わかるかも!
おおきなおとしもの/アンデルセン原作 ジャン・ウオール ぶん レイ・クルツ・え ともちか ゆりえ・やく/ほるぷ出版/1979年初版
「おおきなおとしもの」ってなに?
おちょうしもののおばあさんが、卵が売れたらあれもこれも夢をかなえたいと考えながら市場にでかけていきます。
とり小屋をたて、ヒツジをかい、がちょう、豚も牛も、そして豚小屋も牛小屋もたてて、めしつかいのいるりっぱなお屋敷に住み、大きい農場の主人と結婚して・・・。夢が次々に広がります。
しかし、卵を頭にのせてすっかり気取った瞬間・・・。
すこしとぼけた内容で くすっと笑ってしまう絵本。アンデルセンが30歳のときに書いた詩をもとにして創作したものとあります。
しかし、大分あとになってから、これと同じ話型の昔話があることを知りました。
さらに、この原型はイソップの寓話のようです。イソップは紀元前6世紀の人。
日本では、1593年にイエズス会の宣教師がラテン語から翻訳したもののようで、非常に古くに日本に取り入れられています。江戸時代初期から各種出版され、普及し、その過程で「兎と亀」などのように日本の昔話へと変化するものもあらわれたといいます。
ついでにいうと日本の「取らぬ狸の皮算用」ということでしょう。
ひよこのかずはかぞえるな/イングリとエドガー・パーリン・ドレア・作 瀬田貞二・訳/福音館書店/1978年初版
1978年に瀬田貞二訳で出版されている「ひよこのかずはかぞえるな」も同じ内容ですが、「とことん わるいって わけどもないさね」「すてきなめんどりが いるだけでも、なんて しあわせなっこたろう」と自分にいう最後がいきています。
表紙の見返しと、裏の見返しに、たまごのなかから、にわとり、ぶた、ひつじなどが半分飛び出しているのがあって、こちらも楽しい。
・たまごを売って子ブタを買って(吸血鬼の花よめ ブルガリアの昔話/八百坂洋子・編訳 高森登志夫・画/福音館文庫/2005年初版)
ここでは、男が主人公で、卵を売って、子ブタを買って、馬を買ってと想像をふくらませますが、さらに村一番の娘と結婚して、男の子が生まれてとどんどん広がります。
売りにいった卵が、子どもを抱こうとしたところで、道に落ちて、一つ残らず割れてしまいます。
・ホセフィーネのしあわせな夢(メキシコ)(ふしぎなサンダル/世界むかし話 中南米/福井恵樹・訳 竹田鎮三郎・絵/ポプラ社/1979年
お金持ちの家で働いていた小間使いのホセフィーネは、その家であまったミルクを、いつももらっていました。
ある日、いつもよりたくさんのミルクをもらったホセフィーネは、市場でミルクを売ってかせいだお金をどうつかうか、あれこれ考えます。
ミルクを売って、メンドリを買い、メンドリが産んだ卵をブタをかって、大きくなったらブタを売って子牛を二頭かう。その二頭のミルクを売って・・・・。
ところが、ミルクを入れた壺がこわれて・・。
・ペラの猟師(象のふろおけ/世界むかし話11 東南アジア/光吉夏弥・訳/ほるぷ出版/1979年)
猟師が空想にふけって、ラストは元の木阿弥に戻るというマレーシア版。
草の上に寝ているシカにであった猟師。
シカ一匹でどのくらい暮らせるだろうと考えはじめた猟師が、アヒルを買って、ヤギを買って、牛、水牛、象を買って、その象を殿さまにあげて、かわりにお姫さまをおよめさんにもらって・・・。
空想が広い海のように、はてしなくひろがって・・。
しかし、大きな声をだすと、シカが森の奥へ一目散にとんで逃げていってしまいます。
つかのまのしあわせでしょうか。そんなにうまくいくわけがないというと味も素っ気もありませんが 題名からは想像もできませんでした。
・ばかなバラモン(オックスフォード世界の民話と伝説11/インド編/中川正文・訳/講談社/1978年改訂版)
