どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

姿が消える昔話

2019年04月30日 | 昔話(日本・外国)

 空想が実現できたらと思う一つが、もし姿がみえなったらということ。
 「ハリーポッター」では、マントで姿が見えなくなります。

・日本の「天狗の隠れ蓑」は、天狗から蓑をだましとって、いたずらをしたり、料理を食べたりとやりたい放題。

・ぼうしをかぶると姿がみえなくなるのが「小人のぼうし」(黒いお姫さま/ドイツの昔話/上田真而子・訳/福音館書店/2015年)。

 ぼうしは小人のおじいさんのぼうし。ぼうしをかぶった羊飼いが、村の結婚式に出かけ、小人と一緒にワインを飲んだり、肉屋おかゆをたべたり、ほしいだけ飲み食い。

 こんな便利なぼうしをかえそうとしない羊飼。それはそうでしょうね。

 小人は、花よめと花むこのまえの、おかゆがはいった大きな鉢にかがみこむと、おかゆの鉢が見えなくなるとたきつけ、羊飼いがかがみこんだとたん、頭から、ぼうしをとって、逃げ出します。
 姿をあらわした羊飼いは、ふくろだたきに。

 飲み物や料理が見えなくなるわけではないので、空に浮くさまは、どうクリアしたのでしょう。

 姿が見えなくなったら、泥棒にも利用できそうですが・・・。


ノロウエイの黒牛・・イギリス・スコットランド

2019年04月29日 | 絵本(昔話・外国)


    ノロウエイの黒牛/なかがわちひろ・文 さとうゆうすけ・絵/BL出版/2019年


 はじめて、この話を聴いたとき「わたしの左より出るものを食い、右の耳より出るものを飲み、あまれば それをあすのため、たくわえておき つかうべし」(石井桃子訳)というフレーズが印象に残りました。

 ある晩、三人姉妹が、どんな人と結婚したいか話していました。もっともうつくしく朗らかな末の娘は、わらいながら「ノロウエイの黒牛でもいいわ」といいます。

 昔話では余分なことはでてきませんから、三人姉妹の結婚相手は言ったとおりになります。

 黒牛がやってきたとき、地下室にかくれた娘でしたが、いつまでもしずかにまつ黒牛に「約束は守らなければ」と、黒牛のせなかにのって、旅にでかけます。
 おなかがすいた娘に、黒牛は「左の耳から、食べ物を食べ、右の耳から、飲み物を飲む」よういいます。

 貴族の館や、公爵の城で夕食にまねかれた娘でしたが、黒牛は外で夜を過ごします。

 舞踏会がひらかれていた宮殿で、王子と王女におどりをさそわれた娘でしたが、そのとき、黒牛の足に大きなとげがささっているのにきづきます。娘がとげをぬいてやると、たちまち黒牛は気高くうつくしい王子にかわります。
 王子は、結婚をもくろむ魔女によってのろいをかけられていたのでした。
 娘のやさしさで、のろいがとけ、夜だけは人間の姿でいられるが、すべてののろいをとくためには、まだしなければならないことがありました。

 王子は、「魔物とたたかわなければなりません。勝てば、娘のまわりのすべてが青くなり、赤くなれば負けたということです」といい、自分が戻ってくるまでは、けっして手も足もうごかさないようにし、ほんのわずかでもうごいたら、あなたをみつけることができなくなると言い残します。

 娘は、ひとみさえうごかさずに、まってまって、まちます。
 ところが、あたりが青くそまったとき、うっかり、かたほうの足を、反対の足の上に、ひょいとのせてしまいます。
 すると、魔物に勝った王子は、いっこうにあらわれません。

 まちくたびれた娘は、ひろい世界の果てまで、王子をさがしにいこうと、かたく心に決めて歩き出します。

 ある日、暗い森のそまつな小屋にいたおばあさんが、娘の願いがかなるようにいのると、木の実を三つわたしてくれます。

 ガラスの丘にはばまれた娘は、七年と七日かじ屋で働き、つくってもらった鉄のくつでガラスの丘をのぼります。

 やがて大きな城に着くと、ノロウエイの王子がとうとう結婚するということでした。

 ハッピイエンドをむかえるためには、もう一波乱あります。 ここからは、おばあさんからもらった木の実の出番です。


 この話はジェイコブズの編集・再話を石井桃子さんが訳された(イギリスとアイルランドの昔話/福音館文庫/2002年初版)ものがありますが、この絵本は1847年生まれのフローラ・アニー・ステイールの再話を訳したとありました。

