どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ラクダのなみだ・・モンゴル

2017年06月30日 | 絵本(昔話・外国)


    ラクダのなみだ/宮田 修・作 T・スフバートル・絵/KIBA BOOKU/2001年

 モンゴル出身ではじめて関取になった旭鷲山が、モンゴルで設立した財団法人を通じて子どもたちにプレゼントしているといいます。

 親を亡くした子ラクダのシャトルボルグと、子供をなくした親ラクダのボルインゲの愛情物語です。

 貧しいラクダかいの娘オトゴンは、いつもラクダを放牧し、夜遅く家に帰ってきていました。

 ラクダの群れにはシャトルボルグといううまれてまもないラクダがいましたが、少しの間、羊を放牧しているともだちとあって、かえってみるとシャトルボルグも母親の姿がありませんでした。

 必死でラクダをさがしたオトゴンは、シャトルボルグが、亡くなった母親のおなかのしたにいるのを発見します。母親がオオカミに襲われて亡くなったのですが、子どもだけはかばっていたのでした。

 「すぐにオッパイをのませないと、しんでしまう・・・」

 そこで、生まれた赤ちゃんがすぐにしんでしまったボルインゲというラクダのオッパイをのませようとするのでうすが・・・。

 ラクダは自分の子どもしかオッパイを飲ませません。

 でも、みなしごになったシャトルボルグをなんとか救おうと・・・。

 ダルマという馬頭琴の名手の音のやさしいしらべとオトゴンの長唄。

 なかなかボルインゲはオッパイをのませようとしませんが、こころをひとつにしたダルマとオトゴンの唄は、最後には願いが通じます。

 「モンゴルにつたわるいのちの物語」という副題があります。

 草原の風景や人物も素敵です。


カガカガ

2017年06月29日 | 絵本(日本)


    カガカガ/日野一成・文 斎藤隆夫・絵/福音館書店/1991年

 不思議なことがいっぱいの、遠い昔のものがたりと予告しておいて、意表を突くものがたりが進行します。

 主人公のカガカガは、石と鳥からうまれ、ある日神さまのお使いで、旅にでました。
 
 へそはヘビより長く、尻もながいながい穴。
 へそは箱にいれて、長い尻の穴はぶらさげています。

 こんなのあり?と驚き、どんな造形になるか?といっても絵をみているので、幾何学的なカガカガに驚かされて。

 途中ハゲワシに空を飛ぶように命令し、ハゲワシに沼におとされると、尻の穴に、ハゲワシをすっぽり押し込み・・・。

 クマの蒸し焼きができるまで、尻の穴に見張りをさせて、本人がグウグウ。
 眠っている間に、ミンクがクマの肉をたべてしまい、おまけに長い尻も食べられ・・。

 おこったカガカガが、長いへそでミンクをつかまえようとすると、ミンクがへそを細かくくいちぎってしまいます。

 こまぎれになったへそをみて、カガカガがおんおん泣き出すと、涙で湖ができ、神さまのお使いを思い出し、へそを湖に投げ入れると、へそが、ジャガイモ、トマト、コメ、大根、キュウリ、キャベツ、ゴーヤ、ナス、かぼちゃ、小麦などなどに。

 図書館でかりてきたものですが、もともとは付録がついていたようで、アメリカ・インデアンの神話をもとにしたようです。

 人間がお世話になっている食料は、カガカガの贈り物だったのですね!。

 ながいへそも尻の穴も最後には役に立つという結末で、不思議な絵本です。


ふくろの なかには なにがある?