壺いっぱいの大麦をもらったバラモンの男が、壺づくりの小屋で休んでいたとき、空想をひろげていきます。
大麦を売って十枚の金貨を手に入れ、金貨で水差しや壺をかって、それをビンロウジュの実や絹を買って、百万長者になって、四人ぐらいの嫁を貰って、一番美しいやつをとくべつ、かわいがって、もしほかの三人がぶつぶついうなら、棒でやつらをひっぱたたいて・・・。
棒で大麦の入った壺をくだいて、壺づくりの小屋から追い出されてしまいます。
「まだ手に入らないのに、空想だけして、よろこんでいると、とんでもないめにあうものです。ほんとにばかにされても、しかたありません。」とオチは辛辣です。
日本に同じような昔話があってもおかしくはないのですが、見落としているのでしょうか。
オックスフォード世界の民話と伝説11/インド編/中川正文・訳/講談社/1978年改訂
バラモン生まれのハラスバーミンは、身分が高いのに町の家を一軒一軒たずねて、食べ物をもらってあるき、それがすむと森の中できびしい修行をしていて、町の人からうやまれていました。
立派な人がいると、それを妬む男もいます。男は「修行者といってだましているが あいつは 町中の子どもを食べている」と、大声で叫びます。こうした者がいると、調子にのる者も出てきます。「その話は、わしも、きいているぞ」とわめきたてます。
こうしたうわさは、あっという間に広がり、みんな信じこんでしまいます。
このままでは、われわれの子どももあぶないと、つかいの者をおくって、町からでるようにいいます。
だしぬけに、でていけといわれたハラスバーミンは、あきれますが、このままにしておくことはできません。
バラモンのひとりひとりに、子どもがたべられた人がいるかどうか聞きます。たがいにたずねあいますが、いくらたしかめあっても「うちの子どもは、元気だ」というこたえばかり。
みんなは、ようやくへんなうわさ話にだまされていることに気がつきます。
うわさ話は、そんなことはないだろうと思っても、ついどこかに残ります。自分の目で確かめたものだけを信じるのが確かなのですが、ついまどわされます。
どこかのえらい人は、フェイクを連発しますが、フェイクといっているのがフェイクですから、自分で判断するしかなさそうです。
いちばんたいせつなもの/バルカンの昔話/八百板洋子:編・訳/福音館書店/2007年初版
あまり見かけない若い男がやってきたのをみたおかみさんが、どこからきたかときくと、「あの世からやってきた」という。
おかみさんの弟は亡くなっていて、あの世で弟のムーヤに会わなかったきくと、元気だが、おこずかいがなく、たばこも買えなくて、コーヒーも飲めなくてこまっているという。おかみさんが少しお金をもっていってくれないかというと、男はもちろん二つ返事でひきうけます。
この話を聞いた夫が、おかみさんがだまされたんだと若い男を馬にのって追いかけます。
若い男は水車小屋に逃げ込み、そこにいた粉屋に「乱暴なのがあんたを殺しにやってくる。わたしが食い止めめているすきに、逃げるよう」叫びます。
馬にのってやってきた夫が、粉屋がすごいいきおいで逃げ出すのをみて、水車小屋に馬をおいて、粉屋をおいかけます。
夫は粉屋に追いついて、首根っこをおさえつけ、おかみさんからうけとった金をかえすように、せまりますが、粉屋はなんのことかわかりません。粉屋は。若い男に「わたしを殺しにやってくるといわれ、水車小屋をにげだしたことを話します。
さんざんもめて言い争って、やっと若い男にだまされたことに気がついて水車小屋にもどると、若い男は、馬にのって逃げ去ったあとでした。
おかみさんが夫の馬がどこかにいったことに気がついて、馬の行方を尋ねると、夫は「お前の弟ムーヤが、どこにいくにもこまることのないよう馬をおくった」といいます。