 中川訳では魔物ですが、石井訳では悪魔です。「木の実」は、石井訳は「クルミとハシバミ、野ハシバミ」と表現されています。。
 石井訳で気になるのは「ウシが疲れて、片方の足で、びっこをひきかけたとき」とあるところ。

 絵は重厚で黒牛のイメージが鮮烈です。ただ娘と王子が若々しすぎるのは、子どもを対象にしたからでしょうか。

 ところで「ノロウエイ」は、ノルウエーをあらわているようです。


ぴよぴよ ひよこ

2019年04月28日 | 絵本(外国)


   ぴよぴよ ひよこ/ジョン・ローレンス:作・絵 いけひろあき・訳/評論社/2005年


 ひよこはだれともすぐなかよくなります。

 ぶたさん、あひるさん、うしさん、かえるさん、ひつじさん

 たっぷりあそんだあとの寝言に、あそんだともだちの鳴き声が・・・

 あまりのにぎやかさに、他の兄弟は耳をふさいでいます。

 ぶたさんは「ぶう ぐるん ぐるん おんいく おんいく ぶう」
 かえるさんは「ぎご ぎご ぎご ぎご けろろ かろ かっく」

 鳴き声は大声で読むと迫力が増すようです。読み聞かせにぴったりです。

 「樹脂版画とコンピューター技術をくみあわせた」絵ですが、遠くから見ても色がくっきりでそうです。

 イギリスで刊行された当初から「古典になることを約束された」と、絶賛されたようですが、原著は2002年。古典になるのは50年以上先のことでしょう。


やさしいたんぽぽ

2019年04月27日 | 安房直子


     やさしいたんぽぽ/安房 直子・文 南塚直子・絵 /小峰書店/2018年


 日が暮れてだれもいなくなった野原にひとりの女の子がたっていました。おかあさんから、眠っている子ねこを捨ててきなさいといわれやってきたのです。

 まだ小さく暖かい子ねこ。すてられたねこはどうなるのでしょう。真っ暗闇で、抱いてくれる人もミルクをくれる人もいなく。こねこはどうなるのでしょう。女の子は、なきながらつぶやきます。

 すると女の子の足元が、ぴっかとひかりました。ちいさく、まるで黄色い豆電球がともったようです。 するとあっちにも ひとつぶ、こっちにも ひとつぶづつ黄色いあかりがふえていきます。そして野原は一面明かりの海になりました。

 黄色い光は、たんぽぽでした。いぬやねこが、この野原に捨てられる日は、こんなふうにひかるといいます。

 子ねこのために、たんぽぽの切り口からは、まっしろいミルクがあふれてきます。

 子ねこの首にたんぽぽをかざると、電車がやってきます。電車にはたくさんのいぬやねこが。
 野原から野原へ捨てられた動物たちをひろってはしる不思議な電車でした。

 女の子のこねこも、<ひかりのくにゆき>の電車にのりこみます。

 すてられそうになった動物たちは、ひかりのくにで、しあわせに暮らしているのでしょうか。

 夕暮れとたんぽぽの黄色の絵が幻想的です。春の夕暮れには、素敵なできごとが起こるんですね。

 たんぽぽから、こんな物語を紡ぎだす安房さんの世界です。


かっぱのてがみ

2019年04月26日 | 絵本(昔話・日本)


    かっぱのてがみ/さねとうあきら・文 片山健・画/教育画劇/1998年


 漁師のぎへいさんが、かわいいこどもにたのまれて、手紙をくろう岩に届けに行きます。

 気軽に引き受けたぎへいさんでしたが、手紙をのぞいてみて、びっくり。何もかいていません。

 ぎへいさんは、河童が書いた字は人間の目には見えず、ただの白い紙に見えるというのをきいていました。

 川の水につけてみると、くろぐろとあやしい文字が浮かび出ます。

 ”この ひとは かわでは くえん うみで くえ。”