2017年06月28日 | 絵本(昔話・外国)


      ふくろのなかにはなにがある?/ポール・ガルドン・再話絵 こだま ともこ・訳/ほるぷ出版/2009年07月

 著者の紹介で、ポール・ガルドンは、1914年ブダペストで生まれ、その後アメリカで活躍されたことがわかりました。
 ブダペスト生まれですからハンガリーの昔話の再話なのでしょうか。どこの国のものかわかりませんが、同じような話を読んだ記憶があり、絵本の特徴を生かした楽しい話です。

 ある日、キツネはまるまるふとったハチをつかまえ、ふくろにいれて、ともだちのスキンタムのうちにいくからと、ちっちゃなおばさんのところにあずかってもらいます。
 「ぜったいに ふくろのなかを のぞくなよ!」と言い残すのですが、のぞくなよといわれるとのぞいてみたくなるのが人間のつね。
 ちっちゃなおばさんがふくろをのぞくと、なかからハチがとびだしますが、ニワトリに食べられてしまいます。

 しばらくしてかえってきたキツネは、ハチの代わりにおばさんのニワトリをつかまえて、ふくろにいれてしまいます。
 キツネはニワトリの入っているふくろを、まえとおなじように、ふとったふとったおばさんにあずかってもらいます。
 このおばさんも袋の中をのぞくと、ニワトリが逃げていってしまいます。
 またもどってきたキツネは、ニワトリのかわりに、ブタをつかまえ、ふくろに入れて・・・。

 ブタの次は、男の子です。

 ここにでてくるおばさんは、ちいさい、おおきい、やせた、ふっくらふとったおばさんたち。

 おまけに、袋の中身がすけて見え、ニワトリやブタのなんともなさけなさそうな表情に興味津々。

 語る場合は、袋のなかのことはなにも語りませんが、絵だと表情で語ることができます。

 キツネはスキンタムどんのうちにいくと袋をあずかってもらうのですが、このスキンタムも、本当にいたのか怪しい存在。
 キツネもやりすぎで、結末もあざやかです。


むかし、ねずみが・・インド

2017年06月26日 | 絵本(昔話・外国)


   むかし、ねずみが・・/作・絵:マーシャ・ブラウン・作絵 晴海 耕平・訳/童話館/1994年

 マーシャ・ブラウンの色数をおさえた木版画が落ち着いた印象を与えてくれます。

 ある日のこと、インドの行者が
 おおきいこと ちいさいことについて、思索にふけっております・・と、哲学風な出だしです。

 思索にふけっている行者の前をネズミが走り抜けていきます。

 ネズミがカラスにつかまりそうなので、森の自分の住まいへ連れて行き、牛乳と米粒で元気づけてやります。
 ところがネズミはネコにつかまりそうになり、行者はネズミを強そうなネコに変えます。

 行者は、それだけでなく大きな犬に、どうどうとしたトラに変えます。

 トラになったネズミは、わがもの顔で森を歩き回り、他の動物たちに威張り散らします。

 行者は、お前はあわれなちいさいネズミだったと諭しますが、トラは恥をかかされたと思い、行者を殺そうとします・・・。

 一人で大きくなったのではなくても、自分を立派な人間と思い込む人も同様なのかも知れません。

 行者がでてくるのもインドらしい昔話です。


あくまのおよめさん・・ネパール

2017年06月25日 | 絵本(昔話・外国)


   あくまのおよめさん/シュワリ・カルマチャリャ・絵 稲村 哲也 結城 史隆・再話/福音館書店/1997年

 ラージャンは両親との二人暮らしですが、日照りが続き米や野菜が不作。

 ところがラージャンは道で一枚の銀貨を見つけます。

 父親は羊を、母親は豆を買うようにいいますが、ラージャンは国中にたった一つしかないものを買おうとします。
 結局買ったのは小さなサル。

 両親はがっかりしますが、ラージャンは大切に育てます。

 じつはこの村には人殺しも平気でするいう悪魔がいました。

 サルは悪魔が居眠りしているあいだに、少しづつ金貨や宝石を盗んで、隠します。

 悪魔は宝物がへっているのにきがつき、サルを地面におさえつけます。

 ところがサルは「死んだあとおいのりをしてくれる人がだれもいないじゃありませんか」「ぼくはほんとうは、おじさんに およめさんをみつけてやろうとおもって、きたんですよ」ともちかけます。

