どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

丘のうえの いっぽんの木に

2023年04月30日 | 絵本(日本)

    丘のうえの いっぽんの木に/今森光彦/童心社/2019年

 

 里山の復元をテーマに活動をつづけられているという作者の愛情が感じられる絵本。

 

 丘に春がやってきて、オオムラサキの幼虫が、落ち葉の下からエノキをのぼりはじめます。

 エノキの やわらかそうな葉っぱを食べ、天敵から身を隠し、やがて脱皮。メスにもであい、卵をうみおえると、ちからつきて エノキの根元に ゆっくりとおちていきます。

 一方、新しい幼虫は北風が吹くころ、木をおりて冬を越す準備です。

 

 黒紙の切り絵ですが、オオムラサキはもちろん、フクロウや木の葉の細かさ。オオムラサキは国蝶で、色の鮮やかさが特徴ですが、黒の表現が想像力をかきたてる不思議さがありました。

 フクロウ、カエル、テントウムシ、フクロウ、カメムシ、タマムシ、アトリなどもでてきます。


まねっこ ねこちゃん

2023年04月29日 | 絵本(日本)

    まねっこ ねこちゃん 長 新太/文溪堂/2003年

 

 「まねっこねこちゃん まほうつかい」の繰り返しとともに、ねこちゃん 大変身?

 花にも へびにも 車にも 家にも 滑り台にも・・・

 完全に変身するのではなく、ねこの面影を残しているのがご愛敬。

 これだけ まねっこすると 相当なエネルギーを使いますから、四回変身したら一休み。

 最後のページ、二匹の魚が並んでいて、一匹のおなかのあたりは どうやら ねこちゃんに 食べられたよう。まねっこは、おなかもすきます。

 

 おかあさんの買い物籠、おとうさんのカバンと ねこちゃんがもっているのは 同じデザイン。おばけも 楽しめます。


ボクは じっとできない

2023年04月28日 | 絵本(外国)

   ボクは じっとできない/バーバラ・エシャム・文 マイク&カール・ゴードン・絵 品川裕香・訳/岩崎書店/2014年

 

 ADHD(注意欠如・多動性障害)のデイヴィッドが自分の特性に気づき、対策を見出す話。

 デイヴィッドは自分の行動が、みんなをイラつかせていることに気がついていましたが、ひとつのことに集中すると、その場の状況にあわせることができません。そんなデイヴィッドが、ノートと解決救急箱を、ロッカーからとりだしました。

 デイヴィッドは、学校に呼び出されたパパとママ、ゴールスキー先生の前で、ひくくてちょっとこわいい声で話しだしました。

 注意力や集中力を すこしでもよくさせるため <集中して聴く><注意!><今からやることがらを考える><結果はどうなる?>を書いた「注意・集中力こうじょうカード」を机の上におくこと。

 注意したり集中したりするために、どれくらいの時間がかるかタイマーを利用すること。

 それでも「じっとできない病」が、ふだんよりも はげしいときは ストレス・ボールを ギュッとにぎると 集中力が あがっていたこと。

 デイヴィッドは、それからクラスの子にも、”じっとできない病”が すこし見られることにも気がついていました。デイヴィッドの話を聞いて、先生も子どものころ、じっと できないことを思い出していました。

 

 多動性が障がいと認識されるようになったのは いつ頃からでしょうか。何か集中できるものがあれば まわりが見えなくなることは 当たり前にも思えますが、集団のなかでは、それが許されません。注意力、集中力は科学的な発見、発明にもつながる力です。


いろりにすてられた木の実は化ける・・岐阜

2023年04月27日 | 昔話(中部)

        岐阜のむかし話/岐阜児童文学研究会編/日本標準/1978年

 

 いまは囲炉裏がある家は古民家だけでしょうか。わかりやすいタイトルで、囲炉裏に捨てられた木の実が、化けて現れる話。

 炭焼きをしていた とっつぁまとかっつぁまが遠い町にでかけて一人で留守番していたむすめが、炉端のそばの瓶の中の木の実をたべ、種や皮を囲炉裏に投げ込んでいるうちに、目の前の灰の上にごみの小山ができた。

 親の帰りが遅く、むすめが囲炉裏のそばでねむって、ふと目をさますと あたりがザワザワ、ザワザワ騒々しくなって、囲炉裏の炉縁の上を 親指ほどのこびとがおおぜい列を作って動いていた。