 くわれちゃたまらんと、ぎへいさんはおおあわてで、かぼちゃの茎をちぎって、その汁で手紙を書き替えます。

 ”この ひとは かわで おせわになった。うみで おれい してくれ。”

 くろう岩という大岩のところで、「ほーい、くろべえどん、くろべえどん くろべえどん」と三回呼ぶと、でてきたのは、わかめをすっぽりかぶった大男。

 手紙を渡すと・・・。

 手紙を書き替えるというのは外国の昔話に多いパターンですが、日本のものではあまりみたことがありません。

 くろべえどんとは何者なのか、はじめにでてくるこどもは、くろべえどんの子ども?

 河童の手紙のはずが、河童があまりでてこないのは?

 河童というキャラクターは、日本だけのものでしょうか?。

 裏表紙に、果報は寝て待てと言わんばかりに ぎへいさんが寝転んでいます。そして船には、たくさんの魚が、まるで自分から飛び込んでいます。


どうぶつたちのうた

2019年04月25日 | 絵本(日本)


    どうぶつたちのうた/二宮 由紀子・文 中新井 純子・絵/教育画劇/2019年


 チータのみわけかたは?
 カバがあせっているのは?
 ヘビがいやがられてやったことは?
 きつねも、きつつきも ひとをだまさない。ひとを だますのは?

 文章も横、斜め、縦と、もちかえないと読めません。

 色もカラフルですが、突然ほぼ真っ白なページに吹き出しの小さな小さな文字。かと思うとぺーじをまたがった文章、

 なぞなぞがあったり、とにかくにぎやか。

 うたのようでもあり、ないようでもあり。

 頭の柔軟さをためされているようです。


くっつくくっつく

2019年04月24日 | 昔話(外国)

金のあひる(インドパンジャブ)(世界の民話19/パンジャブ/小澤俊夫・編 関楠生・訳/ぎょうせい/1999年新装版)

 三人兄弟の末っこは、いつも兄たちにばかにされ、わらわれているばかり。
 兄弟が森に材木を切りに行くと、そこに現れた行者に、「パンを少しわけてもらえませんか」とお願いされ、上の二人はそれを断わって斧が落ちてけがをしてしまいます。
 しかし、末弟がパンをわけてあげると、行者は金のあひるを末弟に与えます。

 末弟はある宿に泊まりますが、金のあひるをみた宿屋の三人の娘が、こっそりあひるを盗もうとすると、娘の手があひるにくっついて離せなくなります。ほかの二人も離れなくなり、おまけに宿屋の主人も娘たちを引き離そうとして離れません。

 こんな格好で末弟と歩く羽目になるが、それを見て、生まれてから笑ったことがなかった美しい王女が大声で笑い出します。
 王女が笑い出すと、憂鬱病にかかっていた王女の病気はすっかりなおってしまいます。

 やがて末弟と王女が結婚し、結婚式がおわると、宿屋の主人と三人の娘の手は金のあひるから離れます。


ムーンと金のがちょう(タイ)

 この話では木こりの二人息子です。

 息子たちが木を伐りに出かけた森であったのは、こびとでした。
 こびとは「何か飲むものと食べるものを分けてくれませんか」と頼みますが、上の息子は無視。二番目のムーンは「何かおいしいものをあげたいけど、あるのは水ともち米だけだよ。それでもよかったら、どうぞ。」とこびとの頼みをききます。するとこびとは「ありがとうな。おなかいっぱい食べたら、あの木を切ってみなされ。そこで見つけたものは何でも持って帰っていいから。」とだけ言うと、森の中に消えていってしまいました。

 ムーンが木をきってみると、そこにはピカピカの羽をしたがちょうがちょこんと座っていて、ムーンはそれを抱いて家に帰りました。

 ムーンは家に帰る途中で、女の子に出会います。その子は、ぴかぴか光るがちょうの羽を見ると、たまらなくほしくなって、引っぱってとろうとします。すると、女の子の手が、ぴたりとくっついてはなれなくなってしまいます。それをみていたその子のお母さんはびっくりして、女の子の手を振りほどこうとすると、今度はなんと、お母さんの手がぴたりとくっついてしまいます。