 ラージャンが両親に頼んで、用意したのは木彫りの人形でした。

 そしてその木彫りの人形をもって、悪魔のところへ。およめさんが身につける金や宝石の飾りがないと、およめにこられないと釘をさすことも忘れていません。

 そして、恐がるかもしれないから誰にもみられないように隠れているよう話します。

 まちきれない悪魔が、部屋に入っておよめさんにふれると、人形のよめさんは、ベッドからころげおちて、動かなくなります。

 悪魔は「ああ、ぼくの およめさんがー、ぼくのよめさんがー」と泣き叫び、大事なおよめさんをなくして、うまれてはじめて悲しい思いをしたので、村人たちを悲しませてきたことに気がつき、峠の向こうにいったきり、村にはもどってきませんでした。

 絵はネワール伝統絵画という手法でかかれているようですが宗教画を思わせます。

 ここに出てくる悪魔はちっともこわくありません。宝物をもっていても、死んだあと誰もお祈りする人がいないといわれて、およめさんをまっているあたりは、とても人間的です。

 そして村人を苦しめていたことに気がついて、村を去っていくという結末も余韻があります。


はじめてのかり・・モンゴル

2017年06月23日 | 絵本(昔話・外国)


      はじめてのかり/オノン・ウルグンゲ・唐亜明/作 ムンフジン・チュールテミン・絵/福音館書店/2005年

 福音館書店のこどものとも世界昔ばなし旅シリーズの一冊ですが、昔話なのでしょうか。

 馬に乗ることが上手になったバートルは、おとうさん、おじさんとはじめての狩りにでかけます。

 広い草原ですが季節は凍てつく冬。

 絵はモンゴルのかたが描いていて、冬の草原の厳しさがつたわってきます。

 狩りの目当てはシカですが、おとうさんは夕方バートルを連れて湖に。
 シカは、夜になると湖の塩をなめにくるとおとうさんは、教えてくれます。
 ところが、はじめての狩りは、トラと遭遇してうまくいきません。

 次の日も雪の上に大きな足跡をみつけたおとうさんは、トラを警戒してテントに帰ります。

 しかしその途中、イノシシが岩に牙をこすりつけているのを見つけます。イノシシは川に飛び込み今度は砂の上をころげまわります。おとうさんはイノシシがトラと戦うつもりで、戦いに備えて自分の毛皮をカチカチに固めていると教えてくれます。

 イノシシとトラの戦いは、決まって冬の真夜中にはじまるのです。

 おとうさんはトラには決して近づきませんし、イノシシとトラの戦いも見たことはありません。

 狩りというと勇敢なイメージですが、おとうさんの行動から、危険と紙一重だと気がつかされます。


もどってきたガバタばん・・エチオピア

2017年06月22日 | 絵本(昔話・外国)

 
    もどってきたガバタばん/絵:ギルマ・ベラチョウ・絵 渡辺 茂男・訳/福音館書店/1997年

 エチオピアの昔話ですが、色もカラフルで、昔の暮らしぶりも知ることができます。

「ガバタばん」は、将棋盤とありますが、日本の将棋盤ではなくゲーム盤でしょうか。

 ネブリ町という町で、一人の男の子が、お父さんがオリーブの木でつくってくれた将棋盤をもって、谷間に牛を連れていく途中、火をおこそうとした隊商からこのへんに木はないかと問われ、ガバタをさしだすと、隊商の一行は、さっさとガバタを燃やしてしまいます。男の子が泣き出すと、立派な新しいナイフをくれます。

 そのナイフをもって牛をつれていくと、今度はヤギにのませる水を探している男からナイフを貸してくれといわれ、ナイフを貸すと男が力いっぱい掘ったので、ナイフが折れてしまいます。

 槍の次が馬、斧、木の枝、それから・・・・。

 男の子のなんという気前の良さ。再三にわたって泣くはめにあっても、いわれたとおりに貸してあげます。

 どんどん高価なものにかわってもよさそうですが、かならずしもそうとなりません。

 そして結末も、最後にガバタがもどってきます。

 今紹介されているエチオピアの昔話は、悪役がでてきませんし、ドロドロしたところもなく、ほっこりしたものが多く、安心?できるものばかりです。


火をぬすむ犬・・韓国

2017年06月19日 | 絵本(昔話・外国)


