ロバのジョジョとおひめさま/マイケル・モーパーゴ・文 ヘレン・スティーヴンズ・絵 おびかゆうこ・訳/徳間書店/2015年
ロバのジョジョは、おおきなメロンをやまほどのせて、毎日ベネチアをめざしてあるいていました。
ある日、メロン売りのおやじさんは、サンマルク広場でメロンを売ることにして、ジョジョをいつもよりはやくおこしました。
広場にはおおぜいの人がいましたがメロンを買ってくれる人はいませんでした。広場では金色に輝く四頭の馬が見下ろしています。「馬の彫刻の金の馬の下に、薄汚れたロバがいるぞ!」とはやしたてます。ロバのジョジョはよく、まぬけだとか、ぶかっこうだとかいわれて、ばかにされていましたから、メロンのかげに顔を隠しました。
お昼になって、ドージュさまのお屋敷の扉があいて、小さな女の子がかけだしてきました。
召使の人がとめても、女の子は、メロン売りのおやじさんに「ひとつ おいくらかしら?」と声をかけました。おやじさんは「おひめさま、おだいは けっこうなんで、どうぞ おすきなものを おもちくだせえ。ベネチアでいちばんあまい メロンでごぜえます」
おひめさまは、ジョジョの首をやさしくなでました。ハエがたかっているジョジョを見たおつきの人は、おひめさまをつれて屋敷にもどっていきました。ところがメロンはあっというまに売り切れます。町の人たちは、おひめさまがほしがるものなら、なんでもほしがるのです。
それから、おやじさんは毎日サンマルク広場へいくようになりました。お昼の鐘を合図に、おひめさまがお屋敷からでてきて、メロンを受け取ると、ジョジョにやさしく声をかけて、はなをなでてくれました。
ドージュさまは、おひめさまの十歳の誕生日に馬をプレゼントしようと、町の人に自慢の馬をつれてくるよう命令します。ドージュさまは、あつまってきた馬から、おひめさまが自分で選ぶようにいいます。
そう、おひめさまが選んだのは、メロンのそばにたっているロバのジョジョでした。
立派でうつくしい馬がこんなにいるのに、なぜ、よりによって あんな ぼろぞうきんみたいなロバを選ぶのじゃ。不細工で、のろまで みすぼらしいロバなど、どこがいいのじゃ!」「ロバさんをもらえないなら、わたし、なんにもいらないわ!」
おひめさまが、目になみだをためていうと、ドージュさまは、誕生日祝いはなしといいます。おひめさまは、お屋敷に戻る前に、ジョジョのところへ駆け寄ると「いっしょに にげましょう」とささやきます。
ひどい嵐で、おおつぶの雨が 地面をたたき、風が吹き荒れた夜、ジョジョはおひめさまの屋敷をめざします。サンマルク広場に着いたとき、あの四頭の金の馬が「海の水がおしよせてくる。ねむっている 町の人びとを おこし、いっこくもはやく にげるように つたえよ。おまえが しらせなければ、おおぜいの人が おぼれてしまう。さあ、いそげ!」と、声をかけてきました。
やがて、ジョジョは、おひめさまといっしょに駆け回り、町の人に危険が迫っていることを知らせます。「オイーン、オー、オー、オイーン!」
うまれてよかったとおもったことなど、いちどもなかったジョジョでしたが・・。
ひとりの人とのであいがなかったらヒーローになることもなかったロバでした。
サンマルク広場に、水があふれるテレビ映像に、ひどくショックでした。ベネチアには水との長い闘いがあります。