昔から詐欺を働く者はいたのでしょうが、それにしても、あの世からきたという手口も考えたもの。
男は騙されたことを認めたくないのでしょう。おかみさんとどっこいどっこいです。
セルビアの昔話ですが、でてくるのはトルコ人の夫婦です。
絵本の中に日本絵本賞受賞というのがありました。
この絵本賞は、社団法人全国学校図書館協議会と毎日新聞社が主催し、前年に発行された絵本に贈られる賞で、1978年から1992年までは、全国学校図書館協議会と読売新聞社が主催していたものが継承されています。
絵本はもっぱら図書館から借り出すものがほとんどで、あまり賞は気にしていないのですが、毎年何百冊?と発行される絵本に目を通すのは不可能でしょうから、選ぶ参考にはなりそうです
日本絵本賞選考の主体は全国学校図書館協議会ですから、小学生を対象としているのでしょうか。絵本を購入するのは、個人だけではなく、幼稚園、保育園、小学校、図書館もあって、こうしたところでは、どういう基準で購入しているのでしょうか。
図書館協議会のHPから、最近のものをあげてみました。 かなりの絵本に目を通してきたはずなのですが、ほとんどがなじみのないものばかり(太字は読んだ絵本)。当たり前ですが、それだけ数多くの絵本があるということ。
絵本賞大賞 「くろいの」 田中清代 さく/偕成社
絵本賞 「なまえのないねこ」 竹下文子 文 町田尚子 絵/ 小峰書店
絵本賞 「 金の鳥:ブルガリアのむかしばなし」 八百板洋子 文 さかたきよこ 絵/ BL出版
絵本賞 「ぱんつさん」 たなかひかる 作 ポプラ社
<対象絵本:2018年10月~2019年9月>
絵本賞大賞 「もぐらはすごい」 アヤ井アキコ/作、川田伸一郎/監修(アリス館)
絵本賞 「大根はエライ」 久住昌之/文・絵(福音館書店)
絵本賞 「たぬきの花よめ道中」 最上一平/作、町田尚子/絵(岩崎書店)
絵本賞・読者賞「あめだま」 ペク・ヒナ/作、長谷川義史/訳(ブロンズ新社)
<対象絵本:2017年10月~2018年9月>
絵本賞大賞 「わくせいキャベジ動物図鑑」 tupera tupera/作・絵(アリス館)
絵本賞 「ばけバケツ」 軽部武宏/作(小峰書店)
絵本賞 「ドームがたり」 アーサー・ビナード/作、スズキコージ/画(玉川大学出版部)
翻訳絵本賞 「シャクルトンの大漂流」 ウィリアム・グリル/作、千葉茂樹/訳(岩波書店)
読者賞 「しんごうきピコリ」 ザ・キャビンカンパニー 作・絵(あかね書房)
<対象絵本:2016年10月~2017年9月>
絵本賞大賞 「きょうはそらにまるいつき」 荒井良二/著(偕成社)
絵本賞 「イモリくんヤモリくん」 松岡たつひで/さく・え(岩崎書店)
絵本賞 「くじらさんのーたーめならえんやこーら」内田麟太郎/作、山村浩二/絵(鈴木出版)
絵本賞 「干したから…」 森枝卓士/写真・文(フレーベル館)
読者賞 「どうぶつドドド」 矢野アケミ/作・絵(鈴木出版)
<対象絵本:2015年10月~2016年9月>
絵本賞大賞 「30000このすいか」 あき びんご/作(くもん出版)
絵本賞 「タケノコごはん」 大島渚/文、伊藤秀男/絵(ポプラ社)
絵本賞 「ゆらゆらチンアナゴ」 横塚眞己人/しゃしん、江口絵理/ぶん(ほるぷ出版)
翻訳絵本賞 「まって」 アントワネット・ポーティス/作、椎名かおる/訳(あすなろ書房)
読者賞 「おひめさまはねむりたくないけれど」メアリー・ルージュ/さく、パメラ・ザガレンスキー/え、浜崎絵梨/やく(そうえん社)
<対象絵本:2014年10月~2015年9月>
絵本賞大賞 「ふしぎなともだち」 たじま ゆきひこ/作(くもん出版)