    火をぬすむ犬/松谷 みよ子・文 司 修・絵/太平出版社/2000年

 壮大な話です。宇宙に浮かぶ暗闇の国カマクナラ。

 暗闇の国カマクナラでは、火のかたまりをくわえる犬をたくさんかっていました。

 王さまはあたたかなひかりを放つ太陽がうらやましくてたまりません。

 そこで火のかたまりをくわえる犬に太陽をとってくるように命じます。

 いちばん大きく力も強い犬が宇宙の暗闇のなかへ飛び出し、太陽を盗もうとしますが、とてもとても熱くてくわえて帰れません。

 太陽がダメなら月があると、火の犬が月をくわえようとしますが、今度はやけどをするぐらい冷たくてどうしてももちかえれません。

 それでもあきらめなれない王さまが、火の犬に、ときどき太陽と月をぬすみにいくように命じます。

 日蝕と月蝕は、火の犬が太陽や月を口にくわえるときにおこるといいます。

 昔話に宇宙がでてくるのは、松谷さんの再話だからでしょうか。

 絵の手法も独特で、王さま、犬の描き方も、この話に合っているようです。


にげだしたひげ

2017年06月18日 | 絵本(外国)


   にげだしたひげ/作・絵:シビル・ウェッタシンハ・作絵 のぐちただし・訳/木城えほんの郷/2003年



 舞台はスリランカの小さな村。

 むかしむかしではじまりますので昔話でしょうか。

 少々のことでは驚かなくなりましが、奇想天外といえば奇想天外で、タイトルどうり髭がどこまでも逃げ出します。

 この村には、ひげそりもはさみもなかったので、じいさんたちはみな、ひげを長くのばしていて、あんまり長くなると、まな板の上で魚を切るように、包丁でひげを切ってもらっていました。
 ところが、ハブンじいさんだけはちょと変わっていて、エサをあげていたねずみに髭をかじってもらっていたのです。
 ところが、ある日、ねずみの歯が丸くなっていて、かじっても髭が短くなりません。早く歯を研いできておくれと、バブンじいさんがいうと、これを聞いた髭はあわてて逃げだします。

 猫も犬も家も、村人にもぐるぐる巻きつきながら逃げていきます。そして村中のあらゆるものにからみつきます。

 どうやって髭が逃げるのを解決できたでしょうか?。結末も楽しい話です。

 作者の紹介がのっていないのも珍しい絵本です。

 奇想天外ですが、豆のつるが一日で天までのびたり、鼻が空までのびるのもありますから、そういう意味でいえば奇想天外でもないようです。

 髭が伸びるのなら、足がのびても、爪がのびてもおかしくはなさそうです。


からだのなかで ドゥン ドゥン ドゥン

2017年06月17日 | 絵本(日本)


  からだのなかで ドゥン ドゥン ドゥン/木坂 涼・作 あべ 弘士・絵/福音館書店/2002年



 この絵本をよんだあと、子どもがお母さんの胸に耳をあてて、心臓の鼓動を聞く様子が目に浮かびます。

 もっとも心臓の鼓動というのは文にはありません。

 人間だけでなく動物、鳥も体の中で命の音を響かせています。それぞれ鼓動の音が使い分けられています。

 音をとおして命のふしぎさをあらためて感じさせて絵本です。脈の動きももう一つの鼓動です。

 ラッコ、くじら、クマの心臓の音も聞いてみたいですね。クマはちょっとこわいかな?

 旭川動物園に勤務されていたあべ弘士さんの絵もいいですね!

 あべ弘士さんの絵、大分あちこちで目にするようになりました。


エングラシアおばちゃんのおくりもの・・ニカラグア

2017年06月15日 | 絵本(昔話・外国)


   エングラシアおばちゃんのおくりもの/作:マリオ・モンテネグロ・文 オルガ・マラディアガ・絵 まつもととおる・訳/福音館書店/2005年初版

 ニカラグラの昔話です。

 ニカラグアは、中央アメリカ中部に位置するラテンアメリカの共和制国家。北西にホンジュラス、南にコスタリカと国境を接し、東はカリブ海、南西は太平洋に面しています。
 ニカラグアは北方からトルテカ族、アステカ族がやってくる中間点で、相互の影響により豊かな文化が形成され、美しい陶器や石像を今に残しているといいます。