 真っ赤な陣羽織を着たもの、笠をかぶったもの、鉄の棒をジャラジャラしたもの、裃をつてたものなど。恐ろしくなったむすめが、大きい火ばしをにぎって、行列を、灰の中に叩き落したり、ひっかきまわしたりした。すると、とつぜん、人間の腕が一本、灰に中からにゅっとあらわれ、むすめの足を握りしめたので、むすめはその場で気を失ってしまう。

 やがて親が帰ってきて、むすめのからだを揺り動かしたり、顔に水をふっかけしたりしているうちに、むすめは息をふきかえした。むすめが、さっき見たことをこわごわ話すと、とっつぁまとかっつぁまは、「囲炉裏に、木の実や、こわれた勝手道具をすてると、そいつが化けて出るということじゃが、やっぱり化けてでたのかな。」と、話をしながら囲炉裏の灰をかきおこすと、いつすてたんかわからん古い木の実の種がたくさんでてきて、それにまじって、真っ黒にこげた、めしのしゃもじも一本でてきたと。

 とっつぁまとかっつぁは「囲炉裏は火の神さまのおいでなさるところ、いつもきれいにしておこうな」「炭焼きにとっては、火の神さまほどありがたい神はない」と、むすめに語って聞かせ、囲炉裏のすみからすみまで、きれいにそうじをしたという。

 

 昔、囲炉裏は、家族のだんらんの中心で、昔話もこうした場所で語られてきました。


ゆうこさんのルーペ

2023年04月26日 | 絵本(日本)

   ゆうこさんのルーペ/原案・はがゆうこ 監修・ふじいかつのり 多屋光孫/合同出版/2020年

 

 ロービジョンというのをはじめて知りました。生まれたときから目がよく見えない状態を指すのですが、ルーペを使えば、本や新聞を読んだりできます。

 障がい者とのかかわりで、教えられることがおおくありました。

 ゆうこちゃんのルーペを借りてお父さんを見てみると、お父さんが小学生のころの教室。

 車いすの子の机の床には、テープでかこんだ四角な表示。小学生のお父さんが、遊ぼうと声をかけると、ともだちの一人が、「せんせいが はいっちゃ だめって いってたのに いけないんだ」と、いわれてしまいます。

 両手が杖で、荷物をいっぱいもった子に、てつだいしましょうかと 声をかけそびれた おばあさん。

 道を聞いて、すぐに目が不自由と気がつき、ばつの悪い思いをしたおばあさんが、道をすらすらおしえてもらい、「すごい! 目の不自由な人に きいてよかったのね」と思ったおばあさん。

 公園で、ゆみこさんのルーペに興味を持った子どもに聞かれ、「みちゃだめよ」とお母さん。

 同情心ではなく、困っている人をみたら自然に声をかけられるのが一番ですが、なかなか声をかけられないことを反省しました。


コケコッコーのおんどり

2023年04月25日 | 紙芝居

  コケコッコーのおんどり/脚本・やえがしなお 絵・日柴喜洋子/童心社/2020年(8画面)

 

ある日、おんどりが、手紙を拾いました。そこには こうありました。

コケコッコーの おんどりさま

クワッ クワッ クワッの あひるさま

チリチリ コロコロ かわらひわさま

みんなで けっこんしきに いきましょう

おんどりは あひる かわらひわに あうと 手紙の中身を確認して いっしょに 結婚式に むかいました。

そこへ おおかみがあらわれ 結婚式にいこうとしますが おんどりが 手紙に なまえがないことを告げると ご馳走を食えないなら おまえたちを くってやると ひとのみ。

かわらひわだけが 空に逃げ、猟師に 助けを求めると 猟師は てっぽうを ズドーン。

おおかみの 口から おんどりとあひるが 飛び出し、ひよこの結婚式で、食べたり、飲んだり 歌もうたって・・・。 

 

みんな おしゃれです。結婚する当事者が 書いた手紙でなさそうなので いったい だれが 手紙を書いたのやら。


まじょのくに

2023年04月24日 | 絵本(日本)

    まじょのくに/油野誠一・作/福音館書店/2006年(初出1998年)

 