絵本賞 「みずくみに」 飯野和好/絵と文(小峰書店)
絵本賞 「12にんのいちにち」 杉田比呂美/作(あすなろ書房)
翻訳絵本賞 「ヨハンナの電車のたび」 カトリーン・シェーラー/作、松永美穂/訳(西村書店)
読者賞 「だいおういかのいかたろう」 ザ・キャビンカンパニー/作・絵(鈴木出版)
<対象絵本:2013年10月~2014年9月>
絵本賞大賞 「きょうはマラカスのひ:クネクネさんのいちにち」樋勝朋巳/文・絵(福音館書店)
絵本賞 「あんちゃん」 高部晴市/作(童心社)
絵本賞 「カエルのおでかけ」 高畠那生/作(フレーベル館)
翻訳絵本賞 「はしれ、トト!」 チョ ウンヨン/さく、ひろまつ ゆきこ/やく(文化出版局)
読者賞 「キリンがくる日」 志茂田景樹/文、木島誠悟/絵(ポプラ社)
<対象絵本:2012年10月~2013年9月>
絵本賞大賞 「オオカミがとぶひ」 ミロコマチコ/著(イースト・プレス)
絵本賞 「しげるのかあちゃん」 城ノ内まつ子/作、大畑いくの/絵(岩崎書店)
絵本賞 「シルクハットぞくはよなかのいちじにやってくる」おくはら ゆめ/作(童心社)
絵本賞 「ともだち できたよ」 内田麟太郎/文、こみね ゆら/絵(文研出版)
読者賞 「しろくまのパンツ」 tupera tupera/作(ブロンズ新社)
<対象絵本:2011年10月~2012年9月>
絵本賞大賞 「もりのおくのおちゃかいへ」 みやこし あきこ/著(偕成社)
絵本賞 「きつね、きつね、きつねがとおる」 伊藤遊/作、岡本順/絵(ポプラ社)
絵本賞 「へちまのへーたろー」 二宮由紀子/作、スドウピウ/絵(教育画劇)
翻訳絵本賞 「どうぶつがすき」 パトリック・マクドネル/さく、なかがわ ちひろ/やく(あすなろ書房)
読者賞 「ぼくのトイレ」 鈴木のりたけ/作・絵(PHP研究所)
<対象絵本:2010年10月~2011年9月>
絵本賞大賞 「ものすごくおおきなプリンのうえで」二宮由紀子/ぶん、中新井純子/え(教育画劇)
絵本賞 「5ひきのすてきなねずみひっこしだいさくせん」たしろ ちさと/さく(ほるぷ出版)
絵本賞 「のっぺらぼう」 杉山亮/作、軽部武宏/絵(ポプラ社)
翻訳絵本賞 「ひみつだから!」ジョン・バーニンガム/ぶん・え、福本友美子/7やく(岩崎書店)
読者賞 「のっぺらぼう」 杉山亮/作、軽部武宏/絵(ポプラ社)
<対象絵本:2009年10月~2010年9月>
絵本賞大賞 「カワセミ:青い鳥見つけた」 嶋田忠/文・写真(新日本出版社)
絵本賞 「オオカミのおうさま」 きむら ゆういち/ぶん、田島征三/え(偕成社)
絵本賞 「すやすやタヌキがねていたら」 内田麟太郎/文、渡辺有一/絵(文研出版)
翻訳絵本賞 「おとうさんのちず」 ユリ・シュルヴィッツ/作、さくま ゆみこ/訳(あすなろ書房)
読者賞 「水おとこのいるところ」 イーヴォ・ロザーティ/作、ガブリエル・パチェコ/絵、 田中桂子/訳(岩崎書店)
<対象絵本:2008年10月~2009年9月>
絵本賞大賞 「ブラッキンダー」 スズキコージ/作・絵(イーストプレス)
絵本賞 「屋上のとんがり帽子」 折原恵/写真と文(福音館書店)
絵本賞 「したのどうぶつえん」 あき びんご/作(くもん出版)
絵本賞 「マーガレットとクリスマスのおくりもの」 植田真/作(あかね書房)
読者賞 「クラウディアのいのり」 村尾康子/文、小林豊/絵(ポプラ社)
<対象絵本:2007年10月~2008年9月>
絵本賞大賞 「よしおくんがぎゅうにゅうを こぼしてしまったおはなし」及川賢治、竹内繭子/作・絵(岩崎書店)
絵本賞 「悪魔のりんご」 舟崎克彦/作、宇野亜喜良/画(小学館)
絵本賞 「ふってきました」 もとした いづみ/文、石井聖岳/絵(講談社)