 こうして、みんなくっついたまま、お城の前をとおりかかりました。そこへちょうど出てきた王女は、ムーンたちを見て大笑い。ケラケラケラケラ笑いがとまりませんでした。
 生まれてから一度も笑ったことのない王女が笑っているのを見た王様は大喜び。ムーンは王女と結婚します。

        
笑おうとしなかったお姫さま(クロアチア)(世界の民話16 アルバニア・クロアチア/小澤俊夫・編 飯豊道男生・訳/ぎょうせい/1999年新装版)

 お姫さまを笑わせたら、その者に娘をよめにするというおふれをみた三人兄弟が御殿にでかけます。
 この話で途中で会うのは、沼のところで水浴びしているおばあちゃん。

 「私を出しておくれ、お前さんのことも幸せにしてあげるから」といわれても、上の二人は無視。
 ばかとよばれていた末っ子が、おばあちゃんを水から引っ張り出してあげると、おばあさんは笛をくれます。
 この笛を吹くと、きれいな金のかもが三羽やってきます。
 金の羽に目がくらんだ宿屋の三人の娘が羽根を盗もうとすると、かもにくっついてしまいます。

 あとの話の展開は前と同じようですが、面白いのはくっつくもの。

 娘の寝巻がお尻あたりでめくれたり、パン屋が木べらごとくっつき、坊さまがうんこする格好でくっつき、雄鶏のくちばしが坊さまのお尻にくっついたりと話をしている人が楽しんでいるようです。

 「皆さん、ごめんなさい不調法な話をして」という前置きがあります。

 この話では、お姫さまが末息子にリンゴを投げる場面もあります。


金のガチョウ・・グリム

 上の二人がうまくいかず、末の息子が、こびとから金のガチョウを手に入れます。
 ガチョウにくっつくのは、宿屋の夫婦、これを助けようとした人々。

 ただグリムらしくお姫さまとは簡単に結婚できません。

 王さまは「城の酒蔵の酒を全部飲み干せ」「城の倉庫のパンを全部平らげよ」という難題をだします。
 さらに「海でも陸でも走れる船を持ってこい」と命じます。
 こうした難題をどう解決してくか興味をもたせる展開が続きます。


かじ屋と坊主(黒いお姫さま ドイツの昔話/ヴィルヒルム・ブッシュ・採話 上田真而子・訳/福音館文庫/2015年)

 殿さまから「明日の朝までにゴッチャゴチャというものをもってこないと縛り首と言われた鍛冶屋。
 ゴッチャゴチャがどんなものかわからない鍛冶屋が、こびとから「くっつけ」という呪文をおしえてもらいます。

 坊主と鍛冶屋のおかみさんがキスをしたとき、鍛冶屋は「くっつけ」と叫びます。すると坊主とおかみさんにくっついてしまって、はなれられなくなります。鍛冶屋はふたりを家から追い出してしまいます。

 くっついたふたりが、坊主の家のまえにくると、それをみた手伝い女が、主人を家にもどそうとすがりつくと、手伝い女もくっついてしまいます。
 次に牛、パン屋もくっついてしまいます。
 それをみた殿さまは、大笑いに笑ってはなしてやるようにいいます。

 くっつくのは後半部で、前半部は、鍛冶屋のおかみさんとできていた坊主が、鍛冶屋を追い出してやろと悪だくみをします。

 坊主は殿さまのところへでかけ、鍛冶屋が「一晩のうちに城をつくることができる」と豪語しているといいます。そこで、殿さまは城を作るよう命令します。一晩で城ができていなかったらしばり首にするといわれた鍛冶屋が、おかみさんから逃げ出すようにいわれ、大急ぎで身の回りの物をまとめ、逃げ出します。森の中で出会ったのが年よりのこびとでした。