 ろばのグリセリオとメルセデスの結婚の贈り物としてエングラシアおばちゃんがつくっているのはテーブルクロス。
 ところが、針も赤い糸も、おまけに指ぬきもみあたりません。

 さがしたさがしたおばちゃん。おばちゃんは大泣き。

 じつはクモのマチルデの娘カルメンが穴を繕うため拝借していたのです。

 早速おばちゃんは、テーブルクロスに二人?の名前を縫い上げます。

 ところがこれではおわりません。

 おばちゃんの針や指ぬきをさがしてくれたみんなが、テーブルクロスをもっときれいに、たのしく、にぎやかにしようと刺繍をはじめます。

 ひきがえるのイネス
 うみがめのファナ、テレサ、トマサ
 あおさぎのヴィクトリーノ
 はちどりのジャリ
 むくどりもどきのパンチョ
 むかでのイスマエル
 ねこのモンテス
 最後はくものマチルデ

 みんなはどんな刺繍をしたのでしょう。
 素敵な手作りのテーブルクロスです。


 ろばに贈り物をするやさしいおばちゃん。
 
 でてくる動物たちの一人一人に名前がついているのも新鮮です。


「あらしのよるに」シリーズ

2017年06月14日 | 創作(日本)

        あらしのよるに/木村裕一・作 あべ弘士・絵/講談社/1994年初版


 初版が1994年ですから大分前に出版されています。こんな楽しい物語もおはなし会にいかなければ知ることはありませんでした。もっともこの本は大分評判だったようで、多くの感想もよせられています。七巻まであるようです。聞いたのは第一巻。

 あらしのよるに、壊れかけた小屋に逃げ込んだ白いヤギと足をくじき鼻かぜをひいたオオカミ。

 真っ暗闇の中で、匂いもわからず、声だけがたよりです。

 オオカミの声を聴いたヤギは、「オオカミみたいなすごみの ある ひくい おこえで」といいかけますが、失礼だと思って口を閉じ、オオカミの方も「ヤギみたいに かんだかい わらいかたでやんすね」といおうとして、相手が気を悪くすると思って、やめにします。

 食い物で、ヤギはおいしい草といい、オオカミはおいしい肉といいますが、その声もカミナリにかきけされます

 どこに住んでいるかの話で、お互いの違う思いが交錯するのも笑わせます。

 ”ぴかっ”と稲妻が光り、お互いの顔が見えたと思うと、ヤギはしたをむき、オオカミは、まぶしくて思わず目をつぶって相手の正体はわからずずまい。

 ”ガラガラガラガラ~”とカミナリガなると、この二匹はしっかりと体をよせあってしまいます。

 気が合うどうしで、いい天気の日に食事をしようとなって、合言葉をきめます。合言葉は「あらしのよるに」でした。
 奇妙な友情に結ばれた二匹、次のはれた日、丘の下でなにがおこるか、わかるはずもないと、結びも意味深です。

 オオカミはヤギの天敵、恐ろしい敵です。あかるいところならギャとなるところですが、あらしの中で友情が生まれるというなんとも楽しい話です。

 舞台設定も巧みな感じがしますし、続きが読みたくなるのも当然です。


 第二巻は「あるはれたひに」、第三巻は「くものきれめ」です。
 第三巻で、はじめてオオカミとヤギの名前があきらかになります。 オオカミはガブ、ヤギはメイです。オオカミががぶりと食べる様子がうかがえ、ヤギの名前は鳴き声をイメージしているのでしょう。



 何よりもヤギの肉が大好物のオオカミとヤギがあらしのよるに互いの正体を知ることなく、合言葉をきめて、今度一緒にお昼ご飯を食べようと約束するまでが「あらしのよるに」でした。

 晴れた日、というのは次の日なのですが、はじめて顔をみた二匹は、びっくり。しかし友情を大切にするオオカミはヤギと一緒に岩山のてっぺんでお弁当を食べようと登っていきます。