絵本賞 「ぼくがラーメンたべてるとき」 長谷川義史/作・絵(教育画劇)
読者賞 「ふしぎなキャンディーやさん」 みやにし たつや/作・絵(金の星社)
<対象絵本:2006年10月~2007年9月>
絵本賞大賞 「おかあさん、げんきですか。」 後藤竜二/作、武田美穂/絵(ポプラ社)
絵本賞 「うさぎのさとうくん」 相野谷由起/さく・え(小学館)
絵本賞 「ここが家だ:ベン・シャーンの第五福竜丸」 ベン・シャーン/絵、アーサ・ビナード/構成・文(集英社)
絵本賞 「ホームランを打ったことのない君に」 長谷川集平/作(理論社)
読者賞 「おかあさん、げんきですか。」 後藤竜二/作、武田美穂/絵(ポプラ社)
<対象絵本:2006年1月~2006年9月>
絵本賞大賞 「マーシャと白い鳥:ロシアの民話」 出久根育/文・絵(偕成社)
絵本賞 「どんなかんじかなあ」 中山千夏/ぶん、和田誠/え(自由国民社)
絵本賞 「ルフランルフラン」 荒井良二/著(プチグラパブリッシング)
翻訳絵本賞 「ふつうに学校にいくふつうの日」 コリン・マクノートン/文、きたむら さとし/絵、柴田元幸/訳(小峰書店)
読者賞 「しゃっくりがいこつ」マージェリー・カイラー/作、S・D・シンドラー/絵、黒宮純子/訳(セーラー出版)
<対象絵本:2005年1月~2006年12月>
絵本賞大賞 「ないた」 中川ひろたか/作、長新太/絵(金の星社)
絵本賞 「いろはにほへと」 今江祥智/文、長谷川義史/絵(BL出版)
絵本賞 「さくら子のたんじょう日」 宮川ひろ/作、こみね ゆら/絵(童心社)
翻訳絵本賞 「エリカ 奇跡のいのち」ルース・バンダー・ジー/文、ロベルト・インノチェンティ/絵、柳田邦男/訳(講談社)
読者賞 「あらまっ!」ケイト・ラム/文、エイドリアン・ジョンソン/絵、石津ちひろ/訳(小学館)
<対象絵本:2004年1月~2004年12月>
絵本賞大賞 「ぼくの見た戦争:2003年イラク」 高橋邦典/写真・文(ポプラ社)
絵本賞 「オー・スッパ」 越野民雄/文、高畠純/絵(講談社)
絵本賞 「きつねとうさぎ:ロシアの昔話」 フランチェスカ・ヤールブソワ/絵、ユーリー・ノルシュテイン/構成、こじま ひろこ/訳(福音館書店)
絵本賞 「きつねのかみさま」 あまん きみこ/作、酒井駒子/絵(ポプラ社)
読者賞 「天使のかいかた」 なかがわ ちひろ/作(理論社)
<対象絵本:2003年1月~2003年12月>
絵本賞大賞 「なつのいけ」 塩野米松/文、村上康成/絵(ひかりのくに)
絵本賞 「さらば、ゆきひめ」 宮本忠夫/文・絵(童心社)
絵本賞 「おばあちゃんは木になった」 大西暢夫/写真・文(ポプラ社)
翻訳絵本賞 「パパのカノジョは」 ジャニス・レヴィ/作、クリス・モンロー/絵、もん/訳(岩崎書店)
読者賞 「てではなそうきらきら」 さとう けいこ/さく、さわだ としき/え(小学館)
<対象絵本:2002年1月~2002年12月>
絵本賞大賞 「けんかのきもち」 柴田愛子/文、伊藤秀男/絵(ポプラ社)
絵本賞 「どんどこももんちゃん」 とよた かずひこ/さく・え(童心社)
絵本賞 「ねえ とうさん」 佐野洋子/作(小学館)
翻訳絵本賞 「キツネ」 マーガレット・ワイルド/文、ロン・ブルックス/絵、寺岡襄/訳(BL出版)
読者賞 「だめよ、デイビッド!」 デイビッド・シャノン/さく、小川仁央/やく(評論社)
<対象絵本:2001年1月~2001年12月>
絵本賞大賞 「でんしゃえほん」 井上洋介/作(ビリケン出版)
絵本賞 「あしたうちにねこがくるの」 石津ちひろ/文、ささめや ゆき/絵(講談社)