 ビルの屋根にぶつかって ほうきの 柄を 折ってしまった まじょの ほうきを 直してあげたヒロミちゃん。

 「わたしも つれてって」ヒロミちゃんは、おばあさんまじょの背中にしがみついて、まじょのくにへ。

 まじょのくには、大きな木の上。家がぎっしり並び、お城の入り口は口のようで、塔の窓は目玉のよう。

 大歓迎を受けたヒロミちゃん。魔法のほうきをもらい、こどもたちと 遊んだり 飛び回ったり。

 ごちそうを 食べることになって、テーブルのごちそうを みると・・・。

 気持ちが悪くなって、逃げ出したヒロミちゃんの後をコウモリの大群が 追いかけてきます。コウモリの大群を かきわけて やっと お家へ。

 つぎの日、ヒロミちゃんは ほうきにまたがって とぼうとしますが・・・。

 

 テーブルの上にならんでいたごちそうは、なに?。逃げ出すぐらいですから・・・。

 ほうきをみると だれでもいちどは とべるかもしれないと またがってみた経験があるかも。

 線が特徴的で、色の塗りも 線を生かすように 薄く塗られています。こどもまじょが、おおぜいでとびまわる場面、帽子が個性的です。


とまとさんに きをつけて

2023年04月23日 | 五味太郎

    とまとさんに きをつけて/五味太郎/偕成社/200年

 

とまとさんが やってきて

はーい とまとさんですよ

「かわいい!」っていってくれないと・・・

こんなかおも できるのよ・・

こんなことも できるのよ

うたもうたえるのよ あなたも うたって

あ なんだか ねむっくなった・・

ちゅっ!

わたしは かえるね あとは ひとりであそんで ばーい

 

とまとさん あそびに きてくれ 泣き顔、変顔、笑い顔 

ちゅっ! して かえっていったよ。

なにに きをつけたら いいの? 

五味さん きをつけるとこ ないよ!

かわいい とまとの顔に 癒されること まちがいなし


ベコになったばっぱ・・福島

2023年04月22日 | 昔話(北海道・東北)

        福島のむかし話/福島県国語教育研究会編/日本標準/1977年

 

 「旅人馬」をおもわせる話。

 一軒の宿屋に泊まった坊さまが、夜中にへんてこな音がするので、ふすまの蔭からのぞくと、ばっぱ(ばあさま)が口で何やら言いながら、炉の中へ ごまの種をまいていたんだと。ばっぱが種をまき終わったか終わらないうちに、にょろ にょろ芽が出て、葉が出て、花が咲いて、ごまの実ができてしまった。坊さまは、なんて不思議なごまだべと思いながら見ていたと。そのうち、ばっぱは、うまそうな ごままんじゅうをつくったと。

 つぎの日の朝、坊さまが起きだして、ばっぱのいる部屋に行ってみると、お膳の上に、ゆうべの ごままんじゅうがならべてあったと。「これは なにかあるな」と、思った坊さんは、「わしは、毎朝散歩してから 食べる」と、宿屋をでて、町で、ごままんじゅうを買ってかえってきた。

 だされた、ごままんじゅうと、買ってきたごままんじゅうをすり替え食べ終わると、ばっぱに ばっぱのつくったごままんじゅうをすすめた。ばっぱが 何も知らないで食べると、ばっぱは、みるみるうちにベコ(牛)になってしまう。やさしそうなばっぱが、こんな風にして旅の者をベコにしては、それを売って金をもうけていたことがわかっただと。

 坊さまが、「いままで、旅の者を苦しめてきたから、そのむくいで こんな姿になったんだ。」と、おしえてやったんだと。ベコになったばっぱは、「ベコになって、はじめてその苦しみを知ることができた。わたしは、なんてむごいことをしてきたんだべ。仏さま許してくんなしょ」と、拝んだと。

 心を入れ替えたのならと、ばっぱは もとの人間のばっぱになることができたと。

 

 昔話では、反省をすることが少ないが、あやまって、もとにもどるという安心感がありました。


天人女房

2023年04月21日 | 絵本(昔話・日本)

    天人女房/立原えりか・文 清水耕蔵・絵/ポプラ社/2003年

 

 木の枝にかけてあった布、それは天女が水遊びのさいに、枝にかけておいたものでした。

 かぐわしい布を見つけたのは”みかる”という働き者でしたが、天女に聞かれても黙って、天女を家に泊まるようはなし、もてなします。

 ひと晩、ふた晩がすぎ、十日が一か月になり・・・。七年がたって三人の子どもがうまれました。「しあわせだ」と、天女はおもい、みかるも、みちたりた暮らしに満足していました。