 ところが途中、オオカミは弁当を谷底へ落としてしまいます。

 狭い道を登っていく先にはヤギのおしり。うまそうとなまつばを飲むオオカミ。すぐに友だちのことをうまそうだなんてとつぶやくと、下をむいてのぼっていきます。

 岩山のてっぺんでお弁当を食べたヤギは昼寝をはじめます。

 おなかがすいているオオカミの前には、おいしそうなヤギ。
 オオカミがヤギの耳におもわず口をちかずけますが・・・。
 なんどもなんどもヤギを食べようとオオカミですが、そのたびにじっとこらえるさまがなんともいえません。

 ヤギはお腹のすいたオオカミの前で昼寝ですが、どうものんびりしたヤギです。

 オオカミの葛藤を知ることもないヤギは無神経なのか無邪気なのか。

 それでもオオカミは「こ、こんど、いつ あうっす?」。
 まだまだ続きます。


 オオカミのガブとヤギのメイに、メイの友達のタプがくわわります。

 メイがソヨソヨ峠にいく(オオカミのタブと待ち合わせです)というのを聞いたタブは、オオカミの出るところだからとメイを心配して・・。

 何度も鉢合わせになるところをメイが機転をきかすのですが、とうとう三匹が鉢合わせに。

 オオカミが後ろ向きに座り、暑い雲が太陽にさしかかり、オオカミの姿がみえないのですが、タブはオオカミの悪口を言いたい放題。「目が吊り上がっててて、口が下品で、鼻が不細工で」。

 ついに立ち上がるオオカミのガブ。タブをガブリとやろうと大きく口をあけると・・・。

 ハラハラドキドキの連続です。

 メイがタブの体におおいかぶさるのをみたガブがウオオーンと一言。何かメイに裏切られた感情なのか、ヤギ同士の仲の良さへの嫉妬なのか微妙なガブの心境です。

 「わたしたち ひみつの ともだちじゃないですか。」
 「なんか、それって、ドキドキする ことばっすよね、じゃあ、おいらたち、また あえるんでやんすか?」

 今度の別れのシーンも 映画のラストシーンと重なって、ジーンときます。

 「あらしのよるに」は、大分評判でテレビや映画化もされたことが、最近になって知りました。
 知らなかったのは自分だけ?と冷や汗(笑)

 出版年がはなれていますが、全巻まとめて読むことができたのは、かえってよかったのかも。
 ちなみに、図書館からかりてきた第4巻以降の出版年は
    四巻 きりのなかで  (2002年)
    五巻 どしゃぶりのひに(2000年)
    六巻 ふぶきのあした (2003年)
    七巻 まんげつのよるに(2006年)


 「どしゃぶりのひに」は、大型版ではないので、時期がずれています。

 第三巻ではメイの仲間に危機がせまりますが、メイの機転でなんとか危機をのりこえ、四巻では新しくオオカミのバリーと片耳のギロとこわいオオカミがでてきて、メイが食べられそうになる危機が。

 五巻では、秘密だったメイとガブの関係が仲間にばれて、お互いの気持ちとは別にスパイになるよう迫られてます。

 六巻では、秘密がばれたガブとメイがふぶきの山越えをします。 そしてオオカミの集団がせまってきたとき、ガブは雪崩に巻き込まれて。

 七巻では、雪崩にまきこまれ記憶をうしなったガブにメイが食べられそうに・・・。

 ガブとメイが並んで満月を眺める最後ですが、まだまだ二人の前には何かありそうな予感もあります。

 映画では原作にない登場人物?がでてくるようですが、たしかにメイとガブを取り巻く状況がでてきてもおかしくないようです。

 オオカミの群れでのガブの立場がでてきますが、メイの方はほとんどでてこないというのもややもの足りません。それでも久し振りに心から楽しめる物語でした。


スズメと子ネズミとホットケーキ・・ロシア

2017年06月12日 | 絵本(昔話・外国)