絵本賞 「パヨカカムイ : ユカラで村をすくったアイヌのはなし」かやの しげる/文、いしくら きんじ/絵(小峰書店)
翻訳絵本賞 「ジョットという名の少年 : 羊がかなえてくれた夢」パオロ・グアルニエーリ/文、ビンバ・ランドマン/絵、 せきぐち ともこ/訳(西村書店)
読者賞 「すみっこのおばけ」武田美穂/作・絵(ポプラ社)
<対象絵本:2000年1月~2000年12月>
絵本賞大賞 「マッコウの歌 : しろいおおきなともだち」 水口博也/写真・文(小学館)
絵本賞 「がたごと がたごと」 内田麟太郎/文、西村繁男/絵(童心社)
絵本賞 「かずあそびウラパン・オコサ」 谷川晃一/作(童心社)
翻訳絵本賞 「こんにちはあかぎつね!」 エリック・カール/さく、さの ようこ/やく(偕成社)
<対象絵本:1999年1月~1999年12月>
シマフクロウのぽこ/文:志茂田 景樹 絵:木島 誠悟/ポプラ社/2017年
"いさむ"くんが、獣医師の”えとう”さんと、猛禽類医学研究所にむかって走っているドクターカーには、巣箱から落ちてけがをしたシマフクロウのこどもがねむっていました。
えとうさんは、電線に触って感電したシマフクロウを手当てしたこともあります。
えとうさんは、シマフクロウのことについて、いろいろ話してくれます。シマフクロウは、魚を捕るとき、川に沿って低く飛ぶ。そのため、であいがしらに、橋の上を走ってくる車と衝突しやすいことも話してくれます。
ある日、猛禽類医学研究所でひらかれたシマフクロウの観察会のかえりがけ、いさむくんは、この前たすけたシマフクロウのこどものことをききました。
すると、そのシマフクロウは、障害があるので、森に戻すのは無理で、医学研究所で、しあわせにくらせるように、”ぽこ”という名前がつけられていまいた。
いさむくんは、先生に言われて、足の指にさわってみると、あったかです。
いさむくんは、羽にもさわってみます。たくさんの人が、ぽこにさわってみると みんなぽこをすきになってくれそうです。
「ぽこ」は、シマフクロウと人をつなぐ、親善大使になってくれそうです。そして、いさむくんには、将来獣医師になる夢ができました。
絶滅危惧種であるシマフクロウは、北海道に生息し、環境省の調査では一時の100羽ていどから165羽(2018年)に増えているといいます。
アイヌ語で、コタンコロカムイと呼ばれる(呼び方は複数?)シマフクロウは、開発や水質汚染、漁業との競合、交通事故などにより生息数が激減。
日本では1971年に国の天然記念物、1993年に国内希少野生動植物種に指定され、1980年代から巣箱の設置、冬季の生け簀による給餌、生息地を保護区や保護林に指定するなどの保護対策が進められているほか、環境省釧路湿原野生生物保護センターでは、傷病個体の治療と野生復帰を行っているといいます。
絶滅危惧種で、なじみのあるものではトキ。 明治時代の中ごろまでは、日本の各地にふつうにすんでいたが、美しい羽をとるために鉄砲でうち殺されるようになって、急に数が減少。さらに、トキの好きな森や湿地が減ったりして環境も悪くなり、80年ほど前にはほとんど見られなくなったといいます。
2003年、最後に残っためすの「キン」1羽が死んで、日本産のトキは絶滅し、今残っているトキは中国産だけといいます。
地道な努力を重ねている人がいることをあらためて知ることができました。
はりねずみの ぼうけん/ディック・ブルーナ:文・絵/まつおか きょうこ 訳/福音館書店/2019年
小さい子むけでしょうか。
はりねずみのはりこちゃんがマフラーを買いに町に行きますから、寒くなる時期に読んであげたい絵本です。
町は、どこもかしこも車、車、車! びっくりしたはりこちゃんでしたが、なんとかお店までやってくると、いろんなぼうしとマフラーがあって、まようほど。