 子どもでなく、もうすこし上の年齢を対象としたもののよう。何しろ坊主と鍛冶屋のおかみさんが浮気するところからはじまります。

 いろいろくっついているようすを「ゴッチャゴチャ」としたのはうまい訳です。


保育・幼稚園のおはなし会

2019年04月24日 | お話し会

 保育園・幼稚園一体型でのおはなし会

2019.4.24

 前回から3年たっていました!。年長さんのおはなし会。

 おわってから、雨がポツポツふりだしました。畑にとっては恵みの雨です。今日は一人で、いつもはろうそくは人任せでしたが、ろうそくをともすところから。

 1 変わり絵 チョウ
 2 語り こねこのチョコレート(同名絵本 こぐま社)
 3 お弁当箱の歌(エプロンシアター)
 4 みんなのポケット(紙芝居 童心社)

 

2016.9.2

 年少さん。”おおきなかぶ”を人形をつかって話しました。家は段ボールで自作。以前やってみて、そのままとっておいたのがやくにたちました。
 じつは組木版もあるのですが、人数が多いというので、急遽出番になりました。

 毎月、何年も定例的に開催しているというのですが、たまたま見えていた保護者のかたが、子どもが、この日を楽しみにしていると話されていたのは力になりそうです。 


まゆと そらとぶ くも

2019年04月23日 | 絵本(日本)


    まゆと そらとぶくも/富安 陽子・文 降矢 なな・絵/福音館書店/2019年/月間絵本「こどものとも」


 「やまんばのむすめ まゆのおはなし」はシリーズになっているようです。

 まゆが雲に乗って、切り立った崖の途中の松の木にしがみついていた男の子を助けます。

 まゆがのっていたくもはカミナリぼうやの雲でした。

 まゆがぼうやをカミナリのうちにとどけると、みんなは大喜び。

 カミナリとうさんは、雲のてっぺんをちぎってまるめ、一人乗り用の、雲をつくってくれました。

 雲を見たらのってみたくなりますが、子どもはのれないと思うかな?

 まゆちゃん、とても可愛いです。そして、いつもキツネと一緒。

 カミナリ一家も、ツノがあって一見怖そうですが、笑顔が素敵です。


ずるやすみにかんぱい!

2019年04月23日 | 創作(日本)


    ずるやすみにかんぱい!/宮川 ひろ・作 小泉 るみ子・絵/童心社/2010年


 小学校三年生の雄介が、からかわれたのは、それまで朝礼の行列で、いつも二番目にいたので、両手を前にあげて「前えならへ」をしていたのが習慣になって、これまで一番前にいた子が転校し先頭にいたとき、おもわず「前へならへ」で両手をあげてしまったのが原因でした。

 そのときは笑い話でおわったのですが、どのようにつたわったのか、ほかのクラスのニ三人の子が「前へならへ」とからかったのです。

 からかったほうは、悪意がないと思っても、からかわれたほうはずっと傷つきます。

 ちゃんとなやみをうちあける雄介君に、ずるやすみをして早いうちに力をもらいにいこうというおとうさん。

 おかあさんも「熱があるから」と、学校に連絡して、けろっとおくりだしてくれます。

 行った先は、おとうさんの高校時代からの友人の青山おじさんのところで、そこには雄介よりもひとつ年下の正弘もいました。

 金曜日にもかかわらず、正弘君は家にいました。開港記念日で休みというのですが・・。

 青山さんの隣には、小学校の先生だったという先生おばあちゃんもいました。

 先生おばあちゃんのところで、畑仕事、川のふちに急きょ作った露店風呂ですかっとしたあとは、うどんづくり、そして鍋料理です。

 鍋をかこみながら、ずるやすみが話題になりました。

 正弘君も、じつは開港記念日ではなく、ずるやすみでした。「青ちゃん青虫、はさんですてろ」と、からかわれていたのです。キャベツ畑の世話は二年生がおこなっていたのです。

 おとうさんも、宿題をしてなくて、学校に行きたくなかったことを話していました。

 先生おばあちゃんは、師範学校の入学式の時、お兄さんが作ってくれたクジャクのかたちのブローチを制服につけ、「学校はおしゃれをするところではありません」と、取り上げられたことを話してくれます。先生おばあちゃんは、お兄さんの気持ちをくんでブローチをつけたのですが、そんなことがあって学校ぎらいになって退学をしていました。