 ある日、みかるが魚とりに出かけ、天女が機をおっているとき、子どもの歌声で、屋根裏に隠してあった羽衣を見つけ、三人の子どもと天の国へ のぼっていきました。

 天女がのこした手紙には、「わたしとこどもに あいたくなったら、ぞうりを千ぞく あつめてください。あつめたぞうりを 土に埋め、その上に 竹をうえるのです。三年たつと、竹は 天までのびて、わたしのくににとどきます。あなたは 竹をのぼって、わたしとこどもに あいにくることができるでしょう。」ありました。

 あつめたぞうりは、九百九十九でしたが、「たりないのは いっそくだけだ。なんとかなるだろう。」と、みかるは竹をうえ、三年すぎると、天のくにへのぼります。竹は天のくにへとどいていませんでしたが、天女が 布をたらしてくれたので、みかるはやっと 天にのぼりつきます。

 天のくにで 天女と暮らせるとおもっていたみかるに、天の王が、条件をだします。一日で千町歩の畑を切り開くこと、そのつぎに 千町歩の畑を一日で耕すこと、その畑に 一日で うりの種をまくこと、そして うりのとりいれ。これらを天女の助けでやりおえたみかるに、王が最後の仕事をいいわたします。それは一日で、うりを たてに半分にきることでした。

 天女は、うりを たてに切るのは 父のわなで、よこにきるように助言しますが、いざきろうとすると、たてにきるか、よこにきるか、わからなくなって、たて半分にきりました。すると山ほどのうりが、つぎつぎと、さけはじめました。うりからは水があふれ、川になり、みかるは 洪水にのみこまれ、天から地へ落ちていきました。

 それから、みかるは 何年も、何十年も ひとりでくらし、天の川の東に浮かぶ あかるい星を 天女だと おもいます。みかるが、地上で命をおえたとき、天の王は やっと手をのばし、みかるのたましいを、天の川の 西の岸に おきました。七月七日のことでした。

 

 羽衣伝説は、昔の記録にもみられ七夕と結びついて、全国に分布しています。ほかの話では、天女が複数ですが、立原さんは、一人しか登場させていません。


すずのへいたい

2023年04月20日 | 紙芝居

   すずのへいたい/原作・アンデルセン 脚本・水谷章三  画・夏目尚吾/童心社/1999年

 

 男の子が25人の兵隊さんを、テーブルの上に ならべました。そこには 紙で作った 見事なお城が立っていました。25人の兵隊さんの最後の一人は錫が足らずに一本足でした。この兵隊さんが、お城の扉の向こうにいる踊り子に気がつきました。踊り子は 片足をあげていたので、片足のようにみえました。

 錫の兵隊さんは、「あなたが すきです。ぼくの およめさんに・・」と、心の中でさけびましたが、踊り子は むこうで ずっと たちつづけているばかり。

 真夜中、おもちゃたちが 箱を飛び出し踊りはじめますが、踊り子は つまさきで すっくと たったまま。踊り子を見つめる兵隊に、びっくり箱の小悪魔が飛び出し、「おいっ、あのこを じろじろみるのを やめないか。なまいきなやつ。ふんっ、いまにみてろよ」と、いいます。

 つぎの日、男の子が、四階の窓から、一本足の兵隊さんを 落としてしまいます。兵隊を見つけた いたずらものが紙のボートをつくって 流しました。どしゃぶりの雨が降ってきて、ボートが どぶ板の下の ながいトンネルに はいりました。どぶねずみにおいかけられ、ボートは 大きな川に流れ込みました。川に沈んでいく途中、兵隊さんは、大きな魚に 飲み込まれてしまいました。

 もう、たすからないと覚悟をきめていると、目の前に ひとすじの ひかりが 差し込んで、聞き覚えのある声が、聞こえました。そこは、男の子の家でした。錫の兵隊さんのそばには、片時も忘れことがなかった踊り子がいました。いつまでも じっとみつめあっていると、小さい男の子が、なにを 思ったのか、ぽいっと、暖炉の中へ 放り込んだのです。どうしてこんなことをしたのか、男の子にも わかりませんでした。暖炉の陰では、小悪魔が にやりと 笑っていました。

 真っ赤な火の中で、兵隊さんの からだが 溶けはじめます。「ああ あついなあ。からだが とけていくなあ。これは、ぼくが むすめさんのことを あつくなるくらい あいしているからだ。きっと そうだよ。」。兵隊さんは、とけながら それでもしっかり たっていました。そのとき窓から風が吹き込んで、踊り子を 暖炉へつれていきました。踊り子は、兵隊さんの そばに とびこむと、あかかかと もえあがりました。