ほんのすこしのあいだ目をつむって、かんがえていたとき、はりこちゃんは スピードをあげてはしってきたトラックに、はねとばされてしまいます。
ぼーるのようにころがったはりこちゃんでしたが、なんとか しなずに すみます。
それをみていた ひとりの男の子が、手をさしのべてくれます。
だれかが けがをしたら 助けてあげるのは あたりまえだろうと、男の子。
はりこちゃん、やさしい子にであってよかったです。
絵本を読みながら、交通事故のことも話せそうです。
のいちごつみ ばばばあちゃんのおはなし/さとう わきこ:作・絵/福音館書店/2010年
「おーい みんな のいちごつみに いかないかい」と、ばばばあちゃんが、声をかけても、遊びに夢中の動物たち。
ほうら、やっぱり いちごが あかくなっているじゃないか。いま とらなくって どうする」「いまでしょ」とばかり、のいちごどっさりとって、ちょっと昼寝していると動物たちが。
かえってからジャムをつくろうとすると、一粒食べたいの合唱。
みんなで数え唄をしながら、食べていると、残りは七粒。残ったのいちごは、ばばばあちゃんのおなかのなかへ。
次の日、みんなでのいちごをつんで、こんどこそジャムづくりです。
ななつ いちご なかなか とまらぬ やっつ いちご やっぱりうまい
ここのち いちご こんなに たべて とおで とうとう うちについた
いちごをたべているときの動物たちのしあわせそうな顔。
きつね、くま、さる、りす、たぬき、ねずみ、うさぎ、ねこ、いぬが素敵な着物をきています。
おにつばとうさん/沼野 正子:文・絵/福音館書店/2015年
今昔物語のなかから、絵本化されたとありました。
毎日、仕事に行く途中にある観音様へ、花とお線香をおそなえし、お祈りを欠かさない信心深いお父さん。
ある日、仕事で遅くなり、真っ暗になった道を大急ぎで、橋のところまで走ってきたときのこと、
ピタピタ、ゾゾゾ、ガッチン、ガッチン と不気味な音が聞こえてきます。
おそるおそる、ふりかえってみると、そこには、鬼や妖怪の大行列。
お父さんは橋から飛びおり、草むらに隠れますが、すぐに見つかってしまいます。鬼がお父さんを食おうとすると、鬼たちがきらいな線香の匂い。鬼たちは いっせいに ガーッ ペッペッと唾を吐かきかえます。
線香の匂いで難を逃れたお父さんでしたが、家に帰って、家族にかけよりますが、だれも気がつきません。鬼のツバで、姿が見えず、声もとどいていないようでした。
どうか、もとの姿に戻してくださいと、いつもの観音様に、眠らずにお祈りをして七日目の朝、おどうのおくから「ひだりのみちに いきなさい。そこで はじめて であった ひと のいうとおりにしてごらん」と観音様のお告げ。
お父さんが言われたとおり、左の道をいくと、みたこともないような大男にであいます。
大男は、父さんを 大きな屋敷につれていきます。
そこには病気なのか女の子がくるしそうにうなったり、ふるえていました。大男は、木のツチを取り出しし、女の子の頭を「そっとたたいてやれ」といいます。
おとうさんが、まよいながらも、大男の言う通りそーっと たたいてみます。
すると女の子の頭から、火の玉が飛び出し、火はとうさんの着物に燃えうつります。炎が燃え尽きたとき「あんあたはだれだ なぜここにいる」と女の子のお父さんがおおきな声をあげ、女の子も、おきだします。
お父さんは、みえるようになっていたのです。
これまでのことを 屋敷の人にはなした父さんは 家に向かって一目散にはしりだし、家に着くと
家族みんなで観音様におまいりにいきます。
妖怪の群団には迫力がありますが、妖怪好きの一定年齢以上の子には、あまり怖くはなさそうです。
着物が燃えると、姿がみえるようになるのも、意表をつきます。