      スズメと子ネズミとホットケーキ/イリーナ・カルナウーホヴァ・作 アナトーリー・ネムチーノフ・絵 齋藤君子・訳/ネット武蔵野/2003年初版

 ロシアの昔話の再話です。

 森のはずれにすむ小さな小屋に暮らすのは、ムクムク子ネズミとチュンチュンスズメとバタ-たっぷりのホットケーキ。

 料理の分担は、スズメは麦やキノコ、まめの調達、子ネズミはまきわり、ホットケーキはシチューとおかゆをつくること。
 仲良く暮らしていた三人ですが、スズメがどうも自分の仕事は多すぎると、役割分担をチェンジすることにします。

 ところが、それぞれがえらい災難にあって・・・。

 最後はもとの分担にもどります。

 ホットケーキは、壺の中に飛び込んで、うまいシチュウをつくるのですが、役割をかえて、ネズミが壺に飛び込むとからだじゅうおおやけど。

 ホットケーキが料理の材料をあつめていると、おなかがキツネに食べられてしまいます。

 ホットケーキの存在感が抜群で、靴も面白いですよ。

 この三人組?どうして同居することになったかにも興味があります。


おはなし会の中で・・・

2017年06月10日 | いろいろ
 先日、保育園のおはなし会で、動物あてのマジックをした方がいたのですが、子どもたちはどうして当たるのか不思議そうでした。

 おはなし会のプログラムをブログでみると、語り、絵本、紙芝居、手遊び、パネルシアターなどいろいろの組み合わせで、さらに手作りの人形を作られるなど多彩です。

 一度、新聞紙をつかったお話も聞いていて、面白いとおもいましたが、短時間でも、こうした工夫があれば、喜ばれそうです。

 マジックの本をみていたら、二進法をつかった数字当てがあって、なるほどこういうことかと思わされました。

 マジックというと、すぐに種がどんなものかしりたくなりますが、大人も子どもも楽しめるので、ちょっぴり自分のものにしたいものです。

カワと七にんのむすこたち…クルド

2017年06月09日 | 絵本(昔話・外国)

 
   カワと七にんのむすこたち/アマンジ・シャクリー・文 野坂 悦子・絵 おぼ まこと・絵/福音館書店/2015年

 中東のニュースには、クルド人がでてくることが目につきます。

 イラク戦争のとき、クルド人は、フセイン政権から迫害をうけていたというニュースがありました。独自の国家をもたない世界最大の民族集団といわれていますが、紀元前から中東にすむインド・ヨーロッパ語族といいます。

 パシャという王さまの結婚式にやってきた怪しい男。王さまにお祝いの祈りをすると、その夜、王さまは肉がえぐりとられるような痛みがはしり、よくみると両方の肩にヘビがはえています。
 なぐりつけても切りおとしてもなんどもはえてくるヘビ。

 そこにみたこともない医者があらわれ、毎日羊を二頭食べさせれば楽になるというので、それからは人々の羊が次々に奪われてしまいます。

 羊を食べ飽きたヘビが再び暴れだし、今度は毎日子どもを二人、ヘビにささげることになるのですが・・・

 村の人達は、子どもをどう守れるだろうか考えて、男の子を山奥に逃がすことにします。

 カワという鍛冶屋は、息子七人を山に逃がすとき、「どんなに ふゆが ながくても、かならず はるは おとずれる。はるを しらせる スイセンのはなが さいたら、あのやまの てっぺんで、ひを たいてほしい」といいます。

 火がやまにかがやいたときが、カワたちが立ち上がる合図だったのです。

 右手にハンマー、左手に太陽の旗をかかげたカワ。四方八方から城に向かう人々。

 七人の息子が村に帰ってきたとき、ノウルーズ、ホーイ(しんねん、おめでとう!)と喜びあいます。

 怪しい男、みたこともない医者は本当は悪魔でした。
 ヘビは悪魔を象徴するものでしょうか。

 四方八方から、松明をかかげ、城にむかうシーンは圧巻です。

 ノウルーズは、イランやトルコをはじめ広い地域で祭礼となっている日で、古い暦では元旦、太陽暦では春分にあたるといいます。

 カワの息子たちは父親を助け、母親の仕事を手伝う働き者です。