 つぎの日、暖炉の灰の中には、とけて かたまった ハートの形をした かたまりが でてきました。

 

 ボートで流された時も、川に沈みこんでいくときも、踊り子を愛した兵隊のいちじな思い。

 男の子が、兵隊を暖炉の中へ投げ入れたのは、小悪魔のせいですが、小悪魔が なぜふたりに 嫉妬したかが わかりにくくなっています。

 スズはこれまで食器などにつかわれてきましたが、いまはアルミニウムにおきかわっているようです。子どものころスズをとかして遊んだことを思い出しました。

 はじめからアンデルセン童話に親しむのは困難かもしれませんが、紙芝居からだと、スムーズにはいれるのかもしれません。


金のたまごを うんだ がちょう

2023年04月19日 | 絵本(昔話・外国)

   金のたまごを うんだが ちょう/作・ジェフリー・パターソン 訳・晴海耕平/童話館出版/1996年

 

 子どもたちが巣立ち、今の生活に満足し、つつましく暮らしていたヘンリーとヒルダ夫婦。
 ある日の朝、ヘンリーが がちょうの小屋に、金のたまごを見つけ、次の朝に がちょう小屋に行ってみると、もう一個のたまご。

 がちょうさまさまと、巣箱を 新しく塗り替え、おいしい食べ物を がちょうに やっていると、金のたまごの上に、さらに金のたまごが積み重なって 笑いがとまらなくなりました。

 「お金は、たんとは かせげないけど、必要なものは なんでもあるわ。あたしゃ、これいじょう、なんにもいらないわ」と言っていたのに、長い間、自分たちに忠実につかえ、いまは年老いた 馬のペギーを売り、まるで妖精のような若い馬を買って、荷馬車も新しくし、あたらしいものを買い、それまで ふたりを しあわせにしてくれたものを、捨てた。

 ところが、ある朝、がちょうの巣に、金のたまごが 見つからなかった。おなかがすいているかもと、たっぷり食べさせても、寒いのかもしれないと かまどの近くにおいてやっても、金のたまごをうまない。

 「金持ちのままで いたい」と、すさまじく怒り出したヒルダ夫人は、おなかのなかに、金をため込んでいるに違いないと、おなかをひらくようヘンリーに 言った。ヘンリーは がちょうを しまつした。しかし、がちょうのおなかの中には、金のたまごはなかった。

 つぎの朝、ふたりは、おしゃれな若い馬を売り、いまは年老いた馬のペギーを買いもどし、「金のたまごは、ふしあわせを はこんできただけだった。それに、あたしたちのがちょうを、死なせてしまった。」「けれど、ひとつ 学んだな。いまあるもので 満足するということをね」と、以前の生活に戻ります。

 

 どこまでも欲がなさそうなふたり。金が手に入っても滅茶苦茶に贅沢するわけでもなく、こっろと 反省し、切り替えが早い。

 がちょうが、命とひきかえに、今の生活のしあわせに 気がつかせてくれたのでしょう。


サルとカエル・・福島

2023年04月18日 | 昔話(北海道・東北)

        福島のむかし話/福島県国語教育研究会編/日本標準/1977年

 

 むかし、山の上の森にいっぴきのサルが、その下の田んぼにカエルがすんでたんだと。

 ある日のこと、サルがカエルのところへやってきて、「うめえ餅でも食いたいと思ってきたんだが」ともちかけると、カエルは、「うめえ餅食うにはどうやるんだ」と聞く。サルは、「うめえものっていうのは、今すぐ食おうと思ってもできねえもんだ。これから おまえさんと田んぼを作って、秋には食いきれないほどの餅をついて、タヌキどんのように、腹づつみうってもてえもんだなあ」って、もちかけた。

 相談がまとまって、やがて春になって、お百姓が苗代の準備をはじめるが、サルからはいっこうに便りがない。カエルがサルのところにいくと、昨日から腹が痛くて、一人で苗代を作ってくれと、にわかに腹をおさえて、ウーンとうなる。

 正直なカエルは、わき目もふらず、苗代づくりに精を出し、種まきのだんどりになるとサルをたずねるが、サルは腹痛がまだよくなっていねえという。仕方ないのでカエルは、せっせともみをまき、水をかけて、苗を育てた。田植えの時期になると、またサルを訪ねていくと、こんどは木からおちたと寝床にもぐりこむ。