 青おばさんも小学校のとき先生とウマがあわなかったことを話します。

 長い学校生活、たしかにひとりひとりにさまざな体験があります。つらいことがあったとき相談できる人がいるのは幸せなこと。

 雄介君、素敵な両親、大人にかこまれで、力をいっぱいもらったかな。

 それにしても、子どもが自ら命を絶ったというニュースにせっするたび、どうして誰も手を差しのべられなかったか疑問が残ります。


あなのはなし

2019年04月22日 | 創作(外国)

     あなのはなし/ミラン・マラリーク・作/おはなしのろうそく4/東京子ども図書館編/1975年初版


 創作ならではの話です。

 赤いくつ下のあなが、どんどん大きくなってくつしたを飲み込むことからはじまります。

 あなが途中で出会ったのは、いずれも世の中をみたいとおもっていたドーナツ、かえる、つばめ、そしてひつじ。

 夜になって小屋にとまるとことになりますが、そこにおおかみがやってきて、ひつじもつばめもかえるもドーナツもパクリと飲み込んでしまいます。

 おおかみは、あなも飲み込みますが、おなかの中にあながあいてしまいます。

 そのあなのなかから、ひつじ、つばめ、かえる、ドーナツがころがりでます。

 最後、あなはおおかみも飲み込んでしまいます。

 それほど長い話ではないのですが、穴が人格?をもっているという意外な展開にびっくり。
 作者は、くつしたの穴から着想したのでしょうか。

 なにやらブラックホールのような穴。おおかみもでられなかったのでしょう。


    あなのはなし/文:ミラン・マラリーク 訳:間崎 ルリ子 絵・あな:二見 正直/偕成社/2014年

 「あなのはなし」がのっている「おはなしのろうそく4」(東京子ども図書館編)は1975年の初版。

 東京こども図書館編では、作者がよくわかりませんでしたが、チェコのかたでした。

 40年以上たってから絵本が出版されていますが、もっと早く絵本になってもおかしくはないと思いました。

 絵本には穴があいていて、オオカミが各ページのどこかにいて、探す楽しみもあるようです。

 皆さん 穴が旅をする発想にびっくりです。


 紙芝居にもなっていました。

    あなのはなし/脚本・絵 中野真典/童心社/2010年(12画面)


 紙芝居は、絵が大きく遠くから見てもわかりやすいのが特徴でしょうか。奇想天外なストーリーも語りと違ってイメージしやすいのもありそうです。


シルクロードのあかい空

2019年04月22日 | 絵本(外国)


    シルクロードのあかい空/イザベル・シムレール:文・絵 石津 ちひろ・訳/岩波書店/2018年


 古く東西の架け橋となってきたシルクロードを、赤を基調とした絵で描いています。

 昆虫学者でもあるという作者は、シルクロードでみられる蝶はもちろん、植物、動物を丁寧に描いています。

 風景はまるで絵画をみているよう。とりわけ綿花畑は息をのむような美しさです。

 天山山脈の雪解け水が、砂漠の地下に張り巡らされた水路でトルファンの町まで流れていくのですが、土砂をはこびだすため作ったという竪穴は、どのくらいの年月がかかったのでしょうか。

 モンゴルのゲルでおなじみの移動式住居は、ユルトと表現されています。

 長い歴史からいえばほんの一部ですが、絹は五千年前に中国で編み出され、その三千年後、中国の外に伝わったこと。中国でもっとも高いイスラム教の塔、蘇公塔。清の乾隆帝の寵愛をえたというウイグル出身の香妃などもを知ることができます。

 もっとも、絶世の美女と言われた香妃も、中国の正史には、でてこないようですから、うのみにするのはどうでしょうか。訳では「嫁いだ」とありますが、略奪されというのが正しいようです。


たんじょうび

2019年04月21日 | 絵本(外国)