 それからカエルは、暑い盛りの草取りも一人でやって、やがて秋。ずっすり実った稲穂の取入れも終わるが、それでもカエルは顔を出さない。

 もち米もたんととれ、あした餅つきするからとサルのところへいくと、おれ、もちつきするという。

 サルは、餅をつきおわると、向かいの山のてっぺんから、臼ごと落として、先に餅さ追いついたほうが、全部食うことにすべえと、持ち掛ける。

 次の日、臼を山へもちあげ、「一二の三」で転がすと、臼はどんどんころがり、木の根っこにぶつかったはずみで、餅が臼から飛び出てしまう。サルはそれに気がつかないで、臼をおいかける。カエルがぴょこんとゆっくりはねていると、目の前に餅。大喜びして餅を食いはじめた。下の沢まで、転げ落ちていった臼に、ひとかけらの餅がついていないのをみたサルが、あっちこっち探しながら登っていくと、カエルどんが、さもうまそうに餅食っていた。

 「カエルどん、おれにも ちっと食わせてくれんか」とサルが言うと、カエルは見向きもしないで、「サルどん、神さまはちゃあんとみている。おらにおさずけくださったんだ。なまけもんのあんたには、ひとかけらだってやらん」と、いったんだと。

 

 最後のおいしいところだけをとろうとして、しっぺ返しされるのは、当然か。


しちどぎつね

2023年04月17日 | 絵本(昔話・日本)

    しちどぎつね/岩崎京子・文 二俣英五郎・画/教育画劇/2003年

 

 きつねが人をだます話は全国に分布していますが、これは、落語版。

 二人づれの旅人が、店から鍋ごと料理を盗み、食べ終えたあと 空になった鍋を 放り投げると、たまたま昼寝していたきつねの頭に当たったから さあ大変。

 一度やられると七回しかえしをするという しちどきつね。

 二人の旅人が、着物を脱いで川をわたっていて、村人から声をかけられ、気がつくと そこはムギ畑。

 あたりが急にくらくなり、小さな寺に泊めてもらおうとして、尼さんから 留守を頼まれ留守番をしていると、墓から亡者が出てきて踊ったり、相撲を取ったり。昨日亡くなった若い奥さんが あかんぼうを だいて「ねんころりん・・」。

 がたがた震えているところに、村の人たちが、ほんとの 仏さんだという棺桶をおくと、棺桶がふたが押し上げられ なかから「た、たすけてくれえ」という声。村の人から声をかけられ、気がつくと、暗闇どころか、かんかんでりの 真っ昼間。

 きつねを見つけ、追いかけるとやぶの中。きつねのしっぽを みんなで 引っ張ると・・・。

 

 関西弁で快調に展開し、絵も雰囲気抜群。オチも最高です。


ふしぎなしろねずみ・・韓国

2023年04月16日 | 絵本(昔話・外国)


    ふしぎなしろねずみ/チャン・チョルムン・作 ユン・ミスク・絵 かみやにじ・訳/岩波書店/2009年


 雨がしとしとふる日、昼寝をしていたおじいさんの鼻から小さい白いネズミがでたりはいったり。

 おばあさんが、外に出て行った白ネズミのあとをおいかけていくと、水たまりでうろうろ。おばあさんは、ものさしをそっとおいてあげます。さらについていくと「こいつはおいしい きびもちだ!」と、ネズミは牛の糞をおいしそうに食べます。ネズミは山道にさしかかったとき、石垣の穴にするりと入っていきます。

 この白ネズミは、まだ寝ているおじいさんの鼻の穴にもどってきました。やがて目を覚ましたおじいさんが、ネズミになって外に出かけて行った夢をおばあさんに話しました。おじいさんの夢は、おばあさんが白ネズミをおいかけて体験したことが そのままでした。
 おじいさんが、洞穴の壺に黄金がざっくざっく入っていて、びっくりしたというのを聞いたおばあさんは、おじいさんと一緒に、白ネズミがはいっていった穴のところへいってみると・・・。

 前半は、雨というのもあって暗い感じの色ですが、二人が山道にかかるころは、雨もやんでいて、幸せがまっているような色づかいです。

 おじいさん、おばあさんがなんとも素朴で、仰向けにねているおじいさんの顔が正面をむいています。それにしても鼻の穴を出入りするのですから、よほど小さいネズミです。

 解説に教えられることも多い絵本です。