    たんじょうび/ハンス・フィッシャー:文・絵 大塚 勇三・訳/福音館書店/1965年


 絵本は何年でも楽しめるのがいいところ。原著の出版は1948年、日本では1965年に初版が出版されています。

 出版は古いのですが、線画に色を全部塗るのではなく部分的というのも、今見ても斬新です。

 リゼッテおばあちゃんの七十六歳の誕生日に、テーブルをかこんでいたのは、オンドリが一羽、メンドリが六羽、あひる七羽、うさぎが八匹、やぎが一匹、二匹のねこ、犬一匹。
 おばあちゃんが可愛がっている動物達です。

 誕生日パーテイを開くための準備は大変。

 うさぎは76本のろうそくを買いに行きます。
 めんどりはたまごを36うみました。
 やぎはテーブルに飾る花をあつめます。
 ケーキも作りましたが、うっかりしてまっくろこげ。けれど砂糖をたっぷりかけ、こげをかくします。

 買い物からおばあちゃんがかえってきましたが、家はシーンとしています。

 けれども、家にはいると「おたんじょうび おめでとう!」の大合唱。
 やさしいおばあさんにたいする動物たちの感謝です。

 森の中のろうそくの幻想的な風景、そして、とっておきのラストがまっています。


キスなんてだいきらい

2019年04月20日 | 絵本(外国)


  キスなんてだいきらい/トミー・ウンゲラー:作・絵 矢川 澄子・訳/文化出版局/1974年


 出版されてからもうすこしで半世紀! モノトーンだけの絵です。

 ねこのパイパー、なんでも反抗したくなる時期です。

 キスなんてとんでもない。
 顔も洗わないし、歯も磨かない。
 アイロンをかけてある服も、わざわざくちゃくちゃにして。
 「ぼうや」とよばれるのもしゃく。

 学校でも乱暴で有名。友達と喧嘩して、相手の左目は はれあがり、自分の耳は ちぎれかけて。

 拾った葉巻をトイレで一服してなかなおり。

 衛生室(保健室)の薬棚にはヘビをいれられて、おかんむりの看護師さんからはお灸をすえられさんざん。

 お昼を一緒に取ろうとやってきた母親は、ケガをしたぼうやをみて大騒ぎ。ご飯を食べているときは何も話せず。

 でも、心の中では心配をかけたのを反省したのでしょう。

 母親に花束のプレゼントです。それも、授業の邪魔をするパイパーの大事な かんしゃく玉、よくとぶパチンコ、クラッカーをみんなに売って集めたお金です。

 いかにもワルをよそおっているパイパーですが、ほんとはやさしそうです。

 古くは、昼食を親と一緒に食べて、また学校へ行くというのもあったんですね。

 ポーとうさん「おれも おまえぐらいの としごろには おまえそっくり だった。歯なんかみがかなかったぜ。はっはっは」と男同士の会話です。


とんとんとめてくださいな

2019年04月19日 | 絵本(日本)


    とんとんとめてくださいな/文:小出 淡 絵・小出 保子/福音館書店/1981年


 ハイキングに出かけ、みちにまよった三びきのねずみが森の中の家にとめてもらうところからはじまります。

 といっても、いくら「とんとん、とめてくださいな」といっても、へんじがありません。家の中にはだれもいません。とてもつかれた三びきのねずみがべっどにもぐりこんでいると「とんとん、とめてくださいな」と誰かがドアをあけます。

 二ひきのウサギでした。

 そのつぎにやってきたのは、三びきのたぬき。

 三びきのねずみと、二ひきのうさぎ、三びきのたぬきは、いっしょにベッドに入ります。

 しばらくすると、大きな足あとがして、「とんとん、とめてくださいな」ともいわずに、おおきなくろいものが、にゅうとはいってきて・・・・・。

 ウクライナの民話絵本「てぶくろ」に、にていますが、ラストに動物たちのしあわせそうな笑顔があって、納得できるおわりかたです。

 「てぶくろ」とちがって、動物たちがはいるベッドはおおきく、無理無理という感じがなく、おおきなものがにゅうっとはいってくるのも緊張感があります。

 薪ストーブにランプ、リュックサックをかけるフック、本もあって素敵